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日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート

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2024年10月15〜16日の2日間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「日本Maximoユーザー会」が開催されました。

 

石油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企業、施設管理企業など、IBM Maximoをご利用中のお客様を中心に、導入・運用支援をされているパートナー企業様を含め11社・26名の方がたが参加され、Maximoをより効果的に活用するためのディスカッションや情報交換が活発に行われました。

日本Maximoユーザー会2024 2日間の実施プログラム

当レポートでは、7つの章に分けられたプログラムの中から参加者の評価が特に高かったものを、注目ポイントとともにご紹介します。

目次


 

● パネルディスカッション | 人材とシステム

ユーザー会幹事企業のジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社 二口剛さんよりMaximoユーザー会2024にかける期待が語られた後、参加者の自己紹介と、参加企業の「Maximo運用・活用ステータス」の分析結果発表が行われました。

オープニング挨拶中のジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社 二口剛さん

 

続いて行われたのが、開催後の参加者アンケート結果で、満足度や有用性がとりわけ高く評価されたプログラムの1つであるパネルディスカッションです。

下記テーマに沿って2グループに分かれ、パネリストによるディスカッションを45分聴講した後、それぞれのグループで1時間の追加ディスカッションを行いました。

その後、各グループによるまとめと発表を約1時間で行い、最後に参加者全体でのディスカッションタイムとなりました。

テーマ1: Maximoの人材育成・教育

テーマ2: システム拡張・運用に関する取り組み

 

「テーマ1: Maximoの人材育成・教育」グループでは、過去・現在・未来の3つの視点でパネリストが実施している工夫や課題について議論を行いました。

単なるシステムの切り替えではなく、パッケージを理解して業務を変えていくことが必要であること。そしてその必要性を、トップダウン・ボトムアップ両面で浸透させること。——これが労働人口の減少や労働時間の制約といった「人材不足」という課題に対しても、そして熟練者の退職やノウハウの属人化からなる「育成・教育」という課題に対しても重要であることが、グループ全体の共通認識となり参加者全員が深く共感していました。

そして「テーマ2: システム拡張・運用に関する取り組み」グループでは、複雑化するシステム環境における設備保全やアセットマネジメントに対するスタンスや、パッケージシステムの強みをより生かした運用について、各社の経験や戦略、課題感が共有され、打ち手についての討論が進みました。

 

「ここまで本音で、課題とそれに対するアプローチを聞ける場所は他に考えられない。」

「唯一無二の解決策がないことがわかった。しかし、多数の具体的な打ち手のヒントを、濃い内容とボリュームで得ることができた。」
——懇親会や振り返りの場では、こうした声が多くの参加者から聞こえてきました。

 

● 生成AI on Maximo | 「分析的かつ説得力のある形で」

「人材」と「システム」という異なるテーマのパネルディスカッションの両者で、課題解決策として「生成AI(ジェネレーティブAI)」に大きな期待が寄せられていたのが興味深く、印象的で、下記に代表される発言が数多く聞かれました。

 

  • 生成AIを活用するために、どのように/どのようなデータを取りためるべきか。
  • カスタマイゼーションやテーラリングをし過ぎると、生成AIの活用やBI(ビジネス・インテリジェンス)連携などの「データ利活用」に悪影響が出かねない。どこが注意ポイントとなるのか。
  • 信頼性中心保全 (RCM)を実現したい。具体的には、保全メンバーに対しては生成AIによる信頼性とコストの両面で適正な保全実行を推奨してほしい。経営層には、コストをかけてでも手厚く対応すべきところと事後保全でもよい部分とを、分析的かつ説得力のある形で生成AIに提言してほしい。

 

こうした各ユーザー企業の意見に対し、プロフェッショナル・サービス組織「IBM Technology Expert Labs」所属の横山からは、「業務処理とデータ構造を崩さない開発を。」「高度な分析や使い勝手にこだわったUIは、APIを活用した『外出し』の検討を。」などのアドバイスが提供されました。

また、Maximoの強みであるAPM(アプリケーション・パフォーマンス管理)領域をより生かした信頼性中心保全の実現に向けた取り組みについては、2日目のプログラム「MaximoWorld参加報告」や、「Maximo最新情報紹介」で行われ、Maximoの生成AI組み込みおよび連携に関する現在実験中の取り組みや今後の計画が紹介され、参加者から大きな期待が寄せられていました。

 

● MUWGご参加に関するご講演 | 競合比較と自社開発との比較

2日目のオープニングは、中部電力パワーグリッド株式会社 システム部門にてMaximo担当5年目の金井 健太さんによる「MUWGご参加に関するご講演」からスタートしました。

MUWGの概要紹介中の、中部電力パワーグリッド株式会社金井健太さん

 

MUWGとは「Maximo Utility Working Group」の略で「マーグ」と発音される、世界各国の電気、ガス、水道などの公益事業組織を中心としたMaximoユーザーコミュニティーです。

金井さんは今年4月に米国テネシー州の都市チャタヌーガで開催されたMUWGのカンファレンスにセッション・スピーカーとして参加されました。今回は、その際にお話しされた中部電力パワーグリッドにおけるMaximoの導入~運用~未来展望について共有いただくとともに、MUWGでの経験についてお話いただきました。

ユーザー会参加者からの評価がとても高かった金井さんのMUWG講演レポート。その一部をご紹介します。

 

  • 「電力の安定供給」をミッションとしている中部電力パワーグリッドは、配電、送電、変電、系統、通信、建築といった複数部門における多くのアセット管理にMaximoを導入・運用している。
  • Maximo導入検討では、さまざまな観点で競合製品との比較を実施していた。Maximo採用決定理由は「新機能追加の容易さ」「保守性の高さ」「ユーザーフレンドリーなインターフェース」。なお、自社開発との比較では、開発費用および開発期間でMaximoの優位性が明らかになった。
  • Maximo導入以前は、高い開発コストや二重入力、そしてアセットのライフサイクル(設置・点検・修理・撤去)コストが不明であることが主な課題だった。Maximo導入後は、ライフサイクルコストの記録が容易に行われるようになったため、今後、各コストデータを蓄積しデータ分析につなげていきたい。
  • Maximo運開後も残った課題は、「当社独自の点検ルールがMaximo標準に合わない」や「ロケーションと設備の関係性を可視化し、ユーザービリティを向上したい」。Maximo標準に合わない部分は別システムを組むなど対応を進めている。
  • 一言で言うなら、チャタヌーガでのMUWGカンファレンスは「とても楽しかった!」。全体参加者はおよそ500名、中部電力パワーグリッドのブレイクアウトセッションには40名程度参加。システム開発期間やユーザートレーニングについていくつかの質疑応答を行った。パートナー企業が中心となった「Vendor Night」というイベントもあり、とても盛り上がっていた。

 

● ラウンドテーブル | 経営層の期待と現場の期待のバランス

続いてご紹介するのは、2日目最後のセッションとなったラウンドテーブルです。5つの少人数グループに分かれて、踏み込んだ討議と共同作業を行いました。それぞれのグループテーマは以下です(テーマ3は人数が多かったので2グループに分割)。

  1. 利活用推進・現場のチェンジマネジメント
  2. 保全管理業務に対する自社の工夫 (業務視点の工夫)
  3. Maximo利用の懸念・工夫(投資対効果の測り方など)
  4. データ利活用に関する課題・工夫

 

ここでは、各グループに書記として参加したIBM社員の声をご紹介します。

 

1. 利活用推進・現場のチェンジマネジメント(橋本)

経営層の「合理化・成果への期待」と、現場の「現状維持・使いやすさへの期待」のバランスに苦心されている様子が強く感じられた。

CBM(状態基準保全)に使えるデータの入力や蓄積でお悩みの参加者が多かったので、今後より突っ込んだ議論の場を検討したい。

 

2. 保全管理業務に対する自社の工夫 (業務視点の工夫)(津久井)

ユーザー企業様ごとに業務の工夫についてお話しいただき、参加者全員での深掘りを行い、必要に応じてパートナー様やIBMから対応策をコメントさせていただきました。

ドローン活用や作業日報の対応などトピックの共通点も多く、赤裸々にお話しいただけたことで皆様にとって有益な時間となった印象です。

 

3. Maximo利用の懸念・工夫(投資対効果の測り方など)(小林)

共通する懸念点、反省点を踏まえた今後の利用方法について議論いただきつつ、すでにMaximoを大規模利用されているお客様が利用拡大を検討中のお客様へアドバイスされたりと、活発に意見交換をしていただきました。

 

4. データ利活用に関する課題・工夫(梅原)

レガシーシステムが残っている影響もあり、データが散在しているという課題は各社共通のお悩みのようで、活発に意見交換されていました。また、データサイエンティストやDX人材育成についても同様のようで、お役に立てることがありそうだと感じました。

 

● パートナー企業による展示 | お悩み相談室

 

最後に、今回初の試みとなった懇親会会場でのパートナー展示ブースに対する参加者の感想と、ユーザー会全体コーディネートを行ったIBM 根来佳穂の言葉をご紹介します。

 

・ 株式会社ソルパック ブース

「Maximo Application Suite 9.0へのバージョンアップ検討に向け、実際のインターフェースや使い勝手を確認できてありがたかった。特にモバイルアプリのメニューや挙動などを実機で触れたのはありがたかったです。」

 

・ 株式会社EXA ブース

「『お悩み相談室』のように、時間を気にせずさまざまな質問にご回答いただけて、大いに参考になりました。続けて欲しいです。

また、導入目的の明確化と事前の業務調査を行った上で、パッケーシの特性理解を進めることが非常に重要だと改めて理解できました。」

 

・ 東芝デジタルソリューションズ  ブース

「長年Maximoおよびアセットマネジメントに取り組まれている二見さんの話を、もっとじっくり聞いてみたいと思いました。WAOTについてももう少し調べてみようと思います。」

 

ユーザー会全体コーディネート IBM 根来佳穂

今回、企画段階から参加させていただきましたが、初めてのMaximoユーザー会参加ということもあり、当初は不安を感じていました。

特に、「意見交換の場が盛り上がらなかったらどうしよう…」と心配していましたが、ユーザーの皆様が積極的にご参加くださり活発にご発言いただいたおかげで、その不安はまったくの杞憂に終わり、ユーザーの皆様のリアルな声を直接お聞きできるとても貴重な経験となりました。

皆様からいただいた具体的な課題をもとに、今後はその解決に向けた提案や支援ができるよう、さらに学びを深めていきたいと思います。

今回の開催にあたりご協力いただいたユーザーの皆様、パートナーの皆様、そして関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

ユーザー会クロージング挨拶中のIBM 根来佳穂

 


TEXT 八木橋パチ

 

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