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[IBM Envizi ESG Suite導入事例] メルボルン・ウォーター社 | エネルギー消費とGHG排出量を削減
2023年07月05日
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Envizi導入効果概要
- サステナビリティ・レポートの合理化による効率向上とコスト削減
- エネルギー使用とESGパフォーマンスの記録システムの一本化による相乗効果
- GHG排出量削減機会発見の増加
- エネルギー使用料金の削減
メルボルン・ウォーター社について
メルボルン・ウォーター社は、グレーター・メルボルン地区の主要な上水道、下水道、排水網を管理するビクトリア州政府所有の法定機関です。地元の水道会社やオーストラリア・ビクトリア州の議会とともに、健全なコミュニティと環境維持のために川や小川をはじめとした水循環の管理も行っています。
オーストラリアのビクトリア州にあるメルボルン市の主要な水資源を保護・管理する政府所有の法定機関、メルボルン・ウォーター社。メルボルン市の水資源の適切な保全・処理のために、大量の電気、燃料、可燃性ガスなどのエネルギーを使用しています。
「メルボルンの下水の約90%が、東部処理場と西部処理場で処理されています。」
メルボルン・ウォーターのエネルギー会計担当、ダニエル・ブラッドショー氏は説明します。
「メルボルン・ウォーターの経費の主要部分を占めるのはエネルギー使用料です。そしてビクトリア州の水道セクターの総炭素排出量の約半分は、エネルギー使用に伴う排出です。」
解決すべき課題
今後50年間で、グレーター・メルボルンの人口はさらに400万人増加することが予想されています。人口増加や気候変動の影響は、メルボルン・ウォーターにさらなるエネルギー負担を強いることとなるでしょう。
気候変動の影響により、気温上昇、山火事増加、他の異常気象災害の可能性が高まり続けています。それが意味することは、メルボルンの水供給のためのインフラ強化への需要のさらなる高まりが予想されること、そしてサービスレベルを低下させないためにより多くのエネルギーを利用する必要があるという悪循環へとつながりかねないということです。
持続可能性を重視する組織として、メルボルン・ウォーターは気候変動の緩和と適応に積極的に取り組み、州の水セクターをリードすると宣言しました。
この宣言は、メルボルン・ウォーターが、今後エネルギー消費の削減と再生可能エネルギーへの転換を一層進める手法の調査・分析を積極的に追い求めることを、自ら周知したことを意味しています。
その覚悟をしっかりと示していくためには、極めて詳細なエネルギー使用量と支出量の追跡が必要となりますが、メルボルン・ウォーターにはそれらの2013年以前のデータが残っていませんでした。
「当時の私たちはレガシーなデータ管理システムを使用しており、煩雑で制限が多く、使いにくいものでした。」とブラッドショー氏は振り返ります。
データ入力やファイルのアップロードを手作業で行っていたので、データの質は低いものでした。また、環境・社会・ガバナンス(ESG)データの検索、集計、修正に時間がかかり、メルボルン・ウォーターの将来を見据えた事業計画や将来予測に支障をきたしていました。
「手作業でデータセットを行い、CSVファイル形式でアップロードしていたので、コンマの位置が1つずれただけでデータセット全体がすっかり狂ってしまうのです。」
メルボルン・ウォーターは、エネルギー使用量の正確な評価や将来の費用見積もりに問題を抱えていたのです。
的確にデータ抽出を行うには、システムの機能に関する特別な知識が必要だったため、データにアクセスして分析できる人の数は限定されていました。
「エネルギー使用に関するデータ要求があった場合、エネルギーチーム内で調整しタスク作成の上実行する必要がありました。組織全体でデータ洞察を共有する効率的な方法がなかったのです。」ブラッドショー氏はそう振り返ります。
IBM Envizi ESG Suite導入後
- 数日かかっていたサステナビリティレポート作成が、わずか数時間で完了するように
- 費用上昇を引き起こしていた特定の事象を特定。エネルギー料金を数十万ドル削減
これら数々の問題を解決すべく、メルボルン・ウォーターは、レガシーシステムをIBM Envizi ESG Suiteに置き換えました。
エネルギーデータの取引ポートフォリオをプロアクティブに管理し、サステナビリティへの取り組みを妨げるデータ保持とレポーティングを一挙に実現することを決定したのです。
単一の「真実の情報源」
IBM Envizi ESG Suiteは、クラウドベースのESGデータ管理プラットフォームです。メルボルン・ウォーターが必要としていた、シングル・ソースのESGデータとして管理・分析を行うものであり、サステナビリティ目標の追求には欠かせないものでした。
メルボルン・ウォーター社は、貯水池や処理場から、ポンプ移送機器からと、さまざまなシステムからの分散したデータを1つのダッシュボードに統合するためにIBM Envizi ESG Suiteを選択しました。
Enviziは、500を超えるデータ・タイプの収集と集約を自動で実行することができるので、データを一度収集すれば、ユーザーは複数タイプのレポートを何度でも作成できるのです。
データ・アップロードと収集を終えれば、Enviziの柔軟なレポートツールが元データから「エネルギー使用強度」メトリック(使用したエネルギー量に対応するコストと排出量)を作成します。この指標は、エネルギー効率化機会の特定に用いられます。
ブラッドショー氏はこの機能を賞賛しています。「私たちは、過去のエネルギー使用量と、今現在のエネルギー使用量を同時に知ることができるシステムを求めていました。
Enviziはそれに応えてすべて把握することができるツールであり、過去に行ったこと、現在行っていることのすべてから、未来に向けたインサイト開発につなげられるのです。」
エネルギーを大量に消費する施設や資産を容易に特定できるようになり、パフォーマンス指標の継続的ベンチマークもできるようになりました。
「おかげで最適化も簡単になりました。たとえば、私たちのおよそ500ある施設や資産の中で、東部処理場が組織全体の電力のほぼ半分を使用していることが分かっています。
そこで、この施設に焦点を当て、この施設向けに大規模な太陽光発電設備を導入することにより、大幅な電力使用量の削減と排出量の削減が見込めることが分かったのです。」
メルボルン・ウォーターにとって、こうした情報がすぐに入手できるようになったことは非常に有益であったと話すと、ブラッドショー氏はこう続けました。
「これまでと異なり、今ではエネルギー消費量を時系列で確認することができます。サイトのエネルギー使用量の概要や、メータリングコストやサービス料金変更を含む、関係者向けレポートを素早く作成することも簡単です。」
Enviziの導入により、メルボルン・ウォーターはサステナビリティの取り組みを裏付けるデータ基盤を手に入れ、再生可能エネルギープロジェクトのパフォーマンスを長期的にトラッキングできるようになりました。
過去の実績を分析できるようになったことにより、メルボルン・ウォーターは処理・移送システムが使用していた化石燃料由来のエネルギーの多くを、ソーラーパネルや水力発電、下水汚泥からの燃料ガス回収・使用などに置き換えるという目標を達成することができました。
メルボルン・ウォーターは、2025年までに、電力の100%を再生可能エネルギーから調達する予定です。
Envizi導入効果 | 個別項目
メルボルン・ウォーターは、すべてのデータ管理を単一の記録システムで行うことで、サステナビリティ目標に迅速かつシンプルに取り組むことができるようになりました。以下、その効果と特徴をお伝えします。
-
光熱費とリスクの管理
Enviziは、包括的な料金計算機能やデータ発生機能など、堅牢なデータ品質保証機能を搭載しています。また、データ入力負荷を大幅削減する自動データ取得機能により、手動データ入力にありがちなエラー発生を軽減します。
請求書の取り込みと検証も容易に行えるので、将来の請求額を正確に予測し、効果的にリスク管理を行うことができます。「現在、メルボルン・ウォーターの予測精度は非常に高く、最終的に届く請求書の金額と0.5%以内の誤差しか出ていません」と、ブラッドショー氏は述べています。
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サステナビリティレポートの合理化
複数の異なるシステムやリポジトリーからデータを自動に収集し、すべてのデータ管理と分析を単一の記録システムで実施します。
メルボルン・ウォーターのESG関連報告書すべてに同一データが使用されるので、曖昧さや齟齬がなくなり、独自のエネルギー使用強度指標と比較しながら効率化を進めることも容易に進められます。
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エネルギーの積極的な管理
メルボルン・ウォーター社の資産は、地理的に広い範囲に分散しており、運用機能も異なっています。
Envizi導入により、それら異なるリポジトリーからのデータは、組織構造に応じた論理的な構成で階層化され、エネルギー使用量は統合化された単一ビューで、簡単に確認できるようになりました。
そのおかげで現在は、細分化された業務グループやプロジェクト毎の活動の測定や検証が容易に行えるようになり、太陽光発電や効率化プロジェクトなど、それぞれがビジネスケースを満たしているかを追跡できています。
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施設パフォーマンスの最適化
関係者はメルボルン・ウォーターのすべてのエネルギー指標について、Enviziという単一の情報源に直接アクセスできるようになりました。
「データの民主化が行われたのです。複数のチームが必要なときにコスト、消費量、アカウント番号、レポートツールにアクセスできるようになりました。」そのおかげでコスト削減の機会が見つかり、組織全体の労力や時間、費用の節約につながったとブラッドショー氏は語っています。
2035年完全ネットゼロ達成に向けて
Enviziがもたらした大幅に改善した分析・レポーティング機能と、持続可能な取り組みをサポートするデータの力を使い、メルボルン・ウォーターは、現在の公共水道の保護はもちろん、将来の気候や人口需要に対応した公共水道保護にも注力できるようになりました。
メルボルン・ウォーターは環境公約の一環として、スコープ1と2の温室効果ガス(GHG)排出量を段階的に削減する計画を立てており、2025年までに42.4%削減、2030年までに93.7%削減、そして2035年までに完全ネットゼロ達成を公約しています。
当記事は『Uncovering opportunities to reduce energy consumption and emissions with the IBM Envizi ESG Suite』を編集したものです。
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