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単なる「環境保全」や「CSR」ではない。社会との共生を意識せよ。(From IBVレポート「成長を賭けた7つの決断」より)

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何千ものクライアントとの対話に基づいたIBMの提言「成長を賭けた7つの決断」の中から、キーテーマ「サステナビリティー」の一部を抜粋してお届けします。
全編は下記よりダウンロードしてください。

https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/jp-ja/report/seven-business-bets


 

気候変動や環境汚染、次なるパンデミック、地政学的対立など、私たちは予測できぬリスクに直面している。それらに立ち向かう唯一無二の方法は、人間による「あるべき姿での」テクノロジー活用に他ならない。
今まさに私たちは非連続な進化に向けて賭けに出る必要がある。今生きる人の笑顔のため、未来に生きる人に残すため、「決断」するリーダーが求められている。

 

トレンド: サステナビリティーの取り組みが本格化する

単なる「環境保全」や「CSR」ではない。社会との共生を意識せよ。
意識変革とともにサステナビリティーを経営の主軸とし、全社一体で次世代が生きる未来を創ろう

一般的なネットゼロの取り組みを超えて差別化するためには、パーパス(企業の存在意義)、利益、人材、地球環境について、目標を明確にすべきである

およそ4社に3社がネットゼロ排出目標を掲げている一方で、陸上や水中の生物の保護といった生物多様性に関するサステナビリティー目標を重視していると答えた経営層は10%に満たない。※1

企業は、自社のパーパスに合致する特定の影響分野を選定しなくてはならない。また事業戦略を、消費者からの需要だけでなく、社会・ガバナンス・脱炭素化の目標と整合させる必要がある。
例えば、IBM Institute for Business Value(IBV)の調査によると、人々は脱炭素化以外にも、水質(92%)、森林破壊(91%)、生物多様性(91%)のようなさまざまな問題に関心を寄せている。※2

また、ブランドを選ぶ際にサステナビリティーを重視すると答えた消費者は、およそ5人に4人だった。※3

企業は「4つのボトムライン(成果)」(人、地球環境、利益、パーパス)すべてに焦点を当てることで、消費者、投資家、従業員、ビジネス・パートナーすべてと信頼関係を築くことができ、事業戦略に合致した経営を行えるようになる。

 

日本市場に向けて

意識変革とともにサステナビリティーを経営の主軸とし、全社一体で次世代が生きる未来を創ろう

グローバル全体を見渡した際、サステナビリティーの観点で先進的な取り組みを開始する企業は徐々に増加している。しかしながらそれらの多くは「コアプロセス*」に組み込まれておらず狭所的な取り組みにとどまっており、企業はサステナビリティー施策を成長や収益性につなげられていないとみられる。サステナビリティー施策に取り組む意義が経営陣・従業員の「血肉として」浸透していないのだ。

世界各国において、企業が開示するサステナビリティー情報に対する監視はますます厳しくなっており、開示情報の透明性や信頼性を確保すべく企業は迅速な対応に迫られている。財務データのみならず、「グリーン台帳**」のデータなどサステナビリティー施策の効果を測るためのデータを統合管理していなければ、効率的な開示だけでなく、サステナビリティー観点からの意思決定も実現しない。

国内市場に目を向けた場合、海外と同様サステナビリティー施策のほとんどは狭所的な取り組みであり、その対象は環境保全などの領域に偏るケースが多い。レポーティングを行うことそのものを主目的として捉える傾向も強い。この傾向は企業にとどまらず、日本ではサステナビリティーを国策として推進し、自国の経済復興に役立てるべく整備を進めるような動きに遅れがあるとみられる。

*コアプロセス:企業が顧客に対し製品・サービス・サポートといった価値を提供する上で必要となる組織横断の事業プロセス
**グリーン台帳:台帳ベースの炭素会計のことで、企業はシステムに出入りする炭素を管理し、財務帳簿と同じ方法で「炭素帳簿」のバランスを取ることができる

 

自社の企業価値向上を後押しすべく、必要なサステナビリティー施策を明確化すべき

サステナビリティーを自社製品の価値として取り入れることにより「価格帯にかかわらず、自社製品を選んでもらう」ためのブランドを確立することに国内企業は注力すべきである。IBVが2021年8月に発行した調査レポートによると、消費者は「環境に配慮したブランドに対しては、より多くのコストを支払う」傾向が強まっていることが判明している。カーボン・フットプリント*やフェアトレード**など、「自社製品のプレミアムに必要な要素は何か」について深く検討し、サステナビリティーをパーパスやコアプロセスの中心として位置付けることが、あらゆる企業にとって不可欠となる。

*カーボン・フットプリント:商品やサービスのライフサイクル全体を通して、排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して表示する仕組み
**フェアトレード:各国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い国・地域の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易の仕組み

 

サステナビリティーに対する認識を全社で統一し、重要な経営指標として取り入れるべき

「チェンジマネジメント*」や「インナーブランディング**」を通して、サステナビリティーの重要性に対する認識を組織メンバー全員に啓発すべきである。その際重要性を訴えるだけではなく、サステナビリティー施策の成果を人材の評価や組織のKPIに取り込むことによって、組織メンバーの意識は変わる。具体的には、施策の成果のレベルを役員報酬にアラインさせたり、現場組織の重要なKPIの1つとして位置付けたりすることなどが考えられる。

*チェンジマネジメント:組織内での変化を計画的に導入し、効果的に実現するためのプロセスやアプローチ
**インナーブランディング:組織のメンバーに対しブランド価値やブランド文化を明確に伝え、組織内の意識や行動を整えるための戦略的アプローチ

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サステナビリティー施策の高度化に向けたデータ基盤の整備が肝心

国内企業においてもサステナビリティーの推進・管理・評価・情報開示を改善するためには、データ基盤の整備が不可欠である。例えば製造業などにおいてサステナビリティー関連指標を拠点ごとに個別管理している場合、データの管理方法、計算根拠・方法、トレーサビリティーを拠点ごとに明確にし、統一基準のもとで統合する必要がある。今後サステナビリティー施策をより高度化していくにあたっては、データの取得、蓄積、統合、分析、可視化、活用といった一連のプロセスについて信頼性を確保した上でシステムを整備し、付随するプロセスや組織の見直しを進めることが急務と言える。

 

決断: サステナビリティーと収益性のどちらかを選択するのではなく、両者を実現する。

環境のサステナビリティー(持続可能性)を、経済の持続可能性に組み込むべきである。企業が今求められているのは、イノベーションを起こし、脱炭素化に確実性を持たせ、社会的公正性や多様性、そして持続可能なビジネス経済を実現する、今までにないプランと解決策に焦点を当てることである。パーパス、利益、人、地球環境という4つのボトムラインにアプローチするための3つの方法を、以下に紹介する。

 

1. 透明性と説明責任に関するエンドツーエンドの分散型台帳を作成する、堅牢なサステナビリティー記録システムを導入する

  • 記録、報告、行動に必要なデータを提供できるテクノロジー・プラットフォームを構築する。
  • CSO(最高サステナビリティー責任者)と CFO(最高財務責任者)がリードして、サステナビリティーと収益性のバランスが取れたロードマップを作成する。
  • それぞれの部署や部門が自発的にサステナビリティー目標に取り組めるようにする。

 

2. 短期的な効率とサステナビリティーの成果を両立させるプロジェクトを加速させる

  • コンピューティング・コストを最大30%削減するグリーンITソリューションを策定し、IT化で生じる炭素排出量の削減を目指す。※4
  • 炭素排出量などサステナブル関連の指標を可視化し、またそれらを運用する際の責任を明確にすることで、エネルギー効率とサステナビリティー目標の達成を目指す。
  • 設計プロセスの早い段階から、スコープ3*で計測されたデータを取り込む。エコシステム・パートナーと連携を取りながら、目的と説明責任を共有化する。

 

3. サステナブルな行動の採用を動機づける製品や体験をデザインし、提供する

  • 製品やサービスの生涯二酸化炭素排出量を最大で80%削減することを目標に、サステナビリティーに配慮した事業設計を行う。※5
  • 人々がサステナブルな選択を最大限行うよう、行動経済学を参考にして、ワークフローを変更する。
  • エコシステム・パートナーと協力して、顧客や消費者にとって便利で透明性の高いサステナブルな選択肢を提供する。

*スコープ 3:スコープ1(事業社自らによる直接排出)、スコープ2(他社から供給された電気などの使用に伴う間接排出)以外の間接排出のこと。例えば自社製品の配送に伴う排出や、自社製品を消費者が使用することで生じる排出など

[事例]メルボルンをさらに暮らしやすい街に | IBM Maximoによるサステナブルな水管理

 

※1 Balta, Wayne, Manish Chawla, Jacob Dencik, and Spencer Lin. “Sustainability as a transformation catalyst: Trailblazers turn aspiration into action.” IBM Institute for Business Value. January 2022. 邦訳「サステナビリティーは変革を引き起こす『カタリスト』である – 先駆者は志を行動に変える -」
https://www.ibm.com/downloads/cas/9EPM6VQK

※2 “Sustainability at a turning point: Consumers are pushing companies to pivot.” IBM Institute for Business Value. April 2021.
https://ibm.co/sustainability-consumer-research

※3 Haller, Karl, Jane Cheung, Mary Wallace, and Sachin Gupta. “Consumers want it all: Hybrid shopping, sustainability, and purpose-driven brands.” January 2022. 邦訳「消費者はすべてを求める」https://ibm.biz/ConsumersWantitAllJ

※4 IBMの社内分析

※5 “Sustainable Product Policy.” EU Science Hub, European Commission. Accessed February 9, 2023.
https://joint-research-centre.ec.europa.eu/scientific-activities-z/sustainable-product-policy_en


 

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