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進む地方行政DX | 循環型経済と脱炭素社会の実現をマクニカのEMSで
2021年07月21日
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循環型経済(サーキュラーエコノミー)と脱炭素社会(カーボンニュートラル)。政府が掲げているこの2つの目標を耳にしない日はもはや珍しい。
だが多くの人が、この2つを「自分とは距離のあるもの」と捉えているのではないだろうか。しかし実際には、経済と社会は人間の営みの総体であり、循環型経済も脱炭素社会もただ漫然と待っているだけでは実現しない。自分たちがそれに向け行動を起こす必要がある。
その実現に向け力強く歩みを進めている、2名の有識者の対談をお届けする。
■ 循環型経済とEMS(エネルギー管理システム)
— 松井先生には前回の「進む地方行政DX | サービス・ソリューションプロバイダー マクニカの参入で拡がる範囲と未来」にもご登場いただいていますので、まずは脇坂さんより簡単に自己紹介をしていただけますか。
マクニカ イノベーション戦略事業本部 サーキュラーエコノミービジネス推進部 脇坂 正臣(わきさか まさおみ)氏(以下「脇坂」)
マクニカは、1972年の設立以来、最先端の半導体、電子デバイス、ネットワーク、サイバーセキュリティ商品に技術的付加価値を加えて提供してきました。近年は「Co.Tomorrowing」をスローガンに、最先端のテクノロジーとマクニカが持つインテリジェンスをつなぎ、ユニークなサービス/ソリューションを提供する存在として、社会的価値を生み出し未来社会の発展へ貢献しています。詳細はWebサイト(https://www.macnica.co.jp)をご覧ください。
脇坂: マクニカの第三の柱となるべく新事業を生みだす役割を担っている事業本部で、サーキュラーエコノミービジネス推進部(Circular Economy Business Department、以下CBD)の部長をやっております脇坂です。
サーキュラーエコノミーの単語を事業部名として正式採用している会社はまだ少ないのではないでしょうか。私どもCBDは文字通り循環型経済を社会に推進していく部署であり、人と組織の営みを循環型へと変化させていくお手伝いをさせていただいています。個人的にも、サーキュラーは社会の進むべき方向を指し示す大変重要なキーワードだと考えています。
東京電機大学准教授 知的情報空間研究室 システムデザイン工学部 / エクスポリス合同会社 CTO 松井 加奈絵 氏(以下「松井」)
Anastasiaは、エクスポリス合同会社が提供する、地域課題解決のためのワンストップ・データ流通プラットフォームです。産官学民の連携を推進するために、ご希望される自治体の皆さまに無償にて「地域分析機能」が利用できるアカウントを発行しています。
詳細の確認およびアカウント申請はこちらより(https://www.expolis.net/anastasia/)どうぞ。
松井: 本日はよろしくお願いします。さっそくですが、循環型経済というと製品資源やマテリアルなどの物質をイメージする人が多いと思うのですが、マクニカ社はまずEMS(エネルギー管理システム)に注目されていますよね。これにはどういった背景があるのでしょうか?
脇坂: 先ほど「人と組織の営みを循環型へ」と言ったのですが、CEの本質は生物の共生を実現することであり、人間の営みそのものを捉え直していくことだと思っています。これまで、人の経済活動は循環型ではなく線形型、サーキュラーではなくリニアな活動により「破壊」をしてきてしまいましたから、それを見直していくことが必要です。
そして素材などの物質以上に、人間のあらゆる営みの根幹に関与するのがエネルギーです。ですから、エネルギーの制御や管理から見つめ直そうということになりました。
松井: なるほど、マクニカ社の持つ社会像も伺えるお話しですね。素晴らしいです。
脇坂: もちろんビジネスでもありますので、既存事業からの「飛び地」ではなく自分たちの得意領域であること、そして社会貢献度の高い事業を選んでいます。そしてビジネスとして重要な市場の大きさも考慮しています。
具体的には、まず「省エネ」でエネルギー消費を抑える。その上で不足する分に対して再生エネルギーを中心に「炊く」。
これらをしっかりとEMSで管理していくことで、大きな変化につながっていくでしょう。
松井: さらに蓄電なども考えると、マクニカ社がこれまで手がけてきた自動運転などのモビリティー事業との親和性も高いですよね。
ところで、脇坂さんご自身は、CBDを手がけるようになってから、それまでと何か変化を感じられることがありますか?
脇坂: そうですね。家庭で自分の仕事のことを話す機会が増えました。単純に楽しいんです。
正直、以前は「会社でどんな仕事をしているの?」と家族に聞かれても、答えるのがちょっと面倒臭いというか「お客様にいろんなものを売っているよ」くらいの雑な答えしかしていませんでした。でも今は、むしろ自分から循環型経済について説明したいと思いますね。例えば子どもたちと一緒にその重要性について会話するなんて事を考えたら楽しいですよね。そして地球環境にとって大切な事を目に見えやすい形で仕事をしていますので、自分自身そのことがとても嬉しいです。
■ マクニカのEMSが都市部だけではなく中山間地域でも強い理由
— お話を聞いていて、「子どもに話したくなる仕事をしているかどうか?」が、循環型経済と脱炭素社会が実現できるかどうかの鍵を握っているのではないかという気がしました。
脇坂さんは現在、脱炭素社会の実現に日本社会が近づいて行っているとお考えですか?
脇坂: はい。近づいていってると思っています。
昨年10月26日の菅総理による「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」という所信表明演説での宣言にもありましたが、日本全体でカーボンニュートラルに向けての取り組みが大きく動き出したと感じています。
そして、先日の参議院本会議における地球温暖化対策推進法一部改正案の成立が大きな後押しをしています。
松井: 推進法では、各行政地域がそれぞれ再エネ活用などで脱炭素化を促進する事業を推進することや、その計画や認定制度を創設することが求められていますよね。
とは言え、小さな自治体では、お金も人も圧倒的に不足しているのが実情です。
脇坂: 松井先生のおっしゃる通りで、そこにマクニカが大いに役立てる理由があると思っています。お金があまりない中で実施していくには、端的に言って導入費用が安くなきゃいけない。
その点、当社のエネルギー管理システムはリーズナブルです。もちろん費用を抑えるためにはデータの取得方法や量を検討する必要がありますが、それでも大幅に導入費用が違います。
松井: そうですね。私もこれまで多くのスマートシティの実証実験などに参加してきて、コストの重要性は身をもって感じています。そして他にもいくつかポイントがあると思っています。その1つが他システムとの連携性です。
脇坂: まさにその通りです。多くのEMS製品が「他システムと連携できる」と言いながら、実際に連携させるとなると技術的にも物理的にもかなり難しいということがままあります。
その点、当社のエネルギー管理システム「Kisense®(キーセンス)」は、電力、ガス、水、CO2の排出量のリアルタイム管理機能を最初から備えていますし、理論的に取り込めないデータはありません。可視化するだけでなく制御しようとした場合、何をもとにトリガーをかけるのかが大事でこれらはニーズにより変わります。温度なのか湿度なのか大気成分なのか気圧なのか、あげるときりがないくらい沢山あります。これらのデータに全て対応できます。システム構造もシンプルで容易にエッジデバイスを後から組み込んだり他システムと連携させることができます。
→ マクニカ、Cleanwatts(クリーンワッツ)社と提携し、脱炭素社会の実現への貢献を目指して、エネルギー管理システム「Kisense®」を提供開始
松井: もう1つがネットワークの問題です。特に中山間地域では、HEMS(ホームエネルギー管理システム)やBEMS(ビルエネルギー管理システム)だけではなく、一次産業の現場、つまり屋外でのエネルギーの消費が発生し、それを管理・制御する必要があります。しかし、室内とは異なり、使用できるネットワークにはさまざまな制限がかかります。
脇坂: 屋外ではさらに機器のタフさも求められますよね。たとえば海が近い場所ならセンサーは潮風にさらされるわけですから塩害対策が必要ですし、屋外の場合は夏の温度にも耐えられるスペックや寒冷地の場合はマイナス温度にも耐えられるスペックが必要です。
また、松井先生がおっしゃられるように、包括的なエネルギー管理システムを導入しようとすれば、そこには地域ごとに異なる産業の特性、漁業なのか農業なのか工業なのかなどなどや環境、条件に適応させられなければなりません。用途や環境に応じたカスタマイズが必要になりますので、カスタマイズが容易なシステムである事が大事ですし、後からの変更の柔軟性も大事です。よくあるのが「システム導入したは良いが何も変えられない」という不自由なケースです。したがって最初に何を選ぶのかが大事です。それから、導入にあたり提供側の経験の豊富さも重要です。
私どもマクニカは、半導体の技術商社として出発しており、そこからネットワークやソフトウェア・ビジネスへと進み、世界中の最先端企業と一緒に仕事をやってきたという歴史を持っています。EMSの実装に必要な技術的視点を総合的に有しており、EMSだけの単体販売やサポートだけではなく、エッジデバイスの選定や有効設置場所の選定、通信方法の選定、AIを作る事も出来、カスタマイズも含めたワンストップソリューションでのビジネスの提供が可能です。
松井: とても心強いです。これまで多くのベンダー様からEMSの売り込みをたくさんいただいてきましたが、いざ試してみようとすると「その環境ではできません…」と言われてしまうことが何度となくありましたから。
マクニカ社の登場で、今後はそうした問題がなくなりそうです。
IBM News Room | 地方自治体向けデジタルトランスフォーメーション基盤のサービス提供開始 より。
■ お醤油をご近所で貸し借りするように、再エネを地域で貸し借りする国に
— 先ほど菅総理によるカーボンニュートラル宣言が果たした意義は大きいと言われていました。具体的にはどのような違いがそこから生まれてくるのでしょうか?
脇坂: そうですね、少し背景からお話しさせていただきますと、カーボンニュートラルとは二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を大幅削減し、森林などの吸収量との差し引きでプラスマイナス・ゼロを実現するというものです。エネルギーに関しての視点でお話ししますが、これを達成する為には2つの大きなポイントがあります。
1点目は、温室効果ガスを生み出している化石燃料による発電を最小限に抑えて再生エネルギーを大幅に増やしていく必要があるということ。2点目は、そもそものエネルギー消費量を減らしていくということです。総理による宣言が大きな意味を持つのは、このうちの特に1点目です。
— 「再エネを増やしていく」という点ですね。
脇坂: はい。脱炭素化に欠かせない再エネですが、これまでは土地を活用したエネルギー事業には、従来の地域事業との兼ね合いから合意形成が図りづらく、発電・送配電・小売など、電気に関するさまざまな点に既得権益が発生していました。
今回の宣言により、そうは言っておられず、具体的な計画と実行が求められるようになったわけです。そしてバーチャルパワープラント(以下VPP)と呼ばれる仕組みが認められたことで、これまでの「電力の需要と供給が一方向に定められた状態」から、「需要と供給のバランスにより、家庭や農園や工場なども、需要家にも供給側にも回れる」ようになりました。
これにより、大規模エネルギー業者以外に、地域に根付いたエネルギー生産・供給者が生まれ、エネルギーの循環共生圏が日本の各地に次々と生まれてきています。
松井: 10年前の東日本大震災の後、日本は国としてのエネルギーの在り方について再考をしてきたという認識です。ただここ数年は、当時の計画停電を通じて身を持って感じたあの「エネルギーは生活に直結しているもの」という意識が薄れてきているのではないかと感じていました。
今、ここに来て大きな変化が生まれている理由は、脱炭素社会を目指すという首相の宣言だけが理由でしょうか?
脇坂: それだけではありませんが、宣言により実行する為の規制緩和や国の補助などの効果はとても大きいと思います。
あと、これは個人的な感覚ですが、コロナ禍において、危機管理を再認識したというのもあるのではないかと思います。
日本はエネルギー資源の輸入率は90%を超えています。こんなことは想像したくもありませんが、戦争や紛争の影響などで輸入がストップしてしまった際には、どうするのでしょうか。何か手を打つべきだと多くの人がこれらを感じてきているのではないでしょうか?
エネルギーの地産地消を考えた時に地域特性を考えれば、どれだけ再生エネルギーを頑張っても、首都圏での自家供給力は15%程度でしょう。今後の分散型電源の普及で自分たちでも再生エネルギーの生産を増やしていくことは重要なのですが、都市部ではどうしても土地の不足などから地産地消は厳しいです。一方で都市部以外では多くの再生可能エネルギーを生産するための土地があったりしますので分散型電源の観点で発電を行う事ができます。例えば相対取引で都市部へ売電するとすればそこに産業が生まれ雇用が発生します。地域同士が互いに補い合い成長していく観点での地域循環共生圏の考え方を持ち、お互いがWin-Winとなるエネルギー供給構造を作る必要があると思います。
昔のご近所同士の「お醤油の貸し借り」のような関係性が、地域同士での「エネルギーの貸し借り」のようになっていけばいいなと思っています。
松井: それはとっても素敵ですね。日本国内にも「姉妹都市」という制度がありますが、これまでは観光の観点からの「海と山の交歓」だったり、人材交流が中心でした。
でも、再エネは、太陽光と風力と水力のように、場所や地形の違いがそれぞれのエネルギー産出量のピークタイミングの違いにつながるので、エネルギー交流をするのにもピッタリだと思います。
■ Anastasiaを通じて、地域経済と循環型経済の発展に本当に必要なものを届けたい
— 先ほど、エネルギー消費量を減らしていくことが2点目の重要なポイントとお話しされていました。マクニカのEMSはそこにも強みがあるのでしょうか?
脇坂: はい。エネルギー庁の発表にもあるように日本の光熱費の約8割が冷暖房と照明です。要はこの2つを大幅に減らさないと焼石に水となります。省エネなハード機器を使用するだけでなく、これらを制御して省エネする必要があります。それもKisense®で実現できます。例えばですがこれまでは、照明におけるランニングコストの削減と言えば「スイッチがONかOFFか」だけで語られていました。でもこれは、人にゆだねられており感覚で行うものなので、人に我慢を強いていたり逆に必要以上に無駄に明るくしていたりということを意味しています。
その場所での目的に応じて必要な明るさがあります。例えばオフィスで800ルクスの照度が必要だったとした場合、センサーで外光がどれだけ取り込めているかを計りこれが500ルクスであれば、足りていない300ルクス分だけの光を出すように照明の消費電力を調整するようにし、場所に応じて全ての照明を制御すれば大幅な省エネに繋がります。これだけで、照明の電気料金が半分になったという事例も出てきています。
同様に、室内の温度管理や、二酸化炭素の量も測定していくことで、大量生産大量消費型のエネルギー管理から、循環型の脱炭素社会へ大きく近づくことができます。
→ マクニカ、Cleanwatts(クリーンワッツ)社と提携し、脱炭素社会の実現への貢献を目指して、エネルギー管理システム「Kisense®」を提供開始
松井: 今日は良いお話をありがとうございました。これから中山間地域で、そして行政に向けて、ご一緒させていただくのががますます楽しみになりました。
最後に、私どもAnastasiaへの期待と、行政の方がたへのエールをいただければと思うのですが、いかがでしょうか。
脇坂: 行政の方へのエールと言ってしまうと少々差し出がましいのですが…。でも、私は行政にとても期待しています。これまで「行政としてはできない」と言われてきたことが、どんどんできる時代になってきていると思うし、やらなければいけない時代だと思っています。
これからの行政には、地域企業と地域住民をまとめる運営団体を作り、その執行を地域に任せていくという重要な役割があると思います。産官学民連携の「チーム・カーボンニュートラル」の「ブレーン」となっていただきたいですね。
そしてAnastasiaと松井先生にも大いに期待しています。先生と話していると、自分たちに見えていなかった行政の方がたのお困りごとを理解できて、目から鱗が落ちることも珍しくありません。
私たちだけでは、地域にとって本当に使いやすいインターフェースをお届けすることはできないので、Anastasiaを通じて地域経済と循環型経済の発展に本当に必要なものをお届けしていきたいです。
松井: とてもありがたいお言葉で光栄です。実は、すでにマクニカ社のEMSをAnastasiaを通じて試してみたい、小水力発電の制御・管理を行うことはできないでしょうかと、とある地域よりご連絡をいただいています。8月にも実証実験を始めたいというお話なので、改めて相談させてください。
本当に、今日はありがとうございました。人と機械が支え合い共生する社会を、マクニカ社とIBMさんとご一緒に実現できることが楽しみです。
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