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気象データ活用ビジネス最前線<第一回 | オートバックスセブン様> セミナーレポート

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ここ数年で勢いを増し、さまざまな業種に次々と拡がりを見せているのが「気象データのビジネス活用」だ。

先日開催されたオンライン・セミナー「一次産業だけじゃない!お客様事例から学ぶ、気象データ活用ビジネス最前線<第一回>」では、その最前線の動向が日本IBMで気象データ・ビジネスを推進するAI Applications事業部からの2名の講演者と、ゲストの株式会社オートバックスセブン(以下「オートバックス」)の2名からなる講演者により語られた。

このレポートでは、オートバックスが大分県で取り組まれている、高速道路の濃霧対策および日本初の5Gを使った総合実証実験を中心に、セミナーの模様をダイジェストでご紹介する。

 

講演者の4名

 

オートバックスからご登壇いただいたのは、ICTプラットフォーム推進部 課長 大川 良利氏と、ICTプラットフォーム推進部 デジタルトランスフォーメーショングループ データアナリスト 岩下 康弘氏だ。

 

「オートバックスは、市民の安心と安全な生活への貢献をテーマに活動しており、先日はその関係から大分県にて濃霧の発生予測に関わる取り組みを行ないました。

『オートバックスといえばカー用品では? なぜ天候データ、なぜ濃霧?』と思われる方も多いかと思うので、まず最初にそれについて説明させていただきます。」

データアナリストの岩下氏はそう話し始めると、オートバックスの現在の取り組みについて以下のように説明した。

 

オートバックスは、交通安全や観光振興、農業支援や防災、女性や青少年の活躍推進や環境保全など、8つの分野で独自のIoTプラットフォームを活用した新たなサービスを開発・提供しているという。

オートバックスの独自IoTプラットフォームを活用した取り組み

 

この中で、濃霧の発生予測が必要となったのが「交通安全・地域交通」を中心とした分野であり、包括連携協定を結んでいる大分県においては大変大きな意味を持っているという。

なぜなら、濃霧による高速道路の通行止めは観光や物流などにも大きな影響を与えるものであり、大分県の地域経済にとって大きな意味合いを持っているからだ。

 

「大分県は車による移動が交通の要となっていますが、大動脈とも呼べる大分自動車道をはじめとした高速道路が頻繁に通行止めとなっており、その年間合計時間は271時間にも上ります。その一番の原因となっているのが濃霧の発生です。

こうした状況を打破するために、オートバックスは濃霧下でも安全運転を実現するための、運転補助システムの確立を目指した取り組みを行なっています。

具体的には、濃霧下でも周囲の車両やガードレールなどを画像認識し、車を安全に走行できるようにする方法の確立です。そのためにはまず、実際に濃霧の中で車を走らせて、どのような視覚情報(映像や画像データ)が取得できるかを確認すること、そしてそうした条件下で5Gを活用した高速大容量通信のテストを行う必要がありました。(岩下氏)」

 

ここで問題となったのが、濃霧の発生タイミングだ。

実証実験を行うスタッフの多くは東京在住で、機材なども含めて濃霧発生に備えて大分で常時スタンバイを続けるというのは、費用などの面からも非現実的であった。そこで頼りにしたのがIBMのウェザー・ソリューションだという。

 

「濃霧の発生予測に取り組んだとき、最初に使用したのは気象庁のデータでした。しかし、気象庁が持っているデータは大分市内のものしかなく、大分自動車道付近の気象データ、さらには濃霧の発生を見極めるのに重要な水蒸気が結露し始める『露点温度』と呼ばれる情報がまったく含まれていませんでした。

そこで出会ったのが、IBMで気象関連ソリューションを提供している、ウェザー・ソリューションチームでした。彼らの元には、過去数年分の4×4キロメッシュの現地予報データと、15日先までの1時間毎の予報データという、濃霧発生日時予測に必要なデータが揃っていました。」

こう語ったのは、ICTプラットフォーム推進部 課長の大川氏だ。しかし、予測も1度目から成功したわけではないと言う。

 

「実は、1度目の予測日時に合わせた濃霧下での運転データ取得は失敗してしまいました。というのも、霧は発生していたのですが、運転に大きな支障を与える濃霧には至らないものだったのです。

そこで、改めて濃霧と霧の発生の条件を精査し、時間の間隔や、温度、湿度などの時系列での変化などを細かく調整してあえて濃霧に絞った発生予測モデルを作成しました。その結果、精度がかなり向上し、2回目のデータ取得は大成功となりました(大川氏)」

霧の発生予測とその結果

 

「濃霧の発生であんなに喜んだのは人生で初めてでしたね(笑)」と言う岩井氏は、セッションの最後を以下の言葉で締めくくった。

「今回の予測モデル作成と実証実験の成功を通じて、組織として気象データ活用にかなりの手応えを感じています。今後、新たなサービスの開発・提供を進めている8つの分野において、そしてオートバックスの持つ既存サービスにおいても、気象データの活用が広範囲に大きな付加価値を与えてくれるのではないかと強く感じています。」

 

今後のオートバックスの気象データを活用したサービスに注目したい。


 

続いてIBMウェザー・ソリューションチームの話から、いくつかをピックアップして紹介する。

・ 5年前にIBMグループに加わったThe Weather Companyの気象IoTネットワークは世界最大で、気象レーダーや衛星、航空機のセンサー、政府機関の気象観測所やスマートデバイスなどから観測データを収集し、最先端のAI技術を活用した気象情報システムにより毎日全世界で500億件を超える気象情報を生成・提供している。

 

・ 統合気象ソリューション「IBM Environmental Intelligence Suite」には、汎用的な気象データ以外にもさまざまな業界での使用に特化した気象データが用意されている他、「IBM PAIRS」という500種類以上のデータからなる地理空間データ分析プラットフォームも用意されている。

参考: IBM IBM Environmental Intelligence Suite

 

・ 業種別事例のご紹介

製造・エンジニアリング・建設業
設備故障と気象条件との相関を分析し故障リスクを判定するなどの設備・製品故障予測・予知保全。15日先までの気象予報を元に工事への影響を分析する計画変更判断支援。自動車の運転者の走行履歴データと気象条件の関係を分析し、新サービスを開発。

 

電力エネルギー業界
発電設備のデータと気象予測データのAI解析による太陽光および風力による発電量を予測。AIによる伐採対象自動抽出による送・配電線の断線被害防止や植栽伐採管理業務の効率化とコスト低減。

 

運輸(航空/鉄道/陸上/海上)・観光・旅行業
飛行ルート上のタービュランスなど悪天情報を予測し、最適なルートを判断。気象条件と来店・来場者数との相関分析に基づくスタッフ配置の最適化。

 

損害保険業界
風水害による被害予測/損害賠償査定業務の効率化と顧客サービスの改善。気象条件と事故発生リスクの分析に基づくテレマティクス保険やパラメトリック保険などの新商品開発。

 

農業
気象条件と農作業・土壌データ分析に基づく農作業計画(収穫、施肥、農薬散布etc.)の最適化。

 

ヘルスケア
救急搬送データ、気象データ、人口データなどの相関分析から特定疾患の発症増加を予測。

 

コンシューマー製品・小売業
飲料出荷数と体感温度の相関分析に基づく商品需給計画精度向上。ロケーション毎の商品プロモーションなどの気象トリガーサービスを提供。

参考 「天候データを活用した風災被害AI予測モデルの共同開発」レポート

 

 

なお、12月17日には、ゲストに三井化学様をお招きし「三井化学の太陽光発電診断」についてお話いただく第二回気象データ活用ビジネス最前線セミナーが開催される予定だ。

IBMウェザー・チームのソリューション紹介およびIBM気象予測技術の特長については、今回レポートした第1回と同様のものが行われる予定となっている。

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Cognitive Applications事業 にご連絡ください。

 

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(TEXT: 八木橋パチ )

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