IBM Sustainability Software

ブランドスイッチされない選ばれるコネクテッドカーの作り方

記事をシェアする:

 

アメリカの自動車業界紙の調査によると、「コネクテッドカー(インターネットに常時接続し従来とは違う運転体験を提供する車)」の素晴らしい機能を待ち望んでいる」と答えた購買希望者は約9割に登り、およそ半数が「コネクテッド機能の優劣によってブランドスイッチする(現在使用している自動車メーカーから別のメーカーに変える)」と答えています。

こうした消費者の声を考えれば、IBMが最近行った自動車業界のエグゼクティブ向け調査で、2025年までに市場に最も影響を与える要素として「技術の進歩」が選ばれたのも当然と言えるでしょう。

 

「自社の忠実なファン」だと思われていた消費者でさえ、コネクテッド機能が搭載されていなかったり、その使い勝手が悪ければ、あっさりとブランドスイッチ(競合他社への乗り換え)してしまうという調査結果は、自動車メーカーに大きな衝撃を与えています。

この結果が意味するのは、自動車メーカーはコネクテッドカー技術に真正面から取り組み、これまでとは異なる「デジタル変革」へと向かう高速道路を走らざるをえなくなったということなのです。

 

 

■ 自動車メーカーが直面する課題

自動車メーカーが直面する最初の課題は、スマートフォンやタブレット端末との競争です。

一部にはGM社のOnStarのように、安全性とセキュリティーサービスを20年以上にわたり提供し続けている車載アプリケーションも存在していますが、以前ニューヨークタイムズ紙が取り上げたように、車載アプリの多くはスマートフォンアプリより劣っています。

 

結果として、自動車メーカーは自社による車載アプリではなく、Android Auto(アンドロイドオート)や Apple CarPlay(カープレイ)といった他社の外付けスマートフォンアプリとの連携を認めることとなります。

そして大抵、当初は使用できる機能に制限をかけるものの、利用者の「よりシームレスなデジタル体験」を求める声に押され、やがて機能制限を外すこととなります。

その結果、運転に関するデータという貴重な資源は、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)に代表されるテクノロジー企業に召し上げられてしまうのです。それも無料で。

 

このコネクテッドカーが抱える難問を解決するために、自動車メーカーは他社によるサービス提供を歓迎する方向へとハンドルを切る必要があります。

自動運転の台頭を踏まえれば、クラウドプラットフォームへの無線接続が必要なものとなるのは間違いありません。またダイナミックに変化する環境下において、コネクテッドカーが提供する体験を一貫したものとするには、自社内ですべてを完結させようとするのには無理があります。

 

サービス提供企業からやってくるソフトウェア開発者やIT技術者を、チームの一員として招き入れる必要があるのです。

こうして、自動車メーカーは特定の条件を付けた形で、自社サービスとして最高級のアプリとサービスを利用者に提供することができます。そして利用者は、期待するシームレスなデジタル体験を手にすることができるのです。

 

■ コネクテッドカーにおけるデータ所有者問題

サービス提供パートナー企業との協業を進めていく上では、コネクテッドカーに関するルールを定義していく必要があるでしょう。

どの通信会社を使うのか、どのようなセキュリティ対策を取るのか、利用者からのデータ提供同意取得をどのように進めるのか。そして最も重要なのは、データの主有権をはっきりとさせておくことです。

IBMが行った調査によれば、2025年に向けた成長の鍵は、他社とのコラボレーションであると答えた自動車メーカーのエグゼクティブは、73パーセントに上りました。そして回答者の75%(自動車業界へのサービス提供者を含む)が、「自動車業界のエコシステムそのものに最も影響を与えるのは、従来とは異なる他業種からの参画であろう」と回答しています。

 

こうした状況下において、自動車メーカーは利用者の最高レベルのコネクテッドカー体験を求める声に応えるために、サービス提供企業とガッチリ手を組む必要があるでしょう。

そしてここで重要なのは、データ所有権を求めないサービス提供パートナーを慎重に選ぶことです。そして利用するソリューションも、データ所有権を求められることがなく、自動車メーカー側が独自にデータ活用できるIBM IoT Connected Vehicle Insightsなどを選ぶべきでしょう。

 

その上で、自動車メーカーはエンジニアリング部門、法務部門、営業部門、マーケティングの各チームに相談して、コネクテッドカーに対する自社ルールを策定する必要があります。

消費者の権利をいかに尊重し保護するかというポリシー策定は、ヨーロッパの一般データ保護規制法を見るまでもなく、これ以上なく重要なものとなっています。

「位置情報の提供は許可するけれど音楽ストリーミング情報は拒否する」というように、「何を許可し何を拒否するか」を消費者が適切に設定できる必要があります。

 

■ 自動運転時代の自動車メーカーのビジネス

完全自動運転の世界にはまだ少し時間がかかりそうですが、立法上の問題についてはすでに議論が進んでいます。

自動車メーカーにサービスを提供する企業は、例えば、LiDARと呼ばれる光を用いたリモートセンシング技術を用いて道路状況のリアルタイムデータを取得し、エッジコンピューティングの機能を活用して自動運転に活かすなど、そうしたサービス提供に目を向けた方がいいでしょう。

あるいは、この動的に更新される地図データを、自動車メーカーや地図提供企業に販売するようなビジネスも考えられるかもしれません。

 

これまでと異なるビジネスモデルや新たな業界への進出を考えることは、非常に重要です。

なぜなら、ドライバーが自らハンドルを握ることがなくなった暁には、最高速度や加速感などはもはや付加価値ではなくなるからです。

乗用車はクルーズ客船のようなものと捉えられるようになり、問われるのはA地点からB地点への移動間でのコネクテッドカー体験なのです。

 

コネクテッドカーへの注力は、自動車メーカーのデジタルジャーニーの始まりにすぎません。車載技術と自動運転機能の進歩は、少額課金制度、予防的メンテナンス通知、あるいは従来にはなかったAI体験などの新しい市場を生みだします。

最高レベルのコネクテッドカー体験を顧客に提供する次世代自動車メーカーであるために。

優れたサービス提供パートナー企業との協業で、確固たるデジタル基盤を築いてください。

 

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

関連ソリューション: IBM IoT Connected Vehicle Insights

 

関連記事: [事例: 大手保険会社グルパマ社] データを「新たな顧客体験」へ。つながる保険をIoTで実現。

関連記事: Automotive 2030:デジタルの未来に向けて

 


村田 大寛 Watson IoT Technical Sales, Cognitive Solutions Unit Industry Platforms

当記事は Driving Transformation: How Connected Vehicles Challenge OEMs を抄訳し、日本向けにリライトしたものです。

More IBM Sustainability Software stories

法務・AIリスクのスペシャリスト三保友賀が語る「ダイバーシティ」 | インサイド・PwDA+7(前編)

Data Science and AI, IBM Sustainability Software

日本IBMにて法務、特にAI倫理・リスクのスペシャリストとして、そして同時にLGBTQ+コミュニティー*1やPwDAコミュニティー*2のアライとして積極的に活動している三保友賀さんにお話を伺いました。 <もくじ> 企業内 ...続きを読む


持続可能な未来にエネルギーを | 再エネの実例と使用例

IBM Sustainability Software

化石燃料からの移行を進めるために、再生可能エネルギーを求める国や企業、個人が増え続けています。 太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる世界の発電能力は、2023年には50%増加しました。 そしてドバイで開催された国連 ...続きを読む


スコープ3排出量計算とレポートを自動化&強化 | IBM Envizi Supply Chain Intelligence

Client Engineering, IBM Sustainability Software

IBM Enviziは、ESGデータ収集・分析・報告プラットフォームであるIBM Envizi ESG Suiteに、スコープ3の排出量計算とレポーティングを一層強化する新モジュール「Envizi Supply Chai ...続きを読む