IBM Sustainability Software

サステナビリティのためのデザイン原則とその実践(ハネウェル社事例)

記事をシェアする:

今日、サステナブルな製品を作ろうと考えるのであれば、「その一部に持続可能性を入れこむ」という考え方は通用しなくなっており、製品設計段階から取り組む必要があります。

実際、製品の原材料調達から廃棄されるまでの期間で排出される温室効果ガスの量(カーボンフットプリント)は、製品設計によって決まるとされています。

 

サステナビリティの実現には、思考の変革が必要です。製造業を対象とした最近のIBVの調査では、86%の経営層が自社にサステナビリティ戦略があると答え、そのうちの73%が炭素排出量ゼロを目標に掲げているものの、戦略に基づいて行動しているのはわずか35%でした。

製品の改修やメンテナンススケジュールの変更など、後付け的な取り組みでもカーボンフットプリントをある程度減らすことは可能ですが、永続的な変化をもたらすのは、前向きで未来を見据えた取り組みです。

 

5つのサステナビリティ・デザイン原則

残念ながら、サステナビリティのためのデザインだけで企業は環境負荷を実質ゼロにすることはできません。しかし、下記5つのデザイン原則を満たすことで、サステナビリティ戦略は社会に有意義な変化をもたらすものとなります。

 

1. 原材料の削減

5つの原則の中で最も分かりやすいものです。製造に使用する原材料とエネルギーの量を削減できる技術改善に着目しましょう。

2. モジュール設計

複雑なプロセスをより効率的に編成できるようにする。そのために、高度なシステムを単純なモジュールに分割・細分化しましょう。

3. 長寿命設計

製品の使用期間を延長する。そのために、ビジネス知識、市場環境、企業能力、技術的可能性、ユーザーニーズを製品コンセプトに統合し、製品の長寿命化に寄与するより良い戦略的意思決定を行います。

4. シミュレーションへの投資

生産に時間と費用をかける前にシミュレーションを行う。そのために、コンピュータ生成モデルやシミュレーション環境を作り、部品やアセンブリのモデル化とテストを行います。

5. リサイクル設計

製品ライフサイクル終了時を考慮した設計をメーカーに奨励します。製品がその寿命を終える際、単に廃棄されることなく、他の用途に転用されたり原材料としてリサイクルされやすくなったりするデザインを推進しましょう。

 

一層複雑化する昨今の製品開発を成功させるためには、統合的な開発ライフサイクル・マネジメントのアプローチを採用することが不可欠です。

統合的開発ライフサイクル・マネジメントを実践することにより、開発チームは価値が低く反復的な作業から解放され、絶大な効率性と多くの可能性を手にすることができます。

より斬新な取り組みやソリューションに集中することができ、チーム内およびチーム間のコラボレーションを向上させるデータインサイト活用を力強く進めることができます。

 

企業はサステナビリティを、設計と開発においても、製品を市場に投入するまでの時間(TTM)やコスト、収益性と同様の重要指標とするべきでしょう。

それがわかる事例として、ハネウェル・エアロスペースの事例を見ていきましょう。

航空業界は気候変動におよそ4%の影響を与えていると言われており、私たちは皆、重たい飛行機を飛ばすことは環境負荷が高いことだと理解しています。しかし、どうすればそれを変えていけるのでしょうか?

 

事例 | 航空宇宙(ハネウェル・エアロスペース)

ハネウェル・エアロスペースは、航空機が避けて通ることのできない熱管理という大きな技術的困難に取り組み、地球温暖化係数(GWP: 二酸化炭素を基準とした温室効果ガスの影響度の尺度)の300分の1に削減する、革新的な熱管理システムを設計しました。

その取り組みはどのように進められたのでしょうか。ポイントは、サステナビリティに対する強い意志と覚悟、そして、IBMのエンジニアリング・ライフサイクル・マネジメント(ELMツール群を活用することでした。取り組み結果は以下4点に集約されます。

 

  1. 製品開発のサイクルタイムを48カ月から24カ月に短縮。同時に研究開発投資の30%削減を実現。
  2. 大規模統合システムにアジャイル・プラクティスを適応。ソフトウェアとハードウェアの両者において、複数サブアセンブリの並行開発を実現。
  3. 大規模アジャイル開発フレームワークSAFe(Scaled Agile Framework)をハードウェア開発に導入。既知の課題を克服し、チームの壁を超えた統合機能管理を実現。
  4. 「ウォーターフォール型プロジェクト管理」という長年の慣習に挑戦。斬新なツールを活用して組織構成を適応させ、俊敏な組織へと変革。

 

上記取り組みの結果、ハネウェル・エアロスペースは、従来のユニットよりも35%軽量で20%効率が良く、より汚染の少ない冷媒を活用した、革新的なソリューションを手にしました。

市場投入までの時間を改善し、開発コストを削減するこの包括的な製品開発の取り組みは、今後さまざまなプロジェクトでより広く採用されることとなります。

 

サステナブルな製品設計がサステナブルな社会をつくる

サステナブルな製品の開発には、サステナビリティへのコミットメントと実行力が必要です。そして実行力を高めるためには、取り組みをデジタル・トランスフォーメーションに統合していく必要があります。

 

製品開発におけるサステナビリティへの取り組みは、人びとの暮らしや働きかたにも変化を及ぼします。

航空機の持続可能性を追求したハネウェル設計チームは、職場への通勤方法や趣味のための移動方法にも変化をもたらしました。人びとは都市化の激しい地区にある職場から50~100マイル離れた場所で、人口集中地区を避けて生活することができるようになったのです。こうした変化は、共同体や社会全体にも大きな影響を与えるでしょう。

 

IBMは、お客様が要件定義、要求管理、ワークフロー、テスト管理、システム設計モデリング、これら一連のすべての活動におけるベストプラクティスを活用できる、統合開発ライフサイクル管理ツール「ELM」ツールセットを提供しています。

ELMツールセットは、製品開発ライフサイクル全体にわたるデータからの洞察の視覚化、分析、取得に役立ち、情報共有と活用を最適化します。

また、データとプロセスの透明性と追跡可能性を高め、組織が法令・規制や業界標準へのコンプライアンスを維持・実証するのに役立ちます。

 

開発の意思決定に、データとサステナビリティを。

組織のサステナブルな社会への貢献と、持続的成長につながる製品開発を、IBMがご支援いたします。


当記事は『Sustainability begins with design』を日本のお客様向けにリライトしたものです。

 

製品・技術情報

 

問い合わせ情報

この記事を読んだあなたへのおすすめ

Automotive 2030:2030年 自動車業界の将来展望

「ニューノーマル」に合わせた開発環境をチームに

OSLC | 複雑な製品の開発者なら知っておくべきこと


 

More IBM Sustainability Software stories

「第2回ベジロジサミット」レポート後編 | ベジロジシステム討論会

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

ベジロジ倉庫とベジロジトラック、そしてキャベツ食べ比べを中心にご紹介した「第2回ベジロジサミット」レポート前編に続き、ここからは第二部、場所を屋内に移して開催されたベジロジシステム討論会の様子をご紹介します。 目次 前編 ...続きを読む


「第2回ベジロジサミット」レポート前編 | レタスの食べ比べとベジロジ倉庫・トラック

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

「佐久地域は葉洋菜類の一大産地であり、産地の生産を守ることは日本の食を守ることです。主体的に取り組んでいきます。ただ、青果物の取り組みは特に困難な要素が多く、物流業界でも取り組みが進んでいない分野です。そんな中で、持ち前 ...続きを読む


日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

2024年10月15〜16日の2日間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「日本Maximoユーザー会」が開催されました。   石油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企 ...続きを読む