IBM Sustainability Software
[事例] ニューヨーク州電力公社 | 車両運用システムをMaximoへ統合しVISION2030戦略を推進
2022年11月28日
記事をシェアする:
- 全米初の完全デジタル電気事業者になるというNYPAの目標をサポート
- ニューヨーク州の脱炭素化を目指すNYPAのクリーンエネルギー目標を支援
- 1,600台の車両をリアルタイムで把握し、より良い設備資産管理を促進
米国最大の州営電力組織、ニューヨーク州電力公社(NYPA)は、全米初の完全デジタル公共電力機関となるという、意欲的な目標を立てています。
ニューヨーク州ホワイトプレーンズの本社に、世界初のデジタル化された電力資産監視・診断センターである統合スマート・オペレーション・センター(iSOC)を開設しました。そしてまた、北米の電力会社として初めて、優れた資産管理の認証である国際規格ISO55001(アセットマネジメントシステム)を取得しました。
完全デジタル公共電力機関への道を順調に歩んでいるNYPA、その目標の基盤となっているのは、積極的に気候変動に取り組むニューヨーク州を支援するためにNYPAが策定した戦略計画「VISION2030」です。
VISION2030は、今後10年間で同州のエネルギーインフラを、クリーンで高い信頼性を保ち、安価で強い回復力を持つシステムへと変革するためのロードマップを提供しています。
「情報に基づいた意思決定を支援するために、私たちは適切な情報を、適切な人に、適切なタイミングで、適切な技術で提供しています。その実現に重要な役割を担っているのが、IBM Maximoプラットフォームです。」
NYPA 資産情報担当ディレクター レン・カプート
課題 | 統合資産管理システムから外れたままの車両管理
「情報に基づいた意思決定を支援するために、私たちは適切な情報を、適切な人に、適切なタイミングで、適切な技術で提供しています。その実現に重要な役割を担っているのが、IBM Maximoプラットフォームなのです」。NYPAの資産情報担当ディレクターであるレン・カプート氏はそう語っています。
NYPAは、資産、在庫、計画、予防保全、作業指示書モジュールなど、以前から資産管理システムをエンタープライズ資産管理(EAM)の市場リーダーであるIBM Maximoに統一し、発電および送電事業の管理に役立てていました。
そしてこれらのモジュールはSAP ERPやその他のコアアプリケーションと強固に統合されています。このシステムにより、NYPAは約6万件の発電・送電機器とその状況や場所、そして関連する作業工程を総合的に把握し、最適な計画、管理、監査、コンプライアンスを確保できているのです。
ところが、車両管理は別でした。
NYPAには、電線工事用のバケットなどのトラック、施設メンテナンス用のクレーンなどの重機、自動車を含む業務用自動車など、無数の車両が存在します。ただ、車両部門はスタンドアローンのソフトウェアでこれらの車両管理を行っていたのです。
事前計画作業であれ突発的な作業への迅速な対応であれ、統合管理業務を的確に行うためには、どの車両がどのタイミングで修理から戻ってくる予定かなどを、組織横断的にリアルタイムで車両の把握・管理ができていなければなりません。しかし、NYPAはそれができていませんでした。
事業の継続性と効率性を確保しつつ顧客の満足度を維持するために、NYPAのリーダー陣は車両管理もMaximoソリューションへ移行し、システム統合を行うことを優先事項としました。
システム導入 | パンデミック下でのチャレンジ
NYPAは、これまでの実績と長年の関係からなる深い業務理解、そして優れた顧客サービスとIBM Maximoに関する高い専門性などから、IBMビジネスパートナーのスターボード・コンサルティング合同会社に、IBM Maximo for Transportationモジュールの統合支援を依頼しました。
このプロジェクトの指揮を取ったのが、包括的なMaximoのサポートと機能強化を提供しているスターボード社のシステム・アナリスト、ラニ・トロッター氏です。「NYPAは、IBM Maximoのフレームワークの中で資産管理の実践を長年行ってきた熱心なユーザーです。Transportationモジュール統合の機は十分熟していました」。
スターボード社は、ソリューションの要件定義と開発プロジェクトをNYPAのオンサイトで開始しました。しかしその後、COVID-19が街を覆い尽くし、NYPAは従業員の健康と安全を優先してプロジェクトの中断を余儀なくされてしまいました。
数カ月後、プロジェクトが再開されると、関係者はオンサイトではなくバーチャルに集まり、一致団結して新システムへのスムーズな移行の実現に取り組みました。
NYPAの資産情報アナリストで、導入プロジェクトマネージャーでもあるライハナ・アザド氏はこう語っています。「パンデミックにより遅延が生じたため、その時間を利用してUAT(ユーザー受け入れテスト)を延長し、スムーズなMaximo導入と移行のためのテストを重ねました」。
NYPAのテクニカルトレーニング・インストラクターで、Maximoユーザーグループにおいても多大なる貢献をされているジョージ・ペリー氏は、整備士や他のフリートスタッフを含むNYPAの2300人の従業員に対してソリューション・トレーニングと変革管理を行いました。
トロッター氏と協力して行ったこの取り組みを通じて明確になったのは、季節ごとのオペレーションと組織ニーズへの継続的適応を両立させていく重要さでした。
たとえば、ナイアガラ川の氷を砕く現場作業担当員は、その時期数週間は不在となることがあります。こうした状況では、COVID-19の安全ガイドラインに準拠させつつ、オンラインとオンサイトのトレーニングを柔軟に実施していく必要があったのです。
「トレーニングの成功は関係者全員による素晴らしい努力の賜物です。スターボード社のチームだけではなく、NYPAの資産情報、情報技術、車両グループがすべて協力して、成功を収めることができました。」と、ペリー氏はこの取り組みを讃えています。
導入効果 | 可視化と効率化を全組織横断で
IBM Maximo for Transportationを使用することで、車両部門はNYPAの有する約1,600台の車両を最適に管理できるようになりました。この一元化されたソースを使用することで、作業員の生産性を高めるとともに、業務のダウンタイムを減らしコスト削減を実現することができました。
現在は、従業員は車両予約や修理予定計画のために車両部門に電話をかけ、状況を問い合わせる必要はありません。リアルタイムの情報をオンラインで見れば、それで済むからです。
ペリー氏は言います。「こうした事業においては、設備資産の稼働率が大変重要です。いつ、どこで、どのような機器が稼働しているか、修理の状況はどうか、予防保全の必要な時期はいつか。こうした情報が組織横断的に可視化されていることが計画立案のカギとなるのです。」
「NYPAで既に確立されているIBM Maximoエンタープライズレベルのユーザーロール、ポリシー、手順を使用し、車両部門のビジネス標準化とデータプロセスを確実に導入したかったのです。Maximoで一元管理することで、大きな価値が生まれることは分かっていましたから。」アザド氏はそう語っています。
そして現在、従業員は車両に関する予防保守記録や関連コストなどの過去の全経緯も簡単に確認できます。
「適切な資産管理には、資産ライフサイクルコストが速やかに確認できることが重要です。IBM Maximoを用いることで、そのプロセスや管理が非常にスムーズになりました。そして私たちが効率的になればなるほど、お客様に提供できるサービスもより良いものへとなっていくのです。」とカプート氏は述べています。
未来への展望 | NYPAのデジタル変革をより一層推進
車両部門や上級管理職からこの移行に対して肯定的なフィードバックを得ているカプート氏は、チームを代表してこう言っています。
「この移行プロジェクトは大きな価値を持つものです。そしてこのプロジェクトがパンデミック中に完了したことが、スターボード社と資産情報チーム、そしてプロジェクトに携わったすべての人がどれだけその価値を理解し、真剣に取り組んだかを示しています。」
導入が完了し、資産管理システムに車両管理が統合された今、NYPAの資産情報グループはデジタルの力で、NYPAのVISION2030戦略をいっそう効果的に推進することができるでしょう。
さらに、ISO55001で規定されている継続的なプロセス改善の機会を、より容易に特定することもできるようにもなりました。
今後、NYPAは顧客満足度をさらに高めることでしょう。そしてこの統合プロジェクトの成功は、ニューヨーク州への新たな企業誘致にもきっと貢献することでしょう。
ニューヨーク州電力公社について
ニューヨーク電力公社は、16カ所の発電施設や1,400マイルにおよぶ送電線ネットワークを運営する全米最大の州営電力組織です。NYPAが生産する電力の80%以上はクリーンな水力発電です。
スターボード・コンサルティングは、米国フロリダ州ロングウッドに拠点を置くIBMビジネスパートナーであり、IBM Maximoソリューションに特化した技術コンサルタントおよびシステムインテグレーターです。同社の顧客には、公益事業、運輸、政府機関などが含まれます。
当記事は、事例『The drive to digitize at New York Power Authority』を日本のお客様向けにリライトしたものです。
製品・技術情報
問い合わせ情報
関連記事
「第2回ベジロジサミット」レポート後編 | ベジロジシステム討論会
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
ベジロジ倉庫とベジロジトラック、そしてキャベツ食べ比べを中心にご紹介した「第2回ベジロジサミット」レポート前編に続き、ここからは第二部、場所を屋内に移して開催されたベジロジシステム討論会の様子をご紹介します。 目次 前編 ...続きを読む
「第2回ベジロジサミット」レポート前編 | レタスの食べ比べとベジロジ倉庫・トラック
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
「佐久地域は葉洋菜類の一大産地であり、産地の生産を守ることは日本の食を守ることです。主体的に取り組んでいきます。ただ、青果物の取り組みは特に困難な要素が多く、物流業界でも取り組みが進んでいない分野です。そんな中で、持ち前 ...続きを読む
日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
2024年10月15〜16日の2日間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「日本Maximoユーザー会」が開催されました。 石油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企 ...続きを読む