IBM Sustainability Software
セッションレポート「現場の安全管理におけるITの活用」(AIとIoTによる 安全管理・健康管理セミナーより)
2019年08月02日
カテゴリー IBM Sustainability Software | イベントレポート | 安全・健康管理
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本記事は、2019年7月9日(火)に 開催された「AIとIoTによる 安全管理・健康管理セミナー」における、「現場の安全管理におけるITの活用」セッションの要約レポートです。
このセッションでは視野を広く取り、現場の安全を確保する方法やそれを実現するITの仕組みについて、さらには働く人たちの健康の管理や促進方法まで含めて考えてみたいと思います。
■ 現場作業における6つの危機タイプと再発防止へのアプローチ
さまざまなお客さま先に伺い安全管理をテーマにお話を聞かせていただいていますが、現場では実際にさまざまな事故が起きそうになっていたり、不幸にも命を落としてしまうような大きな事故が発生していることを学ばさせていただきました。
私がこれまで聞いたものを、類型化して以下に挙げてみます。
1.屋外作業における熱中症
昨年社会問題となったように、従来の対策では追いつけないような極端な夏の暑さや天気の急変
2.高所作業現場での転落
高所からの転倒事故は工事や工場などで一定数起こっており、起きた際には重大事故となりやすい
3.車両との接触、転倒
物品移動や搬入搬出時など、フォークリフトやトラックとの接触事故や転倒事故は少なくない
4.地下ピット作業での窒息
地下トンネルを掘る際や、地下や地中に大きな物を据え付ける際などにも発生している
5.夜間/独り作業時の急変
すぐに気づいて駆けつけられれば大きな事故にはつながりづらいが、対応が遅れると取り返しのつかないことになりがち
6.設備不良による危険
機器が設計通り、あるいは想定通りに動作しなかったために起きる事故。あるいは操作ミスや連絡の不徹底により作業員が事故に巻き込まれてしまうことも
安全管理のご担当者の方たちにお話を伺うと、転落・転倒など「リアルタイム検知ができれば良い」という事象や、熱中症など体調変化については「予兆を検知したい」というケースに分かれますが、すべての事象に共通するご意見は「再発を防止しなければならない」というものです。
どのように再発を防止するかを考える上でもっとも基本となるのが「原因となったコト・モノ」の把握・分析です。
「作業環境や指示内容」「担当者スキルや傾向とのミスマッチ」「設備老朽化などによる故障や誤作動」などの原因に対し、それぞれ分析チェック項目を挙げていき、「チェックできる場所」と照らし合わせて分析作業を行なっていきます。
そしてそれを元に具体的に何をどのようにチェックし分析していくか、そして再発防止策として何を定義し実施していくかの一例を表したものがこちらの図となります。
■ DHL(シンガポール)事例
ここで一つ、現場の安全管理におけるIT活用事例として、DHLさまがシンガポールの倉庫で使用されているIBMのシステムを紹介します。なお、こちらはYouTubeでも公開されています。
動画でご覧いただきましたように、DHLさまはいろいろな工夫をされています。下記に、ポイントをいくつか挙げてみます。
- すべての作業員がトラッキングデバイスを身につけて、常にどこにいるかが分かるようにしている
- 倉庫での積み込み作業開始時には、自身の心体状態や睡眠時間などを登録するようにしている
- フォークリフト操縦時は、ドライバーはウェアラブル端末を身につけ、心拍の状態を可視化している
- フォークリフトがどこにありどちらに向かっているかという情報と、作業者の所在位置情報を、リアルタイムにモバイル端末に表示している
- 出会い頭の接触というインシデントを発生させないよう、作業者とフォークリフトの距離が近づいた際には、モバイルアプリからのアラートによりフォークリフト運転手にそれを知らせる
こうした取り組みから得られた人とモノの動きに関するデータを、過去のヒヤリハットなどと合わせて分析することで、危険な状況やエリアを特定して予兆検知に利用しています。
また、過剰な安全対策を取っていた箇所を見つけ出し、適切な対策へと変更しています。
DHLさんのこのケースでは、構内におけるフォークリフトの制限速度を時速6キロから8キロに上げることができました。わずか2キロと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、DHLさんのような巨大倉庫においては、この2キロは大きな効率の違いを生むものです。
■ アラートが鳴らない職場を実現するためのAIとIoT
こちらの図はDHLさんの事例とは異なるものですが、最近の安全対策の取り組みを一枚の図で表したものです。
現場作業員の体調や身体の状態をデータとして取得するための、hamonなどに代表されるウェアラブル端末や生体センサー。それから温度、湿度、明るさ、あるいは加速度などを捉えるための環境センサーやスマートフォンが左上に表示されています。
これらは、現場の「今」を把握するものたちです。
そして、作業現場で記録されていた設備台帳や稼働データなどの「これまで」を示すものと、IBMグループ企業のThe Weather Companyなどが提供する気象データなどを合わせて分析や最適化をすることで、故障予測などの「未来」についての情報を管理者や作業員に与えることができます。
上の図は、AIアシスタントを活用した作業指示判定や防止策アイデアとなります。
IoTデータや日常作業データが十分に蓄積されて分析できる状態となれば、作業指示とインシデントの相関関係…つまり何が事故やヒヤリハットを招いている原因かが深いレベルで見えてくるようになります。
ここに至れば、作業内容や指示方法を見直した方がいいのか、あるいは特定の状況と個人の特性が関わった際にインシデントに結び付きやすいのかなどを分析して判断することができます。
作業担当者への注意事項などの申し送りも、いつも通りのことをいつも通りに伝えるのと、最新の機器の状況を踏まえて申し添えるのでは、インシデントの発生可能性に大きな差が生まれるであろうことはご想像いただけるのではないでしょうか。
ただ、こうした仕組みが効果を出し始めるのは、ある程度のデータが揃ってからとなります。…とは言え、黙って待っているわけにもいきませんよね。
そこで、データの取り方に工夫を凝らし、今現在の安全や高効率を高める手段として用いられるのが、高性能のAIアシスタントです。
最近注目を集めているのが、高性能の音声AIアシスタントをベースとした完全ハンズフリーのチャットボットです。
点検作業の指示や点検ポイントを会話型で進めていくもので、安全性を高めるのと同時に、現場で発生しているQ&A情報を採取する格好の場ともなり、業務のナレッジDBを自然と拡充していくことができ、ベテランが持つ知見の技術継承にもつながっていきます。
特長的なのが、企業ごとに合わせたカスタムモデルを適応させることで、かなり騒がしい環境下でも高い精度で正しく音声認識することで、作業現場でも十分活用可能だと驚かれるお客さまが少なくありません。
こちらは詳しい資料やデモ動画などを用意していますので、ご興味のある方はぜひ、私たちにご連絡いただければと思います。
私の講演は以上となります。
皆さまの、安全で健康な現場作りのお役に立てることが1つでもあったなら幸いです。
問い合わせ情報
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TEXT 八木橋パチ
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