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地域の未来を豊かにする若者に、情報デザインとデジタルの力を | 西日本工業大学×IBM

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「地域を豊かにする人を育てたい。その思いが大きな柱の一つとなっています。」

そう語るのは、西日本工業大学 デザイン学部 情報デザイン学科の中島 浩二教授(デザイン学部長)と、情報デザイン学科 学科長 領木 信雄教授のお二方です。

同じ熱量でその思いに応える人たちがIBMコンサルティング事業本部にいます。IBM iXに所属する澤﨑 良介、安 浩子、木村 隼人の3人です。

今回、北九州市小倉の西日本工業大学 デザイン学部 情報デザイン学科にて、Webデザインの授業を担当しているIBM iX の講師チームと、中島教授と領木教授にお話を伺いました。


目次

(左) 中島 浩二(Nakashima Koji) | 西日本工業大学 デザイン学部 情報デザイン学科 教授
(右) 領木 信雄(Ryoki Nobuo) | 西日本工業大学 デザイン学部 情報デザイン学科 教授

 

■ わずか一カ月、完璧な講師チームとシラバスで授業をスタート

「前任の先生が退職されることになり大急ぎでWebデザインの授業の講師を探すこととなったんですが、ちょうど同じ頃、本学のすぐ隣に、新たにIBM九州DXセンターさんの大規模オフィスができることを耳にしたんです。

私たちは、IBMが古くからビジネスの根幹にデザインを組み込み、絶えずデザインの視点からも方法論やアプローチを見つめ直している企業だと知っていましたから、知人に紹介いただいた九州DXセンター責任者の古長さんに『今後のより深い連携を視野に、1年間の授業をお願いできる可能性はないだろうか』とお話しさせていただいたんです。

そこからは驚きの連続で、わずか一カ月ほどの間に『これ以上は望めない』というほどの完璧な講師チームとシラバスを作成いただき、授業をスタートしていただきました。本当に感謝しています。」

中島教授の言葉に、領木教授が続けます。

 

「サービスデザインを深く理解し実践され、表層的な見た目のデザインではなく広義のデザインまで常に意識し、東京の大学でも講師経験をお持ちの安さん。エンジニアリングやプログラミングを第一線で実務として行い、教育分野でも活動し続けてきた木村さん——このお二人が中心となり学生たちの指導にあたってくれると聞き、私たちの狙いにピッタリだと思いました。

一年次にどれだけしっかり基本を理解し、実践の場をイメージしながら手を動かせるようになっているか。

私は一年生後期からプログラミングを中心に担当するのですが、IBMの講師チームは、理想的な授業構成を作ってくれました。一年生の「学び方」が、その後大学4年間での学びの最大化の鍵を握っていますから。」

 

西日本工業大学教授のお二方に続き、IBM iXの講師チームにも話を伺いました。

 

■ 情報格差は分断を広げるだけではなく、収入格差にもつながる

IBM iXの西日本工業大学講師チーム。
(左) 澤﨑 良介(Sawazaki Ryosuke) | DXデリバリー事業部長
(中央)木村 隼人(Kimura Hayato) | DXアーキテクト
(右) 安 浩子(Yasu Hiroko) | サービスデザイン・ディレクター/コンサルタント

 

「北九州の古長さんから話を聞いたときは『ずいぶん急な話ではあるものの、とてもよい機会じゃないか』と思いましたね。全30回からなる講義ですから、私たちIBM iXのケイパビリティを学生の皆さんに知っていただく機会にもなりますし、なによりも講師となるiXの社員たちが地域活性化に直接関与し、未来のデジタル人材育成に貢献できるチャンスではないかと感じたんです。

そういうわけで、当初、私を含めて3名で講師チームを立ち上げまして、多くの社員に『新たな気づきが得られるかもよ。一度経験してみたら?』と声をかけさせていただいているところです。思いのほか手を挙げてくださる方が多く、スポットでの支援メンバーを含めて現状7名体制のチームになりました。

今後、さらに参加者を拡大するとともに、将来的には北九州だけではなく、もっと多くの地域でこうした講義を提供したいですね。

私のモチベーションですか? それはやっぱり、少子化が進む日本社会においては、情報技術の大胆な社会実装が欠かせないという思いです。未来の社会づくりを担う若者たちに手を貸すことができることは、間違いなく素晴らしいことじゃないですか。」

そう話すチームリーダー澤﨑さんに続き、デザイン・パート主担当の安さんが言います。

 

「私は以前、東京の大学で同様の講義を担当していた時期があるんです。そのときと比べると、この数年で社会も大学も急速にデジタル化が進みましたよね。

デジタルネイティブたちが、学びの環境においてもしっかり『ネイティブぶり』を発揮できる環境が整いましたし、ウェブやアプリデザインにおいても、Figmaをはじめコラボレーションしやすい、チームでのオンライン作業を前提としたツールも揃っています。

でも、私が学生の皆さんに本当に手渡したいのは、ツールの使い方やインターフェイスとしてのデザインではなく『デジタルの力』そのものなんです。デザインやITを『一部の人が使えるもの』から、誰もが日常で使うものに落とし込みたい。それが地域の力の底上げになると思うから。

デジタルデバイト(情報格差)は、分断を広げるだけではなく収入格差にもつながる問題です。デザインする力は、その格差に対抗するものであり、地域の新たな価値創出やクリエイティビティの発揮の源にもなると、私は強く信じています。」

 

プログラミング・パート主担当の木村さんはこう話します。

「私もデジタル教育こそが未来の鍵を握っていると考えています。そして個人的に、私が九州出身で妻が北九州出身ということもあって、この地域には特別な思いがあります。なので、西日本工業大学での授業の話を聞いたときにはぜひやらせてほしいと思いましたね。

私が主担当するプログラミングですが、『黙々と一人で作業するもの』というイメージがあるかもしれませんが、実際はサービスの作成や起業という未来へとつなげることを考えれば、仲間作りや共同作業は非常に重要です。

『伝える/受け取る』というコミュニケーション力を身に付けていただくために、授業では毎回3人1組のチームメンバーがランダムに決まるツールを使用し、そしてアイスブレイクなども行って、学生同士のコミュニケーションの活性化を図っています。

私たちはこの1年間30回の授業を通じて、社会に出ていくためのガイド役も果たしていきたいと思っているんです。秋からスタートする後期の授業では、北九州市や福岡県の企業の方たちにも講義に来ていただき、学生たちに『企業や社会で本当に必要とされているもの』を伝えてもらいたいと考えています。

講義の様子と授業カリキュラム

 

ここから改めて、領木教授と中島教授にデザインとものづくりについて、そして今後に向け、学生たちとIBMへの期待についてお話しいただきました。

 

■ デジタルの強みをしっかり享受するための「アナログ」

領木教授: 私はデザイナーやエンジニアというのは、職業名ではなく、生きかたやスタンスだと思っているんです。もちろん職業にもなりますけどね。

デジタルを使いこなすことで、働きかたや生きかたの幅が広がります。たとえばプログラミングを「身につける」ことで、ノートPC1台あればどこでも働くことができるようになります。

ただ、そうしたデジタルのすばらしさをしっかり享受するためには、それに飛びつくのではなく、基礎的な学びの時期を経ることも重要だと思っています。デジタルは便利ですが、じっくり考えるときには、紙とペンのほうが良いことも多いですよね。ノートには時系列が収められていますから。

 

中島教授: そうですね。そして私は「考えるとき」に加えて、「伝えるとき」のアナログの優位性も挙げておきたいです。

相手と話をしながらアイデアをどんどんスケッチしていき、お互いのイメージや方向性を揃えていくようなデザインの手法は、圧倒的にスマホよりも紙とペンの方が早いですから。

 

領木教授:  IBMの講師チームの方たちはその辺りもよく分かっている方たちなので、安心して授業を任せています。

現在授業は1年間の折り返し地点で、前期の15回を終えるところですが、実は先日何名かのティーチング・アシスタント(授業をサポートする先輩学生)たちから「IBMの講師の皆さんの方が先生たちよりも先生っぽいですよ」なんて言われてしまいました(笑)。

学内に展示されていた情報デザイン学科の学生制作のポスターとともに

 

■ 必要なら自分たちで作る | 学びと生活をどんどんプロトタイプしてほしい

 

——地域の力の底上げ、活性化についてはどうでしょうか? この辺りは地域のプレイヤーたちとの連携や共創がポイントとなりそうですが。

 

中島教授: その通りですね。本学は、地域の企業や他大学、高校、NPOとのいわゆる産官学連携を積極的に進めています。また、北九州市がそうした取り組みを積極的に後押ししてくれています。

一つ最近の例を挙げるなら、昨年スタートした「トマトのおんがえしカレー」というプロジェクトが大きな反響を呼びました。

北九州市内にある響灘菜園から出る廃棄トマトを使ったカレーで、九州栄養福祉大学がレシピ開発を行い、本学情報デザイン学科の学生たちがネーミングとパッケージデザインを、そして北九州市立高校の生徒たちも商品の販売支援を行い、売り上げの一部を市内の子ども食堂支援へと回しています。

参考 | SDGs志向のカレー商品開発プロジェクト|北九州市表彰&福岡県食品ロス削減優良取組知事表彰を受賞

 

領木教授: こうして、商品を作る側に回ることはとても大切な経験です。企画から販売までのプロセス全体に携わることや、ものを作る側になることで「見えてくるもの」がありますから。

それが見えるようになると、味わう能力や捉え方も変わってきます。ものづくりを会得していくことで、効率であるとか便利であるとかだけではなく、「楽しく生きる力」を身につけられると私は思っているんです。

 

中島教授: 私も今この歳になっても「体験しなくちゃわからないものばかりだ」と思っていて、積極的に新しいものを試し、自分でそこからの気づきやひらめきを生活に取り入れるようにしています。いわば「生活が実証実験」とでも言うか(笑)。楽しいですよ!

自宅にもスマートホーム化を「後付け」で簡単に行うためのSwitchBot(スイッチボット)を多数導入していますし、研究室には、いわゆる「ものづくりの民主化」と呼ばれる「ファブラボ」や「メイカーズ」などの場所には必ず置かれている3Dプリンターなどの工作機器を揃えて、学生たちに自由に使ってもらっています。

ずっと「消費だけし続ける」立場にいては、人は本質的な満足をなかなか得られないと思うんです。学生たちにはただ「買うだけ」ではなく、「必要なら自分たちで作る」というスタンスを手に入れてほしい。学びと生活をどんどんプロトタイプしていってほしいですね。

学内デジタルものづくり拠点「ツクリバ」にて

 

——最後に、IBMへの期待や叱咤激励を伺えますか?

 

中島教授: 叱咤激励なんてそんな! これからもよろしくお願いします。

個人的には、今後は授業だけではなく、学生のインターンシップ受け入れや、放課後クラブ的なコラボレーションの場づくりなどもできたらいいなと思っています。

 

領木教授: 私はIBMデザインのファンとして、IBMのデザインがもっと広く知られてほしいです。そして九州地域DXセンターにもデザイン・セクションを設置し、もっと多くのデザイナーを配属してくれたらなと思います。

数年後には、安さんから学んだ本学の学生が、九州地域DXセンターに所属して教えに来てくれたらステキですよね。


TEXT 八木橋パチ

 

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