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変革が創る未来 – データの力でサプライチェーンを革新する | from IBVレポート

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当記事は、IBMグローバル経営層スタディ・シリーズの第26版を基に作成された『変革が創る未来 データの力でサプライチェーンを革新する』の中から、「サステナビリティー(持続可能性)」をキーワードに一部抜粋、再編集したものです。

なお全編は下記よりダウンロードしてご覧いただけます。

https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/jp-ja/c-suite-study/csco

 

衝撃と混乱、未来への挑戦

「世界は混乱に満ち、もはや日常化している。この現実を受け入れ、その中で計画的に事業運営に努めなければならない」。あるCSCOの言葉だ。

「時間」「集中力」「経営資源」には限界があり、CSCOは事業を再編・再構築する中でトレードオフと妥協を刻々と判断していく。

 

相次ぐ「有事」によってサプライチェーンが動揺する中でも、「平時」の課題にも引き続き対応を求められる。具体的には、市場の変化や消費者のデモグラフィック(性別・年齢・人種など人口統計学的な属性)、法規制などだ。こうした問題がCSCOの頭を悩ませ続けている。

自社テクノロジーを高度化するための “生みの苦しみ” と、サステナビリティー推進という必須課題にも取り組まねばならず、非常に難しいかじ取りを迫られている。このため CSCO は常に、「平時」の課題に取り組むことと、サプライチェーンの混乱や複雑な変革目標へ対応することとのバランスに腐心しており、今後数年はこうした状況が変わらないとみている。

 

AIとインテリジェント・ワークフロー | 全体の動きを同時に把握

今日のCSCOに失敗はほぼ許されない。そのため、自動化やAI、インテリジェント・ワークフロー、エコシステム、さらにはサステナビリティーを強化して対応している。

サプライチェーンの重点を、効率性とレジリエンスの向上という現在の課題に置くのか、将来を見据えてデータ主導のインサイトとイノベーションに置くのか。いずれの場合でも成果を生み出せる基本アプローチをCSCOは創出している。

 

予測困難なリスクである「ブラックスワン(黒い白鳥)」があらゆる場所に潜む中、CSCO は社内動向に常に目を凝らし、バランス感覚を大事にして業務に当たることが必要だ。

AIとインテリジェント・ワークフローを活用すれば、360度のインサイトと影響分析が可能となり、相互接続性と予測可能性がもたらされる。不測の事態が起きても、こうしたワークフローの力でデジタルと人間双方のワークフォースが自己学習と自己調整を重ねて俊敏に状況に適応することが可能となる。その際に不可欠なのが、チャットボットからロボットに至る自動化全般である。

 

パンドラ(Pandora)社事例

インテリジェント・ワークフローで顧客体験を革新

パンドラ社は高品質素材を使った手仕上げの宝飾品のデザインから製造・販売までを手掛け、価格も抑えることで世界的な成功を収めた。100カ国超でコンセプト・ストア約2,700店を含む6,700超の店舗を展開していたが、パンデミックの影響でほぼ閉鎖に追い込まれた。だが、これを逆手に取って販売をオンラインに転換し、DXを加速した。

同社はオムニチャネル*の受注・配送管理(フルフィルメント)の基盤として包括的な注文管理プラットフォームを急きょ取り入れ、クラウドのソリューションを活用して電子商取引(EC)ワークフローを実現した。
販売チャネル全体が大幅に自動化されたことで、ワークフローが合理化されて配送効率が一段と高まるとともに、サステナビリティーの面でも同社の実績を上げることにつながった。

同時に、インテリジェント・ワークフローによって、実店舗とECの顧客担当者は、消費者ニーズへの対応強化に必要なエンド・ツー・エンドの可視性を高めることができた。同社のDXは実店舗とEC をテクノロジーによって緊密につなげ、顧客との距離を縮めたのだ。
拡張現実(AR)テクノロジーを使って、バーチャルな空間で実店舗スタッフとの相談待ちに並んだり、商品を試したりすることで実店舗に引けを取らない体験が可能となった。
パンドラ社がこのDXで目指したのは、顧客や地域の特性に合ったパーソナルな体験を、異なるチャネルやマーケットを融合させて創出することだ。同社はそれを見事に実現した。

* オムニチャネルは実店舗やネットなどのすべての販売チャネルや顧客との接点を融合し、顧客へ総合的にアプローチする方法


「社会は総じて、サステナビリティーに夢を見る段階から、今日の社会が描く現実を見据える段階にすでに移ってきている。私たちが目指そうとしている価値には『株主』『環境』『社会』の3つがある。今後、CSCOは経済的価値よりも環境的・社会的価値を優先することが求められるだろう。
さらに、価値の大きさを示すためには計測データが不可欠となる」

「Think Circle」に参加する CSCO


 

いよいよ本番へ |「主役」はサステナビリティー

サステナビリティーが脚光を浴びるようになった結果、今後3年間のDXの目標設定について、52%のCSCOがサステナビリティーを優先順位のトップか上位に掲げている。さらに、50%のCSCOはサステナビリティー投資がビジネスの成長を加速させるだろうと回答している。

 

ワークフローのデジタル化も、サステナビリティーの目標達成へ企業を後押しする。具体的には、ワークフローを評価・構築する際に、環境への影響を軽減したり、包括的な循環型プログラムへの移行を促したりする方策を盛り込むことができる。このプログラムでは、耐用期間が過ぎた製品も廃棄されずにサプライチェーンへ回帰する。

サステナビリティーおよびステークホルダー資本主義*への対応が経営層の責務となるにつれ(この中には責任ある調達はもちろん、多様性や公平性、包摂性の取り組みを含む)、インテリジェント・ワークフローを動力とする循環志向型ビジネスモデルがますます重要な役割を果たすようになる。

 

CSCO はサステナビリティーをめぐるプレッシャーに対して別の形でも取り組みを進めている。具体的には、エネルギー効率の向上や水管理、オーガニック(有機)で再利用可能な原材料の使用拡大などだ。こうした努力が今後2~3年で自社のサプライチェーン・モデルを大きく変えると、50%近くが考えている。

戦略的ポートフォリオを検討しているCSCOも多く、その中に環境・社会・ガバナンス(ESG)の取り組みが加えられることも珍しくない。そうした取り組みによって、温室効果ガスの排出削減やエシカル(倫理的)な調達が促されるなど、さまざまな可能性が広がる。

* 企業は株主だけでなく、顧客や従業員、取引先、地域社会などすべての利害関係者の利益に配慮すべきであるという考え方

 

ファーマーコネクト(Farmer Connect)社事例

サプライチェーンの透明性を高め、サステナビリティーにも取り組む

世界のコーヒー消費量は年間5,000億杯を上回るが、「サステナブルな方法で育てられ、責任を持って調達されたコーヒーを購入したい」という声も広がりつつあり、特に19~24歳では全体の3分の2に上る。
国際的な認証機関がそうした取り組みを後押ししている一方で、生産者が乏しい収入にあえいでいる実態はあまり知られていない。コーヒーのサプライチェーンはグローバルかつ大規模に広がるため、流通経路の追跡が難しい。関連企業は自社経路のほんの一部を把握するにとどまり、データも社内のシステムに残るだけだ。

生産者からカフェのバリスタにコーヒーが届くまでの流れが見失われた状態だ。しかし、この状況を変えたいと願う消費者に強い味方が現れた。ファーマーコネクト社が開発した消費者向けアプリケーション「Thank My Farmer」である。
このアプリは消費者と生産者、さらに両者を結ぶ流通経路の関係者をすべて結ぶことによって、透明性が高くサステナブルな食品サプライチェーンの実現を目指している。

さらに、情報をインタラクティブなマップに表示し、各商品に関する “ストーリー”をシンプルでスケーラブル(拡張可能)な形で伝える。コーヒー関連コミュニティーのサステナビリティー・プロジェクトの情報も表示し、消費者が支援する機会を提供する。
このソリューションはブロックチェーン技術に支えられ、コーヒーとカカオのサプライチェーン関係者全員を1つにつなげる。生産者や協同組合、取引業者、小売業者は効率的なコミュニケーションが可能となり、消費者は商品の来歴に関するインサイトを新たに手にすることができる。

「正直者が馬鹿を見ない」社会をブロックチェーンで作りたいんです(Watson IoT 槇 あずさ)

アクション・ガイド | 想定外を”想定する”

自動化

  • 拡張ワークフローで自動化を加速する
  • AIを増強してワークフローをよりスマートにする
  • 協働的なエコシステムをつくり上げる

サステナビリティー

  • 環境と社会に関する取り組みをビジネス・ソリューションに結びつける
  • AIを用いてワークフローを最適化し炭素や廃棄物、エネルギー、水使用量を管理する
  • サステナブルな新製品・サービスと競う

モダナイゼーション

  • 最新のインフラストラクチャーを構築する
  • ハイブリッドクラウド・プラットフォームを最適な規模で展開する
  • サイバーセキュリティーの脆弱性と対応策について意識を高める

 

問い合わせ情報

 

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