IBM Sustainability Software
[事例]メルボルンをさらに暮らしやすい街に | IBM Maximoによるサステナブルな水管理
2022年08月24日
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ビクトリア州は、タスマニア州に次いでオーストラリアで最も年間降水量が多い州です。この降水量の多さと土壌の良さから、ビクトリア州は「ガーデンステート(庭の州)」という愛称で親しまれています。
そしてビクトリア州の州都メルボルン市は土地の19%が緑地となっており、緑が多い街として世界的にもよく知られています。
しかし気候変動の影響により、メルボルン市も近年激しい降雨現象などの異常天候に見舞われています。2018年には1000年に1度の大雨が市を襲い、15分間で50ミリを超える降雨により鉄砲水が発生し、広範囲で停電が起きました。
また、メルボルン近郊の海面は今後30年の間に24センチ上昇すると予測されており、高潮による沿岸部の洪水が増加することが懸念されています。
豪雨による雨水から街を守るには、排水システムが適切に機能するための定期的な点検とメンテナンスが必要です。
メルボルン市の水道システム会社であるメルボルン・ウォーターは、約4,000の集水ピットやグレーチングを含む、広大な排水ネットワークを運用・管理し、洪水に備えています。
「以前は、定期点検の日程を決めて作業員を派遣し、格子蓋が問題なく稼働しているかどうかを確認していました。ただこの方法では、検査当日はなんら問題がなくてもその翌日に格子が障害物で塞がれ、作業員が来るまでそのままになってしまうということもありました。」
メルボルン・ウォーターのオートメーション・チームリーダーであるラッセル・ライディング氏は続けます。「そのタイミングで大雨が降ってしまうと、付近一帯に洪水が起きてしまう可能性があります。私たちが本当に必要としているのは、格子が正しく排水できる状態に保てる点検でした。」
しかし、格子蓋の点検を人手に頼っている限り、そこには常に人員移動の問題がつきまといます。また、メルボルン・ウォーターから4人の作業チームを派遣するだけではなく、現地での交通整理係りなどの追加人員も必要となります。
「作業チームが出動する際には、必ず安全面の考慮が必要となります。」ライディング氏は言います。「もっと効率的に作業を進め、人員を他の仕事に振り分ける方法があるのは分かっていました。そこでIBMと一緒に遠隔点検という選択肢の検討をスタートしたのです」。
目視点検を自動化
メルボルンウォーターは、IBM Maximo Application Suite(MAS)を2013年から使っていました。
「私はビクトリアとタスマニア地域のMaximoユーザーグループのリーダーを務めていました。ですから、IBMとは何度も話し合っていましたし、Maximoのこともよく分かっていました」。
メルボルン・ウォーター、アセット・インフォメーション改善スペシャリストのゾルタン・ケリー氏は言います。「Maximoにはまだ我われが活用できていない機能がたくさん装備されていることを知っていました。それが、我われがMaximoプラットフォームに投資した理由のひとつです。必要なときが来たらすぐに使い始められるということですから。」
新しい計画が具体化し始めたのは、あるサプライヤーが、メルボルン・ウォーターのIoTプラットフォームに統合できる新しい静止画カメラを提示したときでした。
「現地のIBMチームと定期的に話し合い、何が可能かを教えてもらっているうちに、我われは気付いたのです。『画像認識ソリューションを開発すれば、雨水格子の検査プロセスを改善できるのではないか』と」。
計画策定は完了し、メルボルン・ウォーターは実証実験地域に状況監視用の静止画カメラを設置しました。カメラは統合ソリューションのネットワークに接続され、IBM Maximo Health、IBM Maximo Monitor、IBM Maximo Visual Inspectionソフトウェアなどにデータが送られるようになりました。
IBM Cloudでは、サービスのスタートも拡張も簡単に行えます。IBM Cloudのカタログから必要なものを選べばいいのですから。我われが望むもので、IBM Cloudでできないものはありません。
ゾルタン・ケリー | メルボルン・ウォーター、アセット・インフォメーション改善スペシャリスト
ケリー氏は言います。「基本的にこれは内部プロジェクトであり、外部ベンダーへの依頼は考えていませんでした。ですから、製品パッケージをそのまま使えるということは大きなメリットでした。IBM Maximoのソフトウェアマネジメント・モジュールには一切手を入れず、提供されたままの状態で採用しています。」
画像認識システムの全体はIBM Cloud上に展開されています。「基本的にはSaaSのモニター製品を使用しており、必要な部分にはIBM Cloudのサービスやコンポーネントを用いて拡張しています」。
ケリー氏はこう続けます。「IBM Cloudでは、サービスのスタートも拡張も簡単に行えます。IBM Cloudのカタログから必要なものを選べばいいのですから。我われが望むもので、IBM Cloudでできないものはありません」。
画像認識システム実証実験の第一段階では、実証実験地域のデータを用いて集水ピットの雨水格子が閉塞していないかの検出に重点を置きました。
この実験には閉塞を認識するためのAIツールの開発も含まれており、最終的には完全に人手を排した閉塞認知AIソリューションへの移行を目標としています。
Maximo IoTソリューションは費用効果が大変高いので、まだまだできることがたくさんあります。そしてIBMのサポートにより、私たちが望むものすべてを簡単に構築することができます。
ラッセル・ライディング | メルボルン・ウォーター、オートメーション・チームリーダー
メルボルン・ウォーターとIBMは密接に連携し、Maximoプラットフォームが運用目標を達成できるよう、ソリューションの開発と展開を進めてきました。
「IBMからはすべての質問に対して回答を得ることができます。このレベルのサポートを得られるところは他には思い当たりません。」ライディング氏はそう語ります。
メンテナンス時間の短縮とサステナビリティの構築
今回のIoT検査カメラとMaximoを用いた実証実験が、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition: センサーとネットワークを介したコンピューター・システム監視とプロセス制御)よりも遥かに低コストで済むことは、メルボルン・ウォーターにとってはスタート前から明らかでした。
「排水管を流れる水量やレベルを測定するためのSCADAソリューションには、莫大な費用が必要でした。IoTデバイスの導入の方が、はるかに低い設備投資で済みます。」とライディング氏は言います。
IBM Maximoソリューションを使用して「時間基準保全(Time Based Maintenance)」から「状態基準保全(Condition Based Maintenance)」へと移行した後、メルボルン・ウォーターはIoT 技術の利用拡大を進めようとしています。
ケリー氏は次のように言っています。
「今後24ヶ月の間に、SCADAを用いた制御や監視との違いを解明し、そのギャップを埋める作業を進める予定です。我われのIoTデバイスは補助的なデータを提供するのに大変優れていますし、これらのプラットフォームがIBM Cloud上にあることが大きな価値となります。そもそも社内中心のソリューションではないですし、外部組織とのデータ共有が容易にできることが大きなメリットですから」。
現在メルボルン・ウォーターの社員は、実験地域に設置されたカメラからの画像をIBM Maximoダッシュボードを使用して監視していますが、今後はさまざまなMaximoの機能を、分析機能と組み合わせて使用していくことを考えています。
リディング氏は言います。「私たちは今エンドツーエンドのソリューションを導入している最中です。閉塞認識AIツールの開発が完了したので、今後はMaximoに連動させて作業指示を自動発行することができるようになるでしょう」。
実証の次フェーズでは、メルボルン・ウォーターの排水ネットワークで最も重要な地域にカメラを設置する予定です。そしてより多くの集水ピットの雨水格子が映像で監視されるようになれば、現場点検に派遣される作業員の数を大幅に減少でき、スメンテナンス担当者の時間を数千時間節約できる見込みです。
このシステムが完成すれば、年間数万ドルから数十万ドルのコスト削減が可能になると試算されています。
メルボルン・ウォーターは、IoTネットワークを利用した汚染物質の検出や、人口増加に対応できる持続可能な水資源の開発も検討しています。また同市は、必要な時に備えて淡水化プラントを建設し淡水供給を増強しました。
ライディング氏は言います。「雨水をもっと活用し、貯水して処理することで、庭園への水やりなどにも飲料水を用いていた地域に炭水を提供できます。排水などの代替水源を利用することで、こうした設備を用いずに済ませることもできるのではないかと考えています」。
ケリー氏は言います。「長年にわたり、メルボルンは世界で最も住みやすい都市の一つとされています。IBM MaximoとIBM Cloudツールを排水やレクリエーション、自然環境の領域へと拡げていくことで、我われは今後メルボルンを一層暮らしやすい街とすることができるでしょう。」
メルボルン・ウォーターについて
メルボルン・ウォーターは、清潔な飲料水の提供、下水の処理による大切な資源の回収と再利用、洪水防止計画、メルボルンの全長25,000kmの川と小川の健全性維持など、水循環のあらゆる部分を130年以上にわたって運営管理しています。
メルボルン・ウォーターはビクトリア州政府によって所有されており、1,100人以上の従業員を擁しています。
当記事は、事例『Smart sustainability — tapping the power of IoT technology』を日本のお客様向けにリライトしたものです。
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