IBM Sustainability Software
サプライチェーンの未来を切り拓く | プレイブック – 5つの必須戦略 from IBVレポート
2022年08月03日
記事をシェアする:
パンデミックなど激動する社会情勢の中で、社会・経済に与えるインパクトの大きさからサプライチェーンに大きな注目が集まっています。
こうした激変する環境の中、IBM のビジネス・シンクタンクである「IBM Institute for Business Value(IBV)」は、大手企業数十社のサプライチェーン担当幹部からのヒアリングや、経営層に関する定量的調査の広範なデータから、サプライチェーン・リーダーにとって必須となる5つのポイントを特定しました。
当記事では、IBVレポート『サプライチェーンの未来を切り拓く | プレイブック – 5つの必須戦略』の中から、「プレイブックの必須項目3: サステナビリティーを取り入れる」にフォーカスし、一部を抜粋してご紹介します。
なお全編は下記よりダウンロードしてご覧いただけます。
https://www.ibm.com/downloads/cas/DRNVYBGK
プレイブックの必須項目 3 | サステナビリティーを取り入れる
サステナビリティーとステークホルダー資本主義が経営課題として急浮上している。IBVが先に実施したCSCOを含む企業幹部に対する調査で、回答者の32%がビジネスの最重要課題の1つとして持続可能な事業展開を挙げ、半数は2024年までにカーボン・ニュートラルに進むと回答した。*1
この結果、サプライチェーンのリーダーはいやがおうにもイノベーションの推進役として、社会・環境問題とビジネス・ソリューションのつなぎ役を担わざるを得ない。その際、企業のパーパス(存在意義)が大きな役割を担うことになる。自社の最高情報責任者(CIO)と協力して他社に先駆けて社内の取り組みを積極化するCSCOも出てくるだろう。
IBVが2021年に実施したCIO調査では、回答者の42%がサステナビリティーについて、今後3年間でデジタル技術が最大のインパクトを与える領域に挙げている。*2
CSCOの多くは循環型経済のアプローチを採用して短期的なコスト不安を和らげつつ、長期的な顧客利益に注力している。循環型経済に移行するには、新しい考え方を受け入れ、これまでと異なるビジネスにも意欲的に挑戦することが求められる。社内外のデータや、科学的知見、市場動向などさまざまな情報を積極的に取り込み、ビジネスプロセスや意思決定に活かすことで、環境問題への取り組みでも成果を生むことが期待できる。循環型経済は9つのRによって強化される。9つのRとは、Refuse(拒否)、Reduce(削減)、Re-use(再使用)、Repair(修理)、Refurbish(改修)、Remanufacture(再製)、Repurpose(作り替え)、Recycle(再利用)、Recover(回収)である*3
今すぐ行動を
「サステナビリティーは、人間の存続を左右しかねない深刻な問題だと認識すべきである。すぐにも行動を起こせという呼びかけであり、すべての人が平等に関わる緊急課題だ。ただ、誰もが目下の炭素問題だけに気を取られている。経営層の口に上るのはネットゼロ社会への移行ばかりだ。他により大きな危機的リスクが存在する。生物多様性の喪失や水不足、大気と海洋の汚染、過剰消費である。サステナビリティーは地球システム全体に重大な影響を及ぼす。この星を全人類にとって住みよい場所にできるかどうかの鍵はサプライチェーンにあるといっても過言ではない」
サステナビリティーの推進がビジネス機会の創出やブランド価値、競争力の源泉に
サステナビリティーが環境や気候に限った問題ではないことは明らかである。ESG(環境・社会・ガバナンス)をサステナビリティーの観点から一体的に捉え、現状評価する取り組みが急務だが、この点でサプライチェーン全体の対応はかなり立ち遅れている。サプライチェーンが取り組むべきサステナビリティーは、環境はもとより、社会・経済全体にまたがっており、特にパンデミック以降は劇的な広がりを見せている。
今回のパンデミックは3つの教訓をもたらした。第一に、人類の存亡に関わる健康リスクが実在すること。次に、産業界はグローバルに一丸となって共通課題に対処できるということ。最後に、企業にとって社員や顧客の幸せが、地球環境と同じようにかけがえのないものだということである。
サステナビリティーの課題では、環境分野がまず挙げられる。具体的には、温室効果ガスの排出量削減(カーボン・ニュートラル)や水資源の管理、大気汚染の防止、海洋保全、生物多様性、およびエネルギー管理である。環境分野以外にも、社員の幸福や多様で公平な職場づくり、サプライヤーとの倫理的関係の構築が求められている。ビジネスの観点からすると、こうした課題に取り組むことによって、社会貢献を果たしながら企業利益を拡大する絶好の機会が生まれ、自社の差別化にもつながる。ひいては、長期的にブランド価値を高め競争優位を確立できる。
サステナブルなサプライチェーンの構築テクノロジーを総動員しESG目標の達成を
バーチャル・コミュニティー: 顧客、社員、エコシステムのパートナー
環境:地球が直面する最大の難題を解決するのはオープン・イノベーションである
社会:利害関係者を巻き込む拡張的なバーチャル・コミュニティーはアジリティー(俊敏性)や多様性、インクルージョンに有用である
ガバナンス:環境と社会に関するさまざまな課題は、業界の垣根を超えて取り組む必要があり、新たな形態のガバナンスが求められる
新たなビジネス・プラットフォームとエコシステム
環境:プラットフォームの可視性と透明性の向上は、エコシステムの連携を強化する
社会:労働環境と調達先の選別に関するインサイトは、問題解決を後押しする
ガバナンス:プラットフォームは倫理基準を強化する機会をもたらす
人間とテクノロジーのパートナーシップ
環境:循環型環境社会では、パートナーシップとテクノロジーを活かしたプラットフォームが求められる
社会:新たなチーム・モデルとテクノロジーを活用すれば、家庭からコミュニティー全体にまで及ぶ関係性を企業のパーパス(存在意義)に基づいて構築できる
ガバナンス:テクノロジーが人々の生活に入り込むと、倫理とガバナンスの問題が生じるリスクがある
バーチャル化と新たな働き方
環境:リモートワークはオフィス・スペースと通勤者を減らし、脱炭素化の取り組みに有効である
社会:AI を活用したワークフローによって、継続学習の実現と新たなスキルの獲得が促進される
ガバナンス:アジャイル(俊敏)でバーチャルなオペレーティング・モデルを通じて、ステークホルダー・エンゲージメントに新たな可能性が生まれる
ハイブリッド・クラウドとエクスポネンシャル・テクノロジー
環境:アナリティクスは予測可能性を高め、無駄を減らし、循環型経済を強化する
社会:現実をデジタル空間に再現するデジタルツインを使えば、現実に近いシミュレーションが可能となり、持続可能な社会インフラの整備・維持や、重要な意思決定に活用できる
ガバナンス:アントレプレナーシップを利害関係者の視点から捉え直すことで、人間や地球、企業のパーパス(存在意義)および利益への影響を包括的に理解できる
インテリジェント・ワークフローと透明性
環境:データや AI を活用したインテリジェント・ワークフローは、エネルギーや水資源、廃棄物の管理について新たなインサイトをもたらす
社会:顧客や従業員は会社のバリュー(価値)への信頼がなければ、その会社の商品を購入しようとも、そこで働こうとも思わない
ガバナンス:可視性と透明性が向上すれば、経済の在り方や統治方法は変わっていく
*1 “The Virtual Enterprise: The Urgency of Sustainability and Impact.” IBM Institute for Business Value. November 2021.
https://ibm.co/virtual-enterprise-sustainability
*2 “The 2021 CIO Study. The CIO Revolution: Breaking barriers, creating value.” IBM Institute for Business Value. November 2021.
邦訳「経営層スタディ・シリーズ:CIO スタディ2021 – CIO 革命 – 障壁を打ち破り、価値を生み出す -」
https://www.ibm.com/downloads/cas/PBVNYOYD
*3 van Buren, Nicole, Marjolein Demmers, Rob Van der Heijden, and Frank Witlox. “Towards a circular economy: The role of Dutch logistics industries and governments.” Sustainability. 2016.
https://www.mdpi.com/2071-1050/8/7/647/htm
問い合わせ情報
関連記事
「第2回ベジロジサミット」レポート後編 | ベジロジシステム討論会
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
ベジロジ倉庫とベジロジトラック、そしてキャベツ食べ比べを中心にご紹介した「第2回ベジロジサミット」レポート前編に続き、ここからは第二部、場所を屋内に移して開催されたベジロジシステム討論会の様子をご紹介します。 目次 前編 ...続きを読む
「第2回ベジロジサミット」レポート前編 | レタスの食べ比べとベジロジ倉庫・トラック
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
「佐久地域は葉洋菜類の一大産地であり、産地の生産を守ることは日本の食を守ることです。主体的に取り組んでいきます。ただ、青果物の取り組みは特に困難な要素が多く、物流業界でも取り組みが進んでいない分野です。そんな中で、持ち前 ...続きを読む
日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
2024年10月15〜16日の2日間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「日本Maximoユーザー会」が開催されました。 石油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企 ...続きを読む