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高精度・高頻度・網羅性。ドローンが変えるプラント設備保全

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ドローンのビジネス活用例を耳にする機会が増え続けている。以前から多かった農業や林業などの一次産業での取り組みに加え、ここ1〜2年で産業プラントでの実証実験や設備点検業務での事例が急速に増えている。その理由は、どうやら2つあるようだ。

1つ目は、労働人口の減少やインフラの老朽化といった社会課題にドローンの活用が期待されていること。

2つ目は、ドローン飛行の規制緩和。航空法の規制緩和も近いと言われている。

 

今回は、センシンロボティクス社(以下、SR社)の執行役員でソリューション部長の上野智史氏と、昨年センシンロボティクスと資本提携を交わしたコムチュアの田村嘉史氏に今後の展望を伺った。


 

— 簡単にSR社と上野さんについて教えてください。

上野 智史 氏 (以下、上野)

SR社は現在約70名の社員からなる創業5年のスタートアップ企業です。その特徴は「社会貢献性の高い事業を自分の力でやりたい」と転職してきた経験豊富なメンバーが多い点だと思います。

私、上野は現在43歳で、営業と企画のチームをリードしています。私自身も「デバイスとソフトウェアを掛け合わせることで、もっと世の中を良い方向へと変えていけるはず」との思いから、2年弱前に外資系ソフトウェア企業から転職してきました。

→ ロボティクス×AIで社会課題を解決する | 株式会社センシンロボティクス

 

— ありがとうございます。それではコムチュア 田村さんもお願いします。

田村 嘉史 氏 (以下、田村)

コムチュアは1985年設立のテクノロジー企業で、グループウェア構築やネットワーク運用などからスタートし、研修・ラーニングなどを含め現在はクラウド・デジタル領域で多くの事業を行っています。先進技術への積極的な取り組みが特徴の1つでもあり、昨年6月にSR社と資本提携してお互いの強みを活かしていくための取組みを積極的に進めています。

私、田村は以前はNotesというグループウェアの開発を別企業でしていましたが、先進技術やマネージメント領域にも挑戦したく、2017年4月にコムチュアに転職しました。

コムチュア株式会社|クラウドとビッグデータでITをリードする

 

■ ドローンが変えるプラント設備保全

 

— 「資本業務提携により互いの強みを活かす」ということですが、その具体例が「ドローン活用」ということになるのでしょうか。

田村: そうですね。ドローンは、技術者の高齢化など日本が現在抱えている問題の解決に、大きな役割をはたせると考えています。とりわけ、ドローンはプラント産業において活躍するのではないでしょうか。

プラントを安定稼働させるには設備保全管理が重要であり、それを支えるのは「データの取得・保持・流通」を正しく行うことだからです。

 

上野: 補足すると、わたしたちは、ドローンはあくまで目的を達成する手段の一つであると考えています。重要なのは現場からデータを適切に取得し活用できるようにすることで、そのデータを取得する手段の一つがドローンであったり、他のロボティクスデバイスだったりします。また、現場で取得したデータは、設備管理として記録されている他のデータとつながることでより高い価値につながります。

 

— 目が得た画像データも、それが「何を意味しているか」という情報に変化させるのは「脳」ということでしょうか。

上野: そうです。ドローンで得たデータは、意味が取り出され人の判断に資する情報となることで初めて価値を生み出します。

たとえば、以前から弊社で扱っている製品やソリューションで多くのお客様にご活用いただいているのが、ドローンによる太陽光発電施設のソーラーパネルの点検・確認です。このサービスでは、サーモグラフィカメラを搭載したドローンとAIにより、即座に映像・画像を分析して異常パネルや問題箇所を発見します。

設備点検:プラント施設|株式会社センシンロボティクス

導入支援サービス|株式会社センシンロボティクス

そして最近、弊社とコムチュア社の協業セミナーにご参加いただいたお客様からお問い合わせをいただいているのは、取得されたデータを正しい形で保持し、中期的な視点で分析することでプラント設備や工場の停止を予防する保全、いわゆる「予知保全」への適用です。

 

■ 予知保全の精度を高めるドローンによる高品質画像データ

 

田村: 私は設備保全管理が、SR社とコムチュアが提携してサービスを共にご提供する一番の強みになると考えています。

コムチュアはこれまで、設備保全管理の最適化ソリューションとして、世界的デファクト・スタンダード製品であるIBM Maximoを多くのお客様にご提供してきました。これらの経験を通じて分かったのは、プラント産業のお客様の多くが、データ取得方法に多くのお悩みを持たれているということです。こうしたお客様にドローンは大きなアドバンテージを届けてくれるでしょう。資産・設備の状態データが高品質・高頻度で取れるようになりますから。

設備保全管理業務をシステムで一元化|コムチュア株式会社

 

上野: 状態データが高頻度で取れるというのは、ドローンの強みです。当たり前のことですが、機械は疲れませんし、体調などに左右されるということもありませんから。

たとえば、とある石油化学系のプラントでは、広大なタンクヤードで異常が発生していないかの確認を1日3回の点検で実施されていて、漏洩がないかなど安全の確認を担保されています。

現在はこの点検すべてを技術者が行なっているのですが、かなりの負担になっているそうです。

 

— 肉体的にも費用的にも、相当大きな負担であろうことが想像できます。

上野: そうですよね。頻度と網羅性というのは機械の持つ大きな優位性ですから、活用しない手はないですよね。日本は今、どうしても人が減っていく時代にいます。その中でどうやって現状を維持していくか。

設備停止が大きな損失につながる装置産業においては、ロボットの活用は不可欠ではないでしょうか。

一方、人間、とりわけ専門家のすごいところは、目だけではなくさまざまな五感を使って異変を感じとる力です。ドローンは視覚の代替として画像を取得しそれを分析しますが、人間には異なる微細な情報を統合して異常を見出す能力があります。

プロダクト:TANK Check | 株式会社センシンロボティクス

 

田村: 重要なポイントですね。Maximoの強みの1つはAIによる予知保全、つまり故障発生タイミングとその影響規模の事前予知ですが、取得しているデータの量や保持のされ方により予知精度は大きく左右されます。

ドローンにより高い頻度と網羅性で取得されたデータは、短時間の設備停止、いわゆる「チョコ停」の回数も大きく減らすものになるでしょう。長時間生産停止の「ドカ停」は言わずもがなです。

 

上野: 先日とある大型エネルギープラントのお客様が言われていた、とても印象的な言葉を思い出しました。

「ビッグデータとして予知保全に活用するためには、平常時と異常時の両方のデータが残っている必要があります。これまでは異常時の状況のデータのみが記録されて残っていることも多く、データ収集を自動化することで必要なデータを蓄積していくことを期待しています」。

 

■ 設備保全にドローンを検討中のお客様へのアドバイス

 

— 最後に、設備保全管理にドローンを検討中のお客様へ、改めてアドバイスをいただけますか。

田村: データ取得目的と業務フローへの組み込みをきちんと意識して検討を進めて欲しいですね。そうじゃないと「データは取得した。でもこれで十分活用できているのだろうか?」という状態になってしまうと思うので。

これからの保全にはデータ取得・拡充・管理は不可欠です。しっかりと自社、自設備で「足りていないデータは何か」「データ品質は目的に対して十分か」を、そして「データ流通に分断が起きているのはどこか」を確認して欲しいですね。

そしてデータ流通が確立した際には、Maximoの作業指示や報告書自動作成・送信機能などを活用した、インテリジェント・ワークフローによる業務DXを存分にご活用いただきたいです。

 

上野: デバイスの性能向上と、さまざまな企業での実運用に向けたトライが進み、設備管理におけるドローンの活用はここ1-2年で大きく進み出しました。

ドローンを安全に自動航行させ、そこから得られるデータを蓄積し活用していくことで、プラント施設の保全管理の質は大幅に向上できます。

先ほども申し上げましたが、人間には人間にしかできない分野や場所でその力を最大に発揮していただくのがいいと思います。ドローンがとりわけ力を発揮するのが「大きい」「高い」「広い」「危険」な場所での仕事だということを踏まえ、人間とドローンの理想的な協業をお客様と一緒に考えていければと思います。

 

田村: 「大きい」「高い」「広い」「危険」がドローンの活躍場所と聞き、Maximoがアメリカの原子力発電所の保全管理ノウハウから生まれた製品だということを思いだしました。ドローンとMaximoはいろんな点で相性の良いベストマッチとなりそうですね。

ぜひ、導入のステップや費用感の確認など、お気軽に私たちにご連絡いただければと思います。

 

問い合わせ情報

 

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TEXT 八木橋パチ

 

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