Client Engineering
こころが震えたあのとき(高田あかり) – イノベーション・デザイナー、Client Engineering事業部
2024年10月04日
カテゴリー Client Engineering
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「パッションですか? デザインです。
プロダクトからビジュアルデザイン、UI/UXからデザインシンキングまで、解決に向けて課題を紐解いていく「デザイン」というものに心奪われています。
定番過ぎるので口にするのをちょっとためらいますが、昔、アップル製品出会って衝撃を受けたときから今に至るまで、それは変わっていません。」——Client Engineering(CE)事業部でイノベーション・デザイナーとして活動中のサリーさんこと高田あかりさんにお話を伺いました。
目次
- アメリカ〜日本〜オランダ | 「デザイン・エンジニア」への道のり
- 「オランダまで行って違っていたらどうするの?」 | 環境を変える大切さ
- 心が震えるとき | Design for AI
- カンバセーショナルAIの「見えざるインターフェース」
- 共創メンバーからのメッセージ
● アメリカ〜日本〜オランダ | 「デザイン・エンジニア」への道のり
——サリーさんは日米両国で幼少期を過ごされたんですよね。そしてオランダの大学院を卒業し、現在は兵庫県で暮らされています。まずは簡単に「これまで」を振り返っていただけますか?
はい。父の仕事の関係で家族でアメリカで暮らしていました。日本で暮らしはじめたのは、私が中学1年生の夏休みですね。日本での編入先を検討した際に、3つ年上の姉も私も、インターナショナルスクールを併設していて、少し独特な教育理念を持っている「千里国際」という中高一貫校への入学を希望し、無事入学できました。
その学校の場所と父親の勤務先の関係で、通勤・通学にともに便利な兵庫で暮らすこととなり、いまもその家で両親と暮らしています。
——そうなんですね。日本での学生生活はどうでした?
アメリカでは毎週土曜日に、日本で1週間かけて学ぶ内容を日本語で1日で学ぶ日本語補習校に通っていました。大変でした…。でもその分、日本に行ってから言葉で苦労することはありませんでした。
そして千里国際は私にはすごく合っていました。厳しい校則がない学校で、その代わりに「5つのリスペクト」というものが学校生活の基盤になっているんです。
参考 | 千里国際学園中等部・高等部「生徒と保護者のためのハンドブック」(PDF)
授業も、今でいう「探究系」が多く、時間割も自分で決めて組んでいきます。修学旅行も、どこに行き何をするかを自分たちで決めるというもので、私たちのグループは2016年、高校3年のときに香港・マカオに行くことを決め、学年全員の親御さん向けに説明会を開き、目的などを伝えて了承を得ました。
香港の民主派が中国式法治に対して盛んにデモを行っていた時期だったのですが、グループには香港出身の友だちもいて、その子が心配する保護者向けに、デモの背景や意味などを解説してくれました。
——めちゃくちゃいい学校、そして体験ですね! その後は日本で大学に進学し、そこからオランダの大学院に行かれているんですよね?
はい。ぼんやりとですが高校生のときには「デザイン・エンジニアになりたい」という夢を持っていて、そのためには、まずエンジニアリングをしっかり学び、デザインは大学院に進んでからでもよさそうだと考えていました。それで、慶應大学の理工学部に進学しました。
大学卒業時には、「今しかない」と一大決心をしてオランダの大学院に願書を送り、無事入学が叶いました。
● 「オランダまで行って違っていたらどうするの?」 | 環境を変える大切さ
——先日、サリーさんのインタビュー記事をnoteで読みました。「学びの環境を変えることの重要さ」を語られていたのが記憶に残っています。
参考 | IBM UX Designer 紹介 #5「サリー」
そうですね。オランダの大学院での学びと生活は私にとって本当に大きな、貴重な体験でした。
私、結構周りの人の目も気にするし、順応し過ぎちゃうところがあって、つい「周りに合わせよう」って意識が働いちゃうんです。でも、オランダでは「人は人。自分は自分」が当たり前で。
クラスメートから「いま空いてる? 散歩行こうぜ」とか「うちでお茶しない?」みたいな電話が来て、すごく気軽にお互いの家を行き来したりして。
…私、大学時代は、自分から人を誘うことってあまりしたことなかったんです。だから、「ああ、こんなふうに、思ったときに思ったことをすればいいんだ」なって。そういう付き合い方とか関係性の作り方とか、私にはすごく新鮮でした。
——相手の状況に気を回し過ぎたり、先読みし過ぎたりしてしまう?
そうなんだと思います。自分ではあまり意識していなかったけど、日本では無意識に、枠の中に自分を収めて周囲を優先していたんでしょうね。
でも、そんなふうに誘われる経験を重ねてくうちに「私もこんなふうに気軽に人を誘えるようになりたいな」と思いました。ウェルカムな気持ちが伝わるじゃないですか。
そういえば、オランダに着いて数週間後に、両親から電話で「ハッピーそうだね。自由に羽ばたけているんじゃない?」なんて言われましたね。
——なるほど。環境変化は重要ですよね。新しい文化に身を置くと、毎日が学びに溢れますもんね。
本当にそうですよね。いま話していて思い出したんですけど、出国前に「オランダの大学院にまで行って、学べるものが思っていたものと違っていたらどうするの?」って、大学の友人に聞かれたことがあったんです。
そのときどう答えたのかはもうよく覚えていませんが、でも実際は、それはそれで構わなくて。重きを置いていたのは環境変化で、「何を学ぶか」以上にその変化が大切だったんだなと今は思いますね。
というのも、それまでの人生で私が一番多くを学び成長したのって、アメリカから日本に来たときだったと思うんです。
友だちもいないし、文化や習慣もよくわからない場所で過ごす…悲しいことやつらいこともたくさんあったけど、すごく視野が広がる経験でした。「ああいう経験をもう一度味わうこと」が重要だったんです。
● 心が震えるとき | Design for AI
——就活話はnoteの記事に詳しいのでスキップして、この記事の1番のキモについて質問しますね。サリーさんは、仕事で心震えますか? 震えるときはありますか?
ありますね。震えますよ。
自分とは違う考え方の人の意見やアプローチを見たり聞いたりすると、「おおぅ」ってなります。「なるほどー」って。
——…「なるほどー」はたしかにおもしろいですが、それって「震え」なんですかね?
んー。そう言われるとちょっと自信が…。
…いや! やっぱりそんなことないです。震えますよ。少なくとも私にとってあれは心の震えです!
「自分の当たり前」と違うものに触れて、それがどうしてそうかを深く理解できたとき、メチャ震えますよ。
——なるほど。さっきの「新しい文化に身を置く」にも通ずる話ですね。たしかに仰る通り、大きなギャップを理解できたときは震えますね。それでは、入社後トップレベルの震えを教えてください。
これはちょっと分かりづらい話かもしれないんですが…でも話してみますね。
1年ほど前に、私たちCE所属のデザイナーの肩書が、一斉に「イノベーション・デザイナー」へと変わるタイミングがあったんです。そしてちょうどその頃、日本IBMのデザイナーを統括するデザイン理事の柴田さんを囲む対話の場が開催されました。
そのときの柴田さんの話にはとても震えました。すごく簡単に説明すると、「デザインはこれまでたくさん形を変えてきたし、これからも形が変わっていくだろう。デザイナーはそうやって変わり続ける環境の中で、デザインのあり方を考え続けていく必要がある」という話なのですが、私にとっては多くの示唆がありました。このときは震えましたね。
そしてCEのデザイナーチームでも、ここからいろいろな対話へと発展しました。このときの対話の深さにも震えましたね。
——ちなみに、どのような対話が行われたのですか?
イノベーションが肩書きについた意味、そしてそもそものイノベーションの意味についての解釈は個々人で異なる部分もありますが、IBMがAIをビジネスの主軸に据え、まだ社会的にも新しい「Design for AI」を開拓していく中で、私たちはそれにどう向き合いリードしていくのか。CEにおいて、そしてIBM社内においてそれをどう実践し、どうやって価値を生み出していくのか——なんて対話もしました。
それから、個別案件におけるデザインだけではなく、統合的な調査・研究をしていくことも私たちの役割ではないのか? なんて話し合いもありました。
参考 | IBM Design for AI
● カンバセーショナルAIの「見えざるインターフェース」
——CEの中での「Design for AI」の統合的研究はスタートしているんですか?
それぞれの案件の中では「Design for AI」のアプローチや検討は進んでいるものの、統合的研究というレベルにはまだ至っていないですね。
ただ、将来的にそれを行う意識を持って個別案件に取り組むことも大事かなと思っています。そういう意識のもとでは従来通りをよしとするやり方に甘んじていられませんし、そこから新たなフレームワークの開発などにつながるかもしれません。
案件と並行して研究していきたいです!
——では、「そういう取り組みを求められている」と社内で感じていますか?
んん…どうでしょうか。「CEというプリ・セールス部門にそれが求められているのか?」を問われているのなら、違うのかもしれませんね。
でも、新しいテクノロジーを生みだし、さまざまな組織と価値共創をして社会に届けていくIBMの使命を考えれば求められているし必要な役割ですよね。そしてCEはIBMの一員であり社会の一員なわけですから、その役割の一部は担っているんじゃないでしょうか。
——その考え方はとても大切だと思います。表出している社内外のニーズに応えることも大切だけれど、より大きな視点で物事を捉え、それを踏まえて「理想と現実のギャップ」をデザインしていくことこそがデザイナーの本領じゃないかと、素人ながらに思います。
そうそう。そうなんです! 「やろうとすること」自体が大切ですよね。
私も、自分の重要なテーマの1つとして、これからもしっかり意識して活動していこうと思います。
もう一つ、私の心が震えた話をしていいですか?
——もちろんです。お願いします。
これもIBM社内での話となりますけど、先日、正式な肩書きは異なるのですが、私の目から見ると「この人はデザイン・エンジニアだな〜」と感じる、AIチャットボットのグローバル・リーダーのリサさんという方が、ドイツから来日し講演を行ったんです。
そこで彼女が語ったのは、AIチャットボットは「自然言語で話せる」という点では取っ付きやすいのですが、実は「Largely invisible UI」——つまり、目的に対して何を聞いたら欲しい結果が得られるのか、あるいはそこでどんな風に目的を達成できるのかが、案外わかりづらいインターフェースである、と。
「これってまさしくデザイナーが考えていくべきことだ!」と、私は心が震えました。
——「見えないインターフェース」と言うのは、目的達成までの流れが予測しづらいってことですかね。「結局、ここで私の問題は解決するのしないの?」みたいな。
それも一つですね。自然言語は一見使いやすいと捉えられがちだけど、うまくやり取りができず、ユーザーの離脱も少なからずありますよね。
いま世の中では「AIと言えばチャットボット」みたくなっていて、IBMはお客様からのリクエストもあり大量のAIチャットボットを社会に提供していますけど、「チャットボットって本当にいいデザインなのかな?」って、正直私自身あまり納得いっていない分野でもあって…。ちょっと、言語だけに頼り過ぎているところがあるのかもしれません。
そういう「この課題の解決に、本当にチャットボットが適しているのか?」みたいな部分は、デザイナーとして考え続けていきたいし、研究もしていきたいです。
——サリーさんのデザインへのパッションを感じます。
じゃあ、さっきの話に倣っておれも気軽に誘わせてもらいますね。
この続きは、このビル1階のブリティッシュパブにでも行って、一杯飲みながらどうですか?
いいですね。行きましょう!
● 共創メンバーからのメッセージ
最後に、サリーさんと仕事を共にしてきた共創メンバーの李さんからのメッセージを紹介します。
李 広樹(リ グァンス) | 日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 カスタマー・サクセス・マネージャー
サリーさんとはいくつかのPoCプロジェクトでご一緒させていただきましたが、一つ一つの案件に真正面からとことん向き合い、お客様と対話を重ねてデザインに落とし込む姿勢にはいつも感銘を受けています。
サリーさんが作るデザインは目先の課題解決にとどまらず、将来を見据えたお客様の体験価値まで深く考え抜かれており、そのアウトプットには毎回感動しています。「これがデザインか!」と驚かされることもしばしばです。
サリーさんのように真摯に物事に取り組む方が、次のイノベーションの中心となることを確信しています。また是非一緒に共創させてください!
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