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フードバンクポータル構想は日本を元気にできるか? #2

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フードバンクポータル構想は日本を元気にできるか?

こんにちは!

貧困・食品ロス問題といったSDGsに関わる問題を、テクノロジーとパートナーシップで解決しようとチャレンジするボランティア有志による「フードバンクポータル構想」第2話目の連載となります。

前回の記事(第1話)では、日本における貧困・食品ロス問題の現状や、これらの問題の解決のためにIBMボランティア有志が中心となって開発したフードバンクポータルアプリ「Messhare(メシェア)」、NewsPicks主催『CHANGE to HOPE 2022』in 丸の内での「Messhare(メシェア)」アプリPRキャンペーン開催の様子についてご紹介しました。

今回の連載記事「フードバンクポータル構想は日本を元気にできるか? #2」では、前回からさらに踏み込んで、こちらの4部構成でお届けします。

 

まずは表の一番下、「食品寄付の規模」欄の各国の数字をご覧ください。

 

この表は、日本を含む主要な先進国の食品寄付量と、それにまつわる制度などを表したものです。寄付量が群を抜いて多いのはアメリカで年間739万トン、イギリス・フランス・オーストラリアもいずれも年間数万トン以上の範囲で食品の寄付が行われている中、日本の食品寄付量は「年間わずか2850トン」という衝撃的な数字です。

日本はこの5カ国の中で人口やGDPが2位ですから、年間数十万トンの寄付があってもおかしくないはずです。とても耳が痛い話ですが、まずは日本の食品寄付量は「桁違いに少ない」といった現状を知っていただきたいと思います。

 

次に、世界のフードバンク活動に関連する法整備状況4本柱で、各国の取り組み事例を交えながら比較していきたいと思います。

I. 税制優遇:寄附者が⾷品の寄附をする際にかかるコストの軽減
II. 免責制度:寄附された⾷品で⾷中毒など意図しない事故が起こった場合の寄附者の免責
III. 廃棄規制:⾷品廃棄の罰則規定
IV. 食品衛生法:賞味期限・消費期限切れ食品の取り扱いを規定

 

Ⅰ.  税制優遇の代表格はアメリカで、日本と比較すると2500倍という規模です。食品寄付に特化した「拡大控除」として、「食品の基準価格の2倍を上限」とする寄付金控除を受けられる仕組みを整えています。単なる社会貢献としてだけでなく、「廃棄するよりも、寄付した方がおトク」といった状況を作り出すことで、より多くの寄付を促すことができます。

しかし、アメリカが食品寄付量世界一である理由は税制優遇措置だけなのでしょうか?「貧困家庭など届けるべき人へ優先して食品寄付をしたい」と考えれば、食品寄付の受け取り時に生活保護認定証を提示するなど、認証作業という手続きが必要になりますが、それらの手続きを完全に撤廃し、分け隔てなく無償配布するポリシーを徹底している団体が「NPO Martha’s Kitchen」です。

徹底した食品ロス削減を目指すならば、受け取る側に資格制限を入れるべきではないことが伺えます。Messhareが「無償取引」「廃棄予定食品を食べること自体が社会貢献である」ことに拘っている理由はここにあります。

【出典】NPO Martha‘s Kitchen

 

では、日本ではどうでしょうか。

農林水産省より発表されている「税制上の優遇措置」施策があります。食品の寄付をした事業者は、会計時に寄付提供した食品の金額全額(配送費等、食品の取引費用を含む)を損金の額へ算入することが可能です。また、認定NPO法人等などの特定のフードバンクに対する寄附金については、一般の寄附金とは別枠で、損金算入限度額が設定される税制上の優遇措置があります。

ただし、アメリカのような「食品の基準価格の2倍を上限」という拡大控除の仕組みはないため「廃棄より寄付の方がおトク」とまでは言い切れないのが現状です。また、ボランティア有志活動の実感としては、実際にお話した食品関連業界の方でも「制度の存在を知らなかった」という声が多く、認知度の面でも課題が残っています。

出典:農林水産省「食品受入能力向上緊急支援事業(フードバンク支援事業)」

 

Ⅱ.  免責制度は「善きソマリア人の法(Good Samaritan law)」という考え方に則って、アメリカ・カナダ・オーストラリアなどの国々ですでに施行されています。

「災難に遭ったり急病になったりした人など(窮地の人)を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法であり、善意で食品寄付したことがきっかけであるにもかかわらず、誤った対応であると訴えられ、処罰を受ける恐れをなくすことで、食品寄付を躊躇させない、安心して食品寄付ができるようにする狙いがあります。

書籍「食品ロスの経済学」の著者でもある日本女子大学小林富雄教授は、「フードバンクが盛んな国で、善きサマリア人の法のような免責制度のない国はない」とメッセージされています。しかし、日本ではまだ、この免責制度が施行されておらず、食品関連企業からの食品寄付が広がらない大きなハードルとなっています。

現状、食品関連企業による善意での食品寄付が、万に一つでも食中毒等の事故に繋がってしまえば、企業の評判を大きく下げ、経営危機に直結してしまうという恐ろしさがあります。よって、免責制度が導⼊されることで企業側の不安が解消され、食品寄附量増大への大きな後押しとなることが期待されます。

 

Ⅲ.  廃棄規制の代表格はフランスです。政府では、食品廃棄に対する罰金付きの法規制によって廃棄から寄付への誘導を推進しており、その対象事業を拡大させています。また、民間では「企業のCSR活動としての食品ロス削減」をコンサルティングするスタートアップ企業が増加する、といった現象が見られます。

 

Ⅳ.  日本の食品衛生法では、食中毒が発生した際に定められている食品を扱う事業者へのペナルティが厳しいために、積極的に食品寄付する事業者は少なく、さらに食品業界の「1/3ルール」という商習慣により、消費・賞味期限表示よりも相当早い段階で廃棄せざるを得ない状況がありますが、世界では食品の期限表示そのものを撤廃する動きも出てきています。

イギリスでは「食品期限表示は食品ロスを助長している」という考えから、スーパー各社が乳製品や青果等の期限表示撤廃を表明して消費者自身で判断するよう呼びかけ、注目を集めました。

しかし、食品期限表示の概念が登場したのは1970年代、かつて50年前は「食品がまだ食べられるか」を自ら判断することが至って普通のことでした。

社会として、将来の食糧危機問題、食品ロス削減が求められる昨今の状況と照らし合わせれば、いわば原点回帰とも言うべきこういった取り組みが再評価されるのは「当然の流れ」と言えるでしょう。

【出典】2023年「なぜ英国の大手スーパーは賞味期限表示を撤廃しているのか 『賞味期限』で思考停止しないために(海外編)SDGs世界レポート」Yahoo! Japanニュース

 

いずれにしても、法整備だけで食品ロス問題が完全に解決できる、ということはありません。アメリカにおけるアンケート調査の結果でも、「賞味期限はおいしく食べられる期限」であるのに、捨ててしまう家庭が非常に多いそうです。

もし日本が、本気で食品ロス削減に取り組み、食品寄付の規模拡大を目指すのであれば、

「食品を廃棄してしまうのはもったいないので、食べられるうちに寄付し合う行動は当たり前だ」

「善意で寄付された食品で食中毒になったとしても、一方的に食品寄付者側を責めるべきではない」

「食品期限表示に頼らず、自己判断で食べる」

といった、社会全体としての食品寄付文化の醸成や食品期限表示に関する理解の促進もまた、大きな課題であると考えています。

 

各国ごとに食品ロス削減に向け採用されている施策や法制度、文化が異なるために、必要とされる食品取引プラットフォーム系アプリのあり方(ニーズ)も、少しずつ異なってくるだろうと考えています。

そこでMesshareアプリの他、海外と国内における代表的な食品取引プラットフォーム系アプリとの違いを整理しました。

 

実は「Messhareと他のアプリは何が違うの?」といった質問をよく受けます。そこで今回は、「Messhareと他アプリとの大きな違いは何であるのか」に焦点をおいてご説明していきたいと思います。

第一に、運営主体がNPO法人(ダイバーシティワールド)であり、寄付を募って運営している「ドラゴンボールの元気玉的な」スタイルである点が大きく違います。食品販売による手数料等の売上を原資にしていません。

第二に、Messhareでは未成年である子どもや生活に苦しんでいる方にも利用していただきたいという思いから、金銭のやり取りが発生しない「無償取引」にこだわっています。

経営者にとっては、まだ賞味期限に余裕のある(売ることができる)食品であれば売ることが最善ですので、Messhareがターゲットとする食品は「廃棄寸前食品」に絞っています。食品の販売ができる状態のうちは、既存の有償取引アプリを使っていただきたいと考えています。

最近、先進国であるにもかかわらず、「日本では子どもの6人に1人はおなかが空いて眠れない」という衝撃の報道が流れました。ほとんどの子どもは自ら収入を得る手段を持ちません。海外アプリでは、「法的責任能力がない」として未成年の利用を禁止していますが、Messhareはその問題を乗り越えることにチャレンジ。「アカウント登録時の親権者の同意」+「信頼性の高い法人ユーザーからのみ食品を受け取れる制限」といった工夫により、未成年であっても使用できるアプリを目指しています。

 

次に、運営主体がNPO法人であることで、どのようにアプリ運営を行なっていくか? という資金面のお話についても、触れたいと思います。

 

Messhareは「たべて社会貢献」をキャッチコピーに、食べきれずに余ってしまった食品がある方、食品廃棄で心を痛めている企業の方、すべての方の笑顔を増やしていきたいと考えています。100%ボランティア有志で少しずつ改善を重ねながら開発し、アプリを運営していますが、このままいくとインフラ設備(クラウド環境維持のための費用)の資金が年内には尽きてしまう状況です。

サスティナブルなアプリ運営維持のためにスタートしたクラウドファウンディング第1回目ですが、目標金額を10万円に設定、今月末(5/31)が期限となっています。ご賛同いただける方はぜひ、ご協力よろしくお願いいたします!

READYFOR 「おいしく、わけあう」フードロス対策アプリの運営をご支援ください!

 

ボランティア有志は現在、まずは日本の食品寄付量増大のために、Messhareアプリを日本全国へ浸透させることを目指して、2つの実証実験の調整を進めています。

実証実験の目的は、「廃棄より寄付することの効果」についての実証実験レポートをまとめつつ、全国拡大に向けてどんな問題が起こり得るのかというフィードバックを収集し、アプリの改善とさらなる認知度向上へとつなげていくことです。

 

実証実験1つ目は、日本惣菜協会の荻野フェローのご推薦により実現したもので、東日本大震災での復興支援、そして現在はこども食堂への食材支援をされているという、ソーシャルグッドな活動に積極的なシブヤ食品様(東北地方で最大規模の工場を持つお弁当宅配事業を手掛ける企業)にご協力いただき、Messhareアプリを通じて廃棄になってしまうお弁当を寄付しよう、というものです。

しかし、この実証実験を推進するにあたって、大きな懸念がひとつだけあります。それは、「日本の法律では免責制度がないこと」です。シブヤ食品様の場合、食品寄付したものであるにもかかわらず、万が一の食中毒事件が発生した際には、工場全体が操業停止、さらには風評被害による経営への打撃というペナルティを受けることになってしまいます。この問題は、シブヤ食品様に限らず、あらゆる食品関連企業にとっての「ペナルティが怖くて安心して食品寄付ができない」というジレンマです。

そこで日本女子大学の小林教授にご相談したところ、農林水産省食品ロス・リサイクル対策室のみなさまをご紹介いただき、このジレンマの回避策についてご相談させていただいているところです。多くの食品関連企業が安心して食品寄付ができるよう、1日でも早くこのジレンマを解消したいと考えています。

 

実証実験2つ目は、岩手県遠野市の宮守川上流生産組合様が企画されているフリーマーケットイベントで、Messhareを利用して扱う対象に食品を加えられないだろうかというものです。

Messhareで取引できる対象は食品であり、オンライン、かつ無償取引に限定されますので、個人宅で余った食品を持ち寄る、または受け取りに行くといった行動の増加は、この「まちおこし」的なイベントへのタッチポイントが増えることが期待できます。

また、このイベントでの効果を踏まえて、収穫期になると大量に余ってしまう野菜(不適格なものも販売する取り組みもありますが、それでも売り切れず余ってしまうそうです)についても、寄付していくイベントの企画へとつなげたい、とも考えています。

 


この記事を読み、活動に関心を持っていただいた方には、ぜひ、Messhareアプリのご利用、口コミでの拡散、PRキャンペーンのお手伝いなど、フードバンクポータル構想プロジェクトへのご協力をお願いできたら嬉しいです。

また、フードバンクポータル構想プロジェクトでは、日本の食品ロスと貧困問題解決に向けて、一緒に取り組んでいただける方を募集しています。「我こそは!」と思う方はぜひ、「フードバンクポータル構想コンソーシアム」ホームページのお問い合わせフォームより、ご連絡ください。

 

次回、連載記事「フードバンクポータル構想は日本を元気にできるか?」第3話では、「日本における食品寄付文化を醸成するためのボランティア有志の取り組み状況」のその後についてお届けする予定です。ぜひ次回もお楽しみに!

 

 

問い合わせ情報

NPO法人ダイバーシティワールド | フードバンクポータル構想プロジェクト
「フードバンクポータル構想コンソーシアム」お問い合わせフォーム

https://foodbank.diversityworldrc.net/contact/

 

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