SPSS Modeler ヒモトク

データ分析者達の教訓 #12- データ分析者の孤立を防ぎ「自分ごと化」で成功に導く

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こんにちは。IBM の京田です。

このリレー連載ブログはSPSS Modelerの実際のユーザーで第一線で活躍するデータ分析者に、データ活用を進める上で忘れられない教訓をインタビュー形式で伺い、これからデータ分析に取り組む皆様に参考にしていただくことを目的にしています。

 

今回インタビューをお願いしたデータ分析者は

2023年リレー連載してきたこのブログもいよいよ最終回(シーズン2はあるのかな?)。そのアンカーとしてインタビューをお願いしたのは、リバーフィールドの磯部さんです。

磯部さんはかつてのチームメートですが、今や私達にとってはなくてはならないデータ分析コンサルティングのパートナー。なんでも手際良くこなしてしまう聡明な磯部さんに失敗談があるのか不安でしたが、恐る恐るお願いしてみました。

 

 

磯部 葉月

株式会社リバーフィールド
代表取締役

 

-日頃のデータ活用業務について教えてください

弊社ではAI・アナリティクスを活用した分析支援サービスを行っておりまして、私自身、業界を問わず様々なテーマで分析支援をさせて頂いております。

例えば、サービス業では、ユーザーターゲティングや売上Upのため、Webサービスのログデータを使用したユーザー分析をしたり、飲食メーカーでは、機会損失の防止や廃棄ロスによるコスト削減のため、過去の受注・販売実績データから需要予測モデルの作成をしたりしています。製造業では、早期の異常検知を目的とした、設備機器や周辺環境のデータを活用した異常予測などを支援しています。

また、データはあるものの、どのように活用すればよいか悩まれている企業様に対して、

・データ活用例のご提案

・データ活用のための人材育成

・データ活用を軸とした新規事業の立上げ

なども行っております。

現在は、自動車関連業界におけるDX推進支援として、お客様企業の新規事業立上げをお手伝いしているところです。

 

-データ活用業務で味わった苦い経験を教えてください

社内データ活用をご希望のメーカー様のプロジェクトで、IBM SPSS Modelerを使用した需要予測モデルと商品構成推奨モデルの作成を支援した時のことです。

データ活用チームとして各部署から優秀なメンバーが集まり、お客様のチームワークが素晴らしかったおかげさまで、プロジェクトは順調に進みました。

更に、分析ご担当者へのスキルトランスファー、アドバイザリーサービスを実施し、分析ご担当者ご自身で分析業務を行えるようになりました。

その後、通常業務の一部として分析業務が継続されるようになると、データ活用チームは解散、弊社の支援サービスも終了となりました。

ところが、しばらくして分析ご担当者が退職されてしまいました。しかも、業務上での分析ご担当者はその方お一人のみでした。

後任者はいるものの、プロジェクトにはご参画されておらず、短期間での分析業務の引継ぎではスキルトランスファーも不十分だったようです。また、データ活用の対象となる新たな業務課題も浮上していました。

そこで、追加支援サービスや研修をご提案しましたが、コロナ禍で予算確保が困難だったこともあり、私は情報提供など限られた範囲でサポートを継続するしかできませんでした。

業務課題解決のため、効率よくデータ活用できるよう支援したくても、社外の者としてはなすすべがなく、非常にもどかしく感じる経験を致しました。

現在では、お二人の分析ご担当者がご尽力され、様々な業務で分析結果が活用されています。

 

-その苦い経験から得られた教訓はなんでしょうか

教訓は2つあります。

1つ目は、リスクヘッジのため、お客様側の分析者を最低でも2名アサインいただくことです。

とは言え、ご事情によっては難しい場合もあると思いますので、手を動かせなくても、分析テーマの検討や業務の進捗管理を密に行える役割を担っていただける方をご検討いただくようにしています。

2つ目は、業務課題の解決には、外部の支援だけではダメだということです。

データ活用支援をしていても、本当に業務課題が解決するところまで支援を継続することが難しいことを痛感致しました。

お客様が自立して分析できるようになるのは嬉しいのですが、多くの場合、その時点でご支援は終了となります。

しかし、業務課題の解決には、分析だけでなく、データを活用するための環境や仕組み、組織作りも必要となります。プロジェクト単位の支援では、そこまでフォローすることが難しいと感じました。全てを網羅する壮大なプロジェクトをご提案することは可能かもしれませんが、費用が膨大になりすぎてお客様のためになり難いでしょう。

では、どのようにご支援したら良いのでしょうか?

その答えの一つとして、お客様企業の業務に入り込んでオールマイティーに支援をする、ということが重要だと思いました。

 

-これからのデータ活用領域でのチャレンジについて教えてください

先程の「お客様企業の業務に入り込んでオールマイティーに支援をする」ということにチャレンジしたいです。

データ活用を企業内に根付かせるため、お客様企業内の分析担当者と同レベルで現場に近い存在としてご支援ができればと思います。

実は、今まさにチャレンジ中でして、現在行っているDX推進支援は、期間やスコープが決められたプロジェクトではなく、お客様と共に業務を行っています。分析業務はもちろんのこと、データ収集から業務利用まで考慮した、データ活用のための全体的なプロセスの構築をご支援しています。

また、その後のチャレンジとしては、こうした現場経験を活かした人材教育にも携われればと思っております。

 

インタビューのお礼と感想

磯部さん、貴重なお話をありがとうございました。

皆様いかがでしたか?

価値ある教訓に溢れた素晴らしい連載を締めくくるのに相応しい内容でしたよね。

 

私自身、度々お客様から「スモールスタートでデータ活用プロジェクトを始めたいのでSPSSを1ライセンス購入したい」という要望をいただきます。

この時磯部さんの教訓と同じ理由で(決して儲けたいわけではなく)、過去の経験を引き合いに出しながら複数ライセンスの購入を促しています。またできるだけ伴走サービスをお勧めして確実に業務で役にたつ小さな成功例ができるように誘導しています。これもユーザーが自立するべきという磯部さんの主張と合致しています。

残念ながらデータ活用プロジェクトが都合よく、予定通りに進行したケースを私は見た試しがありません。

分析者ひとりに責任を押し付けて孤立化させることなく、メンバーに主体性と役割を与えて生き生きと活動してもらうことが成功の秘訣なのだと改めて思いました。

 

さて、来年もSPSSヒモトクで引き続き皆様に役立つ記事をお届けいたしますのでお楽しみに。

 

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→SPSS Modelerノードリファレンス(機能解説)はこちらから

→ SPSS Modeler 逆引きストリーム集(データ加工)

 

 

京田 雅弘

日本アイ・ビー・エム株式会社

テクノロジー事業本部 データ・AI・オートメーション事業部
Data & AI 第一テクニカルセールス部長  

 

 

 

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