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誰もが自分らしく活躍できる会社へ ~PwDA+ ラウンドテーブル~ | | インサイド・PwDA+8

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「あなたは自分を卑下しなくてもいいよ。障がいがあったって、社会でそれなりのステータスを持って生きられるんだから。」

「心の調子が悪くて保健室登校をしていたのに、『どうして病気でもないのに保健室にいるんですか』と先生に言われてしまった。」

「バリアフリートイレで待っていて、出てきた人を見て『この人、障がい者じゃないのに』と思ってしまったことがあります。見た目で判断していたのは私だったのかも…」

誰もが自分らしく活躍できる会社へ ~PwDA+ ラウンドテーブル~ 参加者集合写真

 

6月5日、日本IBM 虎ノ門本社で、「PwDA+コミュニティー*1」主催の対話イベント「誰もが自分らしく活躍できる会社へ ~PwDA+ ラウンドテーブル~」が開催されました。

障がいについて興味を持つ社員は誰でも参加できるイベントで、会場の対話ルームには10人、そしてオンラインで約60人が参加しました。

 

冒頭の3つのコメントは、今回のトピックの1つである「社会的偏見とステレオタイプ」について、障がいがある社員が自身の経験について語ったものです。イベントでは他にも、オンラインツールを用いて参加者が自由に意見や考えを書き込む時間が設けられたりと、あっという間の1時間となりました。

イベントの様子を、いくつかのトピックに絞ってご紹介します。

 

*1 PwDA+コミュニティー

知る・考える・つながる機会を提供し、障がいの有無に関わらず、誰もが自分らしく活躍できる会社の実現を目指し、障がいのある社員とアライ社員(当事者を支援する社員)が共に活動する日本IBMの社内コミュニティー。

「PwDA+」は「People with Diverse Abilities Plus Ally(多様な能力を持つ人たちとアライ)」の意。

 

■ 取り組み紹介 | 鳥居 由起子(人事 ダイバーシティー&インクルージョン リード)

冒頭に、鳥居さんより現在日本IBMが注力しているPwDA関連の取り組みの紹介がありました。その中から2つをご紹介します。

 

・ 徹底した合理的配慮

IBMの障がいのある社員(以下、PwDA社員)向け支援の特徴は、「徹底した合理的配慮」と「特別扱いや優遇はしない方針」。それは、「特別な枠組みを用意することが社員の可能性を狭めてしまうことにもつながりかねない」という、社員一人ひとりが有する多様な能力に着目する考え方からきています。

もちろん、手話通訳、要約筆記、情報保障ツールなど、仕事環境は整備しており、PwDA社員や配属部門、プロジェクトチームからの相談には、臨機応変な対応を心がけています。

 

・ Access Blueプログラム(IBMの障がい者向けインターンシップ・プログラム)

社員向け施策ではないものの、社内のさまざまな部署とも連携し、IBM社員の障がい者理解にも多大な貢献をしている有償インターンシップが、Access Blueプログラムです。

「キャリアについて考える機会」と、そのきっかけとなる「就業経験」を手にする機会が少ない、障がいのある学生たちと就労経験のない既卒者向けに、テクノロジー・カンパニーIBMならではの「ITビジネス最前線で働く」機会を、みっちり経験していただいています。

 

なお、今年からは学生に加え、障害者手帳をお持ちで就労経験のある障がい者向けにも、IBMグループへの就職を⽬指していただくトライアル・プログラムをスタートしています。

 

■ テーマ1「社会的偏見とステレオタイプ」について

「誰もが自分らしく活躍できる社会の実現の妨げになり得るものの一つが、PwDAに関する社会的偏見とステレオタイプです。まずは当事者の方に、それぞれが感じたことがある社会的偏見や、ステレオタイプについてお伺いしたいと思います。」

司会進行を務めた杉浦由紀(コンサルティング事業本部/パートナー)さんから、会場参加の障がいがある社員3名への問いかけがありました。

 

・ 池田さん(研究開発部門所属。昨年より杖の使用から車イス生活へ)

ある会合の場で、私が自己紹介をするとすぐに「あなたは自分を卑下しなくてもいいよ。障がいがあったって、社会でそれなりのステータスを持って生きられるんだから」と、参加していた市議会議員の方に言われました。

私は「卑下」という言葉にすごく戸惑いました。これまでIBMでは、そんなステレオタイプや差別的なものを感じたことがなかったから。むしろ、私自身は障がいを、異なる発想へとつなげやすいアドバンテージだとすら思っているので。

でも、社会的地位のある人であっても、そういう偏見や見方があるからそういう言葉遣いになるんでしょうね。

 

・ 濱尾さん(入社3年目。精神疾患の障がい。Access Blue参加経験あり)

学生時代の話です。勉強は好きだったものの、学校生活に合わせることに難しさを感じていて、保健室登校(学校にいる間、教室ではなく主に保健室で過ごすこと)をしていた時期がありました。

でもある先生に、『どうして濱尾さんは病気でもないのに、いつも保健室にいるんですか』と言われてしまって…。私としては、心の調子が悪くてそうせざるを得なかったんですけれど、見た目でわからないと、そういう取られ方、言われ方をしてしまうのかと、悲しかったですね。

 

・ 河村さん(テクノロジー事業部所属。骨形成不全症で幼少期より車イス利用)

IBMでも、その前の大学生時代も、「障がい者であること」を理由とした嫌な思いはしたことがないですね。

ただ、今の濱尾さんの話で、以前バリアフリートイレで待っていたときのことを思い出しました。出てきた人を目にして「この人、障がい者じゃないのに…」と思ってしまったんですよね。

内部障がいなど、外見ではわからない障がいもあるのに、見た目での判断や思い込みをしてしまっていたな…と気づきました。偏見を持っていたのは、私の方だったのかもしれません。

 

このあと、杉浦さんから、そうした偏見が、IBMでのキャリアデザインになんらかの影響を与えているか? という問いかけがあり、以下のような回答が出ました。

「やりたい仕事を伝え、それに応えてもらっているので、私に関してはキャリアの問題は発生していません。」

「同僚から特別視されることはないし、必要な時には手を差し伸べてもらっている。1人の人間として尊重されていると感じている。」

「キャリアに関する問題を感じていたことはない。でももしかしたら、これまで自分が枠を作ってしまっていたのかもしれない。今後はもっと積極的にやりたいことを伝えていこうと思う。」

 

 

■ テーマ2「アクセシビリティーとIT」について

「アクセシビリティーに関係する工夫や、使用しているITツールがあれば教えてください」という問いかけには、参加者から以下のコメントがありました。

 

「過集中しがちな特性があるので、同僚から紹介してもらった(集中する時間と休憩時間を定期的に繰り返す)ポモドーロ・テクニックのアプリを使っていて、Apple Watchに振動で通知が来るようにしています。」

「私が使っているのは、車イスでも利用できるユニバーサルトイレを探すアプリです。最近、おしめ交換などもできる『だれでもトイレ』が増えていて、その分だけ混雑していることも多いので。」

「Googleマップ・アプリを使っています。[ユーザー補助設定]で[車椅子対応の場所] をオンにすれば、お店に行くまでの段差や地下への行き方なども確認できるので、一人でふらっと飲みに行く際のお店選びにも便利です。」

 

このあと、鳥居さんからはIBMの虎ノ門本社移転に伴うバリアフリートイレの拡張などの取り組みが紹介されました。

そして参加者からは「通勤と通院の待ち時間を減らすツール」や「車イスの子どもとの外出をためらわせない技術」など、今後のITツールへの期待のコメントが複数寄せられました。

 

「これはいつも思っていることですが、障がいのある方が過ごしやすい社会・会社は、みんなが過ごしやすい社会・会社ですよね。社員として、私自身もIBMに大いに期待しています」と、杉浦さんからもコメントがありました。

 

■ PwDA+コミュニティー エグゼクティブ・スポンサー 村澤 賢一

当事者とアライの声をより広くタイムリーに社内外に届けるために、PwDA+コミュニティーには「エグゼクティブ・スポンサー」という責任者として、役員が任命されています。

3年前よりその責任者を務めている村澤さんが、これまでの対話と、今後の希望と展望について語りました。

左から杉浦、村澤、池田

 

人はどうしても、それぞれの立場、そして経験をもとに、さまざまな概念を無意識に作り上げてしまっているのでしょうね。

そして自分で理解している以上に、その概念に縛られている。経験と想像力の乏しさから解像度・理解度が低いまま、自分の持っている狭いカテゴリーにあて嵌めて考えてしまう。

だから、ある場面に思いがけず遭遇すると、そこからの「思い込み」を発露させてしまう。

 

こうした思い込みを解いていくのは、やはりコミュニケーションなんだと思います。

それぞれの関係性が高まれば、お互いの期待値の交換もよりしっかりできるようになり、エンゲージメントも深まります。それが「誰にとっても良い場」を共に作っていく基盤だと思います。

今日は、改めて自分自身の解像度ももっと上げていきたいと思う時間をいただきました。この意見交換が、新しい理解をみんなで掴み取り、その実践をより力強くするための大きな手助けになるのではないかと思います。

 

そして生成AIへの社会の期待は本当に大きいですよね。先月ボストンで開催された「Think 2024」に現地参加し、watsonxの生成AI基盤モデル「Granite」のオープンソース化の発表に大きな刺激を受けてきました。

 

エコシステム共創本部のリーダーとして、さまざまなパートナー企業の経営層の皆様とお話しさせていただきますが、IBMの生成AIへの期待を日々感じています。

今回の発表で、「すべての人が、自身の力を存分なく発揮できる社会を作ろう」と考え取り組んでおられるあらゆる企業の方々に、新たに強力な手段を提供できる。コストやライセンスの心配、データの不透明性への不安などから解放され、生成AIをさまざまな製品やサービスに組み込んでいただける。

「人類の新たな水平線」が、ここから開けるかもしれません。

 

PwDA+コミュニティーも、社内外の方たちとも生成AIを活用した共創を積極的に進めたいですよね。その中で、私たち自身が、IBM社員特有のバイアスに気づくこともあるでしょうし、中には難しいチャレンジの場面も生まれてくるでしょう。

でも、だからこそ、私たちがチャレンジする意味があると思う。これからもみんなで一緒に取り組んでいきましょう。

 

■ 決意表明「誰もが自分らしく活躍し貢献できる会社」

最後に、誰もが自分らしく活躍し貢献できる会社となるために、今後自分がしたいと思っていることやすべきだと思っていることを書き込んでいただき、ラウンドテーブルは終了となりました。

いくつかの書き込みをピックアップします。

  • まずはアライ登録。まずは自分から積極的に話してみる。
  • 周りの人が自分と同じだと思いこまない。皆が違っているからこそ楽しいという環境を作る。
  • IBMでは障がいのある人などマイノリティーの方を差別しない風潮があり、入社当初も現在もとても素晴らしいと思っています。自分ももっと頑張ろうと思えました!
  • 自分の得意をより輝かせる。
  • 安心して自分の考えや気持ちを言える場所があることで、自分の居場所があるのだなぁと感じます。
  • 何事にも思い込みが発生していないかを常に確認していく。
  • 社会の仕組みが障害を生んでいるのだと常に考えること。「思いやり」「運用」はもちろんのこと、「仕組み」「環境」「インフラ」の改善を常に探索し発信すること。
  • みんな何かしらのマイノリティであることを忘れない。
  • 相談しやすい雰囲気を作る。こうすべきと判断せずに、会話をしながらひとりひとりに合わせた対応を。
  • 「合理的配慮」から、お互いに歩み寄り、すり合わせて、どうするのがお互いにとって最適か考える「合理的調整」への認識転換を。
  • 障がいがある方が安心して働けるような部署作りをしたい。
  • 自分がされて嫌なことはしないし、嫌なことは人によって違うので、相手のことを考えて行動する。
  • 社内での取り組みを社会にも還元していきたいです。

 

PwDAコミュニティー+との共創活動にご興味をお持ちの方は、ぜひこちらのアドレスまでご連絡ください。

 

TEXT 八木橋パチ

 

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