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決算レポート専用超高速翻訳プラットフォーム「SWIFT BRIDGE AI」 | Straker Japan株式会社
2024年09月24日
カテゴリー IBM Partner Ecosystem
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「人手不足に代表される日本の社会課題を越えたいですね。そして、世界中のビジネスコミュニケーションの言語と文化の違いに、橋をかけていきたいです。」
9月24日に「SWIFT BRIDGE AI(スイフト・ブリッジ AI)」をリリースしたStraker Japan株式会社(以下「Straker」)の三森 暁江氏に話を聞きました。
目次
- 期限迫る! プライム上場企業の「決算資料の日英同時開示」義務
- 決算レポート翻訳の納品スピード50%アップ。コスト30%ダウン | SWIFT BRIDGE AI
- ハルシネーションを超える生成AIの難敵に遭遇!?
- 早めのトライアル開始が吉 | Straker Japanの展望と抱負
● 期限迫る! プライム上場企業の「決算資料の日英同時開示」義務
2022年4月に再編され、日本を代表する1,641社(2024年9月時点)が名を連ねている東京証券取引所(東証)のプライム市場は、「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向け」の市場です。
そのプライム市場に上場しているすべての企業に対し、2025年4月より、主要な決算資料の日本語と英語による同時開示が義務付けられることが今年2月に決定しました。
この義務化の目的は、すべての投資家に公正に情報提供を行い、透明性を高めること。そして世界中の投資家とのより良いコミュニケーションを通じ、企業の価値向上を目指すものです。
「しかし、この新ルールに対応するにあたって、プライム上場企業には大きなチャレンジが待ち受けています。」
昨年10月、Strakerの日本市場責任者に就任した、三森ゼネラル・マネージャー(GM)はその理由をこう説明します。
「日本社会が直面している大きな課題は人手不足ですが、翻訳産業もご多分に漏れず、高齢化と担い手不足の深刻化が進行しています。
一方、今回の決算資料の日英同時開示により、四半期ごと毎年4回、1,600社ほどのプライム上場企業が一斉に、高品質かつ均質な翻訳に取り組む必要が生じました。
従来型の人手に頼った翻訳サービスがいよいよ限界を迎えつつある中での新ルール適用ですから、これまでのやり方を追従していては、プライム上場企業のIR部門の皆様は四半期ごとに翻訳ベンダーとの調整・コミュニケーションや、雑多な管理業務と交渉ごとに忙殺されてしまうことでしょう。
そこで、『SWIFT BRIDGE AI』の出番です。」
● 決算レポート翻訳の納品スピード50%アップ。コスト30%ダウン | SWIFT BRIDGE AI
来年以降、1,600社ほどのプライム上場企業が抱えるであろう課題を確認してみましょう。
端的に言えば、スピードとコスト、そして翻訳サービス提供社との煩雑で頻繁なやりとりです。
四半期決算短信の平均文字数は2万から3万文字。財務分野に特化した日英翻訳サービス提供者に依頼しても、納品までには7から10営業日程度かかるのが平均的です。そして翻訳者を増やして対応しようとしても、表現統一にその分時間が取られるため、納期短縮と生産性向上には限界があります。
Straker社の調査によれば、納品期限や翻訳サービス企業により異なるものの、多くの企業が平均7〜10営業日の四半期決算短信の日英翻訳納品に50〜80万円を支払っているとのこと。つまり年間200〜300万円と、四半期ごとの交渉、納期管理をこの先ずっと見込まなければならないということです。
こうした問題を一挙に解決するのがSWIFT BRIDGE AIだと三森GMは言います。
「SWIFT BRIDGE AIの一部機能は、エンタープライズ向けに設計、最適化されたIBMの最先端AIモデルであるwatsonx.aiのLLMを用いることで、圧倒的なスピードとコスト優位性を決算報告レポート翻訳にもたらします。
四半期決算短信であれば、納品スピードは従来の約半分の3〜5営業日、コストは年間30%以上削減、さらにAIの学習機能により回数を重ねるごとにスピードとクオリティはさらに上がっていきます。」
操作もとてもシンプルで、WORD形式の日本語原文をアップロードするだけ。
1営業日内(営業日内起点18時)に「英文サマリー」がダウンロードできるようになり、5営業日内に完訳版ファイルがダウンロードできるそうです。
● ハルシネーションを超える生成AIの難敵に遭遇!?
「Strakerは、あらゆる言語間の壁をなくすために、正確で文化的背景に合った翻訳を提供する言語ソリューションを、これまで10年以上に渡ってドイツ銀行様、ブルームバーグ様、豪マッコーリー銀行様、HSBC様、そしてIBM様をはじめ全世界1万社以上に提供しています。
そんなStraker社の日本GM就任が決まったあと、私は『Strakerが日本社会に提供すべきものは何か』を数カ月間じっくり模索しました。
そこで改めて思ったのは、やはり人間の仕事の価値を高めていくこと、そして人間の幸福に寄与することです。AI の役割は、スピードや量などの面で、人間の力だけでは間に合わないことを助けることです。膨大な時間を要する用語集やサマリーの作成、一時翻訳やチェックなどの作業部分はAIに任せ、人間は重要な最終確認や、付加価値向上のための行動に集中すべきだと思ったんです。」
こうした三森GMの想いに応えたのが、日本IBMのカスタマー・サクセス・マネージャー(CSM)の張 斯媛(チョウ シエン)さんです。
「スイフト・ブリッジAIの開発の一番のヤマは、AIモデルの選定でした。
パラメーターの少ない小さめのAIモデルで開発を進める想定でしたが、そこで思わぬ難敵と遭遇し、その分工数や開発期間が必要となりました。」
「思わぬ難敵」とは一体どんなものだったのでしょうか?
「日本語の特殊性——と言ってしまえば簡単ですが、財務諸表や決算書などでは文字や記号が普通の文章と違った意味合いを持ったり、明確なルールがないまま「空気感」で読み取られたりします。これは、他言語には見られない特性です。
たとえば「白三角△」や「黒三角▲」は、マイナスや赤字を表すために使用されます。欧米では同じ意味を表すのに一般的に「括弧()」が用いられます。そして括弧も「[](ブラケット)」や「【】すみ付きかっこ」など、用いられ方で都度その意味が変わってきます。
生成AIは文脈を読むのは得意なのですが、これだけルールがバラバラだと対応は難しいです。」
三森GMの言葉に、CSMの張さんが続けます。
「唐突に『twenty-four(24)』や『thirty-four(34)』という表記が出てくることもあって、『LLM特有のハルシネーション(事実かのように幻覚すること)が起きているのか?』と思って調査をしようとしたのですが、『第2四半期』や『第3四半期』のことだったんです。
…日本語だと違和感なく算用数字と漢数字が組み合わされるんですよね。最初はまさか、日本の財務用語や会計表記の特殊性だとは思いませんでした。」
張さんにとって、今回のSWIFT BRIDGE AIはどのようなプロジェクトだったのでしょう?
「CSMは、お客様のビジネス目標を深く理解した上で、共創を通じてお客様の成功を支援し、長期的な関係を築く役割を担っています。
Straker様との今回の取り組みは、プロジェクト全体のスケジュールやIBMのAIエンジニアとの調整・管理から、運用モデルの検証や確保などの多岐にわたる作業を、CSMとしてお客様目線を欠かすことなく行えたと自負しています。
先ほどお話しした想定違いや小さなトラブルはありましたが、それらを乗り越えてすべてのテストケースを終え無事リリースに辿り着けたことを、とても嬉しく思っています。
でも、まだ途中です。SWIFT BRIDGE AIはこれからもっと成長しますよ。」
● 早めのトライアル開始が吉 | Straker Japanの展望と抱負
「Strakerの開発部隊は自社製品へのAI組み込みを長年行ってきており、知識やノウハウなどのいわゆる『AIの勘どころ』は持っていました。
しかし日本語のLLM(大規模言語モデル)の経験は浅く、また、生成AIの進化スピードの速さは驚異的です。ですからIBMの共創パートナー・スペシャリストの渡邉さんとCSMの張さんが、私たちとワンチームとなり活動してくれるのには本当に支えられました。これからも頼りにしています。」
そんな感謝の言葉を語っていただいた三森GMに、今後のStraker Japanの展望と抱負について伺いました。
「冒頭に少しだけ触れましたが、私たちStrakerは、「AIは専門家のもの」というAIクラウドサービスに関する思い込みをなくしたいと思っています。そして、世界中のビジネスコミュニケーションの壁を越えていきたい。橋をかけていきたいんです。
たとえば、日本にはビジネス報告書にエグゼクティブサマリーを付ける文化が根付いていないですよね。でも、それは最初に大枠の情報を相手に与えることで、コミュニケーションの齟齬を減らし、限られた時間を有効に使うには非常に有効であり重要です。
こうした、相互にとってよい商習慣は、日本も積極的に取り入れていくべきでしょう。
私は外資マーケターとして社会人となり、その後、起業家として人事コンサルティング会社を立ち上げた人間です。これまでの30年近くにわたる異文化ビジネスの橋渡しと新しいビジネス開発の経験から、日本の社会課題を解決するイノベーションをLLMという最新の技術を使って提供していきたいと思っています。」
最後に、SWIFT BRIDGE AIの今後の予定についても伺った。
「もともと、Straker社は四半期決算短信や有価証券報告書の他、適時開示情報や決算プレゼンテーションの翻訳にも強みを持っている企業であり、ニュージーランドからアメリカ西海岸まで、世界中の拠点間でビジネスタイムをリレーする24時間体制のスピード感とISO27001認証を取得した高い情報セキュリティを有しています。
ですから、今回新たにリリースするSWIFT BRIDGE AIは、私たちの以前からの強みと、社会の変化と要請、そしてテクノロジーの進化が絶妙に組み合わされたものなんです。
プライム上場企業の皆様には、来年の日英同時開示義務スタートに備え、早めにSWIFT BRIDGE AIでのトライアルを始めていただくことを強くお勧めいたします。
そして10月23日から25日にかけて幕張メッセで開催される2024 Japan IT Week 秋や、12月18日から20日にかけてインデックス大阪で開催されるAI Worldに出展を予定していますので、会場に足をお運びいただける方には、ぜひ実際にその機能や性能をご覧いただきたいですね。」
■ 会社情報
Straker Japan(ストレイカー・ジャパン)株式会社
1999年創業のStraker社は2010年に翻訳会社に転身、その後世界をリードする翻訳サービスプロバイダーとして世界中にサービスを提供。2018年オーストラリア証券取引所に上場。2020年からIBMの全世界での翻訳パートナー。本社はニュージーランドのオークランド。
■ IBM製品・ソリューション情報
IBM watsonx.ai
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