IBM Sustainability Software
IBM Zの製品開発ライフサイクルを支えるワークフロー管理ソリューション
2022年07月08日
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厳密な評価により選ばれたのは、IBM Engineering Workflow Management(EWM)
決め手は適切なワークフロー管理(依存関係管理、機密保護、トラック&プラン)
パフォーマンス、セキュリティ、信頼性、可用性。すべての面で最高水準を要求する組織に選ばれ続けているメインフレーム・コンピューターがIBM Z®(IBMが開発・販売するメインフレームコンピュータのブランド名)です。
世界のトップ50銀行のうち44行、世界トップ10の保険会社のうちの8社、トップ10小売業7社、その他にも世界トップクラスの航空会社やヘルスケア企業、通信事業者、そして多くの政府機関で採用されています。
IBMでは、何千人もの従業員が IBM z Systems® の開発をサポートしていますが、そのエンジニアリング・ワークフローの管理が膨大な仕事であることは想像に難くないでしょう。
予定通りにリリースするために、IBM Zプラットフォームチームは、基板製造、チップ設計、 ハードウェア、ファームウェア、OS、テスト、不具合追跡、その他プロジェクトのさまざまな進捗を常時トラッキングして調整し、膨大な量のデータを適切かつスピーディーに処理しています。
絶え間なく続く締め切りに対応するには、開発ライフサイクルの早い段階で問題やエラーに対応する以外の方法はありません。
そしてまた、システムはさまざまな業界標準や政府標準の厳しい規制要件を満たす必要があるため、テスト、検証、確認は包括的に行われなければなりません。
複数ワークフロー管理ツールを単一のソリューションに?
IBM Systems DevOps エンタープライズソリューションズ・システムズのアーキテクトであるChris Robertsは、次のように述べています。
「輸出管理規則やライセンスの違いなど、国や政府が出している輸出に関する規制は山ほどあります。また、私たちは監査対応だけではなく、機密保護にも十分気をつけなければなりません。
たとえば、IBMはオープンソース・コミュニティーに積極的に参加していますが、IBMの専有チップの設計は機密事項として秘匿しなければなりません。そしてこうした機密保護は社外に対してだけではありません。内容によっては、IBM社内においてもチームの取り組みを秘匿しなければならない場合もあるのです。
IBM Zハードウェア・プラットフォームチームは、これまで複数のワークフロー管理ツールを長年使用してきましたが、実態はどのツールも完璧とは言い難くそれぞれに欠点を持っていました。
IBM zHW Program Managementのプロジェクトエグゼクティブ兼マネージャー、Dominic Odescalchiは次のように述べています。
「IBMが数年前に買収したソリューションの1つは非常に強力で、我われが望むことすべてを実現してくれるものでした。しかし、複雑過ぎて直感的に使うことができなかったのです。その結果、メンバーはより使い勝手の良い別ツールを見つけ出し、そちらを使い始めることとなってしまいました。」
他にも、とても有名なクラウドベースのソリューションも使用していました。当初はそのユーザビリティの良さにチーム内での評判も大変良かったのです。しかし、スケーリングコストとテクニカルサポートが大きな障害となってしまいました。
私たちIBM Zハードウェア・プラットフォームのチームメンバーは皆、常に時間制約が厳しいプロジェクトに携わっており、ワークフローそれぞれの関係性とトレーサビリティの管理に悩まされ続けています。
2つの大きなチャレンジがありました。1つめは「現在用いられている複数のワークフロー管理ツールを単一のエンジニアリング・ワークフロー管理ソリューションに置き換えることができるのか」。
そして2つめが「置き換え可能だとすれば、どのような公正な評価を経ることで最適なソリューションが見つけ出せるのか」というものです。
「IBM EWMの統合されたツールスタックにより、さまざまなチームのリポジトリに接続して容易に主要なデータを取り込み、すぐに活用することができるようになります。
そのおかげで、我われはデータ集約とタスクの自動化を実現できるのです。それはつまり、より価値の高い活動に集中する時間を手にすることができるということです。」
Dominic Odescalchi | IBM zHW Program Management プロジェクト・エグゼクティブ兼マネージャー
1年にわたる評価プロセスで選ばれたのはIBM EWM
私たちIBM Zの開発にかかわる主要な利害関係者一同で、ワークフローツールを並べて比較し、評価マトリクス図を作成しました。そしてチームが必要としている統合機能を満たしているのはどのソリューションか、あるいは満たしていないのはどれかをチェックしていったのです。
Odescalchiはこう話しています。「絶対に最高のツールを選びたかったので、この作業には1年もかかってしまいました。でも、我われには必須条件を満たす、最適なツールを自由に選択する権利が保証されていました」。
世界中のチームメンバーから意見を聞いた後、ユーザビリティ、スケーラビリティ、垂直・水平統合、セキュリティ、コスト、バックログ優先順位付け、コマンドラインサポート、テクニカルサポート、データおよび依存関係管理という、MVP(Minimum Viable Product: 実用最小限の製品)に必要な要件と基準が定義されました。
意見の吸い上げは世界中のIBM Z開発関係者から幅広く行いましたが、実際のMVP作成プロジェクトは、新しいツールを最初に導入するとコミットしたZハードウェアチームからスタートすることとなりました。
Odescalchiはこう言っています。「1年間にわたる世界規模での評価プロセスに基づいて我われが選んだのが、一連のIBM EWMツール群でした。
この評価結果は、純粋に基準とデータだけを対象として決まったものです。総合的に我われ全員が最高のソリューションであると一致したのが、EWMツールスタックだったのです」。
EWMとは、IBM Engineering Lifecycle Management (ELM) ソリューションのコンポーネントであり、大規模で分散した開発組織向けに設計された完全統合ソフトウェア開発ソリューションです。
そして選定基準の中で最も重要な要素の1つがスケーラビリティでした。
「我われは大規模開発に対応できるソリューションを必要としていました。莫大なデータ量と同時使用ユーザーをサポートしながら、必要なパフォーマンスを全ユーザーに提供できるツールはそう多くはないのです。」
Zハードウェア・プラットフォームのリーダーシップチームは、複雑さに対処するためにEWMシステムの主要ユーザーのペルソナを開発しました。Odescalchiはこう続けます。
「ペルソナに焦点を当てることで、データを入力するユーザーとデータを使用するユーザーの両方にとって使いやすい、シンプルなインターフェースにすることができました。ペルソナが使用することのないメニューや選択肢は、奥に引っ込めておいた方がいいのです。」
MVP作成の重要な要件の中には、開発や変更の計画および実施を管理・追跡する「トラック&プラン」と「バグ・欠陥管理システム」が、統合環境で動作することが含まれていました。
「この2つの機能が別物となっていることは絶対に避けたかったのです。ですからEWMが単一環境で提供してくれるのはありがたかったですね。」
「我われがテスト中に作成するファイルサイズは膨大ですが、データは、作業用ストレージですぐに利用できなければなりません。IBM EWM以外のツールの多くが保持できる開発データは1年分程度で、これでは我われの要求基準に満たないのです」。
Odescalchiはデータ量とストレージについて、さらにこう語りました。
「EWMは数年分のリアルタイム情報をアーカイブ不要で保存することができます。これに匹敵する機能を持つツールは他には見当たりません」。
IBM EWMソフトウェアは、Zハードウェア・プラットフォーム開発チームのエンジニアリング・データの中心となるハブとして機能し、IBMのエンジニアリング・ライフサイクル管理(ELM)ソリューションと連動して動作します。
アーキテクトのChrisは次のように言っています。
「ウォーターフォールとは全く異なるワークフローを持つアジャイルプロセスを使用しているチームもいるでしょう。それでも、他のチームに状況やデータをリアルタイムでしっかりと受け渡しできなければなりません。ELMのワークフロー・カスタマイゼーションにより、開発データと進捗状況を一元管理しながら、別チームにも対応することができるのです」。
最後に、ハードウェアがリリースできる状態にあることを確認するために、チームは IBM Engineering Test Management (ETM) ソリューションを使用してテストを完了させます。
Robertsは言います。「やはりハードウェアはハードウェア、最終的には、開発した物理的な実体がすべてです。しっかりとテストが行われ、すべてが最初から正しく動作しなければなりません」。
高セキュリティでの統合と自動化の実現
IBM EWMソリューションは、リーダー、監査人、規制当局が求める詳細を迅速に報告できる、スケーラブルかつ追跡可能で、一元管理された信頼できる唯一の情報源を、Zハードウェア・プラットフォーム開発チームに提供します。
統合ITインフラストラクチャにおいて、セキュリティ確保は最重要事項です。IBMの開発チームは、開発ライフサイクルで頻繁に使用されるツール全体の潜在的な危険性を分析しました。Chrisはこう話しています。
「IBM EWMシステムに保存されている情報は、GitHubに保存されている情報よりもはるかに安全だと私たちは判断しました。」
「フィールド、レイアウト、タブを作成し、ワークフローに組み込む事ができます。これらの機能は初めからIBMのツールに組み込まれています。
つまり、標準的なワークフローに縛られることなく、自分が選択したプロセスをシステムに取り込むことができます。ワークフローをカスタマイズして、他のシステムと安全に統合することが可能なのです」。
プロジェクトが進むにつれ、チームリーダーはすべての開発、成果物、そして依存関係の状況など、主要マイルストーンが達成目標に到達しているかどうかを、バーンダウンチャートで明確に確認できるようになります。
Chrisは言います。「もしチップ開発チームが機能を想定タイミングで提供できないとなった場合、その機能に依存しているファームウェアチームは即座にそれを知ることができます。
IBM EWMツールのこの特定の作業項目の影響を視覚的に即時提供してくれる機能は、チームメンバーに大歓迎されています。依存関係管理は非常に重要なのです」。
Odescalchiも同意し、こう言っています。「私が見た限りでは、EWM以外のツールでは依存関係をグラフィカルに表示することはできません。
この機能のデモを行ったところ、チームのみんなが共感し、非常に大きな付加価値だと感じたようでした」。
現在、プログラムチームは、状況報告用のスライドプレゼンテーションを手作業で作成するためにかなりの時間を費やしています。さらに、レポート作成のためにすべてのデータを収集するのに時間がかかっており、完成〜発表時には現状からすでに遅れをとっていることが常態化してしまっています。
しかしEWMソリューションを用いれば、リアルタイムで状況を報告するダッシュボードが作成されるのです。Odescalchiはこう言っています。
「ブラウザでページ再読み込みをすれば、ダッシュボードは最新版に更新されます。さまざまなシステムの最新データを読み込み、グラフや表を更新します。自動化もこの取り組みの重要なポイントなのです」。
EWMのデータ処理能力、精度、明瞭性、統合性は、IBM開発チームが想定したベンチマーク目標を超えることになりそうです。
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当記事は、事例『Streamlining product development lifecycles with automation』を日本のお客様向けにリライトしたものです。
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