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佐々木 晶「身体が動かなくてもマネージャをやっているというサンプルに僕がなれたら」 | インサイド・PwDA+2後編
2022年06月01日
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シリーズ「インサイド・PwDA+」の第2回後編をお届けします(前編「障害のあるマネージャーとして。障がい当事者の後輩として」はこちら)。
前編では、中途障がい者としての歩みやキャリアに対する考え方、そして身体障害と精神障害の違いがもたらす周囲への期待についての相違点など、かなりディープな話となった佐々木さんへの西野さんのインタビュー。
後編は、同席していたPwDA+事務局メンバーも加わり、引き続き佐々木さんにお話を伺います。
IBMには障害のある社員と、当事者を理解・支援するアライ(Ally)社員が一緒に活動をする「PwDA+(ピーダブルディーエープラス=People with Diverse Abilities Plus Ally)コミュニティー」があります。
シリーズ「インサイド・PwDA+」は、コミュニティーの活動やメンバー紹介を通じて、多様な人たちの多様な働き方を知っていただき、よりカラフルでより豊かな社会を作る仲間を増やすことを目的としています。
佐々木 晶(ささき あきら) | 身体(外部)障がい当事者。1989年入社後、36歳まで金融業界担当営業として勤務。事故による頚髄損傷で医師からは「社会復帰は無理。車椅子も諦めた方がよい」と言われていたが、リハビリにて克服し7カ月後に復職、IBM Consultingの契約や請求に関する業務を担当する現在のチームへと異動。
「大阪出身だから阪神ファンに違いない」と間違えられるのが大嫌いな、生粋のオリックス・バファローズファン。
西野 真優(にしの まゆ) | 精神(内部)障がい当事者。 2021年入社、KJTS(Kyndylグループ会社)所属。趣味はヨガと音楽鑑賞。学生時代はインターンシップの一つとしてベンチャー企業で自社メディアサイトの立ち上げや、事業家インタビュー記事の取材・記事執筆を行っていた。
最近の推しはペットで飼っている、人間年齢で換算すると80歳の長寿ハムスター(衰えぬ可愛らしさが推し)。
後編もくじ
- 外国人の友だち作りに行くのと同じ感覚で
- アライ宣言しても「何も与えることもできない…」?
- 思い込みに阻害されて欲しくない
- 価値観はぶつかりあってこそ進化する
1. 外国人の友だち作りに行くのと同じ感覚で
西野: 佐々木さんにも参加いただいているIBMとKyndryl(キンドリル)の「PwDA+コミュニティー」についてお聞きしたいんですが…私たち運営チームメンバーも、まだどんな対話を中心としていくのが良いのか迷いがあるのが実情かな、と私は思っています。
障がい当事者として、佐々木さんは、何をPwDA+コミュニティーの活動の中心としていくのが良いと思われますか?
佐々木: うーん、この言い方をしたら不謹慎と言われてしまうかもしれないんですけど…。
「外国人の友達がいないから、外国人のコミュニティーに行く」というのと同じ感覚でいいんじゃないですかね?
いろんな人とお話したり出会うことって楽しいことだし、素敵なことですよね。だから行く。そういう場としてコミュニティが活用されるといいなあと僕は思いますね。友だちのバラエティが増える場ってことでも十分じゃないですかね。
西野: 「外国人の友だちづくりのように」って感覚と表現、すごくしっくりきました! …そうかー、そうですよね。
…佐々木さんはコミュニティーの「お話会」にも頻繁に参加してくれていますが、それはどういうお気持ちで参加されているんですか?
佐々木: この言い方はまた誰かの怒りを買ってしまうかも…ですが、僕の場合は、純粋な個人的好奇心からでしかありませんね。
雑誌やインターネットで発達障害などに悩まれていたり困っていたりという話は見るけれど、自分には分からないことだらけだし、実際にそういう話を聞ける機会もないんで。
僕も障がい者ではあるけど、障害にもいろいろあるし、話を聞く機会があるなら聞きたいという個人的好奇心です。…もっと崇高な気持ちでいれたらいいのかもしれませんが…。
2. アライ宣言しても「何も与えることもできない…」?
西野: ……今、なんだか私はいろいろと難しく考え過ぎていたんだなって思っています。
社内にはLGBTQ+やマイノリティに対する「アライ宣言」の制度がありますが、宣言しても何も与えることもできない、ギブするものがないなと、PwDA+以外のものからはどこか距離を取っていました。
でも、そうですよね。もっと率直に、異文化交流みたいな気持ちで、いろんな人と関わっていきながら仲間や友達を増やせるだけでもいいですよね。
アライ、およびアライ宣言とは
アライ(Ally)とは、LGBTQ+当事者たちに共感し、寄り添いたいと考え、支援する人のこと。「味方」や「仲間」、「同盟」を意味する英単語「ally」が由来。
最近では、LGBTQ+に限らず、障がい者や外国人といったマイノリティに対する支援を表明するためにアライという言葉を使うことも増えており、PwDA+コミュニティーもそうしたアライと当事者がつながり合うことで、誰もが働きやすくより豊かな社会を作る仲間を増やすことを目的としています。
佐々木: 実は僕も、このPwDA+コミュニティーに参加するにあたり、最初はちょっとだけ躊躇があったんです…。
「理解しなきゃいけない」「してあげなきゃいけない」、「説明しなきゃいけない」、「わかってあげたい」「わかってあげなきゃいけない」みたいなのって、ちょっと重いじゃないですか…。
ハードルを作ってしまうというか、コミュニケーションを始まりにくくしてしまうと思うんですよね。だから、「ハードルの無い環境を作る」が始まりでいいんじゃないですかね。
西野: その通りだと思います。Kyndrylはコミュニティーへの参加者がまだ少ないことが課題なんですが、それはハードルが高くなってしまっているからかもしれないって気がしました。
佐々木: コミュニティーに入ったら「何かしなきゃいけないんじゃないか!?」みたいな、そんな気持ちを起こさせてしまっているのかもしれませんね。
3. 思い込みに阻害されて欲しくない
佐々木: ちょっと雑談的な話ですけど、僕がすごく嬉しいとかおもしろいとか思うのって、街で「なんで車椅子に乗ってるの?」って子どもたちに聞かれたりすることなんですよ。子どもってすごく素直で、疑問に思ったことを聞いてくる。中には明らかに「僕もそれに乗りたい!!」って顔に書いてあるような子もいます(笑)。
大人からも、駅のホームで「その車椅子高そうだね」とか「いくらくらいするの?」とか聞かれたことが何度かあります。
そういうの、僕はすごくいいなぁって感じるんです。「障がい者にそういう質問をするのは不謹慎なのでは?」と思う人もいるのかもしれないけど、僕はそうは思わないです。
佐々木: ところで、今日は西野さん以外のコミュニティー事務局のメンバーの方もいらっしゃるので、もし何か聞きたいこととかあればなんでもお答えしますよ。
事務局メンバーA: 先ほど「管理職をやるつもりはなかった」と話されていましたが、計画していなかったキャリアの変化を、どうやって受容されてきたんでしょうか?
佐々木: 本当にキャリアについてはほとんど何も考えたことなかったんですよ。
そもそも入社のときから人事の方に「東京勤務は避けたい」「銀行関連は嫌だ」と伝えていたのに、蓋を開けてみたら東京で金融の営業っていう配属でしょ。「これって嫌がらせなのかな?」なんて思いましたよそのときは(笑)。でも、結局はやってみたら楽しかったし、やりがいもあったんです。
そうやって考えると、「巡ってきたチャンスを活かしていこう」ってやっていくだけでもいいんじゃないですかね。やってみる。それでダメだったりつまらなかったりするのならやめればいいだけですから。
西野: そうなんですね。以前に「思い込みに過ぎないかもしれないが、障がい当事者で管理職となっている人が少ないのかも知れない」ということを言われていましたが、それについてもコメントいただけますか?
佐々木: 今言っていただいたように、実数を把握しているわけじゃないので実際は違うかも知れないし、単なる思い込みという可能性も高いかも知れません。
ただ、思うのは、もし「障害があるから自分にはマネージャーは無理だろう」とか、「あの人に任せたいけど障害がなぁ」とか思っていたり、頭をよぎっている人がいるとしたら、思い込みに阻害されて欲しくないってことです。
仕事のタイプによるところもたしかにあるかもしれません、でも、身体が動かなくてもマネージャをやっているというサンプルに僕がなれたらいいなと思っています。そしてIBMにはこれからも勝手な前提を置かずに、「まずはやってみない?」と、あらゆる人にチャンスをオファーする会社であって欲しいですね。
4. 価値観はぶつかりあってこそ進化する
事務局メンバーB: 今日は「中途障がい者」という、佐々木さんならではの視点からコミュニケーションについての話を聞かせていただき、たくさんの気づきがありました。ありがとうございました。
最近、若者を中心に「関係性に深入りすること」を怖がる傾向が特に強くなってきているのではないかと思っているのですが、その点についての佐々木さんのご意見を聞かせてもらえないでしょうか。また、若い社員へのメッセージをいただけないでしょうか。
佐々木: これはIBM社員に限らず、周りのプライベートの若い友人たちにも言っていることなんですが、「人生はめんどくさい」んですよ。
めんどうくさいことを避けるっていうのは、生きるのをやめるってことなんです。だから、めんどうくさいことをどんどんやりましょうよって。深いコミュニケーションはめんどうだけど、でも、そこを越える努力をしていきましょうよって。
事務局メンバーB: 本当にその通りですね。若い世代にはもっと自分の意見を大切にして、相手に伝え、たとえ同意してもらえなくても「批判された」って受け取る必要はないんじゃないかと私も言いたいです。
「そういう意見もあるのか」「自分とは意見が違うな」って、それで十分じゃないですかね。
佐々木: そうですよね。でも僕としては、若者に対してだけじゃなくて、むしろ僕らおっちゃんたちに言いたいこともあります。「若者の機嫌を取ろうとし過ぎているのでは?」って。踏み込めていないのはおっちゃんたちの方じゃないかって。
「あー分かる分かる。そうだよね」って簡単に分かったフリしている姿に対して、「あのおじさん、絶対分かってないよ」ってきっと言われているんじゃないですかね。お互い違う人なんだから、違って当然だし、「意見が合わないね」ということを共有できたら、それだけで友だちになれるんですよ。
価値観はぶつかりあってこそ進化する、そう思うんです。
インタビューを終えて | 西野 真優
同じ障がい当事者でありながら、佐々木さんと私自身の考え方にさまざまな差異があると知れたこと、また異文化交流のような垣根の低さがPwDA+コミュニティーを活性化していくヒントにできそうと感じたことなど、発見やおもしろさを多々得られました。
当事者のマネージャーの立場としての苦労や期待が聞ければ、とインタビュー前は考えていましたが、障害の有無に対して楽観的でポジティブに仕事に取り組まれている「佐々木さんの価値観」をお伺いすることに重きを置いて、お話を楽しませていただきました。
私自身が「どこまで開示するか問題」(誰にどこまでどんな配慮を伝えれば良いか)に苛まれていますが、まずは「障害があるということ」「何か困っているかもしれないこと」を知ってもらうことや、その先の個々のコミュニケーションが大切であると学ぶことができました。
「知ってもらう」入口として、PwDA+コミュニティー活動には「外国人の友達作りのような気軽さ」で、当事者にもアライにも広く参加してもらえるようになると良いな、と思っています。またそのようなコミュニティーになるように、事務局でも工夫をしていきたいと思います。
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