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IBM Cloudにも入ってる「インテルOptane」とは?

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 ハイブリッドクラウド&AI戦略において、IBMはインテルとのパートナーシップ・アライアンスのもと、オンプレミス、エッジ、パブリッククラウドに至るまで、多くのソリューションを展開しています。今回、ソリューション・ブログ連載として、IBMとインテルの共同企画により、IBMのパブリッククラウドIBM Cloud上でご利用可能なインテルのテクノロジーについて取り上げます。第一弾として、IBM Cloudで提供されているインテル製品の多種多様なラインナップと構成の自由度、技術詳細、それによってお客様が得られる価値について、インテル 石橋様とIBM 玉川さんに語っていただきました。

 

―― IBM Cloudでサーバーを利用する際、お客様はどのような選択肢がありますか?

(IBM 玉川さん)まず、IBM Cloudの特徴の1つとして、ベアメタル・サーバーを利用可能なことが挙げられます。既にご存知の方も多いかもしれませんが簡単に説明させていただくと、一般的なクラウドの仮想サーバーは、物理ホストとハイパーバイザーをクラウド・ベンダーが管理し、ユーザーはその上のOS(WindowsやLinux)のレイヤーから管理するのが一般的です。IBM Cloudも、仮想サーバーはそういった形態で提供されています。

一方、ベアメタル・サーバーは、物理サーバー筐体をユーザーが専有利用できます。ハイパーバイザーもユーザーが選択・管理できるため、クラウドでありながらオンプレミスに近い自由度がある点を評価いただき、多くの企業ユーザーに選択いただいています。代表的な例がVMware on IBM Cloudで、オンプレミスで稼働するVMware環境を、ほぼそのままIBM Cloud上で稼働させることができます。物理サーバーでありながら、クラウド的な課金体系で提供されており、月額課金(一部モデルでは時間課金)でご利用いただけるため、短期間の利用や必要リソースに波がある用途にもお使いいただけます。

―― 他社のパブリッククラウドとは何が違うのでしょうか?

(IBM 玉川さん)一般的なパブリッククラウドの仮想サーバーでは、ハードウェアのレイヤーは抽象化されており、CPUの型番を選ぶことはできません。クラウドのデータセンター内では多くの物理ホストが稼働しており、全てが同じタイミングで稼働開始しているとは限らないため、CPU世代が混在している場合もあります。従って、仮想サーバーがプロビジョニングされて初めて具体的なCPU性能が分かるクラウドサービスも多く、性能の良いCPUが割り当てられるまで仮想サーバーのキャンセルと再オーダーを行う、俗に”インスタンスガチャ”と呼ばれるノウハウまで存在します。

その点、IBM Cloudのベアメタル・サーバーは、オーダー時にCPUの世代やコア数を指定可能です。
適時、新しい世代のCPUが製品ラインナップに加わっており、2022年5月時点で、IBM Cloudのベアメタル・サーバーではインテル製CPUとして第1世代および第2世代インテル Xeon スケーラブル・プロセッサー等を選択できます。

ベアメタル・サーバーをご利用いただくと、前述のように、ユーザーがハイパーバイザーを指定し、管理者権限を保有できるため、それまでオンプレミスで動いていた従来型システムをクラウドにリフトしやすいメリットがあります。また、ベアメタル・サーバーはシングルテナントであり、物理ホストのリソースを専有できるため、マルチテナントの仮想サーバーにおいて隣のテナントが高負荷の処理を行うことで影響を受ける、いわゆるノイジーネイバーの問題とも無縁です。また、昨今の世界的な半導体不足の影響により、オンプレミスでサーバーを調達しようとすると、モデルによっては数ヶ月待ちになることもあると耳にします。IBM Cloudのベアメタル・サーバーは、多くのモデルが管理ポータルでのオーダーから2〜4時間で使える状態になります。豊富な在庫を持つIBM Cloudで迅速にベアメタル・サーバーを調達できることは、問題解決の1つの手段になるかもしれません。

―― ベアメタル・サーバーならではの優位性はありますか?

(IBM 玉川さん)ベアメタル・サーバーでは、ユーザーが筐体を専有するため、ハードウェア・レイヤーで実現される機能を利用できます。例えば、高度なセキュリティーを実現する、インテルTrusted Execution Technology (TXT) やインテルSoftware Guard Extensions (SGX) を有効にできます。

今回特にお伝えしたいのが、ベアメタル・サーバーのストレージ・オプションとしてインテルOptaneを選択可能な点です。インテルOptaneは、高速だが高価なメモリーと、安価だが低〜中速のディスクの中間の役割を担うと表現されることもあり、高速I/Oを実現する製品ファミリーです。IBM Cloud上では、インテルOptane SSDとインテルOptane パーシステント・メモリーをご利用いただけます。

インテルOptaneの詳細について、インテル株式会社 石橋様に解説いただきます。

―― ところで「インテルOptane」ってなんですか?

(インテル 石橋様)インテルでOptane製品を担当している石橋です。今回はインテルOptaneテクノロジーについて紹介させていただきます。

現在サーバー向けに販売されているOptane製品は2種類あります。インテルOptane SSDとインテルOptaneパーシステント・メモリー(以下PMem)です。

インテルOptane SSDは一般的なNANDフラッシュを用いた SSDの形状をしており、PMemは一般的なDDR4 DRAMメモリーモジュールと同じ形状をしております。一般的なものとの違いはどちらもOptaneと呼ばれる新しい記憶素子を使用している点です。Optaneの特徴として、DRAMに迫る性能とストレージのような不揮発性を兼ね備えた点にあります。このOptaneテクノロジーをSSDとメインメモリーに実装することでこれでまでDRAMとSSDとの間にあった性能と容量のギャップを埋めることができました。
下記の図はインテルOptane SSDとPMemにより新しく定義されたメモリーとストレージの階層構造を表しています。

この図からわかることは、どちらのOptane製品も3D NAND SSDよりも高性能でDRAMより安価で大容量であることになります。

―― 「インテルOptane SSD」と「インテルOptaneパーシステント・メモリー」のそれぞれの特徴について教えて下さい。

(インテル 石橋様)ここからさらに、Optane製品についてそれぞれ詳しく解説したいと思います。

インテル Optaneパーシステント・メモリー(PMem)

インテルOptaneパーシステント・メモリーでは、DRAM バスで動作する DIMM パッケージであり、揮発性メモリーまたは永続性メモリーとして使用できます。現行製品ではDDR4のDRAM DIMMスロットに物理的に差し込むことができますが、それぞれの世代のPMemに対応したインテル Xeon スケーラブル・プロセッサーを使用することが前提になります。また、PMemだけで構成することができず、DRAMと組み合わせて使用する必要があります。DRAMも必要となる理由の一つは上で紹介させていただいた通りPMemはDRAMを置き換えるものではなくDRAMにはない不揮発な特性と容量を補うためになります。もう一つの理由はPMemには2つのモード、メモリーモードとAppDirect(アップダイレクト)モードがあるためです。

メモリーモード:
メモリーモードではPMemはメインメモリーとして認識されます。一般的なDRAMを使用したメインメモリーと同様にサーバーが再起動・停止したらメモリー上のデータは消失します。OSからはPMemの搭載容量がメインメモリーの容量となります。このモードにおけるDRAMはキャッシュとして扱われるためメインメモリーの容量としては計算されません。OSからは通常のメインメモリーとして認識されるため、どのようなアプリケーションであっても動きます。PMemはDRAMよりも容量単価が安く大容量であるため、大容量メモリーを必要とする既存のアプリケーションに対して高い費用対効果を提供します。

AppDirectモード:
AppDirectモードではPMemは特別なデバイスとして認識させるため、ある程度新しいOSを使用する必要があります。このモードの特徴はストレージのように不揮発でありサーバーの停止や再起動でもPMem上のデータは消失しない点があげられます。また、メモリーのようにOSやカーネルをバイパスしてPMemにダイレクトにアクセスでき非常に低レイテンシーです。本来このモードはAppDirectモードに対応したアプリケーションでPMemの真価を発揮しますが、ファイルシステムをマウントして一般的なブロック・ストレージとして使用することも可能です。ブロック・ストレージとしての使い方をStorage over AppDirectと呼ばれることもあります。インメモリー・データベースとして有名なSAP HANAはAppDirectモードに対応したアプリケーションでIBM Cloudのベアメタル・インスタンスでも認定されています。なお、現在提供されているPMem1枚あたりの容量は128GB, 256GB, 512GBになります。PMemにはプロセッサーのメモリーチャネルあたり1枚しか刺せない制限があるためプロセッサーあたり構成できるPMemの最大容量は、サーバーに搭載できるプロセッサー数×プロセッサーのメモリーチャネル数×PMem1枚あたりの容量(128GB or 256GB or 512GB)となります。第 2 世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサーでは最大6TB、第 3世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサーでは最大8TBになります。

インテルOptane SSD

インテル Optane SSDは、記憶素子にOptaneテクノロジーを使用したNVMe SSDになります。PMemと異なりハードウェアの制限は一般的なNVMe SSDと同じでサーバー側がインテル Optane SSDのフォーム・ファクターに対応していれば利用可能です。現在主流のインテルOptane SSDはP4800XでU.2およびAIC(Add-in-Card)のフォーム・ファクターで提供されています。容量はどちらも375GB, 750GB, 1.5TBです。インターフェースはPCIe 3.0 x4のNVMeとなっています。最新のインテルOptane SSDはPCIe 4.0 x4に対応したP5800XがU.2のフォーム・ファクターでのみ容量は400GB, 800GB, 1600GB, 3200GBで提供されています。

インテル Optane SSDで特筆すべき点の一つは他のNANDタイプのSSDと比べて圧倒的に長い寿命です。頻繫な読み書きが行われるメインメモリーにPMemが利用できることからOptaneは非常に高い耐久性があります。P4800Xでは60DWPD、P5800Xでは100DWPDと通常のNANDタイプのSSDの10倍以上のエンデュランスを提供しています。また、ハードウェアとして安定して低いレイテンシーを提供しています。インテル Optane SSDも最初にご紹介させていただいた階層構造の3D NAND SSDの上位に位置付けられていることもあり、インテルOptane SSD単体で使用するよりもHCIやSDSのキャッシュ・ティアで使用することでシステム全体として高い費用対効果を出すことができます。

―― 最後に、IBM Cloud上で「インテルOptane」が使えることの価値について教えて下さい。

(インテル 石橋様)IBM Cloudでもインテル Optane パーシステント・メモリーおよびインテル Optane SSDを利用する上で新しいメモリーとストレージの階層構造を意識することで費用対効果の高いシステムを構築できると考えています。
(IBM 玉川さん)新しいハードウェアをオンプレミスで購入するのは敷居が高い場合もあるかもしれません。その点、IBM Cloudのベアメタル・サーバーは月額課金ですので、使ってみて何か違うと思ったら柔軟に構成を変更できますし、キャンセルいただけば、翌月以降の料金はかかりません。クラウドの柔軟性と俊敏性という特徴を活かし、新しい構成をお気軽にお試しいただければと思います。

 

石橋 史康

石橋 史康
インテル株式会社
インテルOptaneグループセールス
テクニカル・ソリューション・スペシャリスト

2002年より日本IBMにてオープン系システム、HPCクラスター、Supercomputer Blue Geneシリーズなどのインフラの設計・構築・運用を中心に活動。2015年より日本オラクルにてOracle Linux/Oracle VMのテクニカル・セールスとして活動。2017年よりインテル株式会社にてテクニカル・セールスを担当、国内外のお客様にOptane製品を中心とした最新テクノロジーについて紹介している。

玉川 雄一

玉川 雄一
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
アドバイザリー・クラウドプラットフォーム・テクニカル・スペシャリスト

日本IBMで10年以上、主に製造業のお客様向けにオンプレミス・システムの基盤設計・構築・運用やプロジェクト管理を担当した後、2014年からIBM Cloudのテクニカル・セールスとして活動。オンプレミスとクラウドの両方の知見を活かし、お客様の課題解決に向け、多数の提案活動に携わる他、技術記事の執筆や講演活動も行っている。

 

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