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「サステナビリティー実装企業」に見られる3つの意外な特徴(From IBVレポート [規制対応のためだけの「ESG報告」を超えて] より)

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当記事は、IBM Institute for Business Value(IBV)のレポート『規制対応のためだけの「ESG報告」を超えて』を一部抜粋し再編集したものです。
全編は下記よりダウンロードしてご覧いただけます。
https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/jp-ja/report/sustainability-business-value

 


CxO(最高責任者)レベルの経営層の多くが、厳しい現実に直面している。それは「サステナビリティーに取り組む」ことは、実際にサステナビリティーを高めることとイコールではないという現実であり、ほとんどの企業がそうした状況に陥っている。どうやら私たちはサステナビリティーへの認識を改め、サステナビリティーへの貢献と財務業績の向上を両立させる道を切り拓かなくてはならない時期に来ているようである。

IBM IBVは22カ国、22業種のCxOレベルの経営層5,000人を対象に調査を実施し、分析を行った。その結果、サステナビリティーを実践する方法を変えれば、ビジネス価値を大幅に増大させられることが分かった。
その際、鍵となるのは、ビジネス全体で取り組むことである。つまりサステナビリティーは、付加的なものとして扱うのではなく、業務に「実装」すべきなのだ。

「サステナビリティー活動をビジネスにすでに実装している企業」はビジネス価値を実現している

 

■ 「サステナビリティー実装企業」に見られる3つの意外な特徴

1. 「サステナビリティー実装企業」は他社より多くの資金を「サステナビリティーに」投じているわけではない。

「サステナビリティー実装企業」だからといって、サステナビリティー関連の予算が潤沢にあるわけではない。むしろサステナビリティー関連のデータやインサイトを、それ以外の支出や投資の意思決定に幅広く活用している。実際、「サステナビリティー実装企業」はまだ実装していない組織よりも、収益に対するサステナビリティー支出の割合は若干低い。一方で業務上の意思決定を行う際に、サステナビリティーへの配慮、データ、インサイトを考慮する割合は、「サステナビリティー実装企業」の方が22%高い。

2. 「サステナビリティー実装企業」はサステナビリティー活動をより多く行っているわけではない。

サステナビリティー活動を組織に実装しているからといって、サステナビリティー活動やプログラムをより大規模に、あるいはより頻繁に行っているわけではない。「サステナビリティー実装企業」は、中核となる業務や変革に焦点を絞って、サステナビリティー活動を組み入れているのだ。実際、「サステナビリティー実装企業」がサステナビリティーの要素をイノベーション活動に取り入れている割合は、その他の企業より90%も高く、オートメーション化に取り入れる割合も60%高い。

3. 「サステナビリティー実装企業」はサステナビリティーを特別なことと見なしていない。

「サステナビリティー実装企業」は、サステナビリティーを最重要課題として特別視するのではなく、利益の観点から捉える傾向が強い。これらの組織にとって、サステナビリティーは長期的なビジネス価値なのである。

サステナビリティーを深く経営にまで実装している組織は、サステナビリティー活動だけでなく、利益の点から見ても、他の組織を上回る成果を上げている。また、「サステナビリティー実装企業」は業績向上の要因にサステナビリティーを挙げる傾向がある。
実際に企業の資産管理やメンテナンスを改善できれば、物理資産の寿命を延ばすことができ、このことは資産集約型企業の業績を向上させる鍵となる。さらに、こうした業務改善は翻ってサステナビリティーの成果をより向上させる

 

■ ケース・スタディー | エネルギーの消費量を削減しながら、旅客列車を効率的に運行させる

オーストラリアでは何百万人もの旅行者が移動手段として鉄道や路面電車を利用している。ダウナーグループ(Downer Group)は 100 年以上にわたり、列車の製造と、鉄道運行を事業の柱に据えてきた。しかし現在、同社はスルーライフ・サポート、つまり1台の車両に対し25年から30年も続くメンテナンス作業を事業の一環に加えるようになった。これにより同社は、特にエネルギー消費の面からサステナビリティー活動に携わる機会を得た。

ダウナー社がオーストラリアのあらゆる主要都市で運行する列車は毎日数百本に上る。
こうした列車の継続的な管理に加え、よりサステナブルな交通網の構築に貢献することが同社には今求められている。
同社はサステナビリティー活動を改善し、さらには業績を向上させることを目指し、鉄道車両資産管理プラットフォームTrainDNAを構築した。このプラットフォームを活用することで、複雑な分析やほぼリアルタイムのデータ活用を実現し、オーストラリア全土で200本以上の列車の予測メンテナンスを行えるようになった。その結果、ビジネスを効率化できただけでなく、サステナビリティーを改善することに成功した。具体的には、保有車両全体の信頼性が 51%向上したのである。

[事例] 旅客鉄道の運行管理をサステナブルにする予知保全 | ダウナー

[事例] ダウナー社 | 案件受注も増加! Enviziでサステナビリティー報告書を月次に

 

■ データのユーザビリティーに関する課題 | サステナブルなビジネス価値を

経営層はサステナビリティー目標を達成するためにはデータが重要であることを理解しており、回答者のうち82%が成功のためには高品質のデータと透明性が必要だと回答している。ところが、データとサステナビリティーの成功の関係を認識しながら、ERP、企業資産管理、CRM、エネルギー管理、設備管理といった基幹システムからサステナビリティー関連データを自動的に取得している組織はおよそ4割に過ぎなかった。また、これらの基幹システムを使っていてサステナビリティー関連のインサイトを意思決定に取り入れている組織も同程度の割合にとどまっている。

「サステナビリティー実装企業」はサステナビリティーからメリットを得るため、上手にデータを活用している

 

■ ケース・スタディー | データ管理でサステナビリティーを大規模に実現

GPT Group社はオーストラリア証券取引所(ASX)に上場する企業であり、多角的な不動産事業を展開している。同社でサステナビリティー部門の責任者を務める Steve Ford氏は、多くの企業が環境・社会・ガバナンス(ESG)に関するデータの管理を、いまだに「スプレッドシート、PDF、紙の書類」で行っていることに驚きを隠さない。

2021年、GPT社は二酸化炭素の排出量を2005年比で82%削減した。Envizi™ではデータは金融グレード*を確保されるため、排出量削減やエネルギー効率だけでなく、調達などの関連分野においても安全にスマートな意思決定が行える。「データを四六時中追いかけていたら、戦略的な調達にまでとても考えは及ばない。他社で私と同じ仕事をしているものは皆、多額のコストに頭を悩ませているはずだ」とFord氏は述べる。
Ford氏のチームは最近、そうした波及効果を数値化するため、幾つかの計算を行った。
「もし効率改善と調達業務における節約がなければ、当社のエネルギー・コストは年間約5,000万ドルも増えていたはずだ。そうなれば今よりも約3倍の費用がかかり、当社にとって2番目に大きなコストになっていた」と同氏は述べる。

* 金融グレードとは、金融業界で利用できるほどセキュアな環境のこと

[事例] 世界有数のESG企業GPTグループのパートナーとして

 

■ アクション・ガイド | データ・ユーザビリティー

データ・ユーザビリティーの課題を克服するためには

– まず現在、保有するデータから始める。社内にどのようなサステナビリティー関連データが存在し、それらがどこにあるのか、どうすれば意思決定に活用できるのかを把握する。データが不十分であることを、何もやらないことの言い訳にしてはいけない。

– サステナビリティーとエンタープライズ・データ戦略を整合させ、必要なデータを収集、統合、ガバナンス、カタリスト(触媒)として活用することで、組織を前進させる。

– インサイトを獲得し、行動に移すために必要なところにデータが流れるよう、サステナビリティーに関するデータ・ファブリック*を組織全体で構築する。サステナビリティー・データのポテンシャルを最大化し、データ共有を促進し、データ・イニシアチブを加速する。

– データ・ガバナンス指針をエコシステムのパートナーと共同で定め、データ共有と革新的イニシアチブを共創する。

– ハイブリッドクラウド、AI、生成AIを利用して、データ価値を高め、イノベーションを加速し、インサイトに基づく意思決定を可能にする。

* データ・ファブリックとは、オンプレミスやクラウドなど、さまざまなシステムやアプリケーションでデータを最適な場所に配置し、必要なときに取り出せるようにしたアーキテクチャーのこと

 


 

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