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[事例] ウェアラブルとIoTで、職場のウェル・ビーイング向上と事故によるコスト削減を同時に

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米国 ネーション・ウェイスト社(商業廃棄物処理のエキスパート・カンパニー)事例

 

■ 導入事例のポイント

・  ビジネス課題

「人材不足」という問題を抱える建設業界において、職場での事故は従業員とその家族に重大な影響を与えてしまうだけではなく、企業にも莫大なコストをもたらします。また、企業として従業員とその家族に安全と安心をもたらすことは、作業員を多く雇用している企業の社会的責任ともなってきています。

IoTテクノロジーを活用することで、こうした課題を解決することができます。

 

・ 課題への取り組み

ネーション・ウェイスト社は、IBMと協力してネーション・セイフティネットという新部門を立ち上げました。ネーション・セイフティネットは、ウェアラブルデバイスや環境センサーのデータを元にしたWatson IoTの分析によって潜在的な危険を特定し、従業員の負傷や事故を防ぎます。

 

・ 期待される効果

  • 約60%のコスト削減(作業場での負傷に関連する訴訟費用や保険費用の軽減)
  • 利益率40%向上、収益率150%増加(今後5年間の予測)

 

 

■ ビジネス課題の背景 – 職場で失われる命

さまざまな産業において、職場は危険を含む環境です。米国では労働災害により、2017年だけでも5,190人の従業員が命を落とし、約2,700万労働日が失われています。それ以外にも280万人を超える労働者が負傷を負っています。

そして従業員が怪我の回復のために職場を離れたケースは80万件を超え、その期間は平均で8日間となっています。

 

これらの数値そのものが事実の大きさを示しています。ただ、従業員の命が失われることとそれが家族や同僚に与える精神的な打撃は、ここから推定される企業の経済的コストとは比べることなどできません。

そして命を失うことはなくても、事故は個人的および職業的生活のあらゆる面において、関係者の人生を永遠に変えてしまうことも少なくないのです。

 

テキサス州ヒューストンに拠点を置く商業廃棄物処理会社ネーション・ウェイスト社は、こうした問題に行動を起こしました。同社の社長兼CEOであるマリア・リオス氏は次のように話しています。

「私たちは、危険な物質や重機、危険物が持つ潜在的な危険性を深く認識しています。安全について、私たちは常に意識しているのです。

そしてこれは私たちのお客さま、とりわけ建設業や石油やガスなどの、危険な環境での作業が日々の一部となっているエネルギー分野のお客さまも同じでしょう。」

 

「どれほど厳格に管理し、包括的なトレーニングを従業員に受けさせても、職場での事故や負傷は発生してしまいます。だからこそ、あらゆる機会を利用して職場環境をもっと安全にする必要があるのです。

そして職場における事故や負傷は、人件費以外にも運用上の大きな影響を及ぼします。生産性の低下、保険および訴訟費用の増加、企業に対する評判の低下など、さまざまな問題を引き起こす可能性があるのです。」

 

  • もし管理者が、従業員の疲労や熱中症、脱水症の初期症状をよりすばやく認知しすぐに休憩を取るように促すことができたなら、はたしてどれだけ生産力は上がるのか?
  • もし管理者が、なんらかの異常やヒヤリハットを即座に検知しトラッキングできたなら、はたしてどれだけの怪我を未然に防ぐことができたのか?
  • もし従業員が、作業着に埋め込まれた緊急サービスに直接アクセスできたなら、毎年どれだけの命を救うことができるのか?

 

従業員を危険から守るために、これらの問いを考え続けていたマリア・リオスCEOは、ウェアラブルセンサーをベースにしたソリューションの作成に着手しました。

このソリューションは、作業環境をモニタリングし、異常やヒヤリハットの発生を検知し、作業者の安全を守るために即時フィードバックを提供するものです。この革新的なアイデアを現実に変えるために、ネーション・ウェイスト社にはテクノロジーと専門知識を持つパートナーが必要でした。

「このウェアラブルソリューションの開発が命を救うだけでなく、ビジネスモデルを根本的に変革する可能性があると分かっていました。なぜならそれまでに類を見ない、世界初の製品を提供する機会となるのですから。私たちは迅速に行動し、プロジェクトを実現させることができるパートナーを探し始めました。」

 


「事故や怪我が減ることで、導入企業は作業場での負傷に関連する訴訟費用や保険費用の軽減を見込めます。
約60%のコスト削減が可能となるでしょう。」

— ネーション・ウェイスト社 社長兼CEO マリア・リオス


 

■ 課題への取り組み – データの塊を、ウェル・ビーイング向上ソリューションへ変革

ビジョンを実現するために、ネーション・ウェイスト社はIBMをパートナーとしてチームを組みました。チームはIBM Maximo Worker Insightsを使用して、作業員を事故や負傷を回避するために設計されたウェアラブルソリューションNation Safety Netを開発しました。

 

マリア・リオスCEOは次のように説明しています。

「Nation Safety Netは、従業員の作業着に簡単に組み込むことができる、包括的ハザード検出ソリューションです。従業員の動きを測定して転倒や衝突の検出に役立つ加速度計や、熱センサーや心拍モニターなど、疲労の発見や熱中症の防止に役立つさまざまなセンサーを含むIoTソリューションです。」

「これらのセンサーは、現在テスト中のアルゴリズムと統合されていて、突然の高度変化や高温、異常な心拍数、ヘルメットを被っていない作業員や危険な地区にいる作業員など、潜在的な危険を示す状態を検出および特定します。」

 

IBM Maximo Worker Insightsは、Nation Safety NetセンサーをIoTプラットフォームに接続し、高度な分析とAIコンピューティング機能により、危険な状況を検出して着用者に通知する機能を有しています。

マリア・リオスCEOは続けます。

 

「Nation Safety Netが危険を検出すると、従業員がすぐに行動できるよう、振動やアラーム、あるいは点滅などを通じて従業員に警告を送ります。

さらに、管理者は、モバイルかタブレットデバイスを通じて各従業員の安全状態を即座に確認できるようになっています。そしてなにか事故や緊急事態が発生した場合には即座に通知を受け取れるようになっています。

こうして、Nation Safety Netは、職場の安全性をさらに強化しているんです。」

 

「IBM Maximo Worker Insightsが、これらすべてを可能にしているんです。 私たちがこのソリューションを導入したのは、これがNation Safety Netを”単なるセンサーの集合体”から、AIと高度な分析を用いて”従業員のウェル・ビーイングを向上するスマートなIoTソリューション”へと変革させるものだったからです。」

「IBMとのパートナーシップは、私たちのお客さまの職場の安全管理をも変革しました。IBMは、中小企業や起業家をとてもよく支援してくれるんです。私たちも、Nation Safety Net開発のあらゆる局面でサポートしてもらいました。私たちが新たな問題にぶつかるたび、IBMチームはその解決のためにいつも期待のさらに先まで踏み込み努力してくれるのです。」

 


「従業員の怪我がなくなり、職場におけるウェル・ビーイング文化の拡がりを支援できれば、
世界中のビジネスやさまざまな業界に大きな生産力の向上をもたらすことができるでしょう。
それこそが、企業と従業員の双方に利益をもたらす幸福な社会なのです。」

— ネーション・ウェイスト社 社長兼CEO マリア・リオス


 

ネイションウェイスト社について

ネイションウェイスト社は、建設、解体、商業、および産業の非危険廃棄物の除去、携帯トイレ、リサイクルサービスに特化した、商業廃棄物処理のエキスパート・カンパニーです。

あらゆる種類のごみ圧縮機、路上大型ごみ容器、大型廃棄物積み下ろしコンテナなど、さまざまな破棄物処理関連ソリューションを提供しています。

 

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

関連ソリューション: IBM Maximo Worker Insights

 

関連記事: セッションレポート「現場の安全管理におけるITの活用」(AIとIoTによる 安全管理・健康管理セミナーより)

 


村田 大寛 Watson IoT Technical Sales, Cognitive Solutions Unit Industry Platforms

当記事は、2018年1月に発表された記事 Case Study: Nation Waste, Inc.を抄訳し、日本向けにリライトしたものです。製品名は2019年9月現在のものに変更しています。

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