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鉄道CBMの実現に向けたチャレンジ

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日本の鉄道業界は新たな局面を迎えている

2022年は日本に鉄道が開業してから150年の記念すべき年となります。
現在、鉄道業界は大きく変化を求められています。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックによるビジネスの変化、人口の減少と働き手の減少による経営への影響が想像されます。さらにはESGやサステナビリティーへのコミットも迫られています。鉄道輸送は環境に比較的やさしい(使用するエネルギーに対して輸送力が大きい)ものではあるものの、CO2排出量はゼロではなく、各種取り組み(東急電鉄様の再生可能エネルギー由来の電力100%での運行(IBM外のWebサイトへ)JR東日本様のハイブリッド車両(IBM外のWebサイトへ)など)が行われています。

なかでも、パンデミック前の鉄道収入とコストバランスから現在のバランスへ変化したことは非常に鉄道経営においては大きなインパクトがあり、固定費の大きい鉄道業界では、働き方の変革や設備コスト削減、不動産等の売却が急務となっています(参考:ダイヤモンド・オンライン「JR・私鉄各社の赤字が大幅縮小、22年度決算を占う「注目ポイント」とは」(IBM外のWebサイトへ))。

鉄道DXの1つとしてのCBM

鉄道業界では、従来TBM(Time Based Maintenance:定期保全)をおこなっており、メーカー指定や社内規定、法定に基づいた設備の整備をおこなっています。これに対し、設備機器(車両、軌道(レール)、転轍機、ホームドア、構造物、変電所、高圧ケーブル、構内空調、駅務機器等)によってはIoTデータを取り出すことができるようになりつつあり、抽出したIoTデータを活用したCBM(Condition Based Maintenance:状態保全)を検討・実践しつつあります。JR東日本様の次世代車両制御システム(INTEROS)(IBM外のWebサイトへ)総務省の令和3年度ローカル5G開発実証報告(IBM外のWebサイトへ)などがその例となります。

今後の鉄道DXにおいて、設備機器のデータを活用した設備保全を行うことは、データドリブンによる保守省力化や設備コスト削減(設備機器・部品在庫最適化)、働き方改革へ繋がる道となります。

データを持って安心してはならない

鉄道における設備機器のデータを抽出し、それをクラウド・ストレージなどに保管することは進みつつあります。
しかし、データを保管して「いつでもやる気になれば分析できる」状態で止まっているお客様が多いのではないでしょうか。それを分析するための基盤(クラウド・インフラストラクチャー、データ転送、データ変換・データベース・分析エンジン・可視化ツール)を自社の手中にするか、その手前で止まるかが、まさに経済産業省が唱える「2025年の崖」(IBM外のWebサイトへ)をどのように捉えるか、行動するかで今後の経営を大きく左右する事態となりかねません。

IT投資・データ標準化への挑戦がキーとなる

今後、日本の鉄道業界においては、設備機器の投資費用に偏らずにIT投資をどれだけ今までよりも遥かに多く投資できるかが勝負になると私個人は推察しています。
鉄道業界の文化としては、従来、車輌メーカーや設備機器メーカーが提供する機器の単価が非常に大きく、また数量も多くあるため、ボリュームでの購入とそのディスカウント幅が大きいことがあります。中にはITソリューションを抱き合わせにして、その分をサービスとして無償提供や、ディスカウントの中に含めるものも多いかと想像しています。ある意味「ひと声いくら?」の世界です。設備機器は安全を第一にしたものであり、その優先度から考えて投資が優先されることは理解できます。

一方で、メーカー主導によるシステムが「乱立」とは言わないまでも、個別スタンドアローンのものが点在しており、リアルタイム性の実現やデータ・フォーマットの標準化※1が、他の業界に比べて浸透が緩やかであると捉えています。
よって、この状態から一気に2025年までに飛躍的にデジタル化を進めるためには、IT投資とデータ標準化への挑戦が、今後の経営の勝負を分けるといっても過言ではないと考えています。

※1 鉄道業界共通や必要とされるデータのフォーマット標準化(レイアウトに限らず、XMLやJSONといったメッセージ構造ルール等)をメーカーに要求するなど。

IBMが実現するCBMソリューション

なぜ、IBMが鉄道CBMを推進するのか?それには以下の理由があります。

  1. IBMにはIoTやデータに基づく分析を実現できるテクノロジー・ソリューションがある。
  2. テクノロジーをお客様に適用・実現するためのステップを示すコンサルティングおよびデリバリー・サービスがある。
  3. メーカーに依存しない中立的な立場で「あるべき姿」を示したり、要件を確立したりすることができる。


特に3.が非常に重要と考えています。弊社はそれを実行・実現できる立場であると認識しております。

もちろんこれはメーカー様からすれば敵対的な活動に捉われる可能性が高く、売上の低下とお客さまへの貢献との「双刃の剣」でもあります。しかし、データを可視化し、それを推進することによってメーカー様の製品が優先的に採用される可能性のあるゲーム・チェンジャーでもあります。よってメーカー様も今後のCBMへの取り組み・貢献がビジネスに左右されるはずなのです。
IBMにはCBMを実現するためのこれら3つを満たすCBMソリューションを持っており、テクノロジー(CP4D, Maximo, SPSS Modeler, AWSやIBM Cloudをはじめとするクラウドソリューション)、コンサルティング(構想策定、PoC:Proof of Concept)、デリバリー(システム構築)を総合的に提供することができます。

CBMを実現する上で必要とされるプラットフォーム

鉄道業界に限らず、システム構築ありきで検討されるお客様は多くいらっしゃいますが、複数部門に渡るこの取り組みにおいては、各部門でのCBMのイメージや、システム構築後のゴールのベクトルが初期状態で一致することは稀です。
そのため、弊社では以下5つのプロセスを提案します。

  1. ビジネス構想策定
  2. データ基盤構想策定
  3. PoC(Proof of Concept)
  4. 業務分析
  5. システム構築

以下にその必要性について一部を記述します。

プロセスの必要性

さらに詳しい内容については、弊社にお問合せいただけますと幸いです。

データ解析者・データサイエンティストを自社育成するか

CBMは鉄道業界におけるDXの第一歩と考えられます。しかし、継続的かつ拡張して行うためには、お客様の部門においてデータを解析することのできる人材やデータサイエンティスト、システムを構築・維持管理できる人材の育成・確保も重要になります。
2025年が目前に迫る中、人材育成は時間がかかり、人材確保においては売り手市場のIT業界、データサイエンス業界では非常に難しくなっています。その上で、その人材をもつ弊社をアドバイザーもしくはパートナーとして選択していただくのも1つの手段ではないかと考える次第です。

吉田 究

吉田 究
アソシエイト・パートナー・
航空・運輸・旅行サービス事業部
グローバル・ビジネス・サービス
kiwamuy@jp.ibm.com
https://www.linkedin.com/in/kiwamu-yoshida-12652b24/

航空・鉄道・運輸・旅行業界において20年以上の経験をもち、最上流のグランドデザインから、要件定義・パッケージシステムのfit&gap、設計から稼働保守までの一貫したシステム開発、大規模基幹系システムのプロジェクト運営等、幅広いシステムインテグレーション技術を使ってお客様を支援している。
航空・鉄道・旅行業界における数年先を見据えたPoint of View(戦略的見解)の執筆・監修を推進している。

 

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