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IBM Maximoで「スマート保安」にアクションプランを

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一足飛びにいかないスマート保安…。でも、ワンストップで実現する方法あります!

 

経済産業省が、いわゆる「スマート保安」を強力に推進するために、官民トップによる「スマート保安官民協議会」を設置したのが2020年6月。

そして今年4月、そのスマート保安官民協議会が、電気保安の将来像やその実現のためのポイントを整理した「スマート保安アクションプラン」を策定しました。

 

スマート保安アクションプランのターゲットは2025年。その実現を急いでいる理由は、対象となる火力、水力、風力、太陽光などの発電設備や送変電設備の多くが、経年劣化という問題に直面しているからに他なりません。加えて、電気保安人材の高齢化・人材不足が、問題をさらに深刻化させています。

 

この状況を打破するために、スマート保安アクションプランがその中心に掲げているのが、IoT、AI やドローンに代表される「スマート保安技術」への早急な取り組みです。

 


予防保全実現に向けPDCAをデジタル管理し「盤石なデータ基盤」を

“こうした状況は日本に限らない。例えば北米や欧州でも大量の設備の老朽化が進んできた。保全のための資金も人手も一度には投じられないため、優先順位を付けた対応に迫られている。”

こちらの記事「電力送配電DXレポート 第4回 設備高経年化/労働人口減/レベニューキャップ制導入の難題に挑む」では、海外の送配電管理、系統・設備管理などの状況と取り組みに詳しい日本IBMの理事・公益サービス事業部長である根津千幸が、上のように指摘しています。

 

“日本でも2023年度にレベニューキャップ制の導入を控え、高経年化対策に関わる設備保全計画も厳しい審査の対象となる。リスクを定量化し、安定供給を守るために必要な投資は着実に実施しつつ、その根拠を規制当局や利害関係者に説明することが要求される。この観点でもRBMは有効なツールとなる。”

 

RBMとは、設備データを収集しその状態に応じて対応する状態監視保全(CBM)をさらに発展させたもので、「リスク基準保全(Risk Based Maintenance)」という考え方です。

設備の老朽化や異常、故障のリスクを評価・定量化し、評価結果に基づいたメンテナンス・検査計画を作成・運用していくことで保全コストを下げつつ、合理的な投資計画の策定につなげていくものであり、「予防保全」という言葉で説明されることもあります。

 

しかし、予防保全により突発故障を減らすこと、つまり電力業界にとって最も避けるべき「想定外のダウンタイム」のリスクを最小限にするには、トップレベルのAIの力を存分に用いた予兆分析プラットフォームが必要です。

そして予兆分析プラットフォームを活用したリスク評価や故障予測には、それを実施するためのデータと数理統計モデルが必要となります。

 

そこで、IBMが保全業務のCBM/RBMへの移行を実現する手段として提案しているのが、アセット・パフォーマンス・マネジメント(APM)と呼ばれるデジタル技術を活用した設備資産管理の手法です。

APMは、一言で言えば「保全業務の包括的デジタルアプローチ」と呼ぶことができるでしょう。PDCAサイクルに沿った保全活動をしっかりとデジタル管理していくことで、管理精度を上げながら、文書のデジタル化やデータ整備を進めていきます。

この、一見地味なデジタル基盤整備を省いて、一足跳びにAIを活用した予防保全を実現することは不可能です。

実際の現場でのAPMを用いたCBM/RBMへの移行を想定してみましょう。

 

まずは、保全記録のタブレット入力や音声アシスタントなど、デジタル技術を活用して業務効率を高めながら保全PDCAサイクルを回し、しっかりと自社設備のデータ整備を進めていきます。

そして一定量の基盤データが貯まったところで、リスク基準保全へと舵を切るのです。

具体的には、重要度や故障確率、所要コストなどの情報を基に各設備の故障予測を行い、「故障の確率が高く、故障による影響度の高い設備から優先的にメンテンナンスや交換のスケジュールを組む」「故障の確率や影響度が低く、メンテナンス・コストが高い設備については計画よりも交換時期を先に延ばす」といった判断を明確な根拠に基づいて行いながら、設備管理の効率性やコスト合理性を高めていきます。

 

 

データ人材なしで高度な予測保全を実現 

このリスク基準保全へと歩みを進めた段階で多くの企業が直面する問題が「データ人材不足」です。

しかし、IBMがスマート保安の実現に取り組もうという電気業界のお客様にお勧めしているAPMソリューションである「IBM Maximo Application Suite(MAS): エネルギー・電力・ガス」であれば、その心配は不要です。

「MAS: エネルギー・電力・ガス」は、総合IT企業としての電気事業の知見を蓄積し、メーカーにとらわれることなくシステムを統合できるIBMの強みを生かしたソリューションであり、保全PDCAサイクルを効率的に実行するための「自社設備における基盤データ整備」を進めるための「設備資産管理(EAM)」機能に加え、そこで得たデータを基に予測保全を行うための一般的な5種類の予測モデル・テンプレートと、それらを視覚化する機能が予め組み込まれているからです。

さらに、高度な予測保全を実現する「Maximo Health: 正常性スコア判明」や「Maximo Predict: 資産故障予測」の使用には追加導入作業が不要なので、自社保全業務のデジタル化の進捗に合わせていつでも使用開始することができます。

 

ここで再び前記電氣新聞掲載記事を参照して、その特長を見てみましょう。

 

“チェコの国営電力CEZグループ傘下の配電会社(CEZ Distribuce)の事例もその一つ。同社の旧来のシステムは設備状況を記録したデータが社内の各部署に分散し、それらが複雑なエクセルベースで作成されていたこともあって、一元的な把握が困難だった。設備ごとの経過年数や劣化状況、重要度に応じてリスクを認識するためのモデリング機能もない。

そこで同社はIBMのソリューションを導入。SAPの基幹業務システム(ERP)やエクセルなど、さまざまな場所に散在しデータ形式の異なる「非構造化データ」も含め情報をデータベースに一元化した。この結果、データと予測モデルを連携させて設備の状況を分かりやすく可視化できるようになり、設備ごとの重要度や故障確率、経過年数などに基づいて進めるリスクベースの設備保全を実現している。

下の画像が「IBM Maximo APM for Energy and Utility」で設備のリスクを可視化した画面だ。設備単位で評価される故障確率と影響度をビジュアルで示している。これによってリスクが高い設備を特定し、優先順位をつけて補修や更新の計画を立てることが可能になる。”

設備資産のリスクを企業全体、地域全体といった条件に応じて可視化し、時系列的な変化も見ることができる「IBM Maximo APM」

設備資産のリスクを企業全体、地域全体といった条件に応じて可視化し、時系列的な変化も見ることができる「IBM Maximo APM」

 

人手に頼らない保全業務を在庫最適化までつなげる

IBMは、世界中の電力・エネルギー企業と協力し、内外の動向を踏まえたスマート保安への取り組みを支援しています。

さらに、保全だけではなく「人手に頼らない保全業務」を在庫最適化までつなげ、その効果・効率を最大化するお手伝いもしているのがIBM Maximoファミリーです。

 

1. 自動データ収集/故障時期を予知(予知保全による自動診断)

→ 2. 保全指示の自動発行、および最適な保全計画を自動生成(保全スケジュール自動最適化)

→ 3. 保全員は事前にデジタルで状況を把握、 AI/遠隔支援を受け安全・確実な作業・報告を実施(保全作業員AIアシスタント)

→ 4. 在庫量・コスト最適解を自動解析/保全部品在庫の自動補充(保全在庫自動最適化)

 

ご興味をお持ちのお客様は、ぜひ下記よりご連絡ください。

 

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