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財務リーダーは企業のサステナビリティーのリーダーに

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環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する開示の義務化が、ついにあらゆる企業のもとにやってきます。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFDの勧告に基づいたESG要因に関する制度開示の義務化は、カナダ、ブラジル、EU、香港、日本、ニュージーランド、シンガポール、スイスなど、すでに世界各国の政府で採用されています。

今年に入ってからは、ドイツのサプライチェーン・デューデリジェンス法が2023年1月に施行され、アメリカでは早ければ来年1月より、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対する新たな要件の発効を検討しています。「準備ができていない」という言い訳が認められなくなるのももうすぐです。

 

企業はESG開示において、広範かつ発展的な要因の分析と報告を求められています。

SEC規則は、上場企業に対し、温室効果ガス(GHG)排出量(短期的には自社事業とそれに関連して購入・使用した電気・熱などのエネルギー、いわゆるスコープ1とスコープ2が対象。将来的にはサプライチェーン全体が対象となる予定)と、排出量削減のための目標と移行計画の開示を求めています。

また、ハリケーン、熱波、山火事、干ばつなどの潜在的な異常気象に対する計画の報告と、それらのリスクをどのように評価しているかを明らかにすることも必要事項とされています。

 

EUでは、2024年に発効する企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が、企業のビジネスモデルや事業活動が環境や人権などの持続可能性要因にどのような影響を与えるかについて、さらに詳細な開示を求めています。

IBM Consultingのアソシエイト・パートナーであり、グローバル・サステナブル・ファイナンスおよびESGオファリング・リーダーのアダム・トンプソン氏はこう忠告しています。

「規制がスタートするのを待っている余裕はありません。今すぐこの取り組みを始めなければなりません。」

 

変革を起こす覚悟 | CFOのストーリーテラーとしての新たな役割

現代におけるCFOは、財務開示とサステナビリティー・パフォーマンスおよびサステナビリティー指標がどのように結びついているかについて、透明性のあるコミュニケーションを行う責任を負っています。これは、ビジネスにおける財務機能の役割が大きく進化していることを表しています。

大幅な成長を推進する財務オペレーティング・モデル最適化の実績に定評のある、IBMのグローバル・ファイナンス・トランスフォーメーション部門のパートナー、モニカ・プロティはこう話しています。

「財務リーダーは単なる情報提供者ではありません。今や会計係ではなく、データを洞察へと変換し、必要なパートナーシップを構築するストーリーテラーなのです。財務リーダーはサステナビリティーのリーダーシップ・アジェンダを含む、大胆な戦略を推進する役割を担っているのです。」

 

CFOは、財務部門における質の高いESG報告やコミュニケーション能力を構築する必要に迫られています。

Institute for Business Value(IBV)が世界中の3,000人のCEOを調査した2022年CEO調査 「Own Your Impact(変革を起こす覚悟)」では、調査対象となったCEOの大半が、GHG排出量、資源使用、公正な労働、倫理的な調達など、持続可能性要因に関する情報の透明性を向上させるように、投資家から強いプレッシャーを受けていることが判明しました。

つまり、コミュニケーションの透明性の低さには、重大なリスクが伴っているのです。「投資家が求める情報は変化しています。信用格付けと同じように、ESGリスク格付けが行われるようになっています。」

トンプソン氏がこう話すように、ESGレポートの普及につれて、今やサステナビリティー関連の情報が投資判断の分かれ目となっています。

 

サステナブル・ファイナンスとESGレポートへの取り組みは、企業の根幹に携わるものである——この事実はより的確に理解されるべきことです。

多くのCFOがそれを自覚し、データ・トランスフォーメーションとそのプロセスに、サステナブル・ファイナンスの取り組みを統合しようとしています。しかしそれでも、一部のCFOは現在もまだ、サステナビリティーをコンプライアンスや運用上の問題として、狭い範囲で捉えてしまっているのです。

 

CFOが真の可視化でビジネス機会を呼び込む

トンプソン氏は、多くの企業が不十分なデータを基にしてしまったり、推定値や二次資料に頼ってしまっていることに、警告を発しています。

このやり方で報告書を作成していては、都合のよい、見せかけの環境対策を取っているに過ぎないと見なされる「グリーンウォッシング」の風評リスクは高まる一方です。

そして、今後より包括的な情報開示を求められるようになるESG開示要件に対して、ますます対応できなくなっていくことは明らかです。質の高いESG報告には、自社事業に関するものだけではなく、サプライヤーの事業も含めた「真の可視化」が求められていくようになるのです。

そうした開示要件に対応できない企業には、厳しい未来が待ち受けていることでしょう。

 

しかし、トンプソン氏はこの脅威をむしろ「本腰を入れて精査を始めるよい機会」と見ています。企業は新しいテクノロジーと能力を必要とすることになりますが、それが企業価値を向上させ、ビジネスの機会をもたらすことにつながるからです。

CFOは、急速に進化する規制がもたらす新たな課題と期待に立ち向かわなければならないのです。

 

変革を小さなステップに分割する | 大きく考え、小さく始め、素早く行動する

プロティ氏は、「大きく考え、小さく始め、素早く行動する」ようにCFOにアドバイスしています。なぜなら、小さくても迅速な成果は、より大きなイニシアチブへの再投資を容易にするからです。そして変革を小さなステップに分割することは、従業員が変化を受け入れやすくするからです。

こうしたプロセスをスムーズに進めるのに、チェンジマネジメント専任チームの設立が効果的なケースも多いとプロティ氏は話しています。

専任チームの活動により、新たなイニシアチブの進捗管理や従業員のスキルアップ管理や経験評価、そして「組織変化疲労」による取り組みの頓挫を起こさせないためです。

 

プロセスを紐解く

財務改革においてプロティ氏とトンプソン氏が推奨する最初のステップはプロセス・マイニングです。「プロセス・マイニングは、複雑に絡み合い混乱を生み出している状況から、最適な経路を示してくれますと」プロティ氏は説明します。

プロセス最適化を適切なツールを用いて行うことで、従業員は分離したデータを統合して適切に解釈するという価値の高い仕事に取り組むことができるようになります。プロセスをリアルタイムで図式化することにより、サプライチェーンのボトルネックの特定とワークフローの再調整など、目につきづらかった非効率性を見つけ出すこともできるでしょう。

 

データ基盤の構築

ERPシステムは高品質のデータ収集には良いツールです。しかしトンプソン氏はこう指摘しています。「ERPはサステナビリティー対応のための機能やデータ・オブジェクトを備えていません。ERPをどのように拡張、強化、補強できるかを検討しなくてはなりません。そしてデータレイクは、今やレイク(湖)ではなくデータスワンプ(沼)となってしまっています。泥だらけで底が見えません。」

従来のデータストレージはもはや十分ではなく、最新の正しいデータにアクセスできるデータファブリックとデータメッシュは欠かせないものといえるでしょう。

 

多様なチームの構築

財務部門に求められる仕事の多様性は増しており、必要となるスキルも同様です。「必要なスキルをすべて持ったスーパースター人材を見つけることは不可能です。まずそれを理解すべきでしょう。」プロティ氏はそう注意を呼びかけます。

伝統的な会計スキルを持つ人材と、サステナビリティーやコミュニケーションに精通した人材とを組み合わせ、お互いにスキルアップを助け合い補完しあいながら、チームとして新たな責任に対応できるようになるべきなのです。

 

テクノロジーを活用して可視性を高める

IBM Envizi ESG SuiteのようなAIを搭載した統合プラットフォームは、資産管理とサプライチェーン管理ソリューションを包含し、幅広い環境データの収集や集計を力強く支援するものです。

そしてCFOにとっては、それらのデータを理解しやすいアウトプットへと変換し、サステナビリティーのリスクと機会についての効果的な意思決定を行うための明確な見通しを提供してくれるEnviziは、貴重なパートナーとなっています。

 

財務部門が四半期ごとに帳簿を締めることだけに責任を負っていた時代はもはや過去のこととなりました。プロティ氏はこれからのCFOの役割が、財務機能を再構築して業績を向上させることはもちろん、企業運営をハイレベルな目標や価値観と一致させるために、従業員をかき立てるストーリーテラーとなることだと繰り返し強調します。

「財務リーダーの役割は、今や完全に変化したのです。」

 


当記事は『CFOs are the new ESG storytellers』を日本の読者向けに編集したものです。

 

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