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認知多様性が拓く未来社会のジャスティス(公正さ) | Access Blue特別講義

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とても刺激的でした。常識というか、当たり前だと思いこんでいたことを揺さぶられるというか…。メモを取る手が止められなくなりました。

 

私も気づいたら50分の講義に5ページもメモを取っていました。インテレクチャル・ファイターを目指そうと思います。

 

— 日本アイ・ビー・エムに「Access Blue(アクセスブルー)」という障害者向けのインターンシップ・プログラムがあるのはご存知だろうか?

冒頭の2つのコメントは、先日開催された特別講義「Access Blue 2021未来を創る『Cognitive Diversity』の誘発〜 IoT関連ビジネスの実践をとおして〜」終了後に、講演者の村澤への質問タイムで聞かれた言葉だ。

Access Blueは、2014年にスタートしたダイバーシティの価値観を究極的に追求するプログラムであり、参加資格があるのは障害者の方がたに限られている。期間が7カ月間という長期にわたること、そして昨年と今年はITツールをフル活用した「完全オンライン」という形態が取られていることなども含めると、おそらくは世界でもまれなものだろう。

なお、Access Blueプログラムについては、以下のページに詳細が書かれている。ぜひその内容の濃さに注目していただきたい。

 

IBM社内からのレポート: 障がいがある学生の可能性を広げるインターンシップ「Access Blue Program」(2020年11月5日)

“約7ヶ月にわたるカリキュラムは、オリエンテーションを兼ねたシンキング研修からスタートし、グループワーク、短期間プロジェクト、お客さまへのソリューション提案と実践的になり、最後はOJTとして各部門に配属され実際の業務を経験します。2020年度はOJTもフルリモートで実施しました。”

“「Access Blue」は、最も嘱望される職業のひとつデータサイエンティスト職に求められる基礎知識やスキル習得のためのカリキュラムの新設、「デザインシンキング」を取り入れたワークショップの実施など、時代の要請に応えながら内容を進化させています。”

 

Yahoo!ニュース 特集編集部による取材記事: 障がい学生「就活の壁」を乗り越えて――「人生を変える」長丁場のインターンシップから(2019年11月27日)

“その女性は、筋力が徐々に低下していく難病「脊髄性筋萎縮症」で、インターンシップには電動車いすで通っていた。大学では福祉を専攻し、進路も福祉業界に定めていたという。ところが、インターンシップの経験を通じて「ITの知識を福祉の分野に生かしたい」と考えるようになり、システムエンジニアになった。

「彼女は『人生を変えるインターンシップだった』と言いました。”

“杉崎さんは、インターンと並行して就職活動を行い、IT企業から内定を得た。その企業は、初めて全盲の人を雇用する。視覚障がい者の立場とプログラミングの知識を生かし、将来はウェブサービスのアクセシビリティーに関する業務に就くという。”

 

それでは、ここから村澤による特別講義の内容をご紹介する。インターン生たちが感じた刺激や揺さぶられる感覚が少しでも伝われば幸いだ。

オンライン会議ツール「WebEx」の画面

オンライン会議ツール「WebEx」の画面

 

■ 世界はどう変わっていくのか — 問われているのは「どう変えて行きたいのか」

 

「社会、経済、企業、市民個々人…。新しい時代に向けて、今まさに原理・原則、そして根源的・内発的動機付けが変わりつつあります。

より『生きやすい』『暮らしやすい』社会を目指し作り上げていく一員として、私自身を含むここにいる全員が世界をどう変えて行くのか、変えて行きたいのかを問われています。

そしてこれからは『Cognitive Diversity(コグニティブ・ダイバーシティ)」、つまり『認知多様性』が重大な役割を持つこととなります。

今日は、これから仕事を通じて社会の一員として活動を始められるインターン生の皆さんに、一先輩として僭越ながらエールを送らせていただきます。」

 

村澤はオープニングでそう語ると、自己紹介と自身が担当している「コグニティブ・アプリケーション事業」の概要説明を始めた。

なお、講義は完全オンラインということで、参加者であるインターン生はもちろん、講義を行う村澤もプログラムスタッフも全員がオンライン会議ツール「WebEx」を使用して参加した。そしてプレゼンテーションツールの「リアルタイム自動キャプション」機能により、聴覚障害者も問題なく講義における発話内容を目で追えるようにもなっている。

 

コグニティブ・アプリケーション事業は、以下3つの事業分野から成っていると村澤は説明し、それぞれの最近の事例や取り組みをいくつか紹介した。

*1 DX : Digital Transformation 略称   *2 : Green Transformation 略称   *3 : Sustainable Transformation 略称

 

企業向けDX推進支援 | 規模の追求

 

次世代プラットフォームビジネス | 市場の創出

 

先進技術を活用したGX(グリーン・トランスフォーメーション)/SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)具現化に向けた取組み | 未来創造

 

■ デジタルは格差を埋めているか? テクノロジーは人間に寄り添っているか?

「A. 企業向けDX推進支援 | 規模の追求」は、ビジネス継続性の点から絶対に外せない領域だ。「どんな未来へと変えて行きたいのか」という想いを前進させていくには、そのためのリソースを生み出すことが欠かせない。

だが、同じくらい大切なものが「B. 次世代プラットフォームビジネス | 市場の創出」であり「C. 先進技術を活用したGX/SX具現化に向けた取組み | 未来創造」であると村澤は言う。

 

「先ほど紹介した取り組みや事例の根底にあるのは、あらゆるものがインターネットにつながるIoTという技術が、これまでデータとして蓄積することのなかったものを集めて分析/解析して、これまでに存在しなかった新しい枠組みやプラットフォームを生み出せるようになったということです。

たとえば、ゼロカーボンという『石油からの脱却』や、『移動』というものの概念を進化させていくMaaS(Mobility as a Service)やCASE(C: コネクテッド、A:自動運転、S: シェアリング、E: 電動化、の頭文字)の社会実装が近づいてきているのも、人の活動が常に生み出し続けている『データ』という、いわば『人間の影』が、しっかりと社会を動かしていくエンジンになってきているからと言えるでしょう。」

 

一方で、そのエンジンが動かしているのが、社会の特定の部分に寄り過ぎてはいないだろうか? と村澤は問う。

 

「組織論や社会学の分野で使われる言葉に、ゲゼルシャフト(機能体組織)とゲマインシャフト(共同体組織)というものがあります。単純化して説明すると、ゲゼルシャフトはGAFAに代表される営利組織、ゲマインシャフトは地域コミュニティです。

21世紀に入りおよそ四半世紀が過ぎましたが、ゲゼルシャフトは莫大な資本を集めスピード感を持ってそれを展開させることで、デジタルサービスを進化させてきました。ただ、それが『人間が本当に求めているモノ』を提供しているでしょうか?

デジタルは人や社会の格差を埋めるものになっていくと思われていましたが、現状はどうでしょうか。格差を広げているのではないかと思いませんか? 今後はしっかりと『そのテクノロジーは人間に寄り添うものとなっているか』を、見ていく必要があるのではないかと思っています。」

GX/SX 時代のソーシャル・アジェンダ

GX/SX 時代のソーシャル・アジェンダ

 

■ 認知多様性(Cognitive Diversity)と環世界の集合知

 

この後、村澤はIoH(Internet of Human – ヒトのインターネット)と、生体関連データを利活用して自らの健康を管理していく「科学的ヘルス・リテラシ」について語った。

IoHと科学的ヘルス・リテラシについての詳細は、2月のウェアラブルEXPOにおける村澤のセッションを参照いただきたい。

ウェアラブルEXPO特別セッション『「IoB: Internet of Bodies」が働き方を変える』レポート

 

IoHに関する話の中で村澤が語ったように、光、音、香りなどの受容レベルの差や、骨格や筋力の個々人の違いが与える影響は身体的な要素だけにとどまらない。五感と、さらに本人ですら意識の上では把握することができないレベルで、人を取り囲むあらゆる物事は人間一人ひとりに異なる知覚を与えている。

村澤はその影響を、ドイツの生物学者であり哲学者であるユクスキュルの唱えた「環世界(Umwelt:ウンベルト)」を用いてインターン生に説明した。

 

「Access Blueプログラムに参加されている皆さんの中には、大学などで哲学を学ばれ、私よりもよっぽど詳しい方もおそらくいらっしゃるのではないかと思いますが、簡単に説明します。

環世界とは、人間を含むすべての生物にとって『環境』とは『客観的に感じるもの』ではなく、生物各々が『自身の知覚を中心に主体的に理解・構築するもの』という考え方です。つまり、環境とは主体的なものであるということ、そして環境とは多様であるということです。

これまで、人間社会は生活資源を確保するためにパイを奪い合わざるを得ないという世界観の上で成立していました。そして、その世界観においては、多様な欲求や要求に応えていくことなど到底不可能であり、『規模の効率性や合理性』が優先される公約数的な考えを土台とした仕組みや制度が基盤となっていました。」

『環世界』の集合知を再構成する時代

『環世界』の集合知を再構成する時代

 

「今、それが変わりつつあります。環世界の集合知を再構成していくことで、SXやGXを優先した『人間がより良く生きていくことができるゲマインシャフトと地球』を推進できるのではないでしょうか。その動きを支える重要なカルチャーであり行動様式が、『Cognitive Diversity = 認知多様性』であり、そのあくなき追及だと思うのです。

Access Blueのインターン生の皆さんは、認知多様性を生かしたより良い未来の追求において、最重要戦力となる資質をお持ちです。

いわば、未来創造における、最もシャープであり研ぎ澄まされた『知的闘争者(インテレクチュアル・ファイター)』となるチャンスを目前にしているのです。」

 

■ 未来の知的闘争者へのエール | 新たな知識体系を!

 

セッションの最後に、村澤は下記のチャートを表示した。

未来創造に向けて: Be an Intellectual Fighter

未来創造に向けて: Be an Intellectual Fighter

 

– Define Issues | 重点課題を明確にする。

何を拠り所として何をすべきなのか。社会をどこか窮屈な枠組みから脱却させるために。

– Design for Realization | 実現に向けてデザインする。

そしてさまざまなアプローチをどう組み合わせるのか。そして何に重点を置き実現させるのか。

– Run and Operate | 起動させ運営を続ける。

持続性のあるやり方を生みだす。公正な社会が拡がっていくように。

 

「Access Blueインターン生の皆さん、現在は、この混沌とした社会の中で新しいビジョンを実現していくための「新たな知識体系(BoK:body of knowledge)」を作り上げ、そのオーナーとなるチャンスが目の前にある時代です。

皆さんにはぜひプロフェッショナルな知的闘争者となり、そのチャンスを手にしていただきたいと思っています。応援しています。」

 


 

Access Blueのカリキュラムでは、今回の特別講義の他、参加者が就労に向けてより具体的なビジョンや職業観を形成する支援をしている。

具体的には、コミュニケーションとコラボレーション・スキル、仮想提案プロジェクトを通じたお客様価値創造チーム体験、実際の業務部門における就業体験(OJT)などの「ビジネス・カリキュラム」と、プログラミングやWeb開発などの基礎スキル、データサイエンスに関する基礎知識学習と簡易実習、AIの基礎理解やハンズオン、チームでのアプリ開発プロジェクトなどの「ITカリキュラム」を通じて、実務を進める上で必要とされるスキルや考え方を実践的に身につけていただいている。

卒業生のおよそ3割がIBMグループに就職しており、他にも多くの卒業生が企業への就職を果たしているという。詳しくは下記の記事にてご覧いただきたい。

ダイバーシティなくしてIBMのビジネスは語れない。IBMが人材の多様性に取り組む理由

 

なお、「Access Blue」は企業の人事部の見学と参加を歓迎している。同様のインターンシッププログラムを検討している企業の方は、ぜひご連絡いただきたい。

 

問い合わせ情報

当記事に関するお問い合わせやCognitive Applicationsに関するご相談は こちらのフォーム からご連絡ください。

 

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TEXT 八木橋パチ

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