IBM Sustainability Software

公益事業が気象リスクに立ち向かい、顧客の期待に応えるために

記事をシェアする:

 

2019年秋、カリフォルニアでは再び大停電が起きました。しかし今回の停電は、自然災害によるものではありませんでした。

パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社(PG&E)は、極度の強風と乾燥が屋外送電機器からの電気火災を引き起こしかねないと、前年に停電を引き起こした大規模山火事を踏まえ予防措置として計画的に電力を停止させました。

 

電力会社にとって、大規模停電の予防に取り組むことは非常に重要です。そのためには設備更新を進めることも大切ですが、電力会社の有するデータから生み出した洞察を活かした適切な行動を取ることも、それ以上に重要なこととなります。

設備・機器とデータを包括的に理解することで、公益事業を営む企業はリスクをコントロールし、大規模停電などの被害を避けることができます。また、洞察を踏まえ将来を見据えた意思決定を行うことにより、手頃な価格で信頼性の高いエネルギーを持続的に供給することができ、顧客の要求に応えることができます。

 

■ 脅威を分析し予測する – 公益事業が顧客と社会の期待に応えていくために

山火事や大規模な自然災害からの復旧とシステムや機器の再起動は公益事業にとって最重要事項であり、同時に、データを活かした洞察を活かしたリアルタイム性の高い管理が可能なシステムへと進化させサービスを提供していくことは、消費者の信頼を得るために必要な行動です。

設備・機器への投資は大規模なものとなり、簡単なことではありません。しかし早急に実施していかなければ、手遅れとなりかねません。

 

PG&E社は、送配電設備とデータ管理システムを更新せずにいると何が起き得るかということの、最悪の事例となってしまいました。

現在、公益事業者は、世界中の科学者たちが声を揃えて警告している過酷な気象への対応を迫られています。猛烈な台風や熱波、過去に例のない大雨や洪水など、公益事業の営みには不都合な気象リスクという新しい現実に対応しながら、停止させることなくエネルギー供給を続ける必要があります。

 

幸いなことに、私たちにはAIを活用した設備・機器とデータ管理システムを用いることができます。

設備・機器への過去のメンテナンス記録や現在の人員配置などの内部情報と、ピンポイントでのリアルタイム気象情報や状況に、ローカライズした需要供給予測モデルなどの外部データとを組み合わせることで、従来とは異なるハイレベルな予知保全を実行し、顧客と社会の期待に応えていくことができるのです。

 

AIベースのアプリケーションがもたらす対応例を一つ挙げてみます。設備・機器近傍の障害となる植生エリアがこれまでどのような管理されてきたかと、過去の気象データと現在の気象予測を組み合わせて分析することで、地域の植生がトラブルを引き起こす可能性を事前に予知することが可能です。

昨年、テキサスに拠点を置くとある公益企業はIBMと協業し、衛星およびドローンから送られた画像データとIoTセンサー、そして気象モデルからのデータを統合予測する分析ツールを開発しました。

この予測分析アプリケーションは、設備機器に影響を及ぼす可能性のある近隣植生エリアがどのくらいの高さや範囲に広がっているか、乾燥あるいは湿潤度合いがどのレベルにあるかなど、継続的に洞察を提供し続けています。

 

このように、公益事業はデータを活用した継続的な洞察を用いながら、サービスやシステムの中断・停止につながる脅威の位置やその発生確度、そして影響度を特定し、それらの優先度に応じて作業員を動員することで火災などの事故を防ぎ、中断・停止を回避しています。

 

■ 予測不可能を予測する – ビジネスへの打撃を最小化するために

これまでに培ってきた知識と経験、そして従業員の熱意と従来の設備機器だけに頼っていては、今後は何百キロと続く送電線や配電盤という設備を守ることも、エネルギーの安定供給という公益事業としての目的も果たすことができないでしょう。従来の予想レベルでは測りきれない気象リスクに手動分析で対応しようとすれば、甚大なダメージを与えられることはまず間違いありません。

そんな中、北米とヨーロッパの多くの公益事業が、高度な分析機能とそれに連動する形で対応するシステム稼働・停止管理アプリケーションを取り入れ始めています。

 

ヨーロッパのある公益事業顧客は、慢性的とすら呼べるような夏の洪水や激しい雷雨、冬の大氷雪などの異常気候現象の増加に対し、IBMと共に準備を進めています。

極小区画にまで絞り込まれた詳細な気象データを活用することで、公益事業組織は予防対策のために従業員を適切に配置・動員することができます。そして必要部品を予測しサプライチェーンに事前に働きかけて準備を整えることも、需要が見込まれる発電量を正確に見積もることも可能です。

こうして、ビジネスへの打撃を、時間面でもコスト面でも最小化することができるのです。

 

公益事業にとって、突発的なトラブルや混乱に備えることは非常に重要ですが、持続性と健全性の高いビジネス計画を立てることもそれ以上に重要です。

AIと高度な分析に支えられた機器・設備のデジタル管理システムは、エネルギー供給の高信頼性と安価さを両立し、高品質な顧客サービスを実現します。

 

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

関連ソリューション: 予測保守と資産パフォーマンス管理による機器運用の改善

 

関連記事: アトランタの都市交通を守るIBMのIoTとAI – APMが進化させる保全戦略

関連記事: 次世代火力発電EXPO「最新技術の保全応用」セッションレポート

関連記事: 高いビジネス価値を生み出すインテリジェントな植生管理

 


藤 泉也  データ戦略活用アドバイザー, AI Applications

 

当記事は、Data insights for utilities lessen energy disruptions and improve customer serviceを抄訳し、日本向けにリライトしたものです。

More IBM Sustainability Software stories

「第2回ベジロジサミット」レポート後編 | ベジロジシステム討論会

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

ベジロジ倉庫とベジロジトラック、そしてキャベツ食べ比べを中心にご紹介した「第2回ベジロジサミット」レポート前編に続き、ここからは第二部、場所を屋内に移して開催されたベジロジシステム討論会の様子をご紹介します。 目次 前編 ...続きを読む


「第2回ベジロジサミット」レポート前編 | レタスの食べ比べとベジロジ倉庫・トラック

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

「佐久地域は葉洋菜類の一大産地であり、産地の生産を守ることは日本の食を守ることです。主体的に取り組んでいきます。ただ、青果物の取り組みは特に困難な要素が多く、物流業界でも取り組みが進んでいない分野です。そんな中で、持ち前 ...続きを読む


日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

2024年10月15〜16日の2日間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「日本Maximoユーザー会」が開催されました。   石油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企 ...続きを読む