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LGBT+に対する根強い差別とインクルージョンの拡大についての考察 | from IBVレポート

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6月は「Pride Month(プライド月間)」。LGBTQの権利を尊重し、共に尊敬しあえる社会を目指そうというイベントが世界各国各地で行われた月でした。日本IBMでも普段以上に多くのLGBTQ関連イベントが開催され、たくさんの学習や対話の機会を通じ、多くの共通理解や共感が育まれました。
これらのイベントについては今後機会を見つけてご紹介する予定ですが、今回は、2021年に発行されたIBM Institute for Business Value(IBV)のレポート『ありのままの自分で生きる | LGBT+に対する根強い差別とインクルージョンの拡大についての考察』を一部抜粋・再編集してご紹介します。全編は下記よりダウンロードしてご覧ください。
https://www.ibm.com/downloads/cas/E5RDKY9B


 

いくつかの国では、LGBT+はいまだに犯罪として扱われ、コミュニティーの人々は自らのアイデンティティーを隠して生きることを余儀なくされている。一方で、LGBT+への支持や教育が、大きく前進した国や地域もある。同性婚や養子縁組の合法化から、平等を憲法へ明記するまで、現在では150カ国以上がLGBT+の人々に対して、何らかの形で法的な保護を与えるようになった。*1

社会は同性同士の関係を抱き入れるべきだと考える人の割合が、世界的に大きく増加している。Pew Research(ピュー研究所)によると、2002年から2019年までの期間で、LGBT+に肯定的な考えを持つ人の比率は2桁も増加している。*2

例えば南アフリカと韓国では、2014年から約20パーセント増加し、インドでは22パーセント上昇した。

LGB | この頭字語は、今回の調査で対象とした、レズビアン、ゲイおよびバイセクシュアルの個人を示す。

LGBT+ | 一方、この頭字語は、ジャムの参加者と、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、ノンバイナリー*などの人々を含む、より広範なコミュニティーを指す。

*ノンバイナリー(non-binary): 男性・女性のどちらにもあてはまらない性自認全般

視点1 | トランスジェンダーの体験にまなざしを向ける

トランスジェンダーの人々が活躍できる安全で支援のある職場環境を作り出すためには、トランスジェンダーのインクルージョンをより積極的に進める必要がある。

近年、トランスジェンダーの権利を支持する声が高まっているが、一方、反発する声も強まっている。*3

2021年現在、米国では数十の州で、青少年スポーツやジェンダーを配慮した医療、あるいは公衆トイレの使用に関し、トランスジェンダーを差別する内容の法案が検討されている。*4

こうした反トランスジェンダーの法案は、今なお続く強烈なトランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)社会を反映しており、トランスジェンダーの人々に対する嫌がらせや身体的虐待を生む結果につながりかねない。不幸にも、2020年の米国では、少なくとも44 名のトランスジェンダーが殺害され、その大半が黒人またはラテン・アメリカ系の女性だった。*5

トランスフォビアや差別は職場でも見られる。National Center for Transgender Equalityによると、トランスジェンダーの4人に1人以上が偏見のために職を失い、4人に3人以上が職場で何らかの差別を受けた経験を有する。*6

その結果、トランスジェンダーの人が昇進する機会は少ない。

 

■ LGBT+インクルージョンの未来

ジャムで提示された中心的な問いは、あらゆるアイデンティティーの人々が、安全に働ける職場を創出するためには、どのように慣習を変える必要があるかだ。
IBVのLGB調査とLGBT+ジャムの洞察から導き出された、組織がLGBT+のダイバーシティーを抱き入れ、進化するための3つの主要なアクションは、次のとおりである。

  1.  可視性、インクルージョンを高め、本来の自分を取り戻す
  2.  インターセクショナリティー(intersectionality)*を抱き入れる
  3.  企業の支援と個人のアライシップを拡大する

*インターセクショナリティー(intersectionality): 人種、ジェンダー、性的指向、年齢、能力など個人が持つ複数のアイデンティティーの重なり方に応じて変わる、その個人が受けるさまざまな不利益や利益を把握しようとする考え方

視点2 | インターセクショナリティーと差別の複層性

調査では、性的指向を理由とする差別が人種によって増幅されていることを明らかにした。白人LGB の回答者のほぼ半数が、性的指向を理由とする差別を経験したことがあると述べているが、極めて激しい差別を受けたと答えた人はわずか4%だった。有色人種のLGBの場合、この数値が20%近くとなり、さらに先住民のLGBの回答者では4人に1人の割合に上昇した。このことは、差別は複層的であるという「現実」を示している(図「インターセクショナリティーの実態」を参照)。

あなたは性的指向のために、どの程度の差別を経験しましたか。

インターセクショナリティーの実態 有色人種のLGBは、性的指向のためにより強い差別を受けている。

あなたの個人的アイデンティティーの何が、職場における差別の主因であると思いますか。

差別の要因は何か すべての人種アイデンティティー集団のLGBが、性的指向を職場での差別の最大要因に挙げている。

視点3 | ジェンダー・バイナリーの打破

若い世代では、ジェンダーには 2つのカテゴリーしかないという考え方を否定する人が増えている。彼らは、ジェンダー・アイデンティティーに対して、より柔軟でインクルーシブな姿勢だ。広告代理店のBigeye社が行った米国での最近の調査によると、Z世代の半数と、ミレニアム世代の56%が、ジェンダー・バイナリーの分類は時代錯誤であると感じている。*7

若い米国人は、ジェンダー・バイナリーについてより積極的に発言するようになっているが、こうした考え方は決して新しいものではない。ジェンダーはスペクトルであり、多くのバリエーションがあることを、はるか昔から認識してきた文化もある。*8

ジェンダーが二元的でないように、性的指向も二元的ではない。アセクシュアル、バイセクシュアル、デミセクシュアル、パンセクシュアルなどを自認する人は、他者に心ひかれること(または魅力を感じないこと)は、ジェンダーを超えた何かで決まると考えている。*9

 

■ アクション・ガイド

1. LGBT+のリーダーシップ・パイプラインを満たす。

企業が資金を提供し、メンターシップ・プログラムを運用すれば、カミングアウトしたLGBT+のメンバーは声を出しやすくなり、リーダーシップを発揮しやすくなる。

2. 従業員に対する期待を、明確に設定する。

職場における帰属意識と敬意が、ビジネス上の価値であることを伝える。

3. 差別撤廃の方針を示し、実行する。

ジェンダー・ニュートラルなトイレの設置やドレス・コードの作成から、LGBT+に配慮した家族休暇の規定まで、公平な職場を目指す企業努力を行う。

4. ブランドの知名度を、前向きな変化の手段として活かす。

企業ブランドの威力を、全世界のLGBT+の人権を支える活動に利用する。積極的に発言する。現在だけでなく、将来の従業員も、企業のそうした努力に感謝するはずである。

 


*1 “Sexual Orientation Laws in the World.” International Lesbian, Gay, Bisexual, Trans and Intersex Association. December 2020.
https://ilga.org/downloads/ENG_ILGA_World_map_sexual_orientation_laws_dec2020.pdf

*2 Poushter, Jacob and Nicholas Kent. “The Global Divide on Homosexuality Persists.” Pew Research Center. June 25, 2020.

The Global Divide on Homosexuality Persists

*3 Bola, Oyindamola, Daniel Greenberg, Natalie Jackson, Ph.D., Robert P. Jones, Ph.D., and Maxine Najle, PhD. “America’ s Growing Support for Transgender Rights.” PRRI. June 11, 2019.

America’s Growing Support for Transgender Rights

*4 “Legislative Tracker: Anti-Transgender Legislation.” Freedom For All Americans. Accessed June 10, 2021.

Legislative Tracker: Anti-Transgender Legislation

*5 “Fatal Violence Against the Transgender and Gender Non-Conforming Community in 2020.” Human Rights Campaign. Accessed June 10, 2021.
https://www.hrc.org/resources/violence-against-the-trans-and-gender-non-conforming-community-in-2020

*6 National Center for Transgender Equality. Accessed June 10, 2021.
https://transequality.org/issues/employment

*7 Reynolds, Daniel. “Study: Half of Gen Z Believe the Gender Binary is Outdated.” Advocate. February 24, 2021.
https://www.advocate.com/business/2021/2/24/study-half-gen-z-believes-gender-binary-outdated

*8 Viverito, CV. “Non-binary Gender Identities: A Diverse Global History.” Out & Equal. Accessed May 24, 2021.

Nonbinary Gender Identities: A Diverse Global History

*9 Glossary of LGBTQ Terms. Out & Equal. Accessed May 24, 2021.
https://outandequal.org/wp-content/uploads/2019/11/LGBTQ-Terminology-2019.pdf

 

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