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「APEV: 国際学生“社会的EV”デザインコンテスト2022」プレワークショップレポート
2022年05月27日
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3月27日、「APEV: 国際学生“社会的EV”デザインコンテスト2022」のプレワークショップが日本アイ・ビー・エム箱崎本社にて開催されました。
このデザインコンテストは、「未来の子どもたちに美しい地球環境を残したい」と電気自動車の普及活動を行ってきた一般社団法人電気自動車普及協会(APEV)が2013年から実施してきたコンテストで、今年が5回目の開催となります。
今回のプレワークショップは、参加を検討中、あるいはすでに応募済みの学生に向けて、どのようなスタンスで取り組めば良いかを主催者や関係者からアドバイスを交えて伝えるものでした。当日はオンラインでの配信も行われ、多くがオンラインでの参加となりました。当レポートでは、その一部をご紹介します。
来たれ! 未来が託せる融合型の次世代モビリティー・アーキテクト
「この首を傾げているキャラクターは、社会が抱えている課題をどうすれば解決できるだろうかと考えている『社会的EVデザイン』という今回のコンテストの象徴的存在です。
右に描かれている顔のクローズアップをよく見ていただくと、アートとデザイン、哲学、そしてテクノロジーが、持続可能性と人間社会を取り囲んでいます。
少子高齢化や首都圏一極集中、地球温暖化など、私たちが抱えている多くの社会課題に立ち向かい、明るい2040年を迎えるには、『交通インフラ』『電力事業』『電気通信事業』という3つの社会インフラすべてに関わる『次世代EVモビリティ」が欠かせません。
今回の国際学生デザインコンテストで見つけ出したいのは、そして私たちが育成をご支援したいと考えているのは、デザインだけ、プランニングだけ、エンジニアリングだけではない、未来が託せる融合型の次世代モビリティー・アーキテクトです。多くの皆さんのご参加と奮闘を期待しております。」
オープニングの基調講演では、APEV理事、株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEOであり今回の審査委員長を務める藤原洋氏より、コンテストの意義や狙いが伝えられました。
そして、4月末に締め切りを迎え10月に最終審査と発表が行わるコンテストのスケジュールや、安藤忠雄氏や井原慶子氏、脇田玲氏など、幅広く豪華な審査員のラインアップも紹介されました。
エモーショナルな提案を | カーデザインアカデミー 喜屋武氏
小休憩を挟み、協賛企業・団体から、コンテストへの期待と学生へのメッセージが届けられました。
車のスケッチを1から学び、カーデザインを専門に教えてもらえる学校が日本には少ないということへの問題意識から、高い向上心を持つ学生に基礎から応用テクニックまでをオンラインで丁寧に教えようと8年前に開校したのが「カーデザインアカデミー」です。
校長でありメインインストラクターの喜屋武タケル氏からは「どれだけテクノロジーが進化しても、人の持つ感情や欲求には大きな変化はないだろうと考えています。単純に『便利になったね』に留まらない、エモーショナルな提案を期待しています」と学生へのメッセージが伝えられました。
「無理」に引っ張られ過ぎず現状打破を | 日本IBM 川島
続いて登壇した日本アイ・ビー・エムの川島善之は、テクノロジーと環境、社会、経済の在り方の変化が、自動車業界とその周辺にどのような影響を与えているかについて、自動車業界と長年共に歩んできたテクノロジー企業の視点から語られました。
そして日本経済の牽引役として自動車業界に大きな期待がかかっているという現状と、一方でもしもデジタル変革の遅れが取り戻せない場合にどのようなことが起きうるかが、いわゆる「白物家電」業界で起きたことを例に伝えられました。
講演の最後には「『無理』を強く意識し過ぎてそれに引っ張られてしまっていては『現状打破』はできません。学生の皆さんには、さまざまな制約を理解しつつも、ぜひブレークスルーを狙ってチャレンジして欲しい」というメッセージが送られました。
需要と供給のバランス・マッチングで持続性を | モネ テクノロジーズ 川鍋氏
「高齢化社会において地方交通の維持が高い社会的価値を持つことに異論を唱える人はいないでしょう。それでも、MaaS事業を実行、継続するのは容易ではありません。」
協賛企業からの最後のメッセージは、ソフトバンクとトヨタの共同出資により3年前に誕生した「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」の川鍋彰大氏より、豊かで快適な暮らしを実現する新しいモビリティの価値づくりの取り組みと、その「ビジネス的な困難さ」が伝えられました。
「生活者が理想的と感じられる『需要』と車両や走行サービスという『供給』のバランス・マッチング。これがなければ事業は持続できません。こうした事業性を踏まえつつも、社会課題を一刻も早く解決するための展開スピードも同時に意識した提案を待っています」と、学生たちに大きな期待を寄せました。
未来探索で2040年の新たなニーズを発想し、未来シナリオを描く | 日本IBM 中山
最後に行われたのが、オンライン・ワークショップです。
自動車業界を長年担当している日本IBMのコンサルタント中山透のリードにより、この日のプレワークショップの狙いと進め方が最初に紹介されました。
「学生の皆さんには『人とEV』『テクノロジーとEV』の2グループに分かれていただき、未来仮説の構築を一緒に実施していただきます。今日聞いた話やこれからのワークショップをベースに、未来探索と未来シナリオづくりを行いますが、本日のプレワークショップはその入り口に過ぎません。今後、未来仮説構築を何度も繰り返して仮説を洗練させ、EVデザインに落とし込んでいきましょう。
本日の実際の進め方ですが、未来探索には博報堂 生活総研のデータベース「未来年表」を活用し、2040年やその周辺年度から『これは』と思う未来に起きそうな事象を抜き出し、オンライン付箋に書き出して貼っていってください。それ以外にも、SF映画や今日聞いた専門家のプレゼンやコメントも参考に書き出していってくださいね。
未来探索後は、PEST分析(政治的 、経済的 、社会文化的 、技術的の4つの視点から外部環境を分析するフレームワーク)などを用いて変化のうねりを捉え、2040年の新たなニーズを発想し、未来シナリオへとつなげていきましょう。」
この後、およそ90分間にわたりコンテスト関係者と学生によるオンライン共創ワークショップが行われました。
そして最後に、APEV理事、INTERROBANG DESIGN株式会社代表であり、当コンテスト実行委員会の委員長を務める山下敏男氏より「未来に対する企業の意識変化が進む今こそ、学生からの提案が強く求められている」という状況が改めて語られ、イベントは閉幕となりました。
コンテストの応募締め切りは6月20日となっており、10月の最終審査までには参加者向けに2度のワークショップやMaaS・デザイン・商品企画・DXイノベーション・CASEなどの講義が予定されているそうです。
「国や学校を超えた協業を促進する」という目的を持ち、グループ活動での課題達成に向けた協力関係の構築支援のための「参加学生マッチング」機能も備えているということから、勿論一名での応募も大歓迎とのことでした。モビリティとEVを通じた「社会デザインの共創」に興味をお持ちの学生の方は、急いで参加を検討してみてはいかがでしょうか。
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