IBM Sustainability Software
「正直者が馬鹿を見ない」社会をブロックチェーンで作りたいんです(Watson IoT 槇 あずさ)
2019年05月16日
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Watson IoTチームメンバー・インタビュー #15
槇 あずさ GBS マネージング・コンサルタント
IoTやAI、ブロックチェーン などに代表されるテクノロジーを踏まえ、過去・今・未来と自らの考えを語るWatson IoTチームメンバー・インタビュー。第15弾はコンサルタントとしてブロックチェーンやデジタル変革を企業へと拡げている槇さんにご登場いただきました。
(インタビュアー 八木橋パチ)
— お久しぶりです。合宿以来ですよね。今日はよろしくお願いします。
今日はお招きありがとうございます! …でも、本当に私でいいんですか? 私、Watson IoT部門の人じゃないし、著名なコンサルタントってわけでもないんですけど…。
— もちろんです。「Watson IoTチーム」は所属部門の話ではなく、所属意識の問題ですから。合宿でのプレゼンを聞いたときから、絶対にこの人は仲間だしインタビューにご登場いただきたいと思っていました。それではまず、簡単に自己紹介をお願いします。
仲間だって思えて貰えて嬉しいです! ではさっそく。2008年にIBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS)という、当時は日本IBMとは別法人となっていた会社に入社しました。
出身は佐賀県での〜んびり育ち、大学と大学院は京都で過ごし、入社までは東京には縁がない生活を送っていました。なので、IBCSの入社面接で初めて東京駅に来たんですよね。それで面接会場が丸ビルだったんですけど、駅前にあるって聞いていたのに見当たらなくて、駅員さんに「丸いビルがどこにも見当たらないんですが、丸ビルはどこですか?」って聞いたんです。
— (笑)嘘でしょー! それ、ネタじゃなくて?
本当の話ですって! 私パソコンのことも全然知らなくって、入社後の最初の研修でThinkPadを渡されたんですが、電源の入れ方も分からなくて…。「どうしてこの真ん中の赤いポッチを押しても何も起きないの!?」って。
その後、左下から順番に一つずつキーボードのキーを押していったんですけど、何も起きなくて…。って、当たり前ですけどね。結局十数分後にようやく電源を入れられた時には、研修はすっかり先に進んじゃってて(笑)。
— そんな槇さんも、今は企業のデジタル・トランスフォーメーションの推進を支援しているんですよね?
はい、そうです。ビジネスプロセスや日常のオペレーションにデジタル体験を組み込んだり、サプライチェーン改革のお手伝いをしたりしています。
特に力を入れているのがブロックチェーンの導入で、私はそこに大きな可能性を感じています。
— 私は個人的には「投機対象としての仮想通貨」のイメージもまだ強く残っているんですが、ブロックチェーンのどのあたりに「大きな可能性」を感じているんですか?
そうですよね、そういう方も少なくないと思います。でも、私の個人的な解釈では、投機的な部分はブロックチェーンの本質とは無関係です。
共通のルールを基としたプログラムを使用して、共通のデータベースに行動記録を残していく。それによって共通の取り組みをする人たちや組織が、無駄なく透明感の高い価値交換をすることができる — それがブロックチェーンの根幹です。手段というか、単なる道具でしかありません。
— スマートコントラクトという言葉もよく耳にします。
スマートコントラクトは、さっきの説明の「共通のルールを基としたプログラム」の部分ですね。
信用情報を得るのに第三者に頼る必要がないという点がポイントで、これによって、同じ目的意識を持っているもの同士が、無駄なくスピーディーに価値を交換できます。
参考: 統計分析とスマートコントラクト – 設備稼働率の向上(「ISE技術者講演レポート: IoT x AIビジネスを成功に導くアプローチ(清水 宣行)」より)
— 「同じ目的意識を持っているもの同士」ですか。もう少し説明してもらえますか?
今の社会では、信用って会社の規模だとかイメージに左右されるところがかなり大きいですよね。そのせいで、規模としては決して大きくないけど、立派な考え方に基づいて地に足をつけたビジネスをしっかりと重ねている中小企業がなかなか第三者機関から信用されなかったり…なんてこともあります。
私はブロックチェーンが、目的や価値観を共有する人たちが、その行動や意識の意義を認めて交換するための基盤技術となって、通貨やそれに代わるものをやりとりするための道具になると思っています。
その人たちの経済圏のプラットフォームですね。
— いわゆる「トークンエコノミー」と呼ばれる経済圏ですね。
そうですね。もう少しわかりやすく説明すると、自分が価値を感じる行動を積み重ねてきた企業や共感する相手に対して、その行為を認め、なにかに交換できる価値を持つ「トークン」を送ることですね。そのトークンで経済が回る仕組みがトークンエコノミーと呼ばれています。
私はこれを「正直者が馬鹿を見ない」社会を作るための仕組みじゃないかと思っています。
— 良いことをした人がきちんと報われる社会ということですね。
はい。善意や善行に対する人びとの感謝が、経済的にも社会を回していくようになっていくってことです。
日本でも、例えばペットボトルの蓋をきちんと分別ゴミとして捨てている人とか、街中でゴミを拾う活動をしている人たちとかに、私たち市民や行政が感謝のトークンを送れるような仕組みがあったらいいなって思いますよね。そしてこういう取り組みを支援する企業が増えて、さらにはそれを自社ビジネスの根幹にも組み込んでいこうという動きが、今後はもっと本格化していくと思うんです。
— そういう社会の中では、個人も複数の経済圏に属しながら暮らすようになりますね。
そうです。意識の変化や成長にあわせて、属する経済圏やコミュニティーを変化させながら暮らしていきます。そうなると自分たちが共感する企業やコミュニティーに自身の意思を反映しやすくなるし、それを受けて企業の活動もより透明性が高まりますよね。
今よりも民意が反映されやすい社会になるんじゃないでしょうか。
— とは言え、そうした社会が実現するにはまだ相当時間がかかりそうな気がします。それに、自分と価値観の近い人や意見ばかりが集まりやすい状況では、「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」と呼ばれる現象が起き、意見の先鋭化やグループの分極化が進むのではないかという恐れも最近よく耳にします。
たしかにそういう見方もあると思います。気をつけないと怖いですよね。でも、そうした同質化や多様性の拒絶みたいなものの根底には「知らないが故の恐怖」がある気が私にはするんです。
そういう状況に対して、私たちに必要なのは「しょうがないよ」で終わらせるのではなくて「じゃあどうすればいいか」を自分で考えられる人を増やしていくってことじゃないですかね。
— 教育がますます重要になっていきますね。
はい。課題に囲まれた今の時代だからこそ教育が重要だとおもいます。学校教育も大人の学び直しも。
結局、「国は人」だし「企業は社員」なわけで、他人に手を貸せる人や社員が多いほど、持続的な国であって企業じゃないかと私は思うんです。競争原理は社会の維持や発展に不可欠だと思いますが、競争の種類ややり方はもっと多様な方がいいですよね。
— その通りだと思います。「良い教育」や「良い会社」が一律化し過ぎている感じが、私にはなんだか心地悪いです。
「いい大学に行けていい会社に入れるのが良い教育」みたいになってますよね。でも本当は世の中に笑顔を増やす方法を考えて、それを実践できる人を増やすのが良い教育じゃないのかな?
最近、「ESG投資」という、社会的意義や成長の持続性を環境(environment)・社会(social)・企業統治(governance)の観点から企業を評価しようという動きが広がっていますよね。コンサルタントとしてはそうした社会の動きもお客さまに伝え、一歩ずつでも「人びとの笑顔を増やすこと」にビジネスの根幹を近づけていければいいなって思っています。
なかなか一息に変わるものではないって分かっているけど…でも、私これからも諦めずに伝え続けていきます!
インタビュアーから一言
「若い子が来てくれて、私たちのために頑張ってくれる。それを見ているだけで力を貰えるわ〜。」という被災したおばあさんの一言に「ああ、私も力になれている!」と逆に応援されたという槇さん。東日本大震災のあと、住宅地のがれき撤去から仮設商店街でのイベントの企画や運営など、足掛け4年いろいろなボランティアをやられたそうです。
さらには、コンビニなどで何か買い物をしたときは必ず店員さんにあいさつする活動をもう数十年続けているそうです。「いい社会に近づけたい」という彼女の強い気持ちと行動力に、私まで「話を聞いているだけで力を貰えるわ〜」って気分になりました!
(取材日 2019年4月23日)
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