IBM Sustainability Software
現場の安全と技術者の未来 – 人びとの健康を守るIoT
2019年08月29日
カテゴリー IBM Sustainability Software | 安全・健康管理
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■ ミステリーゾーン – IoTとHSEの時代へ
『これは別世界への旅です。目や耳や心だけの世界ではなく、想像を絶したすばらしい別世界への旅。あなたは今、ミステリーゾーンへ入ろうとしているのです。」
— まだIoT(Internet of Things、モノのインターネット)もHSE(Health, Safety, and Environment、衛生・安全・環境)も存在していなかった1960年代にテレビ放映されていた人気番組『ミステリーゾーン』は、毎回こんなお決まりのオープニング・ナレーションからスタートしていました。
朝、全自動コーヒーメーカーが、目覚まし時計が鳴るタイミングに合わせて淹れたてのコーヒーを用意してくれる。会社へと向かう車にはクルーズコントロール機能が搭載されており、運転中の電話には自動応答機能が返答してくれ、会社に着けばセンサー付き社員証が自動でドアを開けてくれる。
現在、電子機器は私たちの日々の暮らしに組み込まれ、生活の一部となっています。さまざまな場所で取得されたデータが、蜘蛛の巣のようにつながりあったネットワークを駈け抜け、人間を介さずに瞬時に判断し対応が取られています。
そして私たちは、さまざまな場面で用いられているこうしたIoTテクノロジーを頼りとして、より効率的でスマートな社会に暮らしています。
いわば、ミステリーゾーンで描かれていた「未来的な世界」が現実のものとなっていると言えるでしょう。
■ 見えない危険にさらされている現場労働者
突然ですが、ここで一人の大変優秀な現場労働者であるフィル・サージ氏を紹介します。
フィルは朝、家を出ると地方の現場に向かいます。多くの現場を支援する彼は、多くの時間を現場での作業と移動に費やしており、事務所に立ち寄ることはめったにありません。
正確な知識と作業、そして時間管理にも優れているフィルは、現場で高く評価されています。会社もフィルを最も優秀な技術者として評価し、彼の技術とプロ意識を信頼し、最小限の管理下で最も難しい案件を彼に任せています。
しかし会社は、フィルという代えの効かない優秀な人材を、高価な機器を扱うときと同じように、大切に扱っているでしょうか? この3年間を振り返ってみましょう。
フィルは作業中、さまざまなリスクにさらされてきました。例えば、現場で発生する騒音です。
現場では、騒音が85から90デシベルを超える場合、防音措置として耳あてをする規定が設けられています。しかしフィルは、自身のこれまでの経験を基に、「至近距離にいる相手にも叫ばなければならない状況でなければ、防音措置は不要」と自己判断し、耳あてを使っていませんでした。
「できるだけ耳あてを使いたくない」と考えているフィルですが、彼が現場でほとんどの時間を過ごす作業場は、騒音源である電動工具から7〜8メートル上空にあります。
そしてフィルは、電気工作機械や加工機械・機具には120デシベルを越える騒音を発するものもあるということと、7〜8メートルという距離では、騒音は30デシベル程度しか下がらないということを、理解していないのです。
フィルは、自身が個人用保護具(PPE)が必要な環境にいることを、理解できていません。HSE(衛生・安全・環境)に関する十分な知識と理解がないまま、作業をしてしまっているのです。
気づかないうちに、自らを難聴になるリスクにさらしながら作業をしているのです。
他にも、目に見えない脅威は、日々作業員に蓄積し、長期的な健康被害をもたらす可能性を秘めています。フィルが日常的にさらされている工場の微粒子やホコリにも、健康上の被害をもたらすものが含まれているかもしれません。
たとえば、敷石の切断や研磨加工は、シリカなどの大量の粉じんを発生させます。もちろん、作業場にはなんらかの対応がされているでしょうし、近く通るときにはフィルも口を覆っていることでしょう。それでも、空中に分散している微粒子も、長期に渡れば被害をもたらす可能性があるのです。
■ 従業員とつながり、保護し、活躍を支える未来の企業
近い未来に、電子機器と機械、そして働く人びとがつながった世界がやってくるであろうことは想像に難くありません。しかし実際には、未来はすでに今ここでスタートしているのです。
若者たちは、現代がテクノロジー主導で、リアルタイムに必要な情報を入手できる時代に暮らしていることを理解しています。未来に必要とされるIoTテクノロジーは、もう存在しているのです。
センサーは機械に組み込まれています。データはすでに取得されているのです。ただ、技術者たちは未加工の生データを処理しきれずにいます。
しかし幸いなことに、さまざまなデータを環境や状況に紐付け、潜在的な危険性を予見し、防止策としてアラートや推奨事項とともに伝えるシステムは、すでに開発されています。新たに作り上げる必要はありません。
これらのシステムは、職場の環境や状況を計測するために配置されたセンサーと、技術者が身につけているウェアラブルセンサーを、従業員の安全確保に役立てています。騒音や粉じんなどの目に見えない危険から、従業員を守っているのです。
これらのシステムを駆使して従業員とつながり、保護し、活躍を支えるのが未来の企業なのです。
■ 従業員を守る取り組みは、組織や企業のリスク対策でもある
モノのつながりは、人と技術のつながりも促します。IBM Maximo Worker Insightsは、個々のセンサーやデバイスから収集したデータを組み合わせ、企業がより高度な分析と洞察を手にすることを支援します。
パートナー企業のセンサーからデータを収集し、Maximo Worker Insightsのリアルタイム分析と予測分析を駆使することで、機器が発生するデシベルをはじめ以下を導き出すことができます:
- 個々の作業員に対するdB(騒音)レベル
- その作業員が対応可能な騒音レベル
- 騒音レベルが続いた場合(数分、数時間、数日、数年)の作業員に与える影響
個人用保護具が適切に使用されているか? 保護具は想定通りに作動しているか?
–企業は保護具から取得されるこれらのデータを、個々の従業員の状態に合わせて判断することができます。
そして情報や判断を自社の安全管理手順に反映させるのと同時に、法や規制への遵守が間違いなく行われていることを証明することができます。
また、これは有害事象が実際に発生する前に、予防措置が開始されることを意味します。
「事故が起きる前の予防に重点を置き、企業と作業員のリスクを最小限に抑える」 — 今、多くの企業に求められているのは、最先端技術を取り入れて安全性と効率性を追求していくことです。
そして、従業員の健康と安全を守るための取り組みが、そのまま組織や企業のリスク対策でもあるのです。
■ Maximo HSE Managerの安全管理プロセスを包括的にサポートするMaximo Worker Insights
IBM Maximo Worker Insightsは、Maximo Asset Managementの安全管理プロセス強化のためのオプションであるMaximo Health, Safety and Environment(HSE) Managerと統合し、インシデント管理や調査を含む安全管理関連プロセスをサポートすることができます。
この連携ソリューションにより、作業者に関連するインシデントやヒヤリハットなど現象発生から是正措置や法定報告に至るまでのすべてのプロセスを包含した安全管理アプリケーションを実現することができます。
Maximo Worker Insightsがなんらかの事象を検知すると、Maximo HSE Managerは定義済みの安全管理基準と照合し、それが実際のインシデントであるかどうかを判別します。 そしてインシデントであると判断されると、自動的にインシデント管理プロセスが開始されます。
インシデント管理プロセスには発生状況などの情報が事前に入力されており、その後Maximo Worker Insightsによりインシデントに関連する情報がほぼリアルタイムに追加されていきます。
問い合わせ情報
お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com にご連絡ください。
関連ソリューション: IBM Maximo Worker Insights
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TEXT: 大坪 まや | Intern, Watson IoT
当記事は、How IoT in Heath, Safety and Environment (HSE) can affect the way we workを抄訳し、日本向けにリライトしたものです。
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