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アイデアミキサー・インタビュー | 加藤 由将(SOIL | 東急アクセラレートプログラム)前編
2021年01月12日
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Strategic Alliances Specialist(SOIL | 東急アクセラレートプログラム)
加藤 由将
枯れた巨木がいつまでも立ち残り続けていては、生態系に悪影響を与えてしまいます。それは自然界もビジネス界も同じです。
軸となる強いアイデアを持ちながら越境や新分野の開拓を実践している方に、その想いや活動について語っていただく「アイデアミキサー」シリーズ。
第4回は、東急株式会社でオープン・イノベーションを推進し、スタートアップ界隈では「プリンス」とも呼ばれている加藤 由将さんにご登場いただきました。
(インタビュアー 八木橋パチ)
インタビューはウッディで開放感を感じるSOILで
— 加藤さん、今日はよろしくお願いします。まずはこの場所「SOIL」について簡単に教えてください。
こちらこそよろしくお願いします。SOILは「土壌」を意味している英単語ですが、「Shibuya Open Innovation Lab」の頭文字をつなげたものにもなっています。
SOILの開設は昨年2019年ですが、僕自身は以前から東急のイノベーション推進に取り組んでいて、「東急アクセラレートプログラム(TAP)」というスタートアップ支援の取り組みも2015年から続けています。
— オープン・イノベーションとアクセラレートプログラム、この2つはどういう関係なんですか?
オープン・イノベーションは、企業が外部から技術などを取り込んでイノベーションを興す戦略と捉えています。TAPは東急グループの28事業者とスタートアップの協業を支援する取り組みで、オープンイノベーション戦略の中の一つの戦術という関係です。SOILはそれらの活動を促進する場という位置づけでしょうか。
TAPの目線は「東急グループとのイノベーション創出」で、SOILは「東急グループに限らない渋谷でのイノベーション創出」なので、TAPよりSOILの方が幅が広いですね。
— SOILでのオープン・イノベーションにおいては、「必ずしも東急が関わっている必要はない」というスタンスなんですね。
はい。そうです。実際のところSOILには、他の鉄道会社など一般に「東急の競合相手」と位置付けられる方たちも出入りされていますし、SOILの活動として、TAPに応募頂いたスタートアップの中で、東急グループ以外でもっと相性のいい会社などがあれば、ご紹介をしたりしています。先日もダイナミックプライシングの技術を提供する空さんを京王バスさんにご紹介したところ、正式に導入されたと伺いました。
SOILは一般的なコワーキングスペースとは異なり、スタートアップではなくスタートアップの成長を支援する投資家やコンサルタントなど「社会実装」に関与する方々をメインに支援しています。そこを深く考えていけば、東急が関与しない他社との協業も必要ですし、それが起こりやすくなるようなコミュニティーという横のつながりも必要です。
1日も早いCOVID-19の収束を期待しています
— その通りだと思います。…とは言え、実際にそれを社内で理解してもらい、実践していくのは相当難しくないですか?
そうですね。そこはやっぱり社内的にはいろいろありました(笑)。SOILも構想から開設までには3年かかりましたしね。
当初想定していた活用が出来ない組織的な問題も発生したり、東急関係者がSOILのコミュニティーを活用するにはまだまだ時間がかかりそうですが、さまざまなイベントやセミナーなどの情報発信を継続することで理解を深めて、どんどん活用してもらいたいと考えています。
■ 「コミュニティーは自分を育ててくれる器(うつわ)」
— 以前、別のタイミングで加藤さんのコミュニティーへの思いの深さを聞いたときのことを思い出しました。学生時代のお話を改めて聞かせていただけますか。
はい。僕はパチさんと同郷でして、幕張メッセやマリンスタジアムが有名な千葉県の幕張本郷という町で小中高と学生時代を過ごしました。
僕の子ども時代、あの頃はまさに海浜幕張の街が造られている時期で、自宅からほど近いところにどんどん新しいビルが建ち、馴染みのある景色が日々変わっていくのを目にして毎日変化の激しさに心躍らせていましたね。
幕張本郷には社宅が多い関係で学生の転入・転出が多く、そんな学生時代を過ごしたせいか、何らかのテーマで人がつながっていくコミュニティーにとても惹かれていました。それで僕は「ハード」的な要素にも惹かれつつも、それ以上により「ソフト」的な部分、都市開発だけではなく、サービス開発が出来る会社に入ろうと思うようになりました。
— その頃私は宅配便のバイトで、幕張メッセ辺りを走り回っていました。懐かしいなぁ。コミュニティーって、加藤さんにとって一言で言えばどんな存在でしょう?
「コミュニティーは自分を育ててくれる器(うつわ)」でしょうか。いろんなコミュニティーから、それぞれ異なる栄養素を僕は頂いていますね。
— 加藤さんが「所属している」と感じているコミュニティーの数はどれくらいですか?
そうですねぇ、うーん、コミュニティーの数え方って難しいですよね…。例えば僕は「東急」というコミュニティーに所属していますが、「東急」と括ったコミュニティー内部にもまたたくさんのコミュニティーがありますよね。そう考えれば、東急だけでも無数のコミュニティーに所属しているとも言えますよね。
とは言え、今、アクティブに活動しているコミュニティーを大きく分ければ、頭にパッと浮かぶのは3つくらいですね。
— どんなコミュニティーか、教えてもらえますか?
はい、先ほど挙げた東急というコミュニティー、それからシリコンバレーと日本を繋ぐコミュニティーにも関与しています。もう1つ挙げるなら、僕が住んでいる地元の飲食店とそれを応援するファンを中心とした「三茶飲みコミュニティー」ですね(笑)。
— かなり活発に活動されていると耳にしています(笑)。でも、感心したのは、そのお店選びへのこだわりです。ちょっとお話いただけますか。
はい。なんだか改まって話すのにはちょっと気恥ずかしさもありますが(笑)。僕は、個人経営の飲食店が大好きなので、かれらを応援するためにプライベートではチェーン店には行かないって決めているんです。オーナーが自分の意思とスタイルを持って営業しているお店にすごく惹かれるし、そういうお店が集積している街が好きなんです。
ですから三軒茶屋だったり、渋谷、中目黒あたりのそういったお店に永く営業してもらいたくて、定期的に顔を出すようにしています。そういうお店の経営者はやっぱり街を大切にしているし、地域内のコミュニティーについて考えて行動されている方たちが多いです。
渋谷道玄坂のお気に入りのバー33回転でのオフショット
■ 自然界もビジネス界も一定量の自然循環が起きていることが大切
— SOILはスタートアップの成長を大企業との協業を通じて支援するコミュニティーですが、この2者間の人的交流や流動性について加藤さんは現状をどう捉えていますか?
大企業からスタートアップへの人やノウハウの流入は増えてきていると感じています。大企業の持つオペレーションのノウハウは、タレントの流入と共にうまくスタートアップに取り込まれているんじゃないでしょうか。
一方、スタートアップの熱量や勢い、突破力というものが大企業へと流れ込んでいく力はまだ圧倒的に弱いです。僕はそれが今の日系大企業のイノベーション力の弱さ、ひいては日本経済の弱さにもつながっていると見ています。
— 「人材流動性の低さ」はもう何年も課題だと言われいますよね。それでは、加藤さんは大企業の倒産危機やそれに対する政府の救済措置についてはどう思われますか?
ちょっと過激な物言いになりますが、私は潰れて然りというビジネスに国費を投入して無理に救済するようなことはしなくて良い、ゆっくりと倒して社会的リソースの再分配が行われるべきと思っています。もちろん、そこで働く人たちや取引先への影響を極力小さくすることが重要なのは言うまでもなく、それらの手は打った上でということでという前提ですよ。
枯れた巨木がいつまでも立ち残り続けていては、生態系に悪影響を与えてしまいます。それは自然界もビジネス界も同じです。一定量の自然循環が起きていることが大切です。
— 「大企業のDXがなかなか進まない」という声もよく耳にします。
そうですね。DXという言葉が使われて久しいですが、デジタル領域は業種・業態を問わず伸び続けていますし、今後もまだまだ伸びると私は思っています。一方で東急の基幹事業である交通や生活サービス事業をはじめとした労働集約型のビジネスが、これまでのやり方を踏襲したままでデジタル産業と同じように伸びるということは考え難いです。
DXというのは、こうしたアナログ企業がデジタルテクノロジーを自社で生み出していくような組織に変身することだと思っています。
— DXは正しい自前主義、デジタルの内製化であると。
はい。そうです。
一つの例ですが、マーケティングであるとか物流管理であるとか、デジタルへの取り組みを完全に外部に発注して任せてしまうやり方がありますよね。ウォーターフォール型の発注方法だと開発の柔軟性に欠け、将来的な事業環境変化への対応もしづらく、結果的に高コストにもなると思っています。
また、何かの理由で外注をストップした途端に、DXという成長領域への取り組みは霧散してしまうんじゃないでしょうか。
後編では、コロナによるSOILやの変化や渋谷の未来、そして加藤さんご自身の未来について伺います。
乞うご期待!
(取材日 2020年12月2日)
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