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ISE技術者講演レポート: データを価値に変えるために(Watson IoT Platformを用いたデータ活用法)

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日本IBMグループの「先端IT技術の専門家集団」が、日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング株式会社(ISE)です。そのISEが毎年開催している技術カンファレンス「ISE Technical Conference」で、高い関心を集めていた「データを価値に変えるために 〜 Watson IoT Platformを用いたデータ活用法」の内容を、ポイントを絞ってご紹介します。

 


IoTデータの収集・蓄積、そして価値を生みだす活用方法についてはさまざまな場所で語られているものの、実案件の経験をベースに語られているものは案外少ないのが現状ではないでしょうか。

私たちISEは、現場における先進的な取り組み経験を豊富に持っているのが強みです。今回は、Watson IoT Platformを用いた実案件での経験と学びをいくつか紹介させていただきます。

なお、どの案件も実際に私が直接関係したものではありますが、非公開案件となっていますので、具体的な内容は表現などを変更している点があることをご了承ください。

講演者: 登野城 亮 (アプリケーション・アーキテクト、IoTソリューション)

 

Watson IoT Platformとは

それでは、まず最初に、それらの実案件に用いられたWatson IoT Platformというものがどのようなものかを、簡単に紹介させていただきます。

 

Watson IoT Platformは、データの収集・蓄積・可視化の下記3ステップをワンストップで実現する、IBMが提供しているSaaSです。

IoTの基盤構築作業をすばやく終わらせ、データを活用したIoTビジネスをクイックに始めることができるのが特長です。

 

収集: 収集したデータを加工し、クラウドに送信。
IoT向けオープン標準の通信プロトコルをサポートしています。

蓄積:データをクラウド上のデータベースに格納。
リアルタイムでデータを蓄積することにより、電子空間上に物理環境を再現しシミュレーションなどを実施できます。

可視化: データのリアルタイム表示。
ダッシュボードをクイックに構築でき、ノンプログラミングでパターンを可視化できます。

 

また、4つめのステップとなる分析では、製造や工場、エンジニアリング、建物や施設といったIoTビジネスが適用される業種やエリア毎に、多数の業界特化ソリューションを用意しています。

もちろん、Watson IoT Platformからそれらのソリューションへスムーズに連携できるようになっており、世界で最も信頼されるリサーチ企業の一つであるフォレスター・リサーチ社からは、「産業用IoTプラットフォームのリーダー」として最高の評価を受けています。

 

なお、以下は私が直接関係したものではありませんが、参考までにWatson IoT Platformの事例として公開されているものを紹介しておきます。

エレベーター製造業の世界大手 KONE(コネ)社の顧客価値向上に向けたAI+IoT活用事例

世界的な鉄道会社 フランス国鉄がIBM Watson IoTを選択した理由とは

 

事例1  設備データ

それではここから、私が実際に関わってきた案件を紹介します。最初の事例は、設備状態を見える化し早期の設備異常検知を実現することを目的としたものです。

大量の設備データをリアルタイムで確認しデータを可視化できるようにするためには、一度に送るデータサイズを可能な限り削減する必要がありました。

そしてデータを利活用したAPIの公開によるビジネス拡大を将来構想としていたことから、異なる拠点の設備データをクラウドに一元管理することも要件となっていました。

 

この案件ではデバイスを直接ネットワークにつなぐことができなかったため、要件を満たすにあたり、ゲートウェイの配置と非機能要件を考慮したプロトコルの選択がポイントでした。結果、ノートパソコンをゲートウェイとして配置することで、クラウドへのデータ送信を可能としました。

そしてクラウドへの送信をタイムリーに行いつつ、一度に送信するデータサイズはできる限り削減したかったので、一般的なプロトコルであるHTTPではなくMQTTを活用することとしました。これによりヘッダサイズを軽量にし、通信量を抑えることができました。

 

事例2 バイタルデータ

こちらの事例は、新しい診療方法や個人に合わせた最適な治療方法を、バイタルデータ(生体情報)の分析から生みだすための分析基盤構築を目的としたものでした。

プロジェクトがスタートした時点では、データは蓄積されているものの拠点間に分散しており、共有と分析ができない状態でした。

この状態から、異なる拠点で毎日数GB発生するデータを高速でクラウドに送信し、分析しやすい形で保管する必要がありました。また、データの蓄積量は可能な限り削減する必要もありました。

 

この例でのポイントは、データベースの選択です。

IoTではNoSQLを用いることが多いのですが、クラウドに送信するデータをそのままNoSQLに蓄積するとデータサイズが大きくなり、余分なコストがかかってしまいます。しかし、例えばcloudantに格納する場合は複数レコードに付与される同一データを、マスター情報としてrelationIdを付与するという工夫をこらすことで、Db2などのリレーショナルデータベースを活用することができます。

この工夫により、送信データサイズも蓄積データサイズも削減することができました。

 

事例3 位置情報データ

3つめの事例は、作業中のヒヤリハット状況を見える化し、事故防止を実現することを目的とした、位置情報を対象とした実証実験です。

作業現場における車両の接近や、作業員の立入禁止エリアへの立ち入りデータを計測・収集することで、動線の見える化を実現し安全向上を測ろうとしたものでした。

 

この案件でポイントとなったのは、現場の作業員を第一に考え、作業員の手間を増やしてしまったり、負担をかけてしまうことがないようにしようということでした。また、現場にはWi-Fiなどの無線が通っていなかったので、それへの対応策も考える必要がありました。

1つめの作業員の手間については、スタートの段階で作業員の方たちに協力を依頼し、現場において邪魔にならない機器設置位置の確認を進めました。

そして2つめの無線のない状況での位置情報データのリアルタイム取得には、beaconとセンサーを用いることとしました。

 

ただ、ここで問題となったのが、電波反射の問題により位置情報計測の精度が出ないということでした。beaconは全方位に電波を発します。そのために反射波も多いのです。

この問題を解決したのが、beaconの数を間引きセンサーが最も近いbeaconの電波だけを検出するようにしたこと、そして特定方向だけが露出するようにbeaconをアルミホイルで覆うことでした。

アルミホイルは電波を通しません。ですから、beaconの不要な方向をアルミホイルで覆うことで、電波の指向性を高めることができるのです。

 

ISEは、今後も現場で培ったさまざまな先端IT技術を皆さまに提供していきたいと思っています。

本日はどうもありがとうございました。

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

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