IBM Sustainability Software

[事例] サリー・ビューティ・ホールディングス | オムニチャネル配送がかつてないほど便利に

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IBM SterlingソフトウェアでDIY製品の売上を540%アップ

 
「私たちがプロ仕様のセルフケアブランドに力を入れ初めた矢先に、パンデミックが始まり広がっていきました。ですから、私たちはパンデミックに強く背中を押されたと言ってもよいと思います。なにせ、消費者は急に態度を変えて、セルフヘアカラーにチャレンジするようになったのですから。

『オフィスに出社しなくていいのなら、せっかくだからこの機会に髪を紫に染めてみようかしら』って」。

店舗数世界最大の美容用品の小売および流通業者であり、消費者向けのサリー・ビューティ・サプライ(SBS)と、サロン専門家向けのビューティー・システム・グループ(BSG、ブランド名は「Cosmo Prof」)の2つの事業を行なっているサリー・ビューティ・ホールディングス(SBH)社のソリューションデリバリー担当副社長、ソノマ・テイラー氏は当時をそう振り返ります。

2020年春、多くの人がヘアースタイリングに関してそれまでとは違う行動を取りはじめました。

コロナウイルスが全米に広がりサロンや理容室の扉が閉まったままとなると、人びとは自宅で自分の髪を染める「セルフヘアカラー」にチャレンジするようになり、自染め用のセルフケア商品を購入しようとSBSへのオンライン注文は急激に増えました。

 

しかし時を同じくして、SBH社は従業員の安全に対する懸念と政府の規制に対応し、米国内の3つの配送センターの操業縮小を行いました。

「消費者から当社の製品に注文を頂いても、倉庫から出荷できないこともありました。」テイラー氏はそう語ります。

 

幸いだったのは、SBH社がパンデミック前の2019年からデジタル変革に着手し、オムニチャネルの顧客体験向上に取り組んでいたことです。

注文購入プロセスを簡素化し、オンラインと店舗でのシームレスなサービスを提供することで、売上と顧客満足度の向上を図ろうとしていたのです。

 

デジタル変革の一環として、SBH社は注文管理およびフルフィルメント・システムの刷新を行っていました。

IBMの提供する業界の専門知識およびノウハウの活用と、IBMビジネスパートナーのパーフィシエント社の協力を基に、適応性、拡張性、可用性、セキュリティに優れたIBM Cloud上にIBM Sterling Order Managementプラットフォームを構築したのです。

IBM Sterlingプラットフォームにより、在庫、注文、フルフィルメントの一元集中リアルタイム管理と可視化が実現され、さらにデジタル・フルフィルメント・オプションとして店舗からの出荷(SFS)などの合理化が進められていきました。

 

2020年3月までに、SBH社はIBM Sterlingによる新プラットフォームを用いて、匿名配送機能などの複数の新たな取り組みを無事成功させていました。

Cosmo Profオンラインショップでは、コンサルティングサービスのオンラインでの受注や即日配送サービスの導入を完了。SBSオンラインショップでは、カナダ国内16店舗でのSFSプログラムの試験導入を済ませていました。

そしてこのタイミングで、パンデミックの影響が一気に現れました。SBH社は急増するオンライン需要に対応しつつ、最適な顧客体験の実現方法の検討を急ピッチで進めました。

 

わずか3週間で2,700店舗をフルフィルメントセンターに

 

「米国内のサリービューティーの店舗には在庫がたっぷりあるのだから、店舗から直接お送りすればいい。この方法なら、サプライヤーが機能を一部停止していても欠品を出すことはないし、店舗のスタッフの仕事を確保することもできる。

お客様にいずれ店舗に買い物に来ていただけるようにもなるでしょう。」

 

テイラー氏がそう振り返るように、配送センターからではタイムリーに注文に応えることができないと気づいたSBH社は、臨機応変に新たな配送方法を見つけ出すと、すばやく判断を下しました。

店舗のフルフィルメントセンター化には、注文の分配と配送に関して新たなビジネスルールの確立や、それに応じたスタッフトレーニングなど、多数の複雑なプロセスが存在していました。

しかしIBM Sterling Order Managementソリューションを活用することで、チームは迅速に作業を完了させることができました。

 

そしてスタートからわずか3週間で、米国内の小売店3,300店舗のうち2,700店舗をフルフィルメントセンターとして機能させることに成功しました。そしてこの数千もの新たな出荷拠点は、顧客満足度と売上を大幅に向上させました。

「非常にストレスを感じる作業でした。でも、Sterling Order Managementは、まさにこうした作業のために存在しているものでした。

『需要がどこにあり、在庫がどこで、消費者にどのように届けるのが最善か。』私たちがまさに必要としていたこれらの答えを、Sterling Order Managementは与えてくれました。そして状況に合わせてすばやく柔軟に構成できる、非常に強力なアプリケーションでした」。

 

テイラー氏はそう言うと、アジャイル・デリバリー手法などを取り入れたIBMおよびIBMビジネスパートナーのパーフィシエント社との協業について語りました。

「私たちサリービューティーのチームと密接に協力し、惜しみない支援を与え続けてくれるIBMのサポートチームとパーフィシエント社のチームは、世界中からの賞賛に値するものでした」。

 

何度も発揮されたサポート力の中でも最も顕著だったのが、本稼働後間もなく起きた膨大なトランザクション量によるパフォーマンス低下時だったとテイラー氏は言います。

「当社は SaaS(Software-as-a-Service)モデルを採用していましたが、この時までスケーラビリティとパフォーマンスに関連する問題は未経験でした。

ですから、オンライン事業の拡大がSFSシステムのパフォーマンス低下を引き起こした際には、どう対応すればよいのかよく分からなかったのです。

しかしIBMとパーフィシエント社は協力してすぐにクラウド機能を拡張して、わずか数時間で稼働を再開してくれました。それ以来、パフォーマンスの問題は一度も発生していません」。

 

よりスマートなサプライチェーン構築方法を学ぶ

 

SBH社は迅速にSFS機能を導入し、パンデミック初期にB2Cの新規顧客を獲得することに成功しました。しかし機能導入当初は、店舗在庫情報の混乱により注文品が分割配送となることも多く、顧客満足度に悪影響を与えかねない状況でした。

そこで同社はSFSオプションを提供する店舗数を2700店舗から245店舗へと徐々に減らし、ネットワークの最適化と在庫配分の効率化を進めました。

 

2020年4月になり、安全面の不安が減り一部店舗で営業再開できるようになると、SBH社はまた新たな顧客体験の提供をスタートしました。

駐車場で商品を受け取るドライブスルーのような受け渡し方法や、オンライン注文した商品を店舗で受け取る新ピックアップ(BOPIS)方式などを、アメリカとカナダのSBS店舗に試験導入し、その後すぐに多数の店舗へと広げていったのです。

この新方式の導入は、分割配送と配送費用をさらに減少させるだけではなく、新規顧客に店舗ロケーションや商品品揃えの豊富さなどを知ってもらう機会にもなりました。

 

パンデミックが始まり1年以上経った今も、SBH社のデジタル変革は続いています。

2021年夏、同社はSBSに続きCosmo ProfのオンラインショップにもBOPISオプションを導入しました。

そしてさらに、SBSでは当日2時間配送の、Cosmo Profでは当日3時間配送の導入準備を進めているところです。

 

「在庫を適切な場所に適切な時間に配置することに引き続き集中しています。これがお客様に素晴らしい体験をしていただくこととコスト最適化を同時に実現する方法なのです」。

テイラー氏はそう語っています。

 

オンライン売上540%増加

 

わずか数週間でSFS機能を導入したSBSは、SFS で200万個以上を出荷し、売上を540%増加させました。また、Cosmo ProfのSFS導入店舗1,046店は、42,000件以上の即日配送サービスを実現しました。

これら実現を強力に支援したのがIBM Sterlingプラットフォームであり、SBH社は多彩な購買方法の実現を通じて真のオムニチャネル体験を顧客に提供しています。

オンライン・ビジネスを高度なフルフィルメント・オプションで強化することで、同社は顧客満足度を向上させるだけでなく、収益性も向上させることに成功したのです。

 

テイラー氏はこの1年半を「波乱の旅」と振り返ると、顧客体験向上の旅はまだこれからも続いていくと語ります。

「この短期間にどれだけのことをやり遂げたことか、思い返すと少し信じられないくらいです。ただはっきりしているのは、パンデミック前にデジタルジャーニーを始めていたことに大いに助けられたということです。間違いなくこの成功につながっています」。

 

SBH社は今後、IBM Sterling Fulfillment Optimizer with Watsonソフトウェアを採用し、フルフィルメント拠点の在庫に対する需要予測により注文後プロセスを最適化していきます。

そしてまた、Cosmo Profウェブサイトを通じて、サロン関係者やフィールドセールスコンサルタントへのより良いサービスの提供方法についても検討していく予定です。

 

消費者が飛びつくようにオンライン購入することは無くなりました。しかし家庭でできるヘアケア、スキンケア、ネイルケア製品への需要は今後も続くでしょうし、消費者がパンデミック時に導入されたオンラインショッピングの利便性を手放すことは考えられません。

テイラー氏は、サプライチェーンは今後も想定外への対応を求められ続けるだろうと予測しています。

そして、小売業者は柔軟性を保ち続けることが大切であり、SBH社にとってはIBM Sterlingプラットフォームの力を常に活用できるようにしておくことが大切だと言います。

 

「このソリューションは進化を続け、新しい機能を追加していきます。しかし消費者の期待も変化すれば、業務も変化するものです。

そんな中でも、私たちは自信を持って新機能を導入し、その決定を見直し調整をすることで、需要に応え求めている結果を導き出せると分かっています。

IBM Sterlingプラットフォームがあるおかげで、私たちは市場の需要に先手を打ち、迅速に対応できるのです」。

 


サリー・ビューティ・ホールディングスについて

全世界に3,700店舗を展開する店舗数世界最大のプロ用美容製品の流通・小売業者。消費者とサロンのプロフェッショナル双方にヘアカラーおよびヘア・スキン・ネイルケア製品を提供。従業員数は27,000人、2020年には35億米ドルの売上高を達成。本社米国テキサス州デントン。

 

パーフィシエント社について

デジタル変革におけるコンサルティングを手掛けており、世界の大企業や一流ブランドの成功を支援しているIBMビジネスパートナー。北米を中心に欧州、インド、中国に約3,300人の従業員を擁している。本社米国ミズーリ州セントルイス。

 

当記事は、事例『Omnichannel shipping never looked so good』を日本のお客様向けにリライトしたものです。

 

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