IBM Sustainability Software
事例 | 東芝デジタルソリューションズによるIBM Maximo導入支援 ― 配電領域へ統合設備管理パッケージを業界初導入
2022年02月21日
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東芝デジタルソリューションズ株式会社様(以下TDSL)は、IBM Maximoに関する高度な技術力と構築実績、ノウハウを持つ、東芝グループのシステムインテグレーターです。
そのTDSLが、昨年IBM Maximoの導入を支援したのが、中部電力パワーグリッド株式会社様です。当記事では、10億件もの設備情報の統合管理基盤を構築した設備管理ソリューションの導入の様子をご紹介いたします(TDSL事例ページに掲載された内容の転載となります)。
配電領域へ統合設備管理パッケージを業界初導入
10億件もの設備情報の統合管理基盤を構築した設備管理ソリューション
2020年4月に中部電力株式会社から分社し、一般送配電事業者として中部・東海5県を供給区域に持つ中部電力パワーグリッド株式会社。膨大な数の設備を効率的に管理し投資の最適化を図るため、統合設備管理システムの開発に着手。そのなかで、設備情報を統合的に管理するEAM(Enterprise Asset Management)システムをIBM Maximo®(以下、Maximo)導入により実現した。この環境づくりには東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)の導入から運用までの高度な知見と技術力が生かされている。
Before
高度経済成長期に敷設された大量の設備の更新をいかに効率的に実施するか、が大きな課題に。従来のタイムベースの設備更新プロセスではなく、劣化状態や施設状況に応じて適正にリスクを判断する仕組みを構築するために、膨大な量の設備関連情報を統合的に管理するEAMの構築が求められた。また分散していた設備管理情報を一元化し、適正な設備形成の基盤となるアセットマネジメントシステムの導入が求められていた。
After
Maximoに関する高度な技術力と、構築実績、ノウハウを持つ東芝をパートナーに選定。配電部門における設備情報、巡視・点検情報などをマスターデータとして一元管理する統合設備管理システム基盤をパッケージベースで構築し、膨大な配電設備への投資を最適化するための環境を実現した。
導入の経緯
設備の適正なリスク判断に基づく投資の最適化が実現可能な基盤を求めて
同社では、13万kmにもおよぶ配電線路や280万本超の電柱など、3,400万件を超える配電設備を維持、運用管理している状況にある。こうした設備を管理するためのアセットマネジメント構築に長年取り組んできた同社は、時代と環境の変化に柔軟に対応できる設備管理情報の統合化を実現する設備管理ソリューションの導入を検討することになった。
システム部長 佐藤 雅弘氏は、「各地に敷設している設備は、高度経済成長期に集中的に導入されたものが多いため、施工能力や予算が限られるなかで、設備更新の最適化が大きな課題でした。従来のタイムベースの更新ではなく、劣化状態に応じて適正にリスクを判断する仕組みづくりが求められていたのです」と説明する。
今後、再生可能エネルギーの大量導入や、蓄電池、EV等の分散型電源の活用など、設備形成もこれまでとは大きく変わるタイミングを迎える。「当社はこれまで、送電、変電、配電などの各部門がそれぞれの設備管理や運用に必要なシステムを個別に構築してきました。今後の環境変化に対応するには、各システムの機能を全社的な視点で見直す必要がありますが、全てを一斉に作り変えるのは難しいため、まずは全社的な基盤となる統合的な設備管理の仕組みを構築したうえで、高度な機能を順次付加していくことを検討したのです」と佐藤氏は語る。
導入のポイント
Maximo導入を前提に東芝の知見と高度な技術力を評価
新たな基盤整備に向けて大前提となったのが、パッケージシステムによる環境づくりだった。「当社では、環境変化に柔軟に対応できるように、汎用的な機能は安定した品質を誇るパッケージやツールをうまく活用したうえで、我々独自の機能の構築に注力するという方針を示しています。従来のスクラッチ開発によるオーダーメイドの仕組みからの脱却が大前提だったのです」と佐藤氏。
基盤システム選定にあたっては、送電、変電、配電などの全設備が管理でき、大量データを安定して効率的に処理し、その上で使いやすいユーザーインターフェイスと高度な機能を付加できる拡張性が高い基盤が必要だった。そこで、グローバルでもEAM基盤として豊富な実績があり、かつ同社でもスマートメーターの管理として導入していたMaximoが統合設備管理システムの基盤として選定された。
Maximoを軸にEAMを構築していくパートナーに選ばれたのが、Maximoの高度なノウハウを持つ東芝だった。「Maximoの導入実績を考慮し、競争を行った結果、東芝を選定した」と同部 アセットマネジメントシステムグループ長 林 直晴氏は説明する。なかでも高く評価されたのが、他の電力会社におけるMaximoでのEAM構築実績だった。「東芝が国内でのEAM構築実績も含めてMaximoに関する豊富な知見やノウハウを十分に持っている点を評価しました」と佐藤氏。価格面はもちろん、同社が求める環境の実現性、そして実績や先進性なども含めて検討し、それらのバランスが最も優れていたのが東芝だったという。
導入の効果
10億件近い膨大な設備情報を統合的に管理する基盤システムを実現
電力会社の配電領域で国内初となる先進的な取り組みとなったEAMの構築だが、これに合わせて、定量的なリスクに基づいて投資の最適化を図るためのAIPM(Asset Investment Planning and Management)とともに、設備に関するリスクを可視化するAPM(Asset Performance Management)も構築。APMに必要な設備情報、巡視・点検情報などを一元管理するMaximoを基盤とした統合設備管理システムの開発を東芝が担当している。Maximo上で管理する設備の基本情報は3,400万件を超え、リスク評価に必要な設備の諸元情報で見ると、10億件近い情報が統合的に管理されている。「設備情報としてのマスター管理のほか、設備の更新などの工事情報管理や定期点検の計画、作業指示などもMaximoが担当しています。それらの情報を基幹システムなど他システムと連係する役割も担っている状況です」と同グループ 副長 大江 慎也氏は説明する。
導入にあたっては、事前に綿密な性能検証が何度も行われた。「海外も含め、これほどの大量データを扱った例がなかったので、東芝の高い技術力には大変助けられました」と佐藤氏は評価する。10ほどある周辺システムとの連係も行われており、既設環境を順次刷新しながらMaximoを活用するプロジェクトも進行中だ。
新型コロナウイルス禍という想定外の事態の中で、決められた納期に沿うべく、東芝のノウハウをフルに生かし、最小限のカスタマイズだけでシステム構築が行われた。「緊急事態宣言が出る中でのプロジェクト推進でしたが、万全な感染防止対策のもとで進捗に影響しないよう担当者を配置していただき手厚くサポートしてもらえたことで、無事に稼働させることができました」と林氏。
Maximoの使いやすさについては、現場の一定の評価も得ているという。「当初は従来のオーダーメイド型との違いに戸惑いましたが、使いやすさを重視していろいろと工夫してもらいました。現場にも受け入れられており、うまく移行できたと考えています」と大江氏は評価する。
将来の展望
送電や変電も含めた統合設備管理システムへと拡張を
今後は、送電や変電部門が運用する設備の管理もMaximoに集約する計画で、すでにプロジェクトが進められている。「今回導入したMaximoをハブとして、いろいろな機能を追加しながら拡張していきたいと考えています。数多くの設備を持つ配電部門を皮切りに、全社的な統合設備管理システムへと拡張できる柔軟な基盤が整備できました」と佐藤氏は評価する。
また同社では、設備の状態を一元的に把握するだけでなく、電気の潮流までも可視化するデジタルツインに向けた環境整備が進められている。スマートメーターデータをはじめ、ドローンを活用した測量による送電鉄塔の点群データの蓄積・活用、IoTを駆使した高度化等が進められており、新たな価値創造につなげたいという。この実現のため、デジタル領域でも高度な知見を持つ東芝にさらに大きな期待を寄せている。
同社のデジタル化へのさらなる歩みを支援するパートナーとして、高度なサイバーフィジカルシステム(CPS)の知見やノウハウを持つ東芝の技術力が今後も生かされていくことだろう。
設備管理ソリューション
電力設備、工場などの社会インフラの設備管理における安定稼働、業務の効率化、保全コストの低減などの課題に求められる設備資産管理のデジタル化、保全業務の働き方の見直し。これらを解決するのが東芝の設備管理ソリューションです。
東芝が長年培ってきた設備管理(EAM)システム導入・運用のナレッジを活かし、課題解決や業務改善に向けたコンサルテーションから、システム開発、運用保守までトータルでソリューションをご提供します。
また、DX推進に向けたIoTやAIなどのデジタル技術の活用をご提案します。
この記事の内容は2021年6月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
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