IBM Partner Ecosystem
「みんなみんなみんな、咲け」ローランズ代表 福寿満希さん 講演&トークセッション(前編)[PwDA+クロス11]
2024年12月24日
カテゴリー IBM Partner Ecosystem
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日本IBMは、毎年12月初旬の障害者基本法による障害者週間に重ねて、「PwDA+ウィーク」を開催しています(「PwDA+」は「People with Diverse Abilities Plus Ally(多様な能力を持つ人たちと、味方として当事者を支援する人であるアライ)」の意)。
今年は11月29日の前夜祭「PwDA+コミュニティー Happy Friday」から12月9日の「PwDA+ラウンドテーブル」まで、楽しくそして真面目に、障がいがある社員が輝いて働ける会社・社会に関するラインアップで多様なイベントを開催しました。
12月6日のランチタイムには、障がい者雇用に新たな風を吹かし、さらに土壌整備と適切な水やりでその動きを広く日本全土へと広げようと活動されている、株式会社ローランズ代表、兼ウィズダイバーシティLLP発起人の福寿満希さんをIBM箱崎事業所にお招きし、講演とトークセッションを行っていただきました。
当記事では前後編に分けて、ローランズさんの花を中心とした活動、および東京都の支援を受けながら進めている新たな障がい者雇用の取り組みについて、福寿さんのお話をご紹介します。まず前編では、講演の模様をお伝えします。
目次
前編
後編
- 花を咲かせることは、人を咲かせることに近い
- 押しつけにならないように——。関心のない方たちを取り込んでいく
- IBMにはもっとどんどん発信して、多くの企業を牽引してほしい
● みんなみんなみんな、咲け | 子どもたちの働く夢を叶える
「みんなみんなみんな、咲け」。ご紹介に預かりました、ローランズ代表の福寿と申します。
私たちは、「排除なく、誰もが花咲く社会」を目指し、多様なメンバーと、日々心を込めてフラワーギフトを制作してお送りしています。
ローランズを作ったきっかけは、障がいと向き合う子どもたちが持つ「働く夢」でした。
私は学生時代、特別支援学校に教育実習に行ったのですが、そこで初めて 障がいや難病と向き合う子どもたちに出会いました。
「お花屋さんになりたい」「デザイナーになりたい」——。子どもたちは働くことに夢を持っていました。でも現在の日本社会では、障がいがある方の多くが仕事に就くことができずにいます。
その数およそ約365万人。日本では働ける年齢の障がい者のうち、約85%が未就労です。
「子どもたちの、働く夢を叶えられる大人になる。」これが私の夢になりました。
お花は、自分自身もうつうつした時に心を回復してくれたものです。そして特別支援学校の子どもたちの「将来なりたい職業トップ10」に必ず入るのが「お花屋さん」や「フラワーデザイナー」。およそ10年前、私は「花」の仕事を選び自宅の一角で起業しました。
● スタッフ80名の7割が、障がいや難病がある仲間たち
講演オープニングでの「取り組みのきっかけ」に続き、福寿さんはローランズの3つの事業内容のうち、まずは花や緑に関わる事業を中心に語られました。
現在ローランズの事業は大きく3つあります。1つ目は、花や緑に関わる事業。2つ目は、障がい福祉サービスとしての許認可事業。そして3つ目は、花を通じて企業の障がい者雇用をサポートする事業です。
1つ目の花の事業では、原宿にある店舗「ローランズ原宿」を中心に、毎日フラワーギフトを全国に発送したり、結婚式場やブランドショップと契約をして空間装花・装飾を行ったりしています。また、室内外の植栽管理や外構植栽施工、壁面緑化なども行っています。
ローランズで働くスタッフは約80名。そのうち7割が障がいや難病と向き合う仲間たちです。
そして障害者手帳を持っているスタッフの約8割が精神的な症状と向き合っていますが、花や緑のある環境で、心をリセットしながら働いています。
ローランズでは、一人ひとりの個性が花咲くような、さまざまな工夫を取り入れています。例えば業務分担。通常のフラワーギフト制作は3つの工程で行いますが、私たちはそれを10工程に分業しています。
工程を分けることにより、伝票の文字を読むことはできないけれど、花のデザインの形を視覚から完璧に記憶し複製できるスタッフや、先端恐怖症で「はさみ」は持てないけれど、花束のラッピングを「ふんわり」「美しく」作れるスタッフなど、それぞれの「できること」を特化して伸ばし、組み合わせることで、細分化したプロフェッショナル集団を作っています。
1人のできる力は小さくても、その小さな力を組み合わせれば大きな力を発揮できるはずです。
私たちは「すべての当事者が、何かのプロフェッショナルになれる」ことを、そして「集まる力」を信じて、細分化した業務を働く人が極めていく業務を設計しています。
● チーム雇用 | 一社で悩むのではなく一緒に
ここからは、障がい者雇用を促進したい中小企業と、障がい者雇用のノウハウを持った障がい福祉団体が、企業の垣根を越えて障がい者雇用促進事業を行う、日本で初めて誕生した有限責任事業組合「ウィズダイバーシティLLP」についてご紹介いただきました。
ところで皆さんは、日本には障がい者の法定雇用制度があることをご存じでしょうか?
現在、民間企業における法定雇用率は2.5%で、従業員40人以上の事業主には障がい者雇用義務が発生します。そして2026年度からは2.7%に引き上げられる予定です。
でも実際には、半数以上の企業が雇用を実現できていません。従業員数が1000人以上という大企業は、雇用のための専門部署が設けられていることも多く達成率が高いのですが、従業員数が少なくなればなるほど、その達成率は低くなっています。
そうした企業からは、こんな声が挙がっています。
・ 切り出せる業務がないと感じている
・ 業務の量が確保できない
・ 安全に障がい配慮できる環境がない
たしかに、中小企業では専任の人事担当者を置くことができないところも多く、現場での仕事をしながら上記の懸念に対応することの難しさは想像に難くありません。
さらに、中小企業が1社単独で考えて取り組むことは、情報や事例も少なく不安が多いはず。となれば、そこで働く障がいがある方も不安な気持ちでしょう。
そこでスタートしたのが、ウィズダイバーシティLLPです。
中小企業には組合にご参加いただき、ローランズや障がい福祉団体が提供する花や緑、ITや物流など、6ジャンル50以上のサービスから当事者にお願いしたい業務を選んでいただきます。
「業務遂行」に必要な「工程管理」や「採用」は、私たちが担当します。企業は、発注額に応じた成果物(商品・サービス)を受け取ることができるのと同時に、「本当に会社に必要な業務」の遂行を通じて、法定雇用率を満たしながら共同で障がい者雇用を創出することができます。
現在、14の企業にこのLLPにご参加いただいています。一社で悩むのではなく一緒にやっていきましょうよという考え方で、さまざまな企業の経営層や人事の方たちと会話やアイデアを重ねながら、これまで27名の雇用を創出することができました。
どの会社も、専門スキルのある社員の雇用とほぼ同額で「チーム雇用」に取り組み、プラスの価値を生み出しています。そして、福祉団体との付き合いの中で、「こんなこともできるのか」という気づきを得ていただきながら、一緒に働く上でのノウハウを貯めていただいてもいます。
「障がい者雇用はコスト」——。そんなことは絶対に言わせません。
後編では、講演後に開催されたトークセッションの模様をお伝えします。
大企業、中小企業、そして福祉団体と、さまざまな組織の多くの方にご活用いただけましたら幸いです。
TEXT 八木橋パチ
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