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ESGの潜在力を最大限活用する方法とは? | from IBVレポート

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当記事は、IBM Institute for Business Value(IBV)のレポート『成長の原動力か、妨げか、それが問題だ – ESG の潜在力を最大限活用する方法とは?』を一部抜粋し再編集したものです。

なお、全編は下記よりダウンロードしてご覧いただけます。https://ibm.biz/ESGconJ

 

視点 | やっかいなだけではないESGの潜在力

「ESG」という用語は、あまりにさまざまな意味で使われてきたため、もはや何を指すのか分からなくなってきている。サステナビリティーと同義で使われることもあれば、レポーティングに使われる指標と同一視されることもある。ただ多くの場面で、それはまるで嫌忌の対象のように扱われているのではないだろうか。

本レポートでは、ESGを環境・社会・ガバナンスという個々の要素よりも大きな概念として定義する。つまり、ESGを、透明性を確保するための能力、すなわち企業が自社のESGの主張の妥当性を保証する能力として位置付ける。そうすることで、ESGがどのように企業のパフォーマンスを高め、新たな価値を引き出すようになるのかを明らかにしたい。

現在、企業のESGへの取り組みに対する生活者の疑念は深まる一方であり、企業の主張が確かであることが証明されない限り、株主、消費者、従業員、ビジネス・パートナーは企業の主張を信じないだろう。企業が開示する目標、枠組み、指標がいかなるものであれ、エビデンスとインサイトをもたらすESGの取り組みは、新たな機会の扉を開いてくれるはずだ。

 

透明性に対する認識の食い違い

生活者はESGの広範囲の取り組みが重要だとする一方、異なるESG目標の間でいずれかを犠牲にせざるを得ないと回答した経営層は3人に2人に上った。企業は課題に焦点を絞りがちであり、カーボン・トンネル・ビジョン(脱炭素にばかり目が行き、視野が狭くなること)に陥ることが多い。

生活者の期待に応えるためには、経営層はESGについてより広い視野で考える必要が ある。透明性を優先して、ESGデータの障壁を取り除き、重要なインサイトを企業に 還元する意識を持つべきである。

 

図2 透明性に対する認識の食い違い
ESGのレポーティング(情報の提供、開示)が、生活者の関心事項すべてを取り上げていることはほとんどない。

出典: 2023年版生活者調査 質問19: 企業の商品やサービスを利用する決断を下す際に、サステナビリティーに関する以下の情報が生活者にとってどの程度重要かについて(1~5 で回答。4と5 を「非常に重要である」とする)。2023 年版経営層調査 質問 15: 企業が現在採用しているESG指標について
* スコープ1とは、企業が燃料の使用や工業プロセスで直接排出した温室効果ガスの量のこと
* * スコープ2とは、他社から供給された電気、熱・蒸気を使用したことにより、間接的に排出した温室効果ガスの量のこと
*** 排出原単位とは、「活動量」を基に、温室効果ガスがどれほど排出されるのかを計算するための数値のこと

 

ケーススタディー | 業務全体にサステナビリティー思想を取り入れたCelestica社

Celestica社は、設計、製造、ハードウェア・プラットフォーム、サプライチェーン・ソリューションの分野におけるリーディング・カンパニーである。グローバルに展開する製造業においては、ESGのレポーティング業務は広域に分散する複数の国際拠点をモニタリング・監査しなくてはならず、複雑で煩わしい作業になりかねない。同社は、多くの施設のグローバルなデータをスプレッドシートで集計・記録しており、計算は手作業で行わなければならなかった。

このプロセスの効率化に役立ったのがソフトウェアの導入だ。Celestica社は今では、データの取りまとめや、利用しやすい出力形態への変換が可能となり、手入力によるミスを防止できるようになった。複雑な計算とレポーティングを自動化することにより、財務情報レベルで監査可能なデータとして生成している。

こうしたデータとアナリティクスの能力により、Celestica社は組織全体にサステナビリティーの概念を組み入れられるようになった。同社のサステナビリティー・マネージャーを務めるJessica Peixoto 氏は「このガバナンス・モデルがそれぞれの部署に浸透すれば、ビジネスのあらゆる側面にサステナビリティー思想が行き渡るようになるだろう」と述べている。

参考記事 | [事例] 多国籍EMS企業 セレスティカ社 | 製造業におけるESGの課題

 

成功のための4本の柱

IBVの調査は、成熟度が高い企業グループに見られる4本の柱となる能力を特定した。これらは、ESGをビジネス価値に変えることを可能にする重要なものである。

  •  データとエコシステム: 組織全体、およびパートナー・エコシステム全体で、関連するESGデータを調達・管理する能力
  •  デジタル技術: ESG活動のためのエンタープライズ・アーキテクチャーと、ダッシュボードでESGデータを利用する能力
  •  プロセスとビジネスの統合: ESG指標をすべての部門で取り入れる能力
  •  スキルと意思決定: 新しいプラクティスを採用する能力、ESGおよびサステナビリティーに関する適切なスキルを確保する能力

 

これらの4つのESG能力において成熟度が高い企業は、他の企業よりも財務パフォーマンスが優れていることが分かった。ESGへの取り組みが遅れている企業に比べて、年間の収益成長率が10%以上も高く、株主利回りも5%多くなっている。

ESG分野の先進企業は、他の企業よりも収益性が43%高い。また、ESG活動が収益性に非常に大きな影響を与えていると回答した割合も、先進企業はその他の企業よりも52%高くなっている。こうした先進企業の多くがESGは、より多くの改善をもたらすと回答しており、顧客エンゲージメント(70% 高)、リスク管理(90%高)、資金調達(85%高)であった。

また、その他の効果についても、ESGがより大きな効果をもたらすと回答しており、人材採用能力(83%高)、イノベーション(72%高)、加重平均資本コスト(21%高)であった。

ESGの成果に関しても、先進企業は広範な分野において目立った成果を上げている。他の企業に比べて温室効果ガス排出量の削減率が高く、企業の社会的責任の面で成果を上げた割合は34%、多様性の面で成果を上げた割合は51%高かった。

 

図6 ESGが高める効果
ESGがパフォーマンス指標にもたらす効果について、先進企業の方がより大きな影響があると回答している。

出典: 2023年版経営層調査 質問23: 過去3年間のESG活動により改善が行われた程度について

 

デジタルツインにより、生産プロセスの全体最適の実現

アドバンスト・テクノロジー DTSE

IBM Consultingが提供するDigital Twin for Sustainability Estimation(DTSE)とは、量子アニーリング型コンピューターに匹敵する数理最適化を中心とした、二酸化炭素排出量削減を効率的に行うデジタル・ツインである。

すでに会計システムと連動したGHGプロトコルによるスコープ 1、2、3 の区分を行う国内上場企業は増えている。しかし有効な ESG投資に結び付けるには現場と経営陣それぞれが持つ情報を俯瞰的、かつ公平に判断する必要がある。

DTSEはデジタル・ツインによる俯瞰と、投資、作業など、さまざまなビジネス要素の組み合わせの最適化を中心に、製造ラインの見える化などをオプションで提供するサービスである。デジタルツインを利用することで、設備利用の条件をさまざまに変えて消費エネルギー量やGHGの排出量を短時間で算出したり、その算出結果を現実の物理的な空間にフィードバックすることでエネルギー消費を最適化することができる。

例えば、エネルギー源を火力から再生可能エネルギーに変えた場合や、製造装置の増減をシミュレートすることで工程での処理時間やコストとエネルギー消費量の削減効果を計算し、ROIを考えた意思決定をすることも可能である。

 

アクション・ガイド

ESGの可視化を通じ、サステナビリティーを推進することは、継続的な改善のプロセスと重なる。成熟度を備えた企業は、現在のポジションを最終地点と見なすのではなく、むしろビジネス価値を拡大させるプラットフォームであると捉えるべきである。ここでは、企業が自社の状況を改善し、未来の市場に対し準備する方法を紹介する。

01 | 動き始める

  •  ESGの目標と、これから達成すべきことを明確にする。ビジネス戦略と目標に合わせて、ESGの活動を調整する。
  •  ESGの要件に対し必要なデータをマッピング(対応付け)する。どのような情報が何の目的で必要なのかを見極める。
  •  前に進むための、今できる現実的な機会を特定する。

02 | 透明性を確保する

  •  企業全体からデータを収集し、ESG用に一元化した記録システムに移行する。
  •  データを可視化して共有し、パフォーマンスを管理するための、データ・プラットフォームと統合されたESGダッシュボードを構築する。
  •  都合のよい結果だけでなく、すべてのパフォーマンスを共有する。ESGのためのKPIに必要なデータのソース、品質、計算方法を明確にする。

03 | 率直な姿勢をとる

  •  現実的な観点に立ち、適切な情報を明確に報告する。あいまいな表現を避ける。
  •  ESG目標の達成に向けたアクション・プランと中間目標を明確に示す。組織の中で改善が必要な領域があれば、素直に認める。
  •  ESGのデータとインサイトを活用し、組織とエコシステム全体にわたるパフォーマンスの改善を目指す。例えば、サステナビリティーの指標やデータに基づいて、価格、予算、インセンティブを決める。

04 | 大胆に拡大、自動化、強化を行う

  •  エンタープライズ・システムにAPIを設置し、ESGプラットフォームへの継続的なデータ提供を加速させる。
  •  ESGのプロセスとレポーティング機能を自動化して、データを最新の状態に保つ。
  •  AIを活用して、パフォーマンス、予測分析、シナリオ作成に関する高度なインサイトを獲得する。

05 | エコシステム全体を視野に入れる

  •  エコシステム・パートナーの間で、ESGの定義や基準をそろえる。
  •  他社が先導するのを待たず、自らが率先する。利害関係者と協力し合いながら、ESG のデータ・ガバナンス原則を積極的に確立する。
  •  ESGのデータとKPIをエコシステム・パートナーや利害関係者と共有して、協働と共創(co-creation)を実現する。

06 | 信頼を活かす

  •  ESGレポーティングとESGパフォーマンスに関する組織としての能力やスキルを定義、開発、管理する。
  •  変更管理や利害関係者との連携を、ESG活動に不可欠な要素として受け入れる。
  •  強化したESG態勢を活かして、消費者や従業員との信頼関係を構築し、新たな市場機会を開発し、パートナーシップを通じて収益性を高める。

 

問い合わせ情報

 

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