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あらゆる枠を超えて | 天城ダイバーシティー経営フォーラムレポート
2022年11月22日
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女性活躍推進、障がい者雇用と活躍、LGBTQ当事者の働きやすさ、そして、これらダイバーシティー&インクルージョン(D&I)の取り組み時に忘れてはならない「アンコンシャス・バイアス」という難敵と、それに立ち向かうための脳科学の知識…。
10月中旬のある週末、これら幅広いテーマに対して実践的な知見を持ち寄り、より良い組織・企業となるための学び合いの場として「天城ダイバーシティ経営フォーラム」が開催されました。
断片的ではありますが、さまざまな企業から集まった人事責任者やダイバーシティ担当者たちが2日間にわたり交わした言葉を、いくつかご紹介させていただきます。
より公正(エクイティ)な社会へ | EY Japan チェアパーソン兼CEO 貴田守亮
まずご紹介させていただくのは、スペシャルゲストとしてご登壇いただいたEY Japanのチェアパーソン兼CEOである貴田守亮(きだもりあき)氏による基調講演「企業カルチャーの変革 LGBT+のダイバーシティ視点から」です。
幼少時代からの厳しいマイノリティー経験からくる悩みを自身のリーダーシップへ、そしてさらに新たなアイデアを産みイノベーションを起こす組織の変革力へと転換してきた貴田氏の生き方と覚悟に満ちた話は、性別や人種という枠組みを超えた「より公正(エクイティ)な社会へ」と近づくための視座を高めるものでした。以下は、講演の中で語られた言葉のごく一部です。
「人としての本当の自分を知ってもらえなければ、真の意味での仲間にはなれない。」
「ダイバーシティ(多様性)は数の話。エクイティ(公平性)とインクルージョン(包括性)は企業風土、あるいはカルチャーとしたほうが良いかもしれません。文化の話。」
「マイノリティーは、常にD&Iについて考えているが、マジョリティーは違う。彼らが自分たちは『特権』を持っていることを認識し、実際にアクションをとるということが大切。」
「『LGBTQ+にも非寛容な人権後進国』という認知が広がり、人材獲得競争において日本は世界でどんどんおいてきぼりにされている。」
特に、参加者が企業の役員であることから、マジョリティーの特権を持つ皆さんが組織・企業を変えることでより公平な社会へと変革できる、多様性を尊重し誰もがありのままに働ける職場環境の構築を目指して一緒に取り組んでいきましょうと呼びかけました。
参考: NIKKEIリスキリング | カミングアウトに9年 EYジャパンCEOが悩み抜いた日々
IBMにおいても、社内外においてLGBTQ+当事者を応援するための制度や仕組み、文化や共創の場作りが長年実践されています。以下はその一例です。
自らの言葉で語ることの大切さ
「今、変われなければ、もう変われるときはこないということを実感した。」
—— これは今回の天城フォーラムのホストであり、8月に日本IBMチーフ・ダイバーシティー・オフィサー(CDO)に就任した取締役副社長の福地敏行と、執行役員であり流通事業部を率いる『「人」の探求家』髙橋総一郎の両名によるオープニングセッションへ寄せられた言葉です。
自身の言動を都度振り返り、自分の言動にアンコンシャス・バイアスが紛れていることに気づいたときにはすぐに謝罪をすることを心がけ、周囲にも迷わず指摘することを実直に求め続けていると語る福地。
そして定期的にダンスやゲームを小学生から、海外出身の女性からゴルフを学び、積極的に多様性を感じられる場に足を運ぶことで「自分の狭い思い込みに閉じないこと」を心がけているという高橋。
この2人の自身の体験をベースとした「教科書通り」に留まらない講演には、「トップが、そしてミドルやチームの皆が、自らの言葉で語ることの大切さを改めて感じた」という声も上がっていました。
インクルージブ(包摂的)な文化と職場環境を育てるための取り組みが常に進められている日本IBMですが、中でも、現在特に注力しているのが以下の4領域です。
障害を理由に遠慮することなく、覚悟を決めて前に出る
続いて登壇したのは、IBMの最高技術職であるIBMフェローであり、2021年より日本科学未来館館長も務めている浅川智恵子です。
2003年の米国女性技術者団体(The Women in Technology International)殿堂入りや2013年の紫綬褒章受章、2015年度の津田梅子賞受賞や2019年の日本人女性初の全米発明家殿堂入りなど、アクセシビリティ分野を中心に日本だけではなく世界でさまざまな偉業を成し遂げてきた浅川。
「科学技術と共に実現するインクルーシブな社会に向けて」と題された講演では、14歳のときに全盲となった後、どのようにチャレンジを続け、楽しさを見出しながらどうやってキャリアを切り開いてきたかが語られました。
「諦めなければ、道は開ける」という自身のモットーと、もう一つ、とても印象的だった言葉をここでは紹介します。
「社内でも、障害を理由に遠慮することなく、覚悟を決めて前に出ることにしたんです。そのきっかけとなったのが、2001年から博士課程に通い、2004年に無事修了し社会人ドクターを取れたということ。それが自分の自信につながりました。
その後はキャリア目標をしっかりと立てて、それをクリアしながらここまで来ることができました。会社に育ててもらったという意識は強いし、同時に、仲間とフェアに、公正に一緒に競いながらやってこられたことが、ここまでこれた大きな理由だと思っています。」
参考: 「誰一人取り残さない」社会の実現へ――2021年4月、日本科学未来館の館長に就任する浅川智恵子IBMフェローに聞く
なお、いつもエネルギッシュな浅川だが、この日、とりわけ強調して話したものが一つありました。それがこちらです。
「オープニングセッションで福地さんが紹介してくれた、椎名社長時代の日本IBMが1992年に出していた新聞広告 『イノベーション(革新)』にすごく、本当にものすごく感動しました。」
天城フォーラム初日はこの後、オムロン太陽株式会社 取締役部長 辻潤一郎(つじじゅんいちろう)氏による「日本初の福祉工場としてスタートしてからの50年の取り組み」を最終セッションとし、夕食を挟み、懇親会を兼ねたディスカッションが夜遅くまで続きました。
参考: 朝日新聞デジタル | 福祉工場「オムロン太陽」 障害者に寄り添い50年
意思決定の場にD&Iを
2日目は、Japan Womenʼs Council(JWC)リーダーとして女性活躍社会とD&Iの推進に取り組む日本IBM 執行役員 川上結子による講演「意思決定の場にD&Iを ダイバーシティ経営の理想と現実をひも解く」からスタートしました。
持ち前のパワフルさを「全開」にした川上の1時間のプレゼンテーションには、参加者から「どうすればこれほど高品質な提言が社員から生まれてくるのか?」「社員が社内コミュニティー活動にここまで熱くなる理由は?」「男性育休推進や介護コミュニティーとはどのように協業をしているのか?」など、多数の質問が投げかけられました。
参考: 「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2022」企業総合部門 従業員規模別 1,001名以上の部にて、日本IBMが第1位を受賞
参考:変わる男性の育児休業取得とその効果 ~男性育休が「当たり前」となる組織を目指して~
2日間を締めくくる最後のセッションは、コンサルタントとしてIBMに勤務するかたわら京都大学経営管理大学院にて客員准教授として脳科学研究に取り組む大塚泰子のリードで進められました。
「脳のバイアスから考える経営へのインパクト」と題されたショート・ワークショップを含む講義では、大塚はまず、自身の深層心理を浮かび上がらせるようなワークで参加者の手と頭を動かし、研究データを自分ごととして捉えられる脳の状態を作り出しました。
そして、科学的アプローチから明らかとなっている事実として、人間の不条理や偏った判断が「生存本能」と深く結びついていること。また、同質性に強く惹かれてしまうことが生物として避け難いこと。さらには、それを理解した上で自身のアンコンシャス・バイアスに向かい合うことが大切であることを伝えました。
これらはすべて客観的データから導き出された人間の脳や認知の特性であり、こうした事実を確認・実感した後のパネル・ディスカッションおよび意見交換会では、大塚からの問いかけに2日間を総括するような、深い共感を呼び起こす言葉が参加者から多数発せられました。
最後に、その中からいくつかを紹介してこのレポートの最後とさせていただきます。
「コミュニケーションに面倒臭さを感じなくなってきたら、それはチームや組織にとっては危機だという新たな発見を得ることができた。」
「『要らない対立』を生みだすことのないよう、『マイノリティ根性』を発露してしまわないように心がけていこうと思う。」
「ダイバーシティーを強く押し出し過ぎると、まだそれを受け入れられない人は『攻撃されている』と感じてしまう。それぞれが感じている『脅威』をより一層丁寧に扱っていきたい。」
「長い時間を経て身についてしまった組織的アンコンシャス・バイアスが一夜にして消え去ることはないだろう。しかしDE&I(Diversity, Equity and Inclusion)がイノベーションの源泉であることは明確なのだから、地道にやっていく以外に道はないと思う。」
IBMは、より良い未来づくりに向けた取り組みを、あらゆる枠を超えて、社会の皆さまと共創したいと願っています。
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