IBM Sustainability Software
開発セッションレポート – Cognitive Manufacturing Forum(8月29日開催)
2019年09月03日
カテゴリー IBM Sustainability Software | イベントレポート
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8月29日に日本IBM 箱崎事業所にて開催された[Cognitive Manufacturing Forum]の中から、下記2つの開発セッションの様子をお伝えします。
- 欧米の大手製造業における製品開発プロセス変革(講演者: エラン・ゲリー)
- ソフトウェア・ファースト時代の製品開発を支援するIT基盤 ~IBM Engineering~(講演者: 藤巻 智彦)
■ 欧米の大手製造業における製品開発プロセス変革
講演者: エラン・ゲリー | Watson IoT, World Wide, Industrial Solution Lead
ハードとソフトを統合し、一つのシステムとして捉え製品開発を進めるのが「デジタル時代のプロダクトエンジニアリング」です。
欧米では、自動車業界をはじめ大手製造業ではスタンダードとなりつつあるこのエンジニアリングライフサイクル管理(ELM: Engineering Lifecycle Management)の重要性とその利点を、開発プロセス変革スペシャリストとして20年以上世界中の顧客と共に歩み続けてきたエラン・ゲリーが、解説しました。
この記事では、何度か取り上げられた自動車業界の事例と、デジタルエンジニアリングの基盤となる重要用語、そしてそれがもたらす効果についてお伝えします。
・ デジタルエンジニアリング – ELM(エンジニアリングライフサイクル管理)の基盤
ものづくりの一連のプロセスにデジタルデータを駆使することで、エンジニアリングを効率化していくこと。自動車業界を例とすると、現在の車は「4つの車輪を持ったコンピューター」とも呼ばれており、従来の「メカ」「エレキ」に加え「ソフト(ウェア)」が大きな要素となっている。
従来のPLMやALMを統合した、AIによって最適化されたエンドツーエンドのELM(エンジニアリングライフサイクル管理)が必要とされている。
・ モデルベースエンジニアリング – 局所最適の限界を超える
対象を「モデル」化し、システムモデルやシミュレーションモデルを用いて開発を効率化するアプローチ。分断されサイロ化されてしまっているツールやドキュメント、開発工程の管理や要求変更対応を統合し、今日の開発プロセスの基盤となる再利用性の高い手法。
「1つ変更すると、周囲の業務やプロセスに大きな影響を与えてしまうから…」という現行プロセス維持の弊害を取り除く基盤となる。
・ デジタルスレッド – 統合された変更管理
要件定義から設計、実装、テスト、障害分析、保守サービスにいたる製品のライフサイクル・プロセス全体をデジタル化して統合し、トレーサビリティを実現する仕組み。
これにより、ソフトウェアとメカ・エレキの設計情報をすべて関連づけて管理することができる。
・ デジタルコンティニュイティ – プロセス、システム、部門をつなぐ
ますます高機能化し複雑さを増すプロダクト開発において、品質とスケジュールを守りながらスピードやバリエーションを上げながら、規制に迅速に対応していくには、サプライヤー/インテグレーターをはじめ社内外のさまざまな関連部門とのより効果的な協業や連携が必要。
分野横断的なデジタルスレッドの実現により、変更分析と基準遵守のインパクトを効率化できる。
・ デジタル・ツイン – IoTにより実現するビジュアルな双子
「デジタル」を用いて作成された、現実世界の物理的なシステム等についての「双子」。車やエンジンのような物理的なオブジェクトについて、非常に正確に作成された仮想モデルのこと。これにより、実際の実装前にシステム仕様を検証したり、実装確定前にシステムアーキテクチャの評価をすることができる。
これらの早期検証により、大幅なコストダウンが実現できる。
・ スケールド アジリティ – 大規模アジャイル
デジタルガバナンス、リアルタイムのフィードバック、チームコラボレーション、およびコンティニュアスデリバリー(CD)による、多分野横断的プロジェクトにリーン/アジャイル原則を適用する大規模向けのアジャイルフレームワーク(SAFe)。
複数のチームから成るチーム (チームのチーム)を効果的に管理できる。
・ AIによるエンジニアリングインサイト
システムやプロセスをつなぐ中心にAIとアドバンストアナリティクスを配置することで、品質を向上させ、分析・報告・メトリックを通じエンジニアリングの意思決定を支援する。
すべてのエンジニアリング資産(要件、設計、実装、テスト)が一元管理されることで、パラレル開発や製品バリアントにおける再利用を効率化すると同時に、イノベーションをプログラムの中に取り込み、複数の製品ラインにわたって適応させることができる。
■ ソフトウェア・ファースト時代の製品開発を支援するIT基盤 ~IBM Engineering~
講演者: 藤巻 智彦 | 日本IBM Watson IoT事業部, シニア・ITスペシャリスト
セッションは「エランの説明で出てきたプロセスや概念、そしてソリューション群が、皆さまの実際のビジネスにどのような価値をもたらすのかを、以下のデモシナリオを通じてご覧いただきます」という言葉でスタートしました。
シナリオ: ACC(Adaptive Cruise Control、アダプティブ・クルーズ・コントロール。前を走る車との車間距離を一定に保ちつつ、自動定速走行する機能)の開発。
以前のプロジェクトで「ベーシック版」を完成させており、今回は「プレミアム版」を完成させるプロジェクト。
そして上記のシナリオに沿って、「リーダーによる作業: 計画 – 担当者のアサイン – 進捗確認 – 計画の変更」と、それに伴う「担当者による作業: 要件定義 – 設計 – 実装 – テスト – 障害分析」を、それぞれの実際の画面でご覧いただきました。
「ポイントは、ELM(エンジニアリングライフサイクル管理)のグローバル構成管理を活かし、単なるコピーではなく、前プロジェクトのすべてのエンジニアリング資産を再活用できている点です。プロジェクトにより発生した資産を1度きり、あるいは局所的にだけ再利用するのはもったいないですよね。
過去のPDCAサイクルを活かしつつ、開発のV字モデルの全体をウェブブラウザだけで確認しながら回していくことができるのが、このシステムの特長です。
今日は時間の関係で説明できなかった細かい点もあります。ご興味をお持ちの方はぜひ私どもWason IoTまでご連絡ください。」
最後に、セッション終了前に行われたQ&Aをご紹介します。
Q1: PLMとELMの連携のポイントについて、もう少し詳しく教えてもらえますか?
A1: 最大のポイントは、ソフトウェアだけではなく、メカ・エレキ・ソフト全体をシステムとして連携させるということです。「OSLC」という基準に則ったオープンな開発ツールを使用していれば、すべてのデータを連携させることができます。
これは「餅は餅屋」という考え方からきていて、つまりすべてをIBM製品にする必要はないということです。企業によって最も使いやすいものがあるでしょうから、それがOSLCに準拠している製品である限り、エンジニアリングライフサイクル管理の実現に問題はありません。
Q2: ELMはプロダクト開発以外、例えば社内システムの開発などにも用いることができるのでしょうか?
A2: はい。すでに銀行や保険会社、流通、行政のお客様のシステム開発でご利用いただいています。
過去に似たようなシステムやプロジェクトがあれば、ソースコードだけではなく、要件定義やテストケースなども含めてすばやく利活用できるという大きな特長があるので、規模が大きかったりプロセスが複雑なシステム開発にも向いています。
問い合わせ情報
お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com にご連絡ください。
関連ページ: デジタル時代のものづくりを、統合された設計・開発基盤が支える
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