IBM Consulting
逼迫する需給に対するリアルタイム納期調整をAIで実現
2022年02月07日
カテゴリー IBM Consulting | デジタル変革(DX) | データ活用とAI技術の実用化
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電機・電子業界の動向と課題
近年の電機・電子業界は、他業界の電子化・電動化(例:自動車の電動化など)の影響を大きく受け、需要と供給のバランスを取ることが非常に困難な状況が続いている。一方で設備加工産業型の生産効率向上の観点から、生産の自動化やオペレーションの効率化が最も進んだ業界でもある。
本稿で紹介する事例は、電機・電子業界のトップ・プレイヤーが既に十分な効率化がなされている需給調整業務に対し、AIを活用することにより更なる効率化を達成するのみならず、熟練度に関わらず「誰でも」「短時間で」「精度高い回答業務を行うことができ、かつ持続可能なもの」にした取り組みである。本取り組みのコンセプトは、他の製造業各社においても、成熟度の差に関わらず参考に値するものである。
解決する課題
ある部品メーカーは常に数ヶ月の受注残を抱えており、工場あたり毎月数十万件の受注・内示への納期問い合わせに対し既に遵守率の高い納期を回答できていた。一方で、提示した回答納期の全てに顧客が満足することは難しく、相当件数の納期繰上を要求されることが常に発生しており、納期調整担当はそれら繰上納期の調整にマニュアルで対応するため、毎月数十時間の残業が発生していた。
生産能力を増強しているが、需要が更に拡大しているため納期調整業務は益々逼迫する状況にある。納期調整のノウハウは属人性が高くベテランに頼っており即戦力を新たに採用することも難しく、現行体制の高齢化も進むなど、慢性的な人員不足に陥っていた。納期の遵守率は高く維持しつつ、誰でも納期改善できるよう、納期調整業務を簡素化しなければならないという課題に直面していた。
AIによる解決方法
そこで、納期調整における匠のノウハウをデータとして可視化・分析し、AI化する検討を実施した。製造ライン、工程・製品、製造ロットの特性データから、完成までのリードタイムに影響する因子を特定し、リードタイム予測モデルを作成した。この予測モデルと計画立案ツール(GIView planer)とを組み合わせることで、納期調整依頼があった際にほぼリアルタイムで納期回答の複数シナリオを作成することが可能となり、匠のノウハウをモデル化することが実現した。更に、既存システムからの実績データを継続的に学習することで、運用負荷をかけずに季節性・ライン・品種の違いを予測モデルへ反映することが可能となるとともに、回答担当の実際の納期シナリオ調整結果(指向)も学習に反映することで、取引先とのビジネスの実情も加味した予測モデルへ自動的に改善されていく。
納期調整AIの効果
AIにより自動で回答納期候補を提示することにより、納期調整業務が更に効率化されたとともに、担当者の熟練度に関わらず一定レベルの業務品質を確保することが可能となり、国内の人手不足課題の解決につながっている。更に、納期調整AIを活用すれば、「誰でも」「短時間で」「精度の高い納期回答業務」が可能となり、日本と同じ水準の業務品質を海外拠点でも容易に展開できるようになった。
納期調整AIのグローバル展開
納期調整AIのITの仕組みは国内のサーバで構築しており、国内利用の場合は最新仕掛情報からリアルタイムで納期シナリオを提案している。一方、海外拠点で利用する場合においても、高速データ転送技術により各工場のデータは逐次日本へ連携・一元集約され、数十分前の仕掛断面からの納期シナリオを提案できている。海外拠点の業務ユーザは、納期調整AIがどこで稼働しているかということを意識することもなく、業務の中で国内外拠点によらず遅滞なく活用できている。更に、海外拠点から日本へ高速にデータ転送できることで、日本にいながら完全リモートで納期調整AIシステムの海外導入・検証作業を進めることが可能であり、海外展開の容易性につながっている。
今後の展望
本稿で紹介した納期調整AIソリューションは、需給が逼迫し納期調整が発生する業界・業種に対して、短期構築が可能な納期改善・納期回答の仕組みとして、提供を進めていく。
増田 将智
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
電機電子業界担当 アソシエイト・パートナー
- 半導体を始め、多くの電機・電子部品を始めとした製造業の生産・物流・販売におけるデータ活用・SCMの業務課題を解決するソリューションの知見を有し、IBMのSCMソリューションであるGIViewのソリューションオーナーであり、多くのプロジェクトの実践経験を有している。
- SCMと同様に野洲工場の半導体の生産技術にてライン立上げを経験し、国内外の半導体・ウェハー製造の自動化MESアプリケーションの開発・導入をリードした経験もあり組立製造のSCM・MES・データ活用を連携させた包括的な解決策を提案している。
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