IBM Sustainability Software
電気自動車のエンジニアリングとデザインに必要不可欠なもの
2021年10月12日
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ソフトウェアで定義された自動車にエンジニアリング・デジタル基盤が必須な理由
安全性と品質を確保するための新しい車両内テクノロジーとシステム開発、テクノロジー基盤となるデータの管理とアクセス保護、そしてこの新たな自動車の所有と運転の操作経験。新たに開発しなければならないものは数知れません。
自動車メーカーとサプライヤーが対処せねばならないことの量を考えれば、自律型電気自動車の現在までのゆっくりとした進化スピードは妥当と言えるのかもしれません。
加えて、電気自動車には、より広範なエコシステムとパートナーシップが不可欠です。
サブシステムと部品の「ティア1」と呼ばれる自動車メーカーに直接部品を供給する企業はもちろん、自動車に関連する学会や研究団体、さらにはスマートシティには欠かせない充電施設などもそこには加わります。
電気自動車のここからの成長スピードは、バッテリー、プラグインハイブリッド、充電時間といった技術的進歩と、多種多様なモデルやグレードの提供、そして継続的な補助金などにかかっています。
購入を検討する消費者に、どれだけ早くより多くのメリットを手渡せるか。あるいは、デメリットを消し去れるかです。
エンジニアリングの観点から特に重要なのは2点。いかに市場投入までの時間を短縮できるか。そして環境に優しい製品を持続可能な方法で生産できるかです。この実現の鍵を握っているのは、エコシステムによるコラボレーションです。
IDCの調査『Future of Industry Ecosystems 2021』によれば、製造業の実に66%の企業が、コラボレーションを通じて環境における持続可能性の取り組みとその改善に焦点を当てることを計画しています。
多くの消費者が、電気自動車バッテリーの技術進歩と規模拡大を待ち望んでいます。化石燃料を動力とする内燃エンジン車と、同等のコストでより長距離を走れ、手軽に充電もできる状況の到来を待っているのです。
自動車メーカーは、エンジニアリングとデザインのプロセスにおいて、よりエレクトロニクス開発に注力して電気モーターやバッテリーなどのサブシステムを進化・改善させていく必要があります。
そしてもう一つ重要性が高くなるのがソフトウェア開発です。
従来の車両と異なり、ソフトウェア開発には製品ライフサイクル全体にわたる包括的アプローチの採用が欠かせません。開発プロセス全体の可視性を高めて、機械、電気、およびソフトウェアの各開発チーム間のシームレスなコラボレーションが確保されなければ、成功を手にすることは無理でしょう。
次世代車両開発の複雑さを管理する
自動車業界で兼ねてから言われ続けてきた通り、車両開発の中心は、かつてのメカニカル開発からソフトウェア開発へと転換しています。「コネクテッド」「自動化」「電動化」を複合的にコントロールするテクノロジーも生まれてきています。
機械、電気、およびソフトウェアシステムの並行開発管理には、多数のチャレンジが存在します。エンジニアリングチームには、これらの新しい課題を受け入れ、転換を可能とするふさわしいエンジニアリングプロセスへの適応が求められます。
自動車業界のデジタルトランスフォーメーションは、いよいよ待ったなしとなりました。
自動車エンジニアリングプロセスの転換には、情報とデータがチーム間およびエコシステムパートナーへ共有されることが必須となります。製品開発ライフサイクル全体を通じて、完全な透明性とトレーサビリティを供給するデジタル基盤が必要なのです。
そしてこのデジタル基盤が、電気自動車の成長基盤となります。
IDCの調査『2021 Product and Service Innovation Survey』によれば、エンジニアリングチームが最重要事項として挙げているのは、外部チームを含むチーム全体のコラボレーションの改善であり、その対象範囲は、設計、エンジニアリング、製品管理、製造、サプライチェーン、およびサービスにまで及びます。
企業は内部エンジニアリングチームとパートナーやサプライヤーからなる外部チームを同期させ、共通の目的に向けたコミュニケーションとコラボレーションが可能な環境を必要としています。情報の流れを改善することで、デジタルおよび物理的なイノベーションの実現を可能とします。
そして下記のフロー図(図1)に示されているデータのシームレスな流通が、品質低下や再作業を発生させてしまいがちな取り違えや行き違いの排除に役立ちます。
電気自動車と自動運転車にはたくさんの新たなテクノロジーが導入されています。それは多くの自動車メーカーが、パートナーやサプライヤーのエコシステムを拡大しているということです。
そして同時に、エンジニアリングプロセス全体を統合管理できるアプローチが採用されていなければ、その自動車メーカーは相当な困難に直面することを意味します。
拡大するエコシステムの管理には、メカ・エレキ・ソフトの開発を担う全チームに拡張でき、全体を統合できるサードパーティの設計ツールや管理ツールが必要です。
そしてさらに、設計、開発、製造の各プロセスでデータが共有されるこのデジタル基盤が、あらゆる利害関係者間の調整をさらに促進するものとなり、強いチームを作り上げていきます。
新しい自動車技術の導入に不可欠な品質、コンプライアンス、安全性の確保
新しい技術の開発には「未知」が付きものです。エンジニアリングチームは、新しいスキルとプロセスの確立、新しいパートナーシップの構築、新しいコンプライアンス基準の実施に取り組まねばなりません。
この期間が思うように進まないことばかりで、ストレスが募るものであることは想像に難くありません。
品質基準を維持し、コンプライアンスおよび規制ルールの実施をすべて確認し、開発スケジュールと安全性テストの間のトレードオフの最善のバランスを見つけ出し管理する。自動車メーカーにとってこれ以上頭の痛いことはありません。
多くの場合、データ管理がこれらを成功させるための鍵を握っています。これらを苦もなく実施できるデジタル基盤が整えられていることが重要なのです。
- 開発ライフサイクル全体にわたって単一データセットが保持されているか。
- その最新データは開発状況を伝えるカスタムレポートやダッシュボードには常に反映されているか。
- コンプライアンスおよび規制対応を関係者はいつでも確認できるか。
- よりインテリジェントな判断ができるよう、開発ライフサイクルを通じて従業員の知恵を動員する仕組みが備わっているか。
車両をコントロールするソフトウェアの更新が欠かせない自動運転車には、さらに大きなチャレンジが存在しています。
そのモデルの最初の車両が製造ラインから旅立つときに、事実上「手離れ」は存在しません。開発チームは走行車両が社会から消え去るまで、開発とテストを継続し続けなければならない可能性があります。
ですから、電気自動車メーカーは、車両開発期間だけではなく、その運用ライフスパン全体にわたり開発データを管理し、追加対応や開発を可能とする管理環境を採用する必要があるのです。
製品開発プロセスを次のステップへ
電気自動車と自動運転車への転換はこれ以上ない大変なチャレンジですが、同時に開発環境がどれだけ正しく機能しているかを評価するためのまたとない機会でもあります。
誠実で正確なギャップ確認ができているか。手動作業や間に合わせのツールでの対応が行われていないか。生産性と品質に不安要素が検出されていないか。
これらをパスできなければ、開発環境全体にエンドツーエンドの包括的管理ソリューションを導入するベストなタイミングが今やってきているということです。
情報とデータがエコシステム全体に共有され、透明性とトレーサビリティを確実なものとするデジタル基盤は、関係者一同のより良いコラボレーションを促進します。
コンプライアンスと規制順守の自動化と合理化をエンジニアリングチームに提供し、日々の開発プロセスを未来へと紡いでいく包括的なソリューションが、自動車エンジニアリングプロセスには欠かせなくなっているのです。
IBMからのメッセージ
市場で成功を収めているエンジニアリング企業の多くが、デジタル開発基盤として、そして包括的ソリューションとしてIBM Engineering Lifecycle Management(ELM)を選択しています。
ELMは適応性や運用性を考慮して設計されており、業界標準のオープンソース仕様であるOSLCをデータ交換に用いています。
これは、ますます複雑化する今日のプロジェクト管理に必要なものとしてだけではなく、今後もエンジニアリングが高い競争力を持ち続けられるようにと、ELMが未来を見据えていることを示しています。
当記事は、IDCのジェフ・ホイロ氏の寄稿『Enabling resilient electric vehicle engineering and design』を日本の読者向けに編集したものです。
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