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アイデアミキサー・インタビュー | 加藤 由将(SOIL | 東急アクセラレートプログラム)後編
2021年01月15日
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Strategic Alliances Specialist(SOIL | 東急アクセラレートプログラム)
加藤 由将
街は一気に変化していくよりも、ヌメヌメと常に緩やかに変化し続けていくのが理想的
軸となる強いアイデアを持ちながら越境や新分野の開拓を実践している方に、その想いや活動について語っていただく「アイデアミキサー」シリーズ。
第4回は、東急株式会社でオープン・イノベーションを推進し、スタートアップ界隈では「プリンス」とも呼ばれている加藤 由将さんにご登場いただきました。
(インタビュアー 八木橋パチ)
インタビュー前編はこちら: 枯れた巨木がいつまでも立ち残り続けていては、生態系に悪影響を与えてしまいます。それは自然界もビジネス界も同じです。
渋谷駅から徒歩1分のSOILにて
— コロナでSOILの活動やオープン・イノベーションへの取り組みにはどんな変化がありましたか? 特にSOILには大きな影響があったのではないかと思うのですが。
たしかに大きな影響を受けました。SOILは「ミーティングスポット」であり、「新たな組み合わせを増やす」という目的に対して、人が時間と場を共有するということは大きな意味を持っていますからね。
例えばコロナ以前の1月には、「樽酒をひたすら飲む会」という一見オープン・イノベーションとは無関係に思えるイベントを行い、この場に関わり合いを持つスタートアップ界隈の人たちがただただ交流をするための時間も持てていました。でもそうした活動がコミュニティー内部の熱量を高めていましたし、自然発生的なオープン・イノベーションへとつながってもいました。
でも、コロナはターニングポイントでもあると思うんですよ。必ずしもネガティブな要素ばかりではないし、それをどうポジティブに変換させるかが問われているとも感じています。
— そうですね。でも現実にはかなり難易度が高いと思います。具体的に何かポジティブな方向へと変換できましたか?
一例として、TAPのピッチ審査は空間確保の関係で参加人数を絞ってSOILで開催していましたが、コロナの影響でTeams会議が社内普及したことでピッチ審査もオンライン化しました。そしてスタートアップの同意の元、東急グループ社内ではいつでもアーカイブで見ることができるようにしたんです。
この対応により、東急グループの多くの方との接点を創ることで東急内部でのオープン・イノベーションの機会損失を減らしています。そして、実際の取り組みへとつなげようと行動する人たちも増えていて、「あのスタートアップを紹介してくれない?」と頼まれることも多くなりました。
— それはいい流れですね。ところで、SOILと東急アクセラレートプログラム(TAP)は、どういう組織形態で運営されているんですか?
TAPは東急グループの28事業者の担当者が兼務や出向ではなく、実務の延長線上で委員会のような形で関与してもらっています。それぞれの事業のバリューチェーンを分析して問題や課題、求める技術やビジネスモデル等をヒアリングさせてもらって、それらをスプレッドシートにまとめてこんな感じに管理しています。
機密性の高い情報のため残念ながら公開できません!
— すごい細かい!! このレベルでニーズを掴んでいるんですね!
僕らから見ると、東急社内もスタートアップ企業の皆さんもどちらもお客様ですから。その観点から言えば、SOILはCRMという概念を実践する場と言えるかもしれないですね。
■ プレーヤーとして新しい価値を生み出し続けたい
— 長年スタートアップ界隈にいる加藤さんから見て、新規事業の立ち上げってどんな人に向いていると思いますか? そして加藤さん自身は「よしっ起業だ!」とはなりませんか?
まず、新規事業って、向いている人とそうじゃない人が結構はっきり分かれると僕は思っているんです。ルールに守るのが得意な人、ルールを作る人、ルールを変える人…色々いますが、やっぱりルールを作ろうとする人や変えようとする人が新規事業に向いていると思いますね。新規事業のサポーターではなく、やはりプレーヤーになりたいですね。
— そうなんですね。東急に席を置きながらのイントラプレナー(社内起業家)でしょうか? 場所はやっぱり渋谷で?
今私が構想しているビジネスだと東急の事業との親和性は高いですが、東急という組織ではビジネスを作っていくプロセスを理解できないかもしれませんね。(苦笑)
場所はどうでしょう…でも、僕自身は渋谷には関わり続けたいです。いろんな街がその街特有の価値を持っていますが、渋谷の持つ雑多感やカオス感は図抜けていますよね、秋葉原と双璧じゃないでしょうか。渋谷って、やっぱりカオスのあるクリエイティブ・シティだと思うんです。
— カオス大事ですね!! では質問は残り2つです。2035年の12月2日正午、今から15年後の今日、加藤さんはどこにいて何をしていますか? その目には何が映っていますか?
う〜〜〜ん…難しいですね。ワクワクするものが目に映っていて欲しいですね。
そしてその時の日本社会が必要としているサービスを開発していると思います。それが市場の活性化なのか、特定のサービスなのかは分からないですけど。
場所は…やっぱり渋谷かな。働く場所としては。
— そのときの渋谷に今よりも増えていて欲しいものはなんですか? そして減っていて欲しいものは?
増えていて欲しいのは…「変な人」ですね。簡単には理解できない、そういう範囲を超えている人たち。この「すり鉢の底」にある渋谷というカオスな街には、そういう変な人たちがとても似合うし、これからもどんどん集まっていて欲しいです。やっぱりおもしろい「人」の周りにはおもしろい「コト・モノ」が集まりますし、生まれますから。
減って欲しいのは…そうですね、「金ピカなビル」はもうこれ以上いいかな。
— 最近いっぱい渋谷に増えている「お金をたっぷりかけてますよー!」って感じのビルが「金ピカなビル」って理解であってますか?
まあそうなんですけど、ちょっと語弊がありそうなので詳しく説明させてください。
再開発は必要なものです。耐震性などの防災という観点や、街の流動性を促すインフラ整備と言う観点からも一定レベルの再開発は必要不可欠です。
ただ、「経済合理性」に従って建設したような、同じような見た目をしたビルはもう要らないですし、どうせ建てるならカメラやセンサーなどからのデータ解析をベースにした新たな顧客体験を提供するビルが出来るといいなぁと個人的に思っています。
— たしかに、同じような見た目のビルにはカオスもクリエイティビティーも感じないですね。
これは僕の個人的な考えですが、街は一気に変化していくよりも、ヌメヌメと常に緩やかに変化し続けていくのが理想的だと思います。そしてその中に紛れ込んだよく分からないモノたちがカオスを作り出していく、と。そういう街に人は惹かれるんじゃないでしょうか。
街ごとにその規模感やレベル感は違っていて当然ですが、僕は東急沿線に住む方たちに、そういうおもしろさやワクワク感を提供したいし、そういう喜びを味わいながら暮らしていただきたいんです。
インタビュアーから一言
「チェーン店には行かない。個人経営のお店を選ぶ」という加藤さん。ある1カ月の食事代を聞いて「マジか!!」とぶっ飛びました(笑)。
でも、自分が使ったお金がその先どのように流れていくのかを意識することって、とても大切ですよね。「消費」という言葉が「生産」の反意語であること、その2つがどうつながっていて欲しいのか、そこにどう自分の暮らしを重ねるのか…。
加藤さんへのインタビューの後、それをずっと考え続けています。ステキな問いをいただきありがとうございました!
(取材日 2020年12月2日)
問い合わせ情報
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