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人は皆誰もがアライになれる | インサイド・PwDA+1(濱尾 裕梨 & 西野 真優)

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IBMには障害のある社員と、当事者を理解・支援するアライ(Ally)社員が一緒に活動をする「PwDA+(ピーダブルディーエープラス=People with Diverse Abilities Plus Ally)コミュニティー」があります。

こうした活動がIBMだけではなくもっと多くの企業に拡がれば、社会はもっと豊かでカラフルなものになるはず! という想いのもと、仲間をもっともっと増やすために、どんな人がどんなストーリーを持って活動しているのかを紹介する「インサイド・PwDA+」をスタートすることとしました。

第一回は、IBMと昨年IBMから分社したKyndylから、それぞれ1名ずつ当事者社員にご登場いただきます。

 

 

濱尾 裕梨 | 2021年入社、IBM Consulting所属。趣味は映画鑑賞。好きな言葉は「品行方正」

 

 

 

西野 真優 | 2021年入社、KJTS(Kyndylグループ会社)所属。趣味はヨガと音楽鑑賞。好きな言葉は「七転八起」と”The flower that blooms in adversity is the rarest and most beautiful of all.”。

 

もくじ

■ 就労への不安を解消した障がい者限定インターンシッププログラム
■ 何をどこまでどう伝えるのが、自分にとっても相手にとっても良いのか?
■ 事務局メンバーが足りない! | PwDA+コミュニティーのお話会
■ そもそも、オープンにするのが本当に良いのか?
■ 伝えてくれる人が増えれば | 人は皆誰かのアライになれる


 

 就労への不安を解消した障がい者限定インターンシッププログラム

 

−− 今日はよろしくお願いします。まず簡単に自己紹介をお願いできますか。まずは濱尾さん、次に西野さんで。

 

濱尾 裕梨(はまお ゆり)です。2021年にIBMに入社しました。IBM Consulting所属で、現在は保険業界のシステム保守プロジェクトに参画しています。精神疾患の障害があり、大学生になってから障がい者手帳を取得しました。2019年の「Access Blueプログラム」に参加していました。

 

西野 真優(にしの まゆ)です。私も濱尾さんと同じく2021年入社ですが、昨年9月の分社でKJTSというKyndyl(キンドリル)のグループ会社所属となりました。私は2018年に発症して、2019年に障がい者手帳を手にしました。2020年に「Access Blueプログラム」に参加していました。

 

Access Blueプログラムとは、日本IBMにて2014年から続いている障がい者向けのインターンシッププログラム。7カ月間の長期にわたり基礎的なITスキルをはじめ、クラウドやAI(人工知能)、IoTなどの先進テクノロジーを、実践を通じて学べる世界でも極めて珍しいプログラムです。

 

左の濱尾さんの好きな映画は「インセプション」(映像が美しい映画が好き)。右の西野さんの好きな映画はミュージカル『RENT』。

 

−− お二人ともAccess Blue卒業生なんですね。どういうきっかけで参加されたんですか?

 

西野: 私は国際協力を大学院まで学んでいたんですが、研究フィールドで障害発症につながる出来事があり、それをきっかけにキャリアを変えることとしました。

私は就労移行支援とAccess Blueで迷っていたのですが、企業での就労体験の方がリアルな経験を得られると思ってAccess Blueに応募しました。

 

濱尾: 私はAccess Blueのことは参加する数年前から意識していて、3年生になったら7カ月間の長期のインターンシップにガッチリ参加できるようにと、大学1、2年のうちにしっかり単位を取得していました。

 

就労移行支援とは、一般企業への就職を希望する障害や難病のある方向けの「障害福祉サービス」のひとつ。就職するために必要なスキルの取得や、職場実習などの機会提供、就職後の職場定着のための支援などを提供している。

 

−− Access Blueでの経験が、IBMへの就職を希望させたのでしょうか?

 

濱尾: そうです。すごく強く背中を押して貰った気持ちでした。自分以外のインターン生や障害のあるIBMの先輩たちとのやりとりを通じて、仲間との連帯感を感じました。

当時、社長就任直後の山口さんが来てくれて、私たちインターン生に「障害のある皆さんと健常者が一緒に、それぞれの強みや個性を活かして働くことを当たり前の社会にしたい」というメッセージをくれて。感銘を受けました。

 

西野: 私もAccess Blueで就労に対する不安が無くなりました。それまでは「オープン就労の方がクローズ就労よりも良いのだろうな…」とは思っていたものの、いろいろな不安がありました。

それが、IBMならオープンで頑張れる会社だろうなって思えたし、インターンシップを通じて自分のことを知っている人が一人でもいる場所の方が、すんなりと入っていけるし頑張れるだろうと思えたんです。

…それから、そう思わせてくれたIBMに恩返ししたいって気持ちもありましたね。

 

オープン就労は、自らの障害を雇用企業に開示して就職すること、クローズ就労は非開示で就職することを意味しています。
それぞれにメリット・デメリットがあるものの、合理的な配慮を得づらいことなどから、オープンと比較するとクローズ就労の方が職場定着率が低いと言われています。

 

自分を動物に例えると西野さんは「犬」。

 

何をどこまでどう伝えるのが、自分にとっても相手にとっても良いのか?

 

−− お二人はオープン就労で、PwDA+コミュニティーのIBMイントラネットサイトでもご自身の精神障害について書かれていますよね。周囲の同僚にも積極的に伝えているんですか?

 

濱尾: 私はプロジェクトにアサインされたときには、プロジェクト・マネージャー(プロマネ)やチームリーダーには早めに障害があることを伝えるようにしています。それ以外では、コミュニケーションを頻繁に取る必要がある相手にだけ伝えていますね。

 

西野: 私も濱尾さんと同じ感じで、所属長やプロマネ、それから特定の相手にだけは伝えていますけど、それ以外のプロジェクトメンバーには伝えていないです。

…正直、私自身がどこまでの配慮を必要としているのか、周囲へどのような配慮を求めたいのか、まだそれが自覚しきれていないので、伝えることに難しさを感じています。

 

濱尾: 私、新入社員研修のときに失敗した経験があるんです。1週間みっちりチームでプログラムを書く期間があったのですが、そこで言い出しそびれてしまったんです…。週の途中で疾患の特性が表れてきて、とてもしんどくなってしまいました。

後から「伝えて欲しかったな」ってチームのメンバーにも言ってもらえたし、私自身、最初から伝えられればよかったなって。

でも、それって私にとっては簡単なことじゃないんです。…親友にも自分の病名をはっきりとは打ち明けていなくて…。脳が疲れやすくて他者との距離感をつかむのに時間がかかるとか、自己嫌悪に陥りやすいとか、そういう症状はもちろん伝えているんですけど。

 

自分を動物に例えると濱尾さんは「キリン」(高い場所を目指しているから)。

 

事務局メンバーが足りない! | PwDA+コミュニティーのお話会

 

−− PwDA+コミュニティーの活動と、参加のきっかけなど教えてもらえますか。

 

濱尾: 私は入社後すぐに、「お話会」というコミュニティーの集まりに参加して「いい活動だなぁ」って思ったんですね。参加されている方がたが、障害についてカジュアルに関心ごとをお話しされていて。

その後、去年の10月にまたお話会に参加したときに、「事務局メンバーが足りない」って話を聞いて。「え、それなら私も事務局メンバーになってもいいのかしら?」って思ったんです。

 

西野: 私も、それが3回目だったのかな、同じ10月の「お話会」に参加して事務局メンバーを募集していると知りました。でも「どういう人がなれるのだろう?」とイメージがつかなくて、興味があるとだけお伝えしておきました。

そうしたら、分社後Kyndyl側には事務局メンバーが1人しかいなくて苦労しているという話を聞き、それなら私でも力になれるんじゃないかなと。

 

濱尾: コミュニティーの活動は、今は、2カ月に一度のお話会の準備と実施、その後のレポート作成が主なものですね。

本当はもっと頻繁にお話会を開催できればいいんですけど、これ以上の頻度でやるとちょっと業務に支障が出かねないかなぁと。それは私自身の業務との兼ね合いもあるし、アライの山田さんとか、「それ、じゃあ私がやります!」って今もすごくサポートしてくれているので、これ以上の負担がかかってしまっては…。

 

西野: もし事務局メンバーがもっと増えれば、チーム分けや作業分担をすることで、頻度を上げることや別の取り組みをスタートすることもできるかもしれませんね。

 

そもそも、オープンにするのが本当に良いのか?

 

−− 事務局メンバーもコミュニティーのメンバーも、増やすにはまず存在と活動そのものを知ってもらう必要がありますよね。そのためには、当事者の想いや苦労が社内外にもっと伝わる必要があるかと思います。ズバリ、当事者にとって「オープンにすること」の一番のハードルは何だと思われますか?

 

濱尾: うーん、私の場合ハードルはなくて、今以上にオープンにする方法というか、一体いつどうやってオープンにすればいいのかが分からなかったんですよね。だから、今回この企画について相談を受けたときはとても嬉しかったです。

とはいえ、人それぞれ状況も考え方も違うので、「隠さなければ」と思わせる環境も「オープンにすべきなのか」と感じさせる環境もなくなればいいなと思いますね。

 

西野: 私も、発症したのが大学生になってからということもあるのか、わりとすんなりそういう自分を受け入れられている気がします。障害もアイデンティティの一部にできている感じで、オープンにすることには抵抗がない方です。でも、やっぱり人によりいろいろ事情があるし、考え方もすごく異なるものだと思うんです。

だから、オープンにするのもクローズにするのも、周りとの関係も含めて、本人が自分の考えで「その方が過ごしやすそうだから」と決められることが大事だろうと思っています。その結果としてオープンにする人が増えて、今よりももっと良い仕事ができる環境になればいいと思いますし、私もそれに貢献したいです。

 

伝えてくれる人が増えれば | 人は皆誰かのアライになれる

 

−− 今日はありがとうございました。新たな気づきがたくさんある時間でした。最後に、「これ言いそびれちゃった」ということがあったらお願いします。

 

濱尾: 私、「過去の自分に説教したい(笑)」って思っていることが1つあって。

Access Blueプログラムに参加していた当時の自分に「この環境がどれだけ恵まれているか、どうしてもっと充分活かそうとしないのか」って。これから参加する方に役立つかもしれないので、ぜひこれは記事にも入れて欲しいなって思います。

 

西野: 私は、今日パチさんに伝えたいなと思っていたことが一つあります。以前に書かれていた合同会社KIZUNAの皆川さんという方へのインタビュー記事が、すごく良いなと思っていました。

「彼らの、相手の気持ちを読み取る力ってすごいんだよ」っていう皆川さんの言葉を読んで、こういうふうに、障害のある方に「それが特性として強みになっている」ことを発見して伝えてくれる人が増えれば、当事者も社会も変わっていくのではないかと感じました。

そこにはとても大きな意味があると思います。私も、そういう役割が担えたらいいなと思っています。

アイデアミキサー・インタビュー | 皆川 義廣(合同会社KIZUNA代表)前編

アイデアミキサー・インタビュー | 皆川 義廣(合同会社KIZUNA代表)後編

 

 

 

TEXT 八木橋パチ

 

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