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最新ドローン技術活用による保全業務の「超」省力化(セミナーレポート)
2022年04月01日
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3月17日、日本IBMとセンシンロボティクス社との共同開催にてセミナー『工場もインフラも人不足を解決!! 最新ドローン技術活用による保全業務の「超」省力化』が行われました。
当記事では、セミナーの模様をダイジェストにてご紹介します。
ロボティクスを活用した保全業務の高度化について
株式会社センシンロボティクス ソリューション部 プロダクトマネージャー 大木 健 氏
大木氏はまず、センシンロボティクス社が、データ取得・実行を行う「ロボティクス」、認識・判断・予測を行う「AI」、そして使えるUI・UXを提供する「デザイン」の3つをキーワードに、社会インフラ / 産業インフラのアップデートに取り組むインフラDX企業であることを紹介し、その注力分野を以下の図を用いて説明しました。
その後、大木氏は建設現場、大型商業施設などにおける屋内での小型ドローンを活用した遠隔点検の新たな試みと、送電鉄塔やプラント施設などの社会インフラの点検業務におけるドローン活用の勘所を、最新の事例とともに紹介しました。
まず、前者の屋内での小型ドローンの事例から見ていきましょう
建設現場、大型商業施設などにおける点検・巡視業務
- 課題
建設現場では、施工管理担当者が安全巡回や現地確認を行っており、担当者の事務所から作業所への移動時間や現地での滞在時間が長いこと、そして、現場ですばやく正確な記録を残すことが課題となっていました。
課題解決策として、屋内における小型ドローンの安全な自律飛行による遠隔点検が求められていたものの、刻々と環境が変化する建設現場においては目印のタイムリーな設置が困難であり、飛行ルートの図面化および可視化できないことからも、自律飛行ではなく操作者による手動飛行が一般的でした。これでは、操縦技術を持つ一部の限られた担当者しか作業を行うことができません。
- 解決策
センシンロボティクスが提供する「SENSYN CORE」を活用した屋内点検ソリューションおよび屋内自律飛行システムにより、実際の現場のBIMデータを用いた建設現場における有用性検証にて十分な有用性が確認されました。
建設現場における屋内ドローンの自律飛行が実現することで、施工管理担当者が行う安全巡回や現地確認が事務所内自席などの遠隔地から行えるようになり、移動時間、現地滞在時間が削減することができます。
加えて、屋内撮影写真がタイムリーに登録されるようになり、各種打合せなどですばやく有効活用することができるようになります。
→参考:センシンロボティクス、ACSLの屋内自律飛行システムを利用し、 竹中工務店、カナモト、アクティオと共同で 「建設現場での屋内外巡視への適用」を検証する実証実験に成功
故障や事故が多発する風力発電設備での課題対応
世界的な再生可能エネルギーへの転換が進む中、日本でも風力発電設備の導入拡大が見込まれています。一方で、風力発電設備では、ブレードの点検不備や整備不良による故障や事故が多発しており、安全かつ安定稼働に向けた保守対策が重要課題となっています。
センシンロボティクスは、1基当たりの点検時間短縮と高精度な点検を可能とする、風力発電設備のブレード点検の業務特化アプリ・点検システムを日立パワーソリューションズと共同開発しました。
以下は、動画も用いて紹介された、ドローン自動撮影技術とAI画像解析技術を活用した同システムの特長です。
- 自動飛行及び撮影
パイロットの操作技術不要で、1つのブレードに対して5方向から精細に撮影し、点検効率向上を支援します。その結果、撮影による設備停止時間は従来の1/3となります。
また、膨大な画像データを設備ごとや撮影方向ごとなどに自動で振り分けて分類管理することで、過去の点検データとの比較も容易にします。
- AI解析
画像データのAI解析で、損傷箇所や状態を自動判定できます。また、自動格納された点検結果から自動レポート作成も可能です。
データが蓄積されれば、将来的には、最適な保守計画の立案も可能となるでしょう。
→参考:センシンロボティクス、日立パワーソリューションズと共同で 風力発電設備のブレード点検システムを開発
最後に、大木氏はプレゼンテーションを振り返り、以下をまとめとして伝えました。
「施設の老朽化により必要な点検・保全作業は増えています。ロボティクス導入により、保全作業の効率化だけでなく、ヒューマンエラー発生の抑止や点検品質の均質化といった効果が期待できます。
センシングデバイスとしてのロボットと、業務特化アプリの組み合わせにより、点検プロセス自体を高度化して、人にやさしい設備点検と現場管理を手に入れましょう。」
ドローン・ロボットによって進化する設備保全
日本IBM株式会社 Cognitive Application 事業部 Builder 野ヶ山 尊秀
野ヶ山は、最初に業務自動化プラットフォーム「SENSYN CORE」と、30年以上進化を止めることのない設備保全統合管理システム「IBM Maximo Application Suite」を組み合わせた設備保全業務の姿を図を用いて説明しました。
→ 参考: センシンロボティクスと日本IBM、社会・企業インフラの安定稼働を目指し AIを活用したより高度な保全業務ソリューションの開発で連携開始
「SENSYN CORE」と「IBM Maximo」で保全業務のDX化を推進
ここからは、紹介された、ドローンとIBM Maximoの組み合わせで先進的な社会インフラ管理が行われている例の中から、いくつかを見ていきましょう。
鉄塔や陸橋などの社会インフラの老朽化課題(Maximo Civil Infrastructure)
鉄塔や陸橋などの社会インフラの老朽化は、世界的な課題です。
こうした建築物の整備点検は、高所や難所を備えているという特性から危険性が高く、また実施できる技術を持った人員が限られていることからコストが高いという問題を抱えています。加えて、天候に左右されるリスクや、対応のドキュメント化の難しさなど、従来のやり方は多くの限界にぶつかっていました。
そこで開発されたのが、Maximo Civil Infrastructureとドローンを組み合わせた社会インフラ管理ソリューションです。このソリューションを活用しているSund&Bælt Holding社の事例においては、作業時間の30%短縮と、橋の寿命の100年延⻑が実現されました。
事例紹介ページもあるので、ぜひ合わせてご覧ください。
錆・腐食の点検(Maximo Monitor and Health)
錆や腐食は進行度の予測がしにくく、またそれがもたらす「液・気体漏れ」は事故発生時の損害が大きいことから、十分な対応が必要です。しかし一方で実際の現場では錆びるものが多すぎて、技術や費用の観点から判断基準が低下し、「深刻な腐食に気づいた者が報告する」といった「消極的な点検」に留まりがちです。
こうした状況に対し、定期点検時の画像データを集積していくことで錆・腐食が発生している面積や変化を可視化しリスクを把握、AIなどの先進技術を通じて検査が必要な設備の優先順位付けを行い効率的な点検を実施できる、Maximo Monitor and Healthの活用を紹介しました。
保全業務の「超」省力化に向けて
野ヶ山はこの後、業務システムの連携を中心とした「業務への統合」、そしてAIによる検査後の応急処置などの人間との役割分担を中心とした「自律・恊働」へと、ドローン・ロボットの活用ステップが進んでいくであろうという見込みについて話しました。
すでに、その片鱗はボストン・ダイナミクス社とIBMのパートナーシップ事例でも現れ始めています。
ボストン・ダイナミクスとIBMがチームを組み AI搭載産業用犬型ロボットでデータ取得と分析を刷新
最後に紹介されたのは、IBMがNECと共に取り組んでいる、両社の技術を組み合わせた共創環境の構築の取り組みでした。
現在、現場にあるデバイス上でコンピューティング処理を実行する「エッジ・コンピューティング」が注目されていますが、その大きな理由は「ローカル5G」の広がりです。
建物内や敷地内といった特定エリア内で自営の5Gネットワークが構築・利用できるようになったことで、分析技術の一層の適材適所が進み、従来実現できなかったレベルのよりセキュアでよりすばやい対応と、レジリエントな運用が実現しつつあります。
NECのローカル5Gに関する豊富な経験と、インテリジェントな設備保全とすばやく柔軟な開発を実現するガレージメソッドに優れたIBMが共創することで、インフラ保全業務の変革および新たな価値創造が加速するであろうと想定されていることを告げ、野ヶ山はセッションを終えました。
→ 参考: NECと日本IBM、ローカル5Gを活用したインフラ保全ソリューションの開発で協業
セミナー、および当記事にて紹介しているソリューションや取り組みに興味のある方は、ぜひ下記お問い合わせよりご連絡ください。
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