IBM Partner Ecosystem
IBM九州DXセンター新オフィスと「AI Firstフォーラム」
2024年08月13日
カテゴリー IBM Data and AI | IBM Partner Ecosystem
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IBM九州DXセンターの新オフィス開設とBPO事業の開始を記念し、2024年7月18日に開催された「IBM AI Firstフォーラム2024」。
産官学で地域を代表するリーダーが集まったこのイベントへの注目は高く、会場となる北九州芸術劇場 小劇場には150名近い参加者が集いました。
筆者は「AIファーストという言葉は、AIを最優先し人間や地域社会は2番目以降というイメージを抱かせるが、はたしてその真意は?」という思いを抱きつつ取材に行ったのですが、結論から言えば、「後からAIを付け足すのではなく、最初からAIを使うことを前提とした『AIありき』のシステムやサービス作りをしていくべきである」というメッセージが「AIファースト」の趣旨でした。
それを示すかのごとく、この日登壇したIBM関係者は皆「日本全体を覆っている人手不足という大問題を解消するのがAI」であり、「AIを前提とした仕事と働き方の再構築の方法」について語っていました。
当記事では、「IBM AI Firstフォーラム2024」の会場で語られた内容と共に、日本IBMデジタルサービス(IJDS)社長・井上裕美とIBMフェロー(最高技術理事)・二上哲也が九州DXセンター新オフィスで社内向けに同日開催した「タウンホールミーティング(対話集会)」での言葉と、九州DXセンター新オフィスで働くシステムエンジニア・岩坪真澄の言葉を併せてお伝えし、九州DXセンターからのメッセージを立体的にお届けします。
目次
- 武内市長「若者や女性の働くモチベーションを上げる九州DXセンター新オフィス」
- 「やりたかったけど諦めていたこと」に挑戦させてくれるのがAI
- パネル・ディスカッション | テクノロジーと信頼で紡ぐ地域の可能性
- 岩坪真澄「言いっぱなし、聞きっぱなしじゃないのがKDX」
■ 武内市長「若者や女性の働くモチベーションを上げる九州DXセンター新オフィス」
「『AI vs 人』ではありません。むしろ『人とAIを地域に根付かせるため』の取り組みを行う場所が九州DXセンター新オフィスです。」日本IBM 執行役員の川上結子は、AI Firstフォーラムのオープニングでそう語りました。
そして川上に続きビデオメッセージにて登場した北九州市長 武内和久氏は、「九州DXセンターは、若者や女性たちの働くモチベーションを上げるオフィスですね」と新オフィス視察後の感想を述べると、「これからここが、チャレンジしたい人たちが集う北九州の中心地となっていくことでしょう」と、エールを贈ってくださいました。
それでは一体、九州DXセンター新オフィスとはどのような「場」なのでしょうか。
小倉駅からほど近い、文化・ビジネス・学術・自然の複合空間『リバーウォーク北九州』。「北九州の顔」とも呼べるこの施設の一角に、6月新規オープンしたのが300席を構える九州DXセンター新オフィスです。
「働くモチベーションを上げるオフィス」と武内北九州市長が表現したように、BPO事業やシステム開発に欠かせない堅牢なセキュリティーはもちろんのこと、柔軟な発想を促すポップな色合いのミーティングルームや、少人数での集中作業にちょうどいい空間など、さまざまな要素が重なり合うように存在しているのが新オフィスの特徴です。
それを象徴する1つが、オフィス入り口に位置する、誰もが自由に使用できる広いロビー空間。
筆者が出入りしていた2日間の間にも、ロビーには勉強したり、友だちとのおしゃべりに夢中になったりと、気持ちよさそうに過ごす学生たちの姿を何度も目にしました。そしてロビーに設置されている「生搾りオレンジジュース自販機」が、爽やかな自然のオレンジの香りを空間に振りまいており、ロビーを通るたびにフレッシュな気分になることができました。
商業施設とオフィスが組み合わさることで、社員は自身の業務の社会性の意味を考える機会を持つのと同時に、業務後の利便性を喜んでいるそうです。
■ 「やりたかったけど諦めていたこと」に挑戦させてくれるのがAI
武内北九州市長のメッセージの後、IBMフェローの二上哲也とAI First BPO事業をリードする田村直也から、AIが現時点にてビジネスにもたらしている価値と、今後の展望についての紹介がありました。
ここでポイントとして挙げたいのが、「AIを適応したBPOは、これまで50人月の作業を25、10人月と削減していくでしょう。これが意味するのは、『これまでやりたかったけど諦めていたこと』にようやく挑戦できるということ。より付加価値の高い仕事に集中して取り組める状況を手にすることができます。」という田村の言葉です。
タウンホールミーティングでは、IJDS社長の井上が社員からの質問にこう答えていました。
「2020年7月にIJDS社長に就任して、それから日本各地に飛び地域の経営者の方たちとお話をさせていただく機会がグッと増えました。就任当時、「2025年の崖」として、DX、テクノロジー、人材が大きな問題とされていましたが、コロナ禍もあり、状況は大きく変化しましたよね。DXとテクノロジーの問題は猛スピードで解決に向かっていると言えるでしょう。ただ、ほとんどの経営層の方たちが『人材不足だけは3年前、1年前、現在と、どんどん過酷になっている』と言われています。
その状況を変えるのがAIだと私は思っています。社会にはまだたくさんの社会課題が残っています。山ほどある課題の解決に取り組むには、AIにはさらに進化してもらう必要があります。
そして仕事のパートナーとして、生活のパートナーとしても、AIには大活躍してもらいましょう。」
IBM フェローの二上も、九州DXセンター社員からの問いかけにこう答えていました。
「AIの進化に必要なのは、実は研究所や製品開発チームだけではないんです。たとえばIBMは「IT変革のためのAIソリューション」を体系化し、この3月から提供を開始しました。
参考 | システム開発や運用に生成AIを活用する「IT変革のためのAIソリューション」により、生産性と品質の向上を実現
もちろん、このAIソリューションは、現段階でベストと思われる最新のAI技術を活用した包括的なものです。ただやはり、ソリューションや技術というものは、現場で使われていくことで磨かれていくものです。
ですから今日、このタウンホールに参加しているエンジニアの皆さんには、ぜひ自ら手を動かしていただきたいんです。自ら使い『もっとこうした方がいい』と、どんどんフィードバックしてください。お待ちしています。
■ パネル・ディスカッション | テクノロジーと信頼で紡ぐ地域の可能性
IBM AI Firstフォーラム2024も終盤。産官学でご活躍のリーダーたちを壇上にお招きし、「テクノロジーと信頼で紡ぐ地域の可能性」をテーマとしたパネルディスカッションが、井上によるモデレーションで行われました。
パネリストの皆さま
- 経済産業省 地域情報化人材育成推進室長・デジタル高度化推進室長
河崎 幸徳 様
- 国立大学法人九州工業大学 大学院情報工学化研究所 教授
宮野 英次 様
- フロイデ株式会社 会長
吉谷 愛 様
「古代、人類にとって近眼は生死を司る致命的な問題だった。だが眼鏡が普及した今、近眼は障がいではない。テクノロジーは人びとの『当たり前』を変えていく。」
「地域の大学や企業にとって、『信頼』はまさにど真ん中の問題。そしてこれからの地域の盛り返しを考えた時、学生が卒業後も定着できる地域経済を作り上げることは急務。」
「AI First時代においては、むしろ人びとのつながりや信頼関係が重要となる。そしてそこでは、意思の発露や意見の発信が、『学び』をより活性化し、『創造』を誘発する。」
これらは、パネルディスカッションの中で語られた、多くの印象的な言葉のごく一部です。
会場では、パネリストの言葉を熱心にメモする多数の参加者の姿が見られました。
そして筆者にとっては、2日前に話を聞いた九州DXセンター所属のシステムエンジニア・岩坪真澄の言葉を想起させるものでもありました。
メッセージを具体的にイメージしていただくための補助線として、ここでその一部をご紹介します。
■ 岩坪真澄「言いっぱなし、聞きっぱなしじゃないのがKDX」
「KDX(IBM九州DXセンター)に転職して来月で1年を迎えますが、職場や会社に対するこれまでの自分の常識が変わりました。社会人となり12年ですが、これまで上司や先輩というのは『自分より上』なのだから、理不尽さを多少感じることがあっても仕方がない、我慢しなければならないものだと思い込んでいました。
でも、KDXで出会った先輩たちは、「どうすれば新入社員が学びやすく、過ごしやすいか」を全員が考えているんですよ。新卒社員が質問したときなど、みんながよってたかって「わかりやすい答え方」に取り組んでいて…これってすごくないですか?」
職場における人間関係——。それが「働きやすさ」だけではなく、働きかたや働きがいにも大きな影響を与えることは自明です。
「おもしろいのは、KDXでは『今度飲みに行きましょう』は口先だけの社交辞令じゃないんです。『じゃあ、いつにしますか?』とすぐに日程相談となります。
同じように、仕事に関しては『積極的に皆さんの意見を聞かせてください』と言えば、誰もが遠慮なくさまざまな意見を出します。KDXには豊富な経験を持つ中途入社社員も多いので、「これでもか」というくらい多様な意見が出てきますね。
これまでは、こうしたときに意見を言っても『じゃあ上に伝えておくよ』で片付けられてしまい、それ以上フィードバックを貰えないことがほとんどでした。
でもKDXでは違います。『岩坪さんの意見、伝えたけれど今回はxxxという理由で採用できないという話になってしまいました』と、経緯や結果を伝えてもらえます。言わせっぱなし、聞きっぱなしじゃないので、『建設的な意見を出そう!』というモチベーションにつながっています。」
もう一つ岩坪さんの話でとても印象的だったのが、「信頼と地域とのつながり」についてです。
「僕がKDXに転職したのは、これまでの10年ほどで身につけたエンジニアリングのスキルを地元で生かしたかったからです。厳密に言えば僕は福岡市出身で、パートナーが北九州市出身なのですが、僕たちは地に足をつけ地元で家庭を持ちたいと思って引っ越してきました。
だから、自分が働いている会社が地域とどう関わるのかには強い関心があります。
パチさんは『小倉はしご酒大会』って知っていますか? グループを作り、指定された居酒屋やスナック3店舗を2時間以内で回るという、北九州小倉の名物イベントです。
去年はKDXのみんなで、たくさんのグループを作って参加しました。これも、自分たちが地域の一員であることを再確認する取り組みの一つだし、地域に「居続けてほしい』と思ってもらいたいという気持ちの表れから参加しようとみんなで決めたんです。
僕は、そういう地域に根付いた会社の一員として働き続けたいんです。KDXの仲間は、これからさらに100人200人と増えていく予定だと聞いています。それでもこの温かさと優しさが、KDXから失われることはないだろうと信じています。」
IBM AI Firstフォーラム2024 クロージングは、九州DXセンター長の古長由里子と金子未央による、地域のお客様への感謝と今後の展望についてで締めくくられました。
「IBMが自らを標榜する「触媒(カタリスト)」とは、他の存在があって初めてその存在意義を示せるもの。『世界をより良く変えていく触媒となるために、今後も九州のお客様の信頼に応えられるよう頑張ってまいります。引き続きのご支援をどうぞようよろしくお願いいたします。」
TEXT 八木橋パチ
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