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四国化工機 | AIもめん豆腐検品システム導入事例
2021年09月24日
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豆腐業界では初となる、割れや欠けのある豆腐をAIにより自動判定し検品する、AIラインピッキングシステムの開発・導入が大きな話題となった四国化工機株式会社(以下、四国化工機)の事例をご紹介します。
もめん豆腐への拡大する需要に対し、人手による対応の限界に近づいていた四国化工機。
過去にも機械による画像検査装置の導入にチャレンジしていたものの、豆腐というデリケートな商品の検査において人間の認識能力に追いつくことはできず、目視検査に戻したという経緯がありました。
そんな過去の経験を払拭し、人間の10倍速での豆腐の自動判定検品を実現したのが、豆腐業界では初めてとなるAI技術を用いたラインピッキングシステム「STI-ALPS」です。
お客様課題
生産能力の拡大を目指したスマートファクトリー新棟稼働
食品の製造・加工、充填機をはじめとした食品用機械、食品用パッケージのすべてで高い技術を有している四国化工機。
中でも、品質・味・見た目のあらゆる点で四国化工機の技術力と製法へのこだわりが表れるのがもめん豆腐であり、その需要は増加を続けており、生産能力の拡大が急務となっていました。
そうした状況に応え、2021年7月から本格稼働をスタートした工場新棟では、労働集約型の製造モデルからの変革を実践するために新たなテクノロジーが一挙に取り入れられ、本格的なスマートファクトリー化が進みました。
工場新棟において、業界紙だけではなく全国紙や経済専門メディアからもとりわけ注目を集めたのが、豆腐業界では初となる、割れや欠けのある豆腐をAIにより自動判定して検品するAIラインピッキングシステム「STI-ALPS」です。
導入から約2カ月経った現在、「黙々と、そして淡々と。人間のおよそ10倍のスピードで検品作業をこなしています。並行稼働している従来の工場では、この作業には高い集中力が求められることから連続2時間が限界とされていました。当たり前のことですが、自動検品設備である「STI-ALPS」は疲れ知らずで(笑)、1日20時間10万パックの検品を高いレベルで実行してくれています」。
こう語るのは、今回の取材に応じていただいた四国化工機 取締役 食品事業生産本部 副本部長の馬詰宏明氏です。
ソリューションと効果
AIラインピッキングシステムにより、従来の4人体制から1人体制へ
もめん豆腐は、豆乳をにがりで凝固させた後、一度崩してから、また押し固めて造ります。古くはその製造工程において、水分を抜くために布をかぶせ重しを載せて造られていました。その際に付いた布目の模様が「もめん豆腐」という名前の由来です。現在では実際に布は使われていませんが、小さな穴が開いた容器を使って水抜きしているので、表面に同じような模様がつきます。
四国化工機では、出荷先の要望に合わせ、製造の最終行程で1パックに納める豆腐を半分や4分の1、最大では40等分にカットしてパッキングしています。
「お前さんなんぞ豆腐の角に頭をぶつけて死んじまいな」。きっと誰もが聞いたことのある古典落語の有名なフレーズです。こんな言葉があるくらい豆腐はやわらかく、その取り扱いには細心の注意が必要です。
そんな豆腐をカットするのですから、豆腐に割れ目やくぼみ、欠けが発生するのはある程度仕方がないことと言えるでしょう。ましてや四国化工機は、その品質へのこだわりから化学系の凝固剤や消泡剤を一切使用していないため、崩れやすいのは当然とも言えることです。
従来は、1時間あたり3,000パックのもめん豆腐の製造および検査が行われる製造ラインでは、管理者を含め4名が作業を実施していました。そして熟練の検査員が1パックあたりおよそ1秒のスピードで、割れや欠けが発生していないかを1つずつ目で確認していました。
これは豆腐業界では異例のことです。なぜなら多くの豆腐工場においては、割れや欠けは「ある程度仕方がないもの」とされており、外観の検品にはさほど力を入れていないからです。
しかし、豆腐の割れや欠けは食感を損なうものであり、見た目もよくありません。製品へのこだわりを自負している四国化工機ではそれを許さず人間の目で検査していたのです。そして今回、人間と同じ精度の判断レベルを実現したAIの登場により、検査の上流工程のオートメーション化と併せて従来4名体制を取っていた製造ラインが、管理者1名だけで稼働可能となったのです。
ちなみに、四国化工機の顔とも呼ばれるさとの雪ブランドのロゴマークを中央に配置した「美味しいとうふ」シリーズをはじめ、同社の豆腐はそのパッケージが半透明になっています。
これも、同社の製法、味、見た目をはじめとしたものづくりへのこだわりとその自信を表していると言えるでしょう。
こだわりと自信を支えるテクノロジー
A Iモデルの学習やチューニングを製造現場のベテラン社員が主体となり実施。2カ月で本番稼働へ
「製造ラインのスピードに合わせて、画像撮影、AI判定処理、判定結果による個体の振り分けが実現できるアーキテクチャーを考えました。画像撮影位置については、製造ライン上で完成直前の豆腐を、上面・側面・底面はもちろん、分割パックの内側にくる面も映るように工夫しました。
そして1パックあたり6枚の画像から割れや欠けの度合いを総合判定し、エラーとなったパックのシリアルナンバーを取り上げロボットに除去するように指示を出す仕組みとなっています。
1パックのチェックにかかる時間はおよそ0.1秒。人間の10倍の速度です。この処理スピードが実現できてこそ、AIが本領発揮して活躍できていると言えるのではないでしょうか。」」
こう語るのは、いわば「STI-ALPSの育ての親」とも呼べるコベルコシステム 技術開発本部 久保恒氏です。
「画像データを読み込ませてAI学習(ディープラーニング)させる」 — Maximo Visual Inspectionをはじめとした、多くのAIモデル開発ツールの主要機能を一言で言えばそうなります。ただし実際には、それぞれの現場にはそれぞれの要件があり、一筋縄では行きません。
とりわけ製造業においては、いざ手をつけてみると、AIモデルが想定レベルに達しなかったため、PoCで終了してしまったという話や、プロジェクトが完了しないまま取りやめとなったという話も少なくない中、四国化工機ではAIの学習とチューニング、そしてシステムへの実装を予定通り約2カ月で終了したそうです。
そのポイントとなったのが、画像AIモデルの完成度の鍵を握るのが「現場の声の反映・導入」であることを、しっかりと理解したプロジェクト・リーダーの存在です。
また、システムを「現状のニーズを100パーセント満たすこと」だけに専念していては、将来性に問題を残してしまいかねません。
その点、四国化工機では、今後の分析・開発や機能拡張に役立てられるよう、日々大量に撮影される画像データを、いつでも活用できる形で保管しています。これらの画像データと分析からの学びは、今後、四国化工機専有の資産として活躍することでしょう。
さらに、豆腐パックの固有識別ナンバーと画像データを照会できる仕組みを同時に組み上げたことにより、出荷後の問い合わせにもより細かく対応できるようになり、トレーサビリティにより食の安全を守るという重要な役割を一層強く担うこともできるようになりました。
AIと業務の両面に関する幅広な知識と、AIモデル開発の要となるアプローチや経験をどれだけ有するパートナーと共に取り組むことができるか。それが成功の鍵を握っていることを、四国化工機の事例は教えてくれます。
IBM選定理由と将来の展望
AIによる自動化・省人化の別事業への展開も視野に
「数あるAI製品の中からMaximo Visual Inspectionを選んだのにはいくつか理由があります。選定前の調査ではいくつか他社製品とも比較しましたが、エンドユーザーが自由に使うことができ、実際に使いやすいアプリが用意されているのはIBMのMaximoだけでした。
私たちの業務においては、各種ロボット・コンベアーやカメラ、シーケンサーなど生産設備における自動制御のプロフェッショナルである日本電技さんと、データベース開発やソフトウェア開発・実装のプロフェッショナルであるコベルコシステムさん、この2社の協力は欠かせません。弊社を含めた3社をワンチームとしてまとめ、プロジェクトを進めるリーダーの役割をIBMの藤岡さんに力強くコミットいただけたことも、大きな選定理由でしたね。
そして見事に、私たちの大きな期待に応えていただきました。」
そう語るのは四国化工機 経営企画管理本部 情報システム部 統括部長 山口昇万氏です。
現在、四国化工機はもめん豆腐で培ったAIの技術を、別の食品製造・加工や梱包・パッケージの検品に適用していく計画を進めています。
今後、人材不足の深刻さが増すことが予測される中、四国化工機の自動化・省人化技術の活用は、人材や品質に関わる問題を抱える製造業のお客様の大きなヒントとなるのではないでしょうか。
四国化工機株式会社
四国化工機は、国内のみならず世界中の食品・飲料メーカーへ充填包装機や包装資材を納入し食文化の創造に貢献。また、自社においてもオリジナルの豆腐自動製造機を使い、『さとの雪』ブランドの豆腐を中心とした大豆加工食品を製造し、食品メーカーとしても豊かな食生活をサポートしている。食に関わる「機械・包装資材・食品」の三事業を手掛けることで三位一体の相乗効果を最大限に発揮し、食品産業分野で強みを持つ企業となっている。
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TEXT: 八木橋パチ
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