IBM Sustainability Software
IBMが描くものづくり現場のデジタル技術最前線 | 日本ものづくりワールド2022より
2022年07月05日
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6月24日、東京ビッグサイトで開催された「日本ものづくりワールド2022」において「IBMが描くものづくり現場のデジタル技術最前線」と題されたセミナーが開催された。
会場には約500人のセミナー受講者が集まり、IBMが考える「デジタル技術の業務への組み込み」に対する考え方や取り組み方法が講師の磯部により紹介された。
以下、セミナーの一部を紹介する。
磯部 博史(いそべ ひろふみ)
テクノロジー事業本部 サステナビリティ・ソフトウェア事業部 Master Shaper
「ひょっとしたら、皆さんがこのセミナーにお申し込みいただいた際にご覧いただいた私の所属部門の肩書きと、現在の部門名称が異なっているかもしれません。
つい先日、事業部名が『サステナビリティ・ソフトウェア事業部』と変更されました。これは現在、これまで以上にビジネスのあらゆる局面でサステナビリティが重要視されているという事実と、それに対してIBMはソフトウェアとテクノロジーによる対応策を提供していこうという、意志と方針の表れだとお受け取りいただければと思っています。
本日のセミナーでは、特に『ものづくり現場の持続可能性』を高めるDXプラットフォーム『IBM Maximo』を前半に、そして後半はより包括的に、サステナブルな社会・企業活動を製造業から実践していくための考え方や取り組み方などを含めてお話しさせていただきます」。
磯部はそう話すと、ものづくり現場でデジタル技術を活用する領域を3つに分けて説明した。
- モノ領域: 設備の透明性向上、様々なAIを組み合わせる – デジタルツイン技術を活用しリスク予測を行い、設備の透明性を向上させる。
- ヒト領域: 使いやすさ – 現場作業者がコンプライアンスを守りながら、より生産性高く、より安全に作業を行えるように。
- データ領域: 適材適所 – データの近くでリアルタイム処理を実現する超分散型コンピューティング・モデル「エッジ・コンピューティング」。
以下、3つの説明で投影された資料をそれぞれ1つずつ、磯部の話とともに紹介する。
図内にある「使うAIと作るAIをうまく組み合わせる」が意味するのは以下だ。
- 使うAI – 製造現場で頻繁に用いられる複数の分析AIモデル・テンプレートが予め用意されており、テンプレートから選択して最適なモデルを利用すること。
- 作るAI – 自社や自工程のデータに合わせてAIモデルをゼロからもしくはテンプレートから作成して適用させ、設備の性能や故障の予測精度を向上させること。
IBM Maximoなら、この両者(使うAIと作るAI)を組み合わせて成長・進化させ、モデルの作成を担当するチームと運用するチームを単一プラットフォームで連動することができるので、設備管理ステージを「周期基準保全 (TBM)」から「信頼性中心保全(RCM)」へと進化させ、設備稼働率の向上と運用コストの削減を実現させることができるという。
またそれだけではなく、適切なタイミングで適切な保全を行うことにより、設備や機器のライフサイクル自体を長くしていくこともできるだろう。
→ 参考: 動画で紹介 | IoTデータとAIを活用した設備モニタリング「Maximo Asset Monitor」
続いて紹介したのがデジタルを活用した現場作業員の支援だ。
資料内の「インテリジェント・ワークフローによるガイド機能」とは、「データやシステムの分断を繋ぎ、業務間の隙間を埋める、進化したAIと専門家による次世代の自動化(協業)」を意味している。
イメージとしては、AIが現場作業者からのリクエストに応えていくだけではなく、必要となる情報やサポートを状況に応じて瞬時に判断して提供していくこと。あるいは現場作業者の行動が自動で記録されて次工程に活かされるだけではなく、データとして分析・活用され、さらにその先のプロセスや改善などの中長期的な生産性向上支援に活かされる姿を想像してもらえばよいだろう。
この後、セミナー会場では、「作業内容の確認および記録」「IoTデータ参照」「ARを活用した遠隔支援」「AIを活用したナレッジ検索」を含む、モバイルを活用した遠心ポンプに関する障害対応作業のデモ動画が紹介された。
より詳しくは、以下のページを参考にしていただきたい(動画もご覧いただけます)。
→ 参考: 保全のインテリジェント化を化学、石油、重工、産業機械、住宅、建設業界に(セミナーレポート)
「エッジ・コンピューティング適用のポイント」として紹介されたのが上の図だ。
ポイントとして書かれている「面(複数の対象 x 複数デバイス x 複数分析)での活用」だが、1つの事例として紹介されたのが、ボストン・ダイナミクス社の産業用犬型ロボット「Spot(スポット)」だ。
「Spot」は必要な場所に移動してデータを収集する移動型センサーデバイスだ。会場ではSpotが乱雑なエリアで障害物を器用に避けながら、消火器の設置状態を点検する動画が紹介された。
そして「センサーとして巡回点検を行うSpot」を1台目とし、「正しい場所への消火器再設置を行うSpot」2台目として組み合わせれば、定期巡回と異常発見時の対応まですべてをロボットだけで完結できるというシナリオが紹介された。
昨今、掃除や配膳などにロボットが使われる場面を目にすることが増えてきたが、今後ますます労働人口の減少や労働時間の制約が進めば、こうした「ロボット間の協働」も増えてくるのかもしれない。
ここからは、磯部が語った「企業がなぜ今サステナビリティに一層注力すべきなのか」、そして「製造業においてサステナブルな社会・企業活動を実践していくには何がポイントとなるのか」を紹介する。
- ESG資産への投資は2025年までにグローバル運用資産の3分の1にあたる53兆ドルに達する
- 8割の消費者が購買時にサステナビリティが重要であると指摘している
- 64%のミレニアム世代が、就職先を決める際にその企業のソーシャルおよび環境へのコミットメントを考慮している
- 世界トップ50のうちの38の経済団体が、環境への影響に関連する企業開示要件を持っている/開発している
「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」や「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」という言葉に注目している人にとっては、ここで紹介されている数値はすでに見慣れたものとなっているかもしれない。
そして磯部は、すでにDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んできた企業は、環境問題への取り組みを恐れる必要はないという。
なぜなら、デジタル活用の観点ではやるべきことに大きな違いはなく、必要な行動は同一線上にあるものと捉えることができるからだ。
ただ1つ、大きく異なる点がある。それは、サステナビリティは1社単独で実現できるものではないということ。それを踏まえると、同業他社や業界横断でのコンソーシアムの形成など従来の枠を超えた、テクノロジーを活用した効果的・効率的なサステナビリティの具現化を検討していくべきであろう。
→ 参考 | 持続可能性をビジネス戦略の中核に
最後に、磯部はサステナビリティの具現化を実践していく上で重要なこととして、「ビジネス戦略の策定」というコンサルテーションから実際のレポーティングやリスク管理を行うためのプロセス整備やデータ収集までを、いかに人手を減らして自動化していくことが大切かを強調してセミナーを終えた。
そのために必要なのが、慎重なパートナー選びだと気づいた参加者も多かったのであろう。セミナー終了後には、磯部との名刺交換に数十名の参加者が並んでいたのが印象的であった。
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