Client Engineering
茅野(ちの)市で「Next Peopleʻs Design」を考えた | FDLダイアログ・ツアー
2022年06月14日
カテゴリー Client Engineering | IBM Sustainability Software | デジタル変革(DX)
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遺伝子や価値観など、世代間には見えないつながりがある。人は皆未来への橋渡し役であるが、どのような未来をつくりたいかを意識して行動している人は少ないかもしれない。すべての命は私たちの祖先から派生している。人は皆修行中の年長者であるだけでなく、修行中の祖先でもある。私たちは子孫にどんな素晴らしいものを遺せるだろうか。
チップ・コンリー 著 『モダンエルダー』より
未来を考えデザインする際に必要なものは、なんでしょうか?
「現在に対する深い分析」「シナリオ・プランニング」「最先端テクノロジー分析」「未知の世界へと続く道を作りながら歩む強い意志」「望ましい未来からのバッグキャスト」 −− おそらく、多くの未来学者やフューチャリストから、数えきれないほどの意見が出てくることでしょう。
2021年12月の「IBM Future Design Lab(FDL)ダイアログ・ツアー第1弾」から半年。「Next Peopleʻs Designを考える」をテーマに私たちは⻑野県茅野市に向かいました。
2日間のダイアログ・ツアーの行程から、いくつか印象的だったシーンをテキストと写真でご紹介します。
「未来をデザインするにあたって必要なのは、時間軸をもう少し柔軟に行き来する能力ではないだろうか?」−− 茅野駅集合後、そんな仮説を胸に最初に向かったのが尖石縄文考古館です。
長野県茅野市は、日本の国宝に指定されている縄文土偶5体のうち「縄文のビーナス」と「仮面の女神」の国宝土偶2体が発掘された場所です。
そして茅野市は、昨年のダイアログ・ツアー第1弾として向かった静岡県浜松市天竜区と「天竜川」でつながっており、その天竜川から八ヶ岳山麓の間では多数の縄文土器・土偶が発掘されています。またこの2つの地区は、いくつかの伝説や民俗文化を共有している地区でもあるのです。
茅野市はワーケーションに力を入れており、市内には複数の「ワークラボ」というワーケーション施設が点在しています。
ワークラボ蓼科高原は2021年4月1日にオープンした施設で、大自然を感じる場所にあります。駐車場で車から降りた瞬間、たくさんの種類の鳥の鳴き声が空から降ってくるかのような音量と響きで聞こえて、一瞬ですが方向感覚を失いかけるような感覚がありました。
私たちはここで大きな部屋をお借りし、全員でぐるりと大きな輪を描くように座ると、今の気持ちをオノマトペで伝え合う「チェックイン(ダイアログにより積極的に参加するための儀式)」を行いました。そしてその後、考古館での感想や、このツアーで何を得たいか、何を感じ取りたいかなどについて対話しました。
最後に1分間の黙想を「チェックアウト」として行ったのですが、室内まで「ビビビビビビ」と外から聞こえ続けていた鳥たちの鳴き声がそのときだけピタリと止まったのが、なんだか不思議でした。
2日目午前中は、つい先日七年に一度の御柱祭が行われたばかりの諏訪大社と、藤森照信氏設計の高過庵と低過庵、そして文化的にも民俗学的にも大きな問いを投げかけるかのような「御頭祭」の復元展示が行われている神長官守矢史料館を巡りました。
それぞれの場所にて、蓼科に20年以上暮らし郷土文化や歴史秘話にも非常に詳しい森ビル株式会社の矢部氏にガイド役をしていただき、一般に知られている由来や伝説の他、地元の人たちの間だけで囁かれているエピソードや裏話などを聞かせていただき、非常に贅沢な満足度の高いツアーでした。
ワークラボ八ヶ岳 & まちライブラリー見学
茅野駅駅ビル「ベルビア」に直結しているコワーキングスペースワークラボ八ヶ岳には、本を通じて人と出会うことをコンセプトとしている「まちライブラリー」が併設されており、私たちの訪問時もちょうど大規模拡張の準備を進められているところでした。
そして「働く実験室」という意味の名前を持つコワーキングスペース「ワークラボ」らしく、施設は「本とワーク」だけではなく、「キッチンとワーク」や「デジタル工作機械とワーク」など、さまざまな「働くかたち」のバリエーションが拡がっていました。
ツアー・メンバー16名で諏訪東京理科大学にお邪魔し、在校生と16組のペアを作り、彼らと「自分たちの未来と地域の未来」についてのペア対話を行いました。
その後それぞれのペアが「一番盛り上がった話」を発表したのですが、私には多くの在校生が茅野の大自然や動植物に誇りを持っていること、それから自然を生かした再生可能エネルギーへの具体的な取り組みを行なっていることに強く興味を惹かれました。
一方で、「この地では閉塞感と居心地の良さが裏表の関係となっている気がする」という言葉や、「自然とは必ずしも『100%手付かず』を意味しないと思う」という現状分析も、強く印象に残っています。
実際、茅野市を代表する観光地の1つである蓼科湖も、約70年前に作られた人工湖であり、近辺の山々に広がる森林も、完全に手付かずではなく、なんらかの人手が入った人工的な要素を持ったものです。
「それなら、これらは自然ではない」のでしょうか? 私は、そうは思いません。
自然にいくばくかの干渉をすることでより多くの恵みを自然からいただく。土器や土偶などを用いた時代の生活から、採集狩猟文化を支える信仰、そして現代に至るまで、私たちの暮らしはそうやって自然と深くつながりながら重ねられてきたのではないでしょうか。
この地で暮らす学生たちは、人の暮らしを支える根幹を敏感に嗅ぎとっているような気がするのです。
ダイアログ・ツアーの最後は、茅野市役所を訪問し、今井 敦(いまい あつし)茅野市長や市役所の皆さんとのダイアログを行いました。
メンバー全員で語り合うには1時間では足りないということで、IBMからは藤森慶太と村澤賢一、そしてCode for Japanの関治之さん、山之舎の中谷明史さん、日本総研の東博暢さん、ツアー・リーダーのHEART CATCH代表の西村真里子さんに代表としてお話いただきました。
さらに、前夜からツアーにも参加いただいていた「デジタル田園健康特区」茅野市におけるキーパーソン、諏訪中央病院の須田万勢医師にもご参加いただき、2日間という短期間ではありましたが、私たちが感じた「茅野市の未来」と「そこに向かう取り組み」についてお伝えし、一緒に未来をデザインする方法や可能性について率直な意見や感想の交換を行いました。
とても濃い1時間のセッションとなりました。
手元のメモの中から、いくつかのキーワードを紹介します:
「ウェルネス・テレワーク」「メンタル安定性」「デジタルシチズンシップ」「アントレプレナーシップ」「市民参加型民主主義プラットフォーム」「テクノロジー人材とのミートアップ」「大学をハブとしたエコシステム」「アイデアソンとハッカソン」「再エネオフグリッド連携」「人々が行き交う街」「対話によって知が生まれ蓄積していく街」−−
FDLは今回のダイアログ・ツアーのテーマを「Next Peopleʻs Designを考える」とし、ツアー前に「Next People」を以下のように仮定義していました。
「実践者としての覚悟を持って次世代創造に取り組んでおり、その真摯な活動で仲間を巻き込んでいく人」
今、ツアーを振り返ると、未来をデザインするとは「Next Peopleたちがより自由に活動できるように支援すること」そのものではないのかという気がしています。
そして描きたい未来に向け、仲間としてNext Peopleたちと行動を共にしているとき、人はすでに未来を生きているのではないか? という気もします。
このダイアログにご参加・ご協力いただいた茅野市の皆さまと、以下のNext Peopleたちに改めて大きな感謝をお伝えさせていただきます。
矢部さん、関さん、中谷さん、東さん、須田さん、西村さん、渡邊さん、本当にありがとうございました!
Next Peopleとは、歴史を知り未来につなげる人である。
Next Peopleとは、「迷惑」を「遊び化」できる人である。
Next Peopleとは、「甘え」を「甘え合い」へと変化させる人である。
Next Peopleとは、課題を価値変換できる人である。
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